第3章 お目覚めは、元気に体操を!

「おはよう!」
 画面の向こうから、火山朱美がニッコリほほ笑みながら、手を振った。
 すらりと伸びた長い手足。抜けるような白い肌。たわわに実った乳房。くびれた腰に、大きすぎず、しかし張りがある
形のいい尻。彼女は、抜群のプロポーションを白いレオタードで包んでいる。
 都内の大学に通う松北高宏は、ワンルームタイプの下宿の部屋で、「鼻の下を伸ばす」という表現がぴったりの表情
でテレビを見つめていた。
(いいなぁ、朱美ちゃん、サイコーだよな…)
 心の中で繰り返し、高宏は枕元の写真集をチラっと見た。もちろん、朱美の写真集だ。出版されたその日に手に入
れ、それ以来、毎日飽きることなく眺めている。そして、それを見ながら妄想を膨らませ、自慰行為をするのである。
 空想の中で朱美は、サクランボを思わせる唇で彼のペニスをしゃぶり、彼のために全裸になり、恥じらいながら脚を
開いてくれるのだ。



 やがて、テレビから軽快な音楽が鳴り出した。歌っているのは、風見清香だ。高宏はテレビを食い入るように見た。
 音楽に合わせて、朱美は張りのある腰を振り、かもしかのような足で軽やかにステップを踏む。豊かな乳房が上下左
右に大きく揺れる。
 汐理が「ニュース・タイム」のレポートで、仕事帰りのサラリーマンの人気を集めているのと対をなすように、朱美の方
は、朝のワイド番組「パッチリ・モーニング」の「パッチリ体操」が大きな話題となっていた。
 グラビアアイドル・ナンバーワンの呼び声が日増しに高まっている火山朱美が、自慢の乳房を揺らしながら、ヨガやス
トレッチ、そして体操をするのだ。
 高宏だけではなく、全国でこれを見てから通勤、通学をするのが朝の日課になっている男性が急増していた。

 スタジオで体操する月曜日から金曜日までと違い、毎週土曜日の放送は、朱美が視聴者の家を訪問し、一緒に朝の
体操をする企画になっている。
 テレビ画面に「7:00」の表示が出ると、ブレザータイプの制服姿の朱美が訪問先を訪れる様子が映った。今日の訪
問先は学生街のワンルームマンションである。階段を昇り、廊下を通る朱美をカメラが追いかける。
 朱美が目指す部屋のドアを静かに開け、足音を忍ばせて入って行く。オーディオやパソコンなどの機械が並び、本や
CDなどが雑然と置いてある部屋は、いかにも若い男の部屋らしい。部屋の主は、奥のベッドで布団をかぶって寝てい
るようだ。壁には、赤いビキニを着た朱美の等身大のポスターが貼られていた。
 スタッフの合図に合わせ、朱美は枕元で優しく「おはよう」と声をかけた。
 ボサボサの髪に寝癖をつけて、眠そうな様子で起き上がった青年は、松北高宏である。
「おはよう。」
 朱美が再び声をかける。高宏は驚いた様子で跳び起きた。
 そこで番組のタイトルが出て、テーマ音楽がかかり、画面がスタジオのキャスターに切り替わった。
「わあ、ホントに朱美ちゃんだ!」
 すっかり目が覚めた高宏は、眼鏡をかけて、そう叫んだ。
「よろしくお願いします。」
 朱美がニッコリ笑って、頭を下げる。
「あ、はい、よろしく…」
 憧れのアイドルを前にして、緊張した面持ちで高宏が答える。番組に「訪問希望」のハガキを送ったのは確かだった
が、まさか本当に来るとは思わなかったのだ。
「じゃあ、レオタードに着替えようか。」
 ディレクターの上原は朱美にそう言うと、時計を見ながら、高宏に向かって言った。
「今、スタジオでは朝刊トップの話題をやってます。あと20分したら、こっちにカメラが切り替わるんですが、ロケバスに
戻って着替えていると間に合わないので、ここで着替えさせてもらいますよ。」
「ここで?」
 高宏はそう尋ねて、朱美の方をチラッと見る。彼女は俯いてもじもじしていた。頬が心なしかピンクに染まっているよう
だった。
「ええ。松北さんは、『朱美ファンド』に投資していただいているでしょう。」
 上原の横に立っているごつい感じの男が言った。朱美のマネージャーの炭谷である。
「は、はあ…」
 言われて高宏は、先日、ファンクラブの会報に載っていた「朱美ファンド」を買ったのを思い出した。朱美を応援するた
めに、活動資金をファンから集めるという企画で、彼女の熱烈なファンである高宏は迷うことなく、その週にもらったバイ
ト代を全て注ぎ込んで買ったのだった。
「これは、いわば『株主特典』みたいなものですよ。朱美が着替えるところを見ていてください…、さあ、朱美、急いで着
替えなさい。」
 炭谷に命じられて、朱美は無言のままブレザーを脱いだ。
 ATプロは潤沢な資金を誇っており、特段、アイドルを売り出す活動資金に困っているわけではない。むしろ、「朱美フ
ァンド」を発行したのは、「アイドルの証券化」によって、「朱美は自分のアイドルなんだ」というファンの意識をくすぐろう
という、プロモーション戦略であった。
 しかし、それは思わぬ副産物を生んだ。勝気な朱美は、スター・ハント出身者に科せられたセクシャルな活動に強く抵
抗していたのだが、「ファンド」を発行し、出資金が3億円以上集まると、それが彼女の足かせになったのだ。泣いても
わめいても、炭谷から「それなら、今すぐ3億円を集めてもらおう」と怒鳴られると、普通のサラリーマン家庭に育った彼
女にはどうしようもないのである。自ら大金を稼げるスターにならない限り、どんな恥ずかしいことをさせられても、あき
らめて事務所の言うとおりにするしかないのであった。
(あっ、ノーブラだ!)
 豊かな乳房が白いブラウスの中で小さく揺れている。手で胸を庇っているために乳首が映っている様子を見ることは
できなかったが、下着の線が映っていないことからも、朱美がブラウスの下に何もつけていないのは明らかだった。高
宏は、自分の股間に熱い血液が集まってくるのを感じた。
 続いて朱美がスカートを脱ぐ。高宏のペニスは痛いほど大きく膨らんだ。朱美はパンティも穿いておらず、既にブラウ
ス一枚を身につけただけの格好になっているのだ。なんの変哲もない白いブラウスが、このうえなく鮮烈に感じられ
た。
「15分前です!」
 ADの声が響く。
 朱美はブラウスのボタンを下まで外し終わったが、脱ぎ捨てるのをためらっている。 これを脱いだら、彼女が身につ
けている物は何も無くなる。はだけたブラウスの前を手で合わせる朱美に、上原の指示が飛ぶ。
「急げ、間に合わないぞっ!」
 朱美は思い切ってブラウスを脱ぎ捨てた。
「せっかくだから、松北さんに体を見せてあげよう。手を下ろして…。」
 炭谷がすかさずそう言い、朱美は胸と股間を覆っていた手を離す。



(うおおっ、朱美ちゃんの、生ヌードだ!)
 高宏の心臓は今にも破裂しそうだった。目の前で朱美が両手をだらりとさげ、目を閉じていた。理想的な形をした豊
かな乳房と、手入れが行き届いた黒い翳りが剥き出しになっている。脚も、腰も、尻も、瑞々しく引き締まって光沢があ
り、無駄な肉はまったくついていない。とびきりの美術品と言ってよい裸身であった。
(きれいだなぁ…)
 高宏はポカンと口を開けて、恥ずかしそうにうつむく朱美をじっと眺めていた。憧れのアイドルが自分の部屋にいる。
しかも、一糸まとわぬ姿で目の前にいるのだ。その手は知らず知らずのうちに、自らの下腹部をさすっている。
「おや、松北さん。興奮してしまいましたか。困ったな、その状態で放送するわけにいかないし…」
 上原がそう言うと、炭谷が朱美に命令した。
「仕方ない。朱美、松北さんのオチ×チ×を静めてあげなさい。レオタードを着るのはその後だ。」
 言われて高宏は、夢中でパジャマのズボンとパンツを下ろす。
 恨めしそうに炭谷を睨んだものの、朱美は無言のまま、ベッドに腰掛けた高宏の前に跪いて、その陰茎を軽く握っ
た。掌の中で猛りきったそれはとくん、とくん、と脈打っている。朱美は壊れ物を扱うような慎重さで、ペニスを握った両
手を上下に動かした。
「い…、いいんですか、こんなことしてもらって。」
 うわずった声で高宏が尋ねる。
「ええ。松北さんは、それなりの金額を出資していただきましたからね。新たに『株主』になっていただいた方への特別
サービスですよ。…ほら、朱美、オッパイでしてさしあげなさい。」
 いかつい顔の炭谷が精一杯の笑顔でそう言った。
 朱美は、高宏の太腿の間に身を投げ出すようにして、豊かな双乳で松北の男根を挟み込むと、ゆっくりと擦っていく。
「そのかわり、内緒にしておいてもらわないと困りますよ。何せ、これからトップ・アイドルに成長する娘なんですから。」
「も、もちろんです…」
 天にも昇る思いで高宏がうなづく。
「あと10分で体操です。」
「よし、松北さんのパジャマが汚れてはいけないから、フィニッシュは口で。出された物は、全部飲み込んであげなさ
い。」
 あと10分で終わらなければ、全裸でフェラチオをしている姿を放送されるかもしれない。そう思って覚悟を決めた朱
美は、思い切って高宏のモノを口に含んだ。寝起きの男性自身が放つ異臭が口内に充満するのも構わず、頭を上下
に振って必死に肉棒を刺激する。
 根元が唇で丸くキュッと締め付けられ、熱い息が高宏の股間をくすぐった。しゃぶっているうちにペニスは一層大きく
膨れていく。
「き、持ちいいですか?」
 朱美は一度顔を上げ、上目使いに高宏を見つめた。
「はぁ…、はぁ…、すっごく、いいです。」
 朱美は再びペニスを口に含んだ。クチュクチュと舌が蠢き始めた。ぎこちないながらも懸命な朱美の奉仕に、高宏も
溶けてしまいそうな快感に全身を貫かれ、呻き声を漏らしている。
「ニュースが終わりました。もうすぐ、体操です!」
 ADの声に、朱美のフェラが一層激しさを増す。夢にまで見たアイドルに、この上ない奉仕を受けて、高宏は自らも腰
を動かしながら高まっていく。
「あっ…、おぉっ…、朱美ちゃんっ!イ…イクっ!」
 高宏はたまらず、激しく腰を突き出す。朱美が頬の内側の粘膜で彼の肉棒を擦りたてる。
「うう、うぁぁぁ…」
 情けない呻き声をあげて、ガクガクと震えながら高宏が達した。
「ん!…んぐっ!…んんっ!」
 ドクンドクンと肉棒が脈打ち、大量の精液が朱美の喉を叩きつけ、口の中に溢れかえった。
「んくぅ…」
 朱美は苦しそうな声を漏らすが、必死に白濁を飲み込んでゆく。
「あと5分で、オンエアです!」
「さあ、レオタードに着替えるんだ。」
 朱美が大急ぎで、羞恥に染まった体を白いレオタードで包み込んだ、ちょうどその時、カメラが、切り替わった。レオタ
ードに包まれた乳房がアップになる。
(あれで挟んでもらってたんだ…)
 モニター画面を見て、高宏はそう思うと、また股間が固くなっていくのを感じた。
 頬を上気させたままで、朱美が体操を始めた。後ろを向き、体を前に折るようにして前屈運動をする。レオタードに包
まれた形のいい尻が高宏の前に突き出された。今射精したばかりの高宏の男根がまたムクムクと膨らんでくる。
(やばい、まただ…)
 朱美と並んで体操する間、高宏の興奮はいっこうに納まる様子を見せなかった。高宏は股間ができるだけ目立たな
いように、こっそりパジャマのズボンを少しずらしながら体操をしていた。

 「パッチリ体操」のおかげで、グラビアアイドルとしてのセクシーさに加えて、健康的なお色気に、明るく活発という朱美
のキャラクター・イメージが広く浸透し、ファン層もひとまわり広がった。
 教材用のストレッチや陸上のフォームビデオ集にも朱美が起用され、近々市販されることになっているが、そういった
物ですら予約の申込みが殺到している。
「よし、イメージガールはこの娘にしよう!」
 あるオフィス・ビルの一室で「パッチリ体操」の放送を見ていた男は、そう声をあげた。30歳台後半の見るからにタフ
で、野心に溢れた男、鳳龍之輔。あるベンチャー企業の代表者である。 鳳は、すぐさま部下を呼ぶと、手に入る限り
の「朱美ファンド」の取得を命じた。
 


 
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