ATプロモーションのオフィスにて
トントン。
社長室のドアをノックして、火山朱美のマネージャー炭谷猛郎が入ってきた。
「社長、朱美のファースト・イベントが大成功したおかげで、いくつか仕事のオファーがありました。かたっぱしから受け
てもいいんですが、売り出し方に関わってくるので、どれを受けたらいいか、ちょっと相談させてください。」
ATプロモーション社長Alfred Tylerは、本革をはった椅子にもたれて、炭谷の顔を見た。
「朱美は、いきなりの売り込みよりも、じわじわと周りを固めるのが良いだろうな。
いきなり売り込むと、一部の男性ファンの慰み者で終わってしまいやすいだろう。」
そこまで言って、Tylerは、『まぁ、それはそれで面白いんだがな…』と呟き、ニヤリと笑った。そして、炭谷が恭しく渡し
たメモに目を通す。
1.コマーシャル … スケジュールの都合で今は1つしか受けられません。
チョコレート菓子(グリース製菓)
口紅(流星堂化粧品)
航空会社のキャンペーンガール(国民航空)
清涼飲料水(サンシマイ株式会社)
2.バラエティ番組(FNC) … 結構人気のある番組です。2枚目半をめざすなら、いいでしょう。
3.ドラマ(ATV) … まだ、ちょい役です。でも、女優をめざすなら顔つなぎにはなると思います。
4.写真集の発行 … グラビアアイドルの王道をいくなら、ここで写真集を出しておくといいと思います。
5.男性誌のグラビア(『ステディボーイ』) … 今度はセミヌードでと言ってきてます。セクシー路線でいくならいいかもし
れません。
Tylerはメモを指さしながら言った。
「そうだな、バラエティ番組はともかく、ドラマはまだ早い。だからと言って、いきなり写真集に走るのも、安く見られるか
ら問題だ。男性誌のグラビアで、固定ファンを掴みつつCMに出て一般ファンを手に入れバラエティ番組のゲストで人気
に火を付ける作戦で行こう。しばらくは、間違ってもレギュラーの話は取ってくるなよ。その方が業界内部に広く”売る”
事が出来るからな。」
Tylerは再びニヤリと笑った。
「写真集は、その後、大々的に発売しよう!!いきなりミリオンヒットにさせるんだ!!まぁ、ドラマは人気が出た時考え
ようじゃないか。ただし、出演させる時は、いきなり主役に出来るように、レッスンと根回しをしておこう。」
そして、炭谷の目をじっと見ながら言葉を続けた。
「ともかく朱美のキーワードは「いきなりTOP」でいく。しばらくは、お前のスケジューリングが重要になる、たのんだぞ炭
谷!!」
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