Σ・ラボ制作部の会議室には、風見清香プロジェクトに関わる面々が集まっていた。プロデューサーの土本創児、トー リー・プロ代表の十李菅人を初め、十数人のスタッフが顔を揃えている。 そこに、マネージャーの伊吹と一緒に清香が入ってきた。ミニのフレアスカートに、薄い黄色のカーディガンと白いブラ ウスをうまく重ね着している。派手さはないが、上品で、女の子らしい可愛いスタイルだ。 「おはようございます。遅くなってすみません。」 清香の元気なあいさつに、スタッフたちもにこやかにあいさつを返す。どんな時でも、明るく丁寧に挨拶をする清香。こ れが、彼女がスタッフたちに好かれる所以である。 清香が会議室の中央、土本と十李の間に座ると、ボサボサに髪を伸ばしたひょろっとした男が立ち上がった。 「それじゃあ、来週発売予定のプロモーションDVD、『many colors』の試写会を行います。」 彼は映像作家で、今回のプロモーションDVDを撮影したディレクターの東風平昌史である。貧相な見かけによらず、 新進気鋭のクリエーターとして注目されている男だ。 東風平の合図で、スタッフの一人がDVDプレイヤーの再生ボタンを押すと、会議室に設置された大型ディスプレイに Σ・ラボのロゴが映し出された。 「many colors」というタイトルが出た後、スタッフと一緒に楽しそうに衣装デザインに参加している清香が映る。 「女の子にとって、衣装は魔法のようなもの、衣装が変わると、人格まで変わっちゃうかも…」 清香のナレーションが流れ、ズームアップして、彼女一人を捉える。 「東京の学校の制服って、ホント、可愛いでしょ。私が着てた金沢のなんて…、ねぇ。」 そう言って、屈託なく笑う清香。あるアイドル雑誌が「ずっと見ていたい笑顔」と書いた、まさに絶品の微笑みだった。 カメラが切り替わって、ブティックにある試着室のような物が映される。 白いカーテンを開けて出てきた清香は、いかにも「お嬢様学校」といった感じの制服を身に着けていた。クラシックな 青のジャンパースカートにボレロ、頭に被ったベレー帽がたまらなくキュートだ。 「ほう…」 映像を見ていたスタッフの一人がため息ともつかない声を漏らす。見ている誰もが初恋のときめきを思い出し、胸が キュンとなってしまうような、そんな可憐な清香の姿だった。 どこかのミッション系の学校でロケをしたのだろう。蔦のからまる校舎の脇を、清香が歌いながら歩いていく。アルバ ムの一曲目に入っている「伝えたい気持ち」のプロモーションビデオだ。少女系の切ない片思いの歌に、清楚な制服を 着た美少女・清香と落ち着いた秋のキャンパスの風景がピッタリだった。 授業で熱心にノートを取る清香、友達と楽しそうに笑う清香、本を片手に憂い顔で窓の外を見やる清香…、学校生活 の場面がカットで挟まれ、女子高生の学園生活を見つめている気分にさせる。片思いの男子の視線に紅潮し、思い切 って告白する場面では、会議室のあちこちでため息が漏れた。 曲はエンディングに入り、画面にはレンガ造りの石段を昇る清香が映った。ミニスカートからスラリと伸びた脚を、低 めのカメラアングルが追いかけていく。スカートから覗く若々しい太腿のまばゆい白さが、男たちの目を惹き付けた。 「あの脚、撫でてみたいよ…」 スタッフがわざと清香に聞こえるように言う。画面を見つめる清香がキュッと眉根を寄せ、嫌そうな表情を浮かべるの を楽しんでいるのだ。 「おっ、見えた!」 誰かが思わず声をあげた。清香が石段を昇り切った時、スカートの裾から純白のパンティーがはっきりと見えたの だ。 「ホントだ!」 「こりゃあ、お宝映像だな!」 スタッフたちが興奮した声をあげる。これまで、この何倍も過激なことを清香にさせてきたスタッフ達が、パンチラを見 たくらいで興奮するというのも妙なものだが、あまりの清楚な女子高生ぶりとの対比で、下着が見えた瞬間は、ちょっと した衝撃だったのだ。 「そうです。今回のDVDでは、エロチックな部分もあえて見せるようにしました。アイドルの枠を壊さないギリギリのエロ チシズムを満載した、実験的な意欲作です。」 土本が自慢げにそう解説した。 「カット!」 画面が変わって、ディレクターの声が響く。どうやら今のプロモーション映像の撮影風景のようだ。エンディングの石段 を昇るシーンを撮影しているのだ。 「今のは、少し陰になってパンティが見にくいな。少しスカートを上げて、もう一度やってみよう。」 指示しているのはディレクターの東風平である。 「…はい…」 清香が複雑な表情で返事をして、階段を降り、東風平の指示するままに再び階段を昇って行く。スカートの丈は膝上 20センチ以上になっており、石段の真ん中まで昇ったあたりから、スカートの中が完全に見えてしまっている。真っ白 い太腿の付け根に清楚な白いパンティが露わになり、一段昇るごとにキュッとしまった尻の肉山が柔らかく揺らめく。清 香はスカートが気になって仕方ない様子だが、手で隠すことは許されない。 「どうだ?」 「パンティ丸見えですよ。」 「ちょっと、エッチ過ぎて、いやらしいんじゃないですか。」 スタッフの意見に、東風平も首をひねる。 「そうだな…、じゃあもう一度だ。」 「…はい…」 そう返事はしているものの、アップになった清香の顔は、泣きべそをかいているように見える。 試写室の清香は、羞恥で顔面が真っ赤に染まった。 「これは何かね?プロモーションDVDの映像なのか?」 何度も何度も階段を登らされ、スカートの中を覗かれる清香の映像を見て、十李が尋ねた。 「これは、ファンクラブの特別会員限定サービスの、メイキング版です。ここでは、続けて見ていただきますが、市販され る物には、メイキング部分は入っていません。」 マネージャーの伊吹がボスに説明する。 「そうか、それなら良いだろう。」 十李は納得したような表情を浮かべた。 ふたたび、試着室が写る。清香が様々な衣装を着て、そのイメージに合わせた世界が展開するというのが、このDV D全体の造りになっているようだ。 「新曲の振り付けの練習は、こんなレオタードで…」 ピンクのレオタードを着た清香がそう言い、続けて、スタジオの中で懸命に踊る清香が映った。曲も「Wanna be a star!」、夢のために頑張る女の子への応援歌である。 「おっ!」 アップになったところで、何人かのスタッフが声をあげた。清香はノーブラらしく、乳房の形がはっきりとわかり、胸の 尖端にはプックリと突起した乳首が映っている。 「おおっ!」 さらに声があがる。股間には明らかな縦の筋が刻まれていた。ウエストから腰まわりを見てもラインが一切見えないと ころからすると、下着もサポーターも着けずにレオタードを着ているようだ。 何度も振り付けを確認し、ステップを踏む清香をカメラがピッタリと追いかける。ブラをつけていないせいで、張りのあ るバストがたわわに波打った。レオタードの生地がぴっちりと股間に食い込んで、神秘の丘の柔らかなふくらみが悩ま しい。成熟する前の少女に特有の新鮮なプロポーションがなんとも官能をくすぐるのだ。 「グラマーさから言えば、火山朱美に負けるけど、清香って結構、いいプロポーションしてるだろ?」 ディスプレイを見ながら、自分の彼女を自慢するかのような口調でそう言ったのは、スタイリストの嵐山晃広である。 続いてメイキングのシーンが始まった。 レオタード姿の清香の前に嵐山がいる。普通、女性アイドルには女性のスタイリストがつくものだが、清香には嵐山が ついているのだ。 「両手を頭の上に上げて…」 清香が指示に従って手を上げると、嵐山は彼女の脇の下から脇腹にかけて、指先で撫でるよう触る。 「んんっ、いやっ、あんっ!」 清香は最初、必死に耐えていたが、何度か脇の下を責められると、くすぐったさに身体をよじった。 「へへっ、清香…、感じやすいんだな。」 スタッフの一人が、ディスプレイを見ている清香に、からかうように言った。 「………。」 無言の清香は、粘りつくような視線が集まるのを感じて顔から首筋にかけて真っ赤になっている。スタッフはその潤ん だ目を見て、思わず股間を熱くした。 「動かないように…」 画面の中では、嵐山がそう言って、清香の胸のふくらみを両手で包み込んだ。 「あっ、ちょ、ちょっと…、あ、いやっ!」 突然胸を触られ、狼狽した清香は、頭の上に上げていた手を下ろそうとした。 「こらっ!動いちゃダメだ!」 嵐山は清香を叱りつけると、胸の膨らみを底から持ち上げるようにして、掌で両乳房を包み込んだ。 「ちょっと、オッパイの形を整えないと、ダメだな。」 そう言うと、嵐山はレオタードごと胸をゆっくりと揉み続ける。 「んっ…、んんっ!」 清香は目をきつく閉じ、唇を噛みしめて乳房への攻撃が終わるのを待った。しかし、嵐山の手は執拗に清香の胸を 揉み続ける。 「それに、もっと乳首を立たさないと…」 嵐山は布地を調べるふりをしながらそう言うと、乳首を人差し指でくりくりと転がした。 「あっ!そこはだめぇっ!」 激しく身体を反らして反応する清香。しかし、嵐山は容赦なく、態勢を変えて後ろから抱きすくめるようにすると、敏感 な乳首を指先で摘まんで刺激していく。 「あっ…、あっ…」 清香が小さな喘ぎ声を立て続けに漏らしている。最初、乳首の立ち上がりは中途半端だったが、みるみるうちに硬く なり、レオタードの生地にポッチリと浮かび上がるのが、画面にアップで映し出された。 「おっ、乳首が立った!」 映像を見ていたスタッフの声が会議室に響く、自分の体の反応が見世物にされている恥ずかしさに、清香の哀しげな ため息が漏れる。 「よし、胸はこんなもんか…」 ディスプレイに映る嵐山は、胸の膨らみを手でユサユサ揺すりながら、満足そうな顔をしている。 「次は股間の部分だ。うーん…、もう少し食い込みが欲しいな…」 嵐山はそう言うと、レオタードの生地を引っ張って、強制的に食い込ませる。 「これでも、カメラで撮るときちんと映らないだろうな。きちんと、食い込ませておこう…」 嵐山は下腹部に手を当てると、清香の割れ目に沿って指で撫でるように布地を押し込んでゆく。 「いやっ、やめて!」 布越しに卑猥にクレバスをなぞられた清香は、腰を振って逃れようとするが、嵐山の指は離れない。 割れ目のに押し つけられ、レオタードの生地ごと、奥へと潜り込んでいく。 「うーん、こんな感じかな…」 そう言いながら、嵐山はデルタ全体をいやらしく撫でまわしていく。 「あっ…、駄目っ…」 清香が身をよじった。 「おいおい、あんまり弄って、清香がレオタードを濡らしちゃったら、困るぞ。」 ディレクターの東風平の声で、やっと嵐山は清香の体に触れるのをやめた。 清楚な白いワンピース、ファンタジー世界にありそうな中世のお姫様風ドレス…、衣装が変わる度に違うカラー、違う 世界を見せる清香。そして、どのプロモーション映像にも、今回のDVDのコンセプトであるエロチックなシーンが盛り込 まれていた。ワンピースは夕立に濡れて、下着を浮かび上がらせ、ドレスは腰まであるスリットで、曲に合わせて舞う と、太腿やお尻が丸見えになるといった具合である。 男たちは、エッチな場面になる度に、チラッ、チラッと清香の様子を盗み見た。 清香は最初のうちは耳まで真っ赤になりながらも、堅い表情で画面を見ていたが、やがて、とても見ていられないとい う様子で瞳を閉じ、恥かしそうに俯いている。 「自分のプロモーション・ビデオなんだから、ちゃんと見てないとダメだぞ。」 伊吹が厳しい口調で言い、清香はなんとか顔を上げたものの、真っ赤になった顔を弱々しく横に振った。 トランスの激しいビートに乗せて、画面の中の清香がアンドロイドのような銀色のボディスーツで登場した。「サイバー・ ビート」という曲のプロモーション映像である。 つんと突き出したバスト、絞り込まれたウエスト、張り出した腰にキュッと締ったヒップ…。照りを帯びたストレッチ素材 の生地はピッチリと張りつめ、優美な体のラインをありありと浮かびあがらせている。裸身と変わらない、いや、それ以 上の生々しさだ。 「セクシーなデザインでしょう?」 デザイナーの道上忠博が得意げに言う。 ハイレグは左右の腰骨の上まで切れ込み、美しい脚線が伸びている。詰め襟から肩と胸元にかけてと、左右のウエ ストからVゾーンに流れる赤いラインが、特撮ヒロインのコスプレ風でもある。剥き出しになった肩先から二の腕にかけ ての、女っぽく優美なラインもたまらない。ピチッとフィットしたボディスーツが尻の肉感をムッチリと浮き立たせ、形の良 い尻がステップを踏むたびに官能的な揺れを見せる。 男たちの欲望にたぎった視線が画面に映る清香をなめるように見ている。 曲に合わせて、清香が歌いながら踊るたびに、伸縮素材の布地が身体のラインをこれでもかこれでもかと強調する。 形の良い乳房が揺れ、ウエストからヒップにかけてのラインがキュッ、キュッと際立つ。 2番が終わって、間奏に入った時、柱の影に清香の姿が一瞬消えた。 「この衣装は、もっとセクシーになるんですよ。」 道上が言った。 次に彼女が現れた時、銀色のボディスーツは大きな変化を見せていた。胸元は大きく、お臍の下あたりまでくりぬか れ、乳房が半分ぐらい見えてしまっている。脇の両サイドも腋の下から腰のあたりまで開いている。くるりと後ろを向く と、背中も大きく空いて、お尻の部分はTバックになっていた。 「オーッ!」 「これは、大胆だなぁ!」 スタッフが口々に言って試写室の清香を一斉に見た。清香はいたたまれない思いを感じながら、刺さってくる視線にじ っと耐えるしかなかった。 サビの繰り返しの部分で、潤んだ目と蕩けたような表情の清香が、悩ましげに腰を振って踊る。さらに場面が変わる と、清香は床に座り込んで、胸を揉んだり、股間に両手を挟み込むような仕種を見せていた。目を閉じ、愛らしい顔立 ちが快感とも苦悶ともつかぬ表情に歪んでいる。大胆な衣装とあいまって、見ている男たちは一様に、股間の物を勃起 させていた。 「これは色っぽい…」 「ゾクゾクするなぁ…」 口々に言うスタッフたちに向かって、道上が言った。 「実はこの衣装、もう一つ仕掛けがあるんですよ。」 その仕掛けは、メイキング編であきらかになった。 「これを見てごらん…」 画面の中の道上が、衣装を裏返しにして、その胸と股間の部分を示した。清香が恐る恐る覗き込む様子が映る。アッ プになったそこには、プラスチックの突起のような物が付いていた。 「これ、何だと思う…?」 道上が卑猥な笑いを含んだ声で尋ねている。清香の怯えたような表情から、彼女が答えを理解したことがわかる。 「そう、この突起、清香の一番感じる部分に当たって、リモコン式で振動するようになってるんだ。さあ、着替えてごら ん。」 「いやっ!嫌ですっ!」 今にも泣き出しそうな顔で、激しく頭を振る清香。しかし、画面が変わると、銀色のボディスーツに着替えた清香が映 る。 「あぁっ…、んっ…」 突然、画面の清香が声をあげ、胸を押さえて前かがみになった。衣装に取り付けられた突起が、乳首に振動を送り 始めたのだ。清香は必死に体をよじるが、体にぴったりのボディスーツに取り付けられた淫具からは、そう簡単には逃 れられない。 「んんっ!ああぁ…」 ボディスーツの攻撃を少しでも抑えようと、胸を押さえたり、乳首と布地の間にわずかでも隙間を開けようとする動作 が、むしろ自ら乳房を揉みしだいているように見える。 「はンっ!…やっ…」 清香の身体がぴくんっと跳ねるような動きを見せ、今度は股間を押さえてしゃがみこんだ。 「こういう仕掛けです。胸の突起は乳首に、股間の突起はクリトリス、膣口、肛門の3か所にちょうど当たるようについて います。それに、リモコンで強弱を調整できるようになってましてね。ちなみに今は一番弱くして振動させていますが、見 ていてください、徐々に強くしていきますよ。」 ディスプレイを指さしながら、道上が他のスタッフたちに説明する。 「次が最強になったところです。」 「やめてっ!…あっ…、いやっ!…あっ、…あぁっ!」 清香は雷に打たれたように身体を跳ね上げ、気が狂ったように身悶えして声をあげる。強い刺激が体中の性感帯を 駆け抜け、彼女を責め立てる。その両手は、反射的に胸や股間を這い回っていた。 会議室の清香はいたたまれなくなり、とうとう目を閉じ、両手で耳を塞いでしまった。 「ひいいい!だめぇ…、い…、いやあぁぁ!」 清香が絶叫して体を痙攣させる。どうやら絶頂に達したらしい。 「さあ、撮影だ。」 東風平の声がした。スイッチが切られ、床にペタンと座ってハアハアと肩で息をしている清香を、スタッフが引きずるよ うにして立ち上がらせた。 スタジオに「サイバー・ビート」のイントロが流れ、頼りない足取りで清香がステップを踏み始めた。 |