第16話 分水嶺を越えて

 映画監督、暁タカシは「世界のアカツキ」と呼ばれる名監督だ。世界中で評価され、とりわけ、監督やプロデューサー
といった映画関係者からは、神のごとき崇拝を集めている。
 同時に、そのこだわりは、変人の域に達していることでも有名だった。常識はずれなエピソードは数え上げればキリ
がなく、中でも、空の雲が気に入らないという理由で、出演者のスケジュールを無視して何日も撮影を延ばしたことは伝
説になっている。
 また、リアリティを追求するためなら一切妥協しないことでも有名で、彼の作品に出演する俳優は、相当の覚悟が求
められた。ある男優は、スタントなしのアクションシーンで死にかけたことがあったし、さる有名女優は、濡れ場でアダル
ト・ビデオ顔負けのセックスを求められ、泣いて降板したと伝えられている。
 朱美も、台本をもらった時は、受けるかどうか悩んだ。いや、むしろ断るつもりでタイラー社長に直訴した。しかし、社
長と話し合った結果、結局、受けることを承諾したのだ。
「チャンスというのは、一度逃すと二度と来ないのです。朱美、このまま下積みのツマラナイ仕事、続けますか?」
 「ドサ回り」と呼ぶのがふさわしい営業の数々が朱美の脳裏に浮かんだ。しかし、もっとも悔しかったのは、栗田麻由
の主演ドラマにエキストラ扱いで出演した時のことだ。持ち前の勝ち気な性格が、競争心に火をつける。
「このまま芸能界、やめることになってもイイデスカ?」
 朱美の心理を見通したような社長のその言葉が、彼女に決断をさせた。

「おはようございます。」
 朱美は、スタジオに組まれたセットをじっと見つめている男に挨拶した。目鼻立ちのはっきりした厳しい表情、三十代
半ばぐらいの背の高い、ガッシリした体格の男だ。
 赤峰雅之。この映画の主演男優である。アクション俳優としてデビューし、刑事ドラマで大ブレイク、その勢いでハリウ
ッド映画に出演して、有名な映画賞にもノミネートされた。今や世界的俳優の仲間入りを果たしている。
 赤峰は元気良く挨拶した朱美の顔をジロリと見ただけで、無言でセットに視線を戻した。
(何?感じ悪い!)
 朱美は少しカチンときたが、気を取り直して、もう一度、深々と頭を下げて、丁寧に挨拶した。
「おはようございます。共演させていただきます、火山朱美です。よろしくお願いします…」
「煩い、挨拶は一度でいい!」
 朱美が言い終わるか終わらないうちに、赤峰は彼女に視線を向けもせず、ピシャリと言い放った。
「あ…、すみません、失礼しました…」
 もう一度、頭を下げ、そそくさと逃げるように赤峰の前を離れてから、朱美の胸にフツフツと怒りが湧き起った。
(何よ、きちんと挨拶してるのに、いくら世界的なスターだからって、人をバカにして!)
 考えれば考える程腹が立ってきて、赤峰を睨みつける。そして、悲しくなった。主演男優がどんな男かということは、今
回の場合、特に重要だった。恐らく、朱美にとって一生忘れられないはずの相手になるからだ。
「朱美、何を恐い顔してるんだ。せっかくの別嬪が台なしだぜ。」
 そう言って、朱美の肩をポンと叩いたのは、カメラマンの尾形大地だ。今回、暁監督のパートナーとして、この映画を
作ることになっている。そして、その横にいるのは、白髪頭にハンチングを乗せた小柄な初老の男。
「あっ、監督!おはようございます。よろしくお願いします!」
 暁タカシその人は、慌てて深々とお辞儀する朱美に笑いかけながら、深い響きの声で挨拶を返した。
「おはよう。いよいよクランクインだ。がんばってくれたまえ。」
 堂々とした鷹揚な態度は、まさに謁見を受ける帝王さながらであった。

 映画「分水嶺を越えて」は、一匹狼の刑事が、中国系マフィアを追い詰めるという内容で、アクションシーンもあるが、
タフな刑事の粘り強い捜査をじっくりと見せていく作品だ。
 映画は、刑事がマフィアのリーダーを逮捕したところから始まる。それを逆恨みしたマフィアが刑事に復讐するという
のが、序盤の展開だった。
 朱美は、赤峰が演じる羽賀刑事とコンビを組むベテラン刑事の娘の役だ。マフィアは強盗を装って、ベテラン刑事を
殺害し、娘の茜を拉致する。

 白人、黒人、黄色人種、ホールには様々な人種の男女が集まり、様々な国の言語が飛び交っていた。
「それでは、本日の商品が参りますので、じっくりとお選び下さい。」
 何か国語かでそうアナウンスが流れ、入り口の扉が開いた。レザーのボディスーツを着て鞭を手にした美女に続い
て、十数名の美少女が全裸で入って来た。みんな恥ずかしそうに胸と下腹部を手で覆っている。ここは、国際的人身売
買組織が運営するオークション会場なのだ。
 売人らしき男たちが、壁に沿って等間隔に並んでいる鉄柱のような物に少女たちを縛り付けていく。二本の柱の間
で、全裸の少女たちは、両手を斜め下に開き、足を50センチ程開いた格好で固定されていく。すすり泣く娘、悲鳴をあ
げ、手足をバタつかせて抵抗する娘、あきらめ切った表情で項垂れ、なすがままに縛られる娘…。そんな中で、一人の
少女が映し出される。頬を染め、唇を噛み締めながら、毅然と前を見つめる少女。朱美扮する茜である。
 足元から顔へと、カメラが舐めるように朱美の体を映していく。この映画では、彼女がヌードになるシーンが2回ある。
そのうち一回がこのオークションのシーン、もう一つが赤峰とのベッドシーンで、どちらもただ美しい裸身を披露すれば
いいものではなく、なかなかハードな撮影だ。
「さすが、抜群のプロポーションだな。」
 スタッフの一人が呟く。
「見ろよ。帝王もすっかりご満足のご様子だぜ。」
 隣にいた男が監督の方を指さした。暁はディレクターチェアから立ち上がって、朱美の裸体に見入っている。
 朱美の周りを、五人の男が取り囲む。
「いかがですか?とびっきりの上玉ですよ。こんな娘は、なかなか手に入りませんよ。」
 売人役の俳優が自慢げな表情を浮かべて言う。
「よかったら、触ってみてください。」
 張りのある若々しい乳房がアップになった。淡い色の乳輪の頂きにピンクの乳頭が乗っている。朱美の正面に立って
いたアラブ系の男が手を伸ばし、釣り鐘型の見事な乳房に触れる。
「カット!」
 監督の声が響いた。
「いいか、ハッサン、まず乳房を揉んで…」
 監督は、朱美が拘束されている所に来て、自ら演技指導を始めた。
「片手ですーっと身体をなでながら、下腹部に手を当て…」
 監督の手が下腹部に滑り降りた。淡い小判型の繊毛の手触りを楽しむように撫であげる。
「しゃがんで、股間を覗く…、チェンとボブもだ。」
 監督は、朱美の陰部に顔を近づけ、ふっくらした大陰唇の膨らみを割り開く。
(ちょっと…、みんなして見ないで…、恥かしい…)
 監督や共演者だけでなく、スタッフ全員の視線を感じ、朱美は赤く頬を染めた顔を弱々しく振って、羞恥に耐えてい
た。撮影中は役に入り切っているので、まだそれほどでもないが、カメラが止まり、素に戻った状態で体を見られ、触ら
れるのは、たまらなく恥ずかしかった。
「そうしたら、ジョン…」
 そんな朱美の気持ちにはお構いなしで、監督は彼女の性器を弄りながら、白人の男に呼びかけた。
「朱美の体を舐めるように見ながら、ゆっくり後ろに回って乳房を揉むんだ。」
 こうして監督が手順を指示し、撮影が再開した。
 カチンコが鳴ると、ハッサンが朱美の胸を鷲掴みにし、肉球に指を食い込ませた。
"この押し返すような弾力がイイネ…"
 アラビア語で呟きながら、指に吸い付くような肌の感触と、指を押し返す双乳の張りを楽しむ。
「いやっ、ダ、ダメっ…、やめて…」
 ハッサンが朱美の乳頭を責め始めた。浅黒い大きな指が乳輪をなぞり、強くやさしく、乳首を転がしていく。背筋を電
流が流れるような感触に、朱美は身を捩った。
「乳首が立ってきたぞ…」
 尾形に指示されて、カメラマンがアップで朱美の胸を狙う。男の掌が朱美の柔肉を握り締め、堅くなった乳首を指の
腹で確かめるようにコリコリと転がす。
"下の方はどうかな?"
 男がしゃがんで、朱美の股間を覗き込む。三人の男が薄笑いを浮かべて見上げる姿が、朱美の目線で映される。柱
に縛り付けられた朱美は、恥かしい姿を隠すことも出来ない。
 カメラが、男たちの目線に切り替わった。股間を飾る細い縮れ毛の翳りは肌を透かし、その下の亀裂まで見せてい
る。秘唇は瑞々しい薄桃色で、襞と襞が形良く縦割れを示しながらよじれ合わされていた。男の指で裂が押し開かれ、
ピンク色の柔肉が露わになる。
「あっ、嫌っ!」
 男の指が襞肉の一枚一枚を確かめるように弄ってくる。中国系の男も手を伸ばし、敏感な芽を包む包皮を指先で剥
いていく。背後に立っていた白人の男が、その大きな掌で胸の膨らみをギュッと揉んだ。
「ううっ…、ああ…」
 泣き声とも喘ぎ声ともつかない声が、朱美の口から漏れる。男たちは、恥辱に震える朱美の表情を楽しみながら身体
を嬲り、その様子をカメラが収めていく。
"おい、見てみろよ、濡れてきたぜ…"
 朱美の秘孔を指でかき回していたハッサンが、ニタニタしながらチェンに言った。男の指は愛液で濡れ、テカテカと輝
いている。
 カメラが朱美の表情を捉えた。愛らしい大きな瞳に涙を浮かべ、好き放題に体を弄られる恥辱に唇を震わせている。
それは、半ば演技ではなかった。

 粘り強い捜査で茜の居場所をつきとめた羽賀は、辞表を出して茜を救出に向かう。首尾よく茜を助け出した羽賀。命
懸けの逃避行の中で、二人は愛し合い、結ばれる。
 反転攻勢に出た羽賀はマフィアの幹部を追い詰め、ついに射殺する…。

 映画の撮影は順調に進んだ。それは、暁作品にしては希有なことであった。
 あわやという出来事は度々あった。しかし、その度に危機を回避できたのは、実に朱美のおかげだった。朱美が気遣
いを示して撮影現場の潤滑剤となることで、出演者とスタッフが一丸となり、監督の罵声や無理難題を受け止めること
ができた。また、どんな場面でも、真剣に全力でぶつかる朱美の演技にみんなが触発された。そして、何より、朱美が
側にいると、監督の機嫌がすこぶる良いのだ。
 鳳グループ事件の後、下積み生活に逆戻りした経験は、むしろ彼女を成長させる糧になったようだった。
 しかし、そんな中でも改善されなかったのが、主演の赤峰との関係だった。
 赤峰は朱美を無視し続けていたし、朱美の方もそんな赤峰に反発し、演技の時以外、赤峰と会話を交わすことがな
かった。
 それにもかかわらず、二人の演技は驚く程息があっており、羽賀と茜が魅かれ合っていくシーンは、見ていて胸が苦
しくなるほど切なく、素晴らしい出来に仕上がっていくのだ。

 そして、最後の撮影は、茜が羽賀と結ばれるシーンだった。
(いよいよだわ…)
 そう思うと、朱美はこのまま逃げて帰りたいような気持ちになった。これから、赤峰と実際にセックスし、その様子を撮
影されるのだ。もちろん、朱美にとってはロストヴァージンになる。
 映画のストーリーでも、茜は羽賀に処女を捧げるのだが、暁監督は、女優が本当に処女喪失するところを撮影したい
と望んだ。それが条件だったため、主演多女優がなかなか決まらなかったのである。候補にあがった女優の多くが、撮
影でセックスすることを嫌がり、それ以上の数の候補者が、処女でなかったために出演を断念した。もちろん、暁を納
得させるだけのルックスと演技力、スター性があることが最低条件だ。
 そんな時、尾形が朱美を推薦したのである。暁も彼女を気に入り、事務所からも「鳳グループの件で傷ついたイメー
ジを回復する、またとないチャンスだ」と説得されている。そして何より、最後は自分から「うん」と言ったのだ。もはや、
逃げるわけにはいかなかった。
 揺れる朱美の気持ちとは関わりなく、撮影の準備は着々と進んでいた。茜と羽賀が逃げ込んだ山小屋のセットが組ま
れ、スタッフがスタンバイしている。
 数十人のスタッフと、3台のカメラが取り囲む中、朱美と赤峰がセットの暖炉の前に並んで座った。まばゆいばかりの
撮影用ライトが二人を照らし出す。サバイバル・ジャケットを着た赤峰の横にいる朱美は、白いセーターにジーンズとい
うスタイルだ。
「よーい、スタート!」
 監督の声が響いた。
 見つめ合う赤峰と朱美。二人の顔の距離が徐々に縮まっていき、ついに唇を重ね合わせる。
 赤峰が朱美の唇を吸った。朱美もそれに応える。二人はタイミングを合わせながら、互いの唇を吸い合った。
唇の隙間から赤峰の舌が侵入してきた。朱美がおずおずと舌を伸ばすと、男はヌルヌルした舌を絡ませてきた。
「んん…、ん…」
 鼻の奥での甘えた声を漏らしながら、朱美は赤峰の首にしがみついた。赤峰の手が、見事な隆起を見せるセーター
の上から朱美の胸を愛撫する。
「…いいのか…?」
「…うん…。」
 朱美は頷くと、自らセーターとジーンズを脱いだ。赤峰も着ている物を脱ぐと、下着姿になった朱美を床に横たえた。
 ブラジャーから乳房を露出させ、美しい膨らみ全体をたっぷりこねまわす。理想的な脚線から内腿にかけて微妙なタ
ッチで愛撫し、パンティを引き下ろす。手の動きに合わせてカメラが動く。
 そうして愛撫を繰り返した後、赤峰は勃起した亀頭を、朱美の陰裂にあてがった。
「茜、いくぞ…」
「………」
 朱美は茜になりきり、濡れたまなざしを赤峰に向けて、コクンと頷いた。
「茜…」
 そう名前を呼んで、赤峰がゆっくりと腰を突き出した。朱美は思わず全身を硬直させる。勃起したペニスの先端が朱
美の中に少し入る。
「い、痛っ…痛っ!」
 途端に、悲鳴をあげて、朱美の身体が男の進入から逃れようと、上へ上へと身体を捩る。
「カット!」
 怒気を含んだ監督の声が響いた。
「何してるんだ!逃げちゃ駄目だろう。ここは、茜が愛する人を受け入れる場面なんだぞ!」
「…すみません、申し訳ありません…」
 監督に怒鳴りつけられて、朱美は半べそをかいている。
「この子のココ、全然濡れてないんですよ…。」
 赤峰が手を伸ばし、朱美の股間に触れながら、ポツリとそう言った。
 考えてみれば当然である。これまで全く性体験がない少女が、大勢のスタッフに取り囲まれ、カメラを向けられる中で
セックスするのだ。緊張や羞恥心、嫌悪感を感じこそすれ、そう簡単に快感が湧き出してくるはずがない。彼女の性器
はまだ男を受け入れる準備ができていないのだ。
「そうか…、仕方ない。」
 不機嫌そうな表情のまま、暁が二人に命じた。 
「少し休憩にするから、その間、お互いのモノを舐め合って、よく濡らしておけ!」
 そう言い残して監督がスタジオを出ていくと、赤峰が苦々しげな表情で朱美を睨んで言った。
「…と言うことだ。」
 そう言うと、赤峰は床に仰向けになった。天井を向いて屹立している男根が目に入り、朱美は慌てて視線を逸らした。
「さあ、来いよ。さかさまになって、俺の顔を跨げ。お前のションベン臭いアソコを舐めてやるから、俺のチ×ポをしゃぶ
るんだ。」
「えっ、そ、そんなこと…、できないわ…」
 朱美は白い頬を真っ赤に染めて、うろたえた。休憩中だったが、ほとんどのスタッフはスタジオに残って、二人の様子
をチラチラと窺っている。
「したくなくてもするしかないだろう。あの暁監督の命令だぜ!」
 叱りつけるように言われて、朱美は渋々、すらりとした太腿を震わせ、赤峰の顔を跨いだ。さっき「ションベン臭い」と
言われたのが気になって、中腰の姿勢でとまどっていると、赤峰がそのヒップを抱えて、股間にむしゃぶりついた。舌が
割れ目を舐めまわす。
「あっ、ああん…、いやあん…恥ずかしい…」
 ヒップをくねらせて喘ぎ声を漏らす朱美に、赤峰が容赦なく言う。
「ほら、一人でよがってないで、俺のも舐めろよ。お前のオ××コに入れやすくするんだからな。」
「え、ええ…」
 真っ赤になった朱美は、赤峰の上に身体を重ね、目の前にきたペニスを手で握った。
(そんな言い方しなくても…、女の子が死ぬほど恥ずかしい思いをしてるんだから、もうちょっと優しく言ってくれてもいい
でしょ…)
 心の中でそう呟くと、恨めしそうに赤峰の分身を睨みつけ、それを手でしごきながら口に含んでいった。



 結局、二人は一時間近く、お互いの股間を舐め合うことになった。そして、ようやく撮影が再開した。
 全裸の朱美と赤峰が床の上で抱き合って横たわる。
 赤峰がグイッと腰を突き入れた。亀頭が朱美の濡れた花びらをかき分け膣口に入る。
「ううっ…、痛っ…」
 朱美の顔が苦痛に歪み、身体が反射的にのけ反った。
 赤峰はゆっくりと朱美の中へ肉棒を埋め込んでいった。今度は、唾液と体液でお互いの性器が十分濡れていたおか
げで、さっきよりはスムーズに入っていく。その様子を3台のカメラが、いろいろな角度から映像に収めていった。
「うぐぐぅ…」
 男根が小さな抵抗を押しのけるように、窮屈な肉路を裂く。喉の奥でくぐもった声を上げ、朱美は歯を食いしばって、
処女膜を破られる痛みに耐えた。
 赤峰が朱美の太腿を抱え込み、グイッと引き寄せた。同時にズンと腰を送り込む。朱美の眉が歪み、太腿がピーンと
引きつった。これまで体験のしたことのない痛みが朱美の身体を貫いた。
「い、いいっ、ううう…」
 朱美は呻き声を漏らしながらも、必死で耐えていた。目を閉じ、愛する人に処女を捧げているんだと、自分に言い聞
かせることで、なんとか痛みを我慢しようとした。
 奥まで挿入すると赤峰は、朱美の上に覆い被さるようにして、柔らかなその裸体を抱き、そっと唇を重ねた。
 唇を離すと、朱美はゆっくりと目を開き、男の顔を見て囁いた。
「羽賀さん、愛してるわ…」
 茜としてそう言った後、ふと、切ない思いが胸をよぎった。仕事のために、大切な初体験を好きでもない男に捧げてし
まったのだ。今になって強い後悔の念が襲ってきた。
(本当に、好きな人とだったら、よかったのに…)
 朱美の大きな目が潤み、まぶたを閉じると、長い睫の間から大粒の涙があふれ出る。それをカメラがアップで捉え
た。
 赤峰は朱美の胸を揉み、乳首を口に含んだ。その先端のつぼみを舌で転がしながら、腰を繰り出す。
「…いっ、いた…あっ、ああ…」
 朱美は、赤峰の太い怒張が擦れるたびに苦痛に顔を歪め、彼の肩に手をまわして必死にしがみついてくる
「…や…、やさしく…して…」
 やっとの思いでそう言ったが、赤峰の動きは止まらず、ピッチを速めて腰を前後させる。朱美の身体が弓なりにのけ
反った。喘ぎ声がひときわ大きくなる。だんだん痛みが麻痺していき、違う感覚が膣内で芽生え始めていた。
 赤峰は朱美の胸を鷲づかみにして捏ね回し、乳首を摘まんで押しつぶす。その度に朱美の子宮はキュッ、キュッと収
縮する。
 赤峰は朱美の足を高く上げ、膝立ちになって腰を動かした。赤峰の背後に回ったカメラは、二人の結合部を撮影す
る。愛液に濡れテカテカと黒光りする怒張が出入りするたび、秘孔の柔肉が捲れては砲身を包み込んでいく。赤峰が
腰の動きを早めて、一気に攻め立てた。
「うう…、いっ、うう…、ああぁ…」
 朱美の意識が一瞬遠のいた。痛みからではなく、じわりと湧き起こる快感に思わず声が出る。赤峰が朱美の腰を掴
み、たてつづけに揺さぶった。その瞬間、赤峰の精液が朱美の中に放たれた。暁監督のこだわりは、コンドームの使
用や膣外射精も認めなかったのだ。
 赤峰は朱美の膣から陰茎を抜き取った。肉棒は破瓜の鮮血にまみれ、先端から白い精液を垂らしている。見ると、
朱美の性器からもドロッとした男の体液が溢れていた。
「よーし、いい絵が撮れたぞっ!」
 会心の笑みを浮かべた暁の声がスタジオに響き、スタッフの拍手が一斉に湧き起こった。
 朱美は、涙と汗でグショグショになった顔を両手で覆った。そして、仰向けになったまま、静かに泣きじゃくった。




 
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