『新たな学園祭の女王、誕生!』 そんな見出しが踊る芸能誌の記事をマネージャーの伊吹は満足げに眺めていた。「あなたを感じたい」の後、短期間 に2枚のシングルをヒットさせ、ファーストアルバムをリリースした風見清香は、この秋、あちこちの学園祭で引っ張りだ こなのだ。 学祭ツアーの総仕上げは、栄富大学のコンサートである。 「栄富大学は、なかなか入れないんだぞ。」 ツアーバスの中で伊吹は清香にそう言った。 「東大とかみたいに、試験が難しくて、頭が良くないとダメなんですか?」 「いや。」 伊吹はそこで一息置いて、すました顔で答えた。 「学費や寄付がバカ高くて、親が普通のサラリーマンじゃあ払えないんだよ。」 そう言うだけのことはあって、清香の前に現れたキャンパスは、広大で、完璧に整備された敷地に白亜の学舎が立ち 並ぶ壮麗なものだった。今回のコンサートでも、大学の話題作りのために破格のギャラが払われる契約になっている。 加えて金持ちの子弟が集まっているので、今後のスポンサー獲得や人脈づくりのうえでも、事務所にメリットが大きいと 伊吹は考えていた。 ツアーバスが学内の駐車場に入ると、実行委員の腕章をつけた数人の男子学生が出迎え、一行は駐車場の近くに ある小さな建物の一室に案内された。途中、学生たちが小声で「テレビや雑誌でも可愛いけど、実物はもっと可愛いな …」などと言っているのを耳にして、清香はニッコリ微笑んだ。 「この大学は、セキュリティが厳重で、外来者は全員ボディチェックを受けなければなりません。みなさんには、ここでボ ディチェックを受けてもらいます。」 応接室で待っていると、さらに数人の学生がやって来て、実行委員長と名乗ったメガネの学生がそう言った。ガリ勉タ イプに見えるのだが、この大学に入ったということは、きっと勉強の成果が上がらなかったのだろう。 「だって、うちの大学に通ってるのは、政財界のVIPの息子ばかりなんで、テロの標的にされるかもしれないじゃん。」 そう言ったのは、長い髪を派手な色に染め、耳、鼻、舌にピアスをした遊び人風の学生だ。彼が実行委員会の「企画 部長」だと言う。 すぐにスタッフやバックバンドのメンバーのボディチェックが済み、残るは清香一人となった。 「じゃあ、最後は清香ちゃんね。」 「えっ…?私も?」 「もちろんです。アイドルだからって、特別扱いするわけにはいきません。」 そう言うメガネをはじめ、学生たちは全員、期待に満ちた表情を浮かべている。 「…じゃあ、誰か女の人に来てもらってください。」 不安になった清香が言うと、メガネとピアスがニヤニヤ笑いながら答えた。 「女学生はいませんよ。うちは大学には珍しい男子校なんですから。」 「俺たちの親は、女が学内にいると、俺たちが問題を起こすと思ってやがるんだよね。女遊びするのは、学内にいても いなくても同じなのにね。」 「女性のガードマンも雇っていませんから、僕たちが清香ちゃんのボディチェックをするしかありません。」 「どうしよう、マネージャー…。」 清香は伊吹に助けを求める。しかし、伊吹は苦笑を浮かべてこう言うだけだった。 「決まりならしかたないだろう。」 あきらめた清香が立ち上がると、その周りを学生たちが取り囲む。メガネが近づいて来て、起立の姿勢をとった清香 のジャケットとスカートのポケットの上を何度も撫でて確認する。清香は髪の毛がフワッと逆立つような落ち着かない感 覚に捕らわれた。 しかし、ボディチェックはそれで終わりではなかった。メガネの手がブラウスの胸ポケットに触れたのだ。 「キャッ!」 悲鳴を挙げて逃げようとする清香を別の学生が後ろから羽交い締めにする。 「女の子は、ブラの中に物を隠せますからね。」 「何も隠してません!」 憤慨した口調で清香が言うのを無視して、メガネは服の上から乳房を揉みながら言う。 「特に怪しい物はなさそうですね。」 「そうかなぁ、一人で調べただけじゃあ、気が付かないこともあるぜ。」 そう言うと、学生たちは順番に清香の胸の膨らみを確かめていく。 「いやっ…、やめて…」 清香は何度も悲鳴をあげながら、なんとかして逃れようともがいている。 「いや、隠すとすればスカートの中だぜ。」 最後に胸を揉んだピアスがそう言うと、学生たちは一斉に「そうだな!」と相槌を打った。 「だから、何も隠してないって言ってるでしょッ!」 清香の抗議など物ともせず、メガネが彼女のスカートの中に手を入れた。 「あっ!」 そう叫んで清香の体は、腰を引いて前屈みになった。メガネの手はそれでもしつこく追って来て、固く閉じた太腿の間 に割り込んでくる。 「やった!風見清香のアソコに触ったぜ!」 これまでの取り澄ました態度をかなぐり捨てて、メガネが興奮した声をあげた。恥骨の上にほどよくついた肉の弾力、 その表面のザラつき。それらの感触が薄いショーツの布地を通して指先に伝わる。 「よーし!俺はパンティに手を入れて直接触っちゃうぜ!」 数人の学生がスカートの中をチェックした後、ピアスが手を伸してそう言うと、穏やかだが、キッパリした口調で伊吹が 言った。 「ダメだよ。」 「どうしてだよ、ジャーマネ…」 聞きかじりの業界言葉で、馴れ馴れしい様子を見せるピアスに、伊吹はピシャッと言う。 「そこまでは契約に入ってないだろう。」 その態度は、芸能界の裏側を担ってきたスタッフだけが持つ迫力があって、悪乗りしていた学生たちをスゴスゴと引 き下がらせた。 (…て言うことは、ここまでは、契約にあったってこと?) 清香は恨めしそうな視線で伊吹を見た。どうやら、今回も「普通の仕事」では終わりそうにない。 秋の短い日がくれると、野外特設ステージの照明が効果的に舞台を照らした。すでに客席は満員になって、立ち見も でている。 印象的なギターのフレーズに続いて華やかなキーボードの音色とダンスビートが響くと、客席は総立ちになった。アル バムの一曲目に収められている「HIP!」。ノリの良い、キュートでポップなダンスナンバーだ。 観客の手拍子に迎えられるようにして清香がステージに現れた。白いミニスカートのフリルのいっぱいついたドレスを 着て、歌い踊る。 満員の客席のあちこちでストロボが光る。通常、芸能人のコンサートは撮影禁止だが、今日は特別に解禁になってい る。しかも、舞台のかぶりつきの席には、望遠レンズ付きの本格的なカメラを構えたカメラ小僧たちが一列に陣取って、 ステージ上の清香を仰ぎ見ている。下からよく見えるように、照明も特別に配置されているようだ。その前で、清香は、 スカートが大きく翻る派手なターンを見せなければならなかった。 「今日のコンサートはカメラ小僧の規制なしで、話題つくりのためにパンチラ写真撮り放題にする。投稿雑誌やインター ネットに流されるだろうが、その手のモノに載るのも、新人アイドルにとっては良い宣伝だ。」 それが開演前に伊吹から諄々と言われた言葉だった。 「みなさん、こんばんは!」 清香の元気な呼びかけに、会場が「こんばんは!」と返す。 「今日のコンサートは、秋の学園祭ツアーの締めくくりになります。そこで、今日だけの特別企画…。」 そこまで言って、観客に「なんだろう?」と期待を持たせるために一呼吸置く。コンサートでの彼女のMCは、自由に話 すことが許されず、何を話すのかシナリオが作られていることが多い。 「今日のコンサートで私が着ている衣裳をすべてオークションにかけて、みなさんに買っていただきます。じゃあ、詳しく は実行委員のみなさんから、お願いします。」 客席の拍手と野次を受けながら登場したのは、企画部長のピアスだった。おどけた調子で客席を静めると、オークシ ョンの説明を始める。 「競りはコンサートを進めながら、衣裳変えの度に行います。間違いなく清香ちゃんが着ていた物だということをはっきり させるため、今日は舞台裏や控え室ではなくて、ステージ上に設置したこのパーテーションの中で着替えもらいます。」 ピアスがステージの中央を指さした。バックバンドが並んでいる一段高くなった所に、厚手の布でつくったパーテーショ ンが畳半分ほどのスペースを取り囲むように並べられている。その中で着替えるというのだが、高さは清香の肩ぐらい までしかないし、下の方も膝のあたりで布がなくなっている。パーテーションに隠れて着替えると言うよりは、観客に着替 えを見せるというほうがふさわしい設定だ。 「恥ずかしい…」 清香が思わずポツリと漏らした言葉をマイクが拾った。作り物でない少女の羞じらいは、このうえなく可愛らしく、観客 にたちの心を激しくときめかせる。 「ちょうど、次の衣裳に着替えるタイミングですので、一度やってみましょう。じゃあ、清香ちゃん、パーテーションの中に 入ってください。」 衣裳のオークションがあることは聞いていたものの、実際のやり方は全く聞かされていなかった彼女は、観客と同じよ うに、ここので説明を聞いて理解していくしかない。それが、果たして打ち合わせどおりのことなのか、ピアスの独断な のかもよくわからないのだ。 「あ…、は、ハイ…」 戸惑いながらも、清香はパーテーションの中に入った。 「じゃあ、ドレスを脱いで。」 照明のせいでステージ上はかなり暑い。歌ったり踊ったりすると、衣装はすぐに汗まみれになってしまう。そんな衣装 を人に渡すのは、それだけで少女にとっては恥ずかしいものである。ためらう清香から白いドレスをひったくるようにし て受け取ると、ピアスは舞台の前方上手に設置された黒いパネルにそれを張り付けた。 「脱いでもらった服は、このパネルにディスプレイしていきます。」 「あの…、次の衣裳は…?」 「全部脱ぎ終わってから、渡すよ。」 そう言われて、しかたなく靴とソックスを脱いだ後、清香はじっとピアスを見た。 「さあ、次はブラだよ。」 「えっ、下着もですか?でも…」 清香は救いを求めて、ステージの袖に立つ伊吹を見つめた。しかし、彼は、落ち着き払った様子で深く頷いた。どうや ら、これは契約のうちらしい。しかたなく清香は背中に手を回し、ブラジャーのホックを外す。すると、ステージ後方から 強いライトが当てられ、パーテーションに彼女の姿がシルエットで映し出された。 「おおっ!」 観客たちがどよめいた。シルエットではあるが、清香の着替えの様子をつぶさに見ることができるのだ。 「ブラジャーをこっちに渡して。」 清香はピアスが差し出した手に、片手で胸を隠しながらブラジャーを手渡した。 「下も脱いで…」 清香は真っ赤になりながらパンティを脱いだ。 「次は?」 「あ、あの…、こ…、これで全部です…」 「あれっ、さっきのはコスチュームパンツじゃなかったの?」 「えっ…、あ…」 聞かれて、清香が答えに詰まった。 「…って、知ってて聞いちゃいました。清香ちゃんは、ミニスカの時でもコスチュームパンツははかないんだよね。と言う ことはわかりますね、みなさん。パンチラと言っても他のアイドルは衣裳の一部を見せているだけですが、清香ちゃんは 正真正銘のパンチラ、他のアイドルとは値打ちが違うんですよ。そこで写真を撮ってた諸君、君達の写真のホントの値 打ち、わかったかな?」 そう言いながら、ピアスは清香から受け取ったパンティを鼻に近付け、股間に当たるの部分の匂いを嗅いだ。 「あっ、ちょっと、ダメッ!」 「ふふっ、いい匂いだ。清香ちゃんの匂いがするぞ。」 「ああ、そんな…、匂いなんか…嗅がないで…」 抗議する清香の顔は、耳まで真っ赤になっている。 「そうだね。これはオークションで買った人の物だったね。」 ピアスは言いながら、パンティをパネルに貼り出した。 「もちろん、競り落とした人は、存分に清香ちゃんの匂いを堪能できますよ!」 清香の衣裳は、馬鹿馬鹿しいぐらいの値段がついて、売られていく。ステージが進行中でもオークションができるよう に、観客には無線式のスイッチが渡されていて、ステージ横の電光掲示板で競りの状況が確認できる。なにしろ、金だ けはふんだんにある学校だ。学園祭の野外ステージと言っても、費用のかけかたが違う。 パンティに100万円の値が付き、競り落とした学生が受け取ると、ライトが暗転して、パーテーションにスポットが当た った。素肌にジージャンを羽織り、レザーのミニスカートを履いた清香が飛び出し、照明が明るく輝く。歌うのはお得意 の80'sのロックナンバーだ。 ジージャンの前のボタンをすべて外しているため、ステップに合わせて、可愛いお臍や裸の胸の谷間がチラチラ見え た。キックの振り付けが多用され、パンティが見える。コスチュームパンツではないという説明があった後だけに、観客 はこれまで以上に興奮した。 パソコンのCMソングになっている現在ヒット中の「YUUWAKU。」、そしてデビューヒットとなった「あなたを感じたい」 でコンサートはクライマックスを迎える。衣裳はなんと、セーラー服に紺のブルマ。明らかに狙った衣裳は、狙いどおり オークションで最高値をつけた。 アンコールの曲が終わって、再び清香がステージに戻って来た。最後の衣裳を競りにかけるためである。 汗でぐっしょり濡れた衣裳を全て脱いでピアスに渡したが、着替えがなかなか届かない。 「あの、着替えは…」 「あっ、そうだったね。次はステージ衣裳じゃあないから…、どこにあるのかな…。あっ、あそこだ!」 ピアスが指さしたのは、清香の頭上だった。女の子の持ち物らしいお洒落なバッグがぶら下げられている。彼女の物 に間違いなかった。 (なんて意地悪なことするのかしら!) 清香はムッとした表情で、胸を隠していた方の手を伸ばした。背伸びをすればなんとか届く高さである。 そのままバッグを掴んで引っ張った。しかし、何かにひっかかっているのか、片手で引っ張っても取れない、清香はち ょっと焦りながら、下腹部に当てていた手も伸して、両手でバッグを引っ張った。 途端に清香の周りに立っていたパーテーションが一斉に外側に倒れた。 一瞬、何が起こったのか理解できない様子で清香が立ちすくむ。バッグを掴んで両手を高く上に挙げたその姿は、一 糸まとわぬ全裸だ。2000人はいるだろう観客の視線が、一斉に美少女アイドルの瑞々しいヌードに注がれた。 「キャアーッ!」 凄まじい悲鳴をあげて、清香がその場にうずくまり、客席は拍手と歓声に包まれた。 「さて、これでコンサートは終わりですが、オークションの方はもう一つビッグな目玉商品があります。それは、この後、 ここで行われるサイン&握手会での清香ちゃんとの握手券です。」 ここまで普通でない興奮のイベントを楽しんだ観客たちは、あまりに当たり前のアナウンスに、シラケたような反応し か示さない。そういう反応を予想していたピアスは、ゆっくりと楽しむように言葉を続けた。 「なんだ、イマイチ盛り上がらないですねぇ。普通の握手じゃありませんよ。清香ちゃんは、皆さんのオ×ン×ンと握手し てくれるんです。そして、みなさんは、清香ちゃんのオ××コと握手することができるんですよ。」 ピアスが言い終わるか終わらないかのうちに、客席から「オーッ!」という歓声が沸き上がった。 「ひどいわ、伊吹さん…、私…、こんなこと…聞いてません…」 清香はステージ袖の伊吹の所へ駆け寄り、泣きべそをかいて抗議したが、まったく聞き入れられなかった。 「今夜のコンサートのことは、外に向かっては普通のコンサートだったと公表されるし、ここで撮られた写真がどこかに 投稿されても、悪質なアイコラだとコメントするさ。」 伊吹は、落ち着き払った態度でそう言った。彼はそうした情報操作に絶対の自信をもっていたし、そもそも、漏れた噂 の真偽が話題になることを狙っているそぶりすらある。 もはや清香に残された道は、一刻も早くこの苦行を終わらせることしかなかった。 ステージにはテーブルが置かれた。握手券は50枚販売され、競り落とした学生たちが一列に並んで待っている。 清香は、全裸のままテーブルの前に立ってサインをする。前かがみになっているせいで円錐形になった二つの胸の 膨らみが、小刻みに揺れている。その前では、一番の券を競り落とした学生が、興奮を抑え切れない様子で清香を見 つめていた。 彼は清香の大ファンであった。彼女を想像してオナニーにふけったことも数限り無い。その風見清香が一糸まとわぬ 姿で目の前にいる。待ち時間の短縮のためズボンのチャックを開けて陰茎を摘み出していた彼は、清香の裸身を食い 入るように見つめながら、無意識にそれをさすっていた。 清香の白く柔らかな手が反り返って勃起している学生のペニスを包んだ。あまりの気持ち良さに、いきなり昇天しそう になるのを、男はやっとの思いでこらえた。 「応援、ありがとうございます…。」 肉棒を優しくしごきながら、ぎごちない笑顔を浮かべて清香がそう言うと、彼女の後ろに控えていたピアスが男を促し た。 「さあ、あなたも触っていいですよ。」 いよいよ憧れのアイドルの秘められた部分に触ることができるのだ。 「さ、触るぞっ!」 男は自分に言い聞かせるように早口でしゃべり、清香の手とクロスするようにして清香の陰部に触れた。 「あっ、いや…」 仕事だと思い、覚悟を決めたと言っても、やはり見知らぬ男に秘所を触られるのは我慢できない。清香は反射的に声 をあげ、腰を引いた。すると、ピアスがそのお尻をぐっと押す。彼自身も最後の握手券を落札していた。 男は夢中になって清香の秘部をいじり始めた。暖かくヌルッとした感触は、男の興奮を頂点にまで高めていく。男の指 先が彼女の敏感な部分を刺激した。 「あんっ!」 清香が漏らす喘ぎ声を聞いた途端、我慢できなくなった男の陰茎がビクンビクンと脈打ち、ステージに白い体液を撒 き散らした。すると、名残惜しそうにしている男を横目に、すぐに次の男が清香の前に色紙とペニスを差し出すのだっ た。 「ま、このあたりまでは、契約の範囲内だろう。」 破廉恥なサイン会をじっと見つめていた伊吹は、その夜の儲けを頭の中で計算しながら、そう独り言を言った。 |