第11話 オンエア


「いやあ、汐理ちゃん、ホントに助かったよ」
 現場に来ていた朱美のマネージャーの焼津が、拝むような仕草を見せた。
 朱美の行方がわからなくなってから、すでに3日が過ぎようとしていた。
 事務所は当初、病気療養中だと発表したが、情報管理に甘さがあった。いつの間にか芸能マスコミにかぎつけられ、
テレビのワイドショーやスポーツ新聞などは、一斉に「火山朱美、失踪か!」と報道した。
 仕事の大部分は、同じ事務所の汐理が代役を引き受けることになり、汐理は大忙しになった。
 仲良しの朱美のことは心配だったが、これは汐理にとっては幸いだった。西郷も島津も、過密スケジュールの中で汐
理を気ままに呼びつけることは、さすがにできなくなったからだ。
「じゃあ、これに着替えてね」
 控え室で焼津から渡されたのは、セルリアン・ブルーのビキニの水着だった。都心の有名書店でのトーク・イベントな
のに、何の必然性もなしに水着が渡される。それに違和感を感じながらも、汐理はビキニに着替えた。
「えっ…」
 鏡を見て、汐理が眉をひそめた。デザインはそれほど過激なものではないが、生地が薄く、パッドが入っていないせ
いで、乳首がポッチリと映ってしまっている。
「あの…、焼津さん!」
 片手で胸を隠しながら汐理はドアを開け、焼津を呼んだ。
「胸が見えちゃうんですけど…」
「どれどれ、ちょっと、見せて」
 汐理は躊躇したが、あまりに当然のことのように言う焼津に、抵抗するのも変に思われるような感じがして、胸を隠し
ていた手を下ろす。
「………」
 胸の膨らみをじろじろと見る焼津の視線に、汐理の耳たぶが真っ赤に染まっていく。
「そうだね、もうちょっと見えてもいいかと思うけど、まあ、それぐらいの方が、ハプニングっぽくていいかな」
 焼津が事も無げに言う。どうやら、これも狙った演出らしい。こんな水着で大勢のお客さんの前に立つことを考える
と、顔から火が出そうな気がして、一気に気が重くなってきた。
「そうだ、割れ目もしっかり食い込ませておいてね!雑誌やネットのお宝画像に、バンバン投稿されるように!」
 そう言って、焼津は慌ただしく、控え室から出て行った。
 汐理はため息をついて鏡に向かった。できれば帰ってしまいたかったが、朱美の代役だと思うとかえって、きちんと仕
事をしなければとの思いが強くなる。
 汐理は、股間に手を持っていき、陰部の形が浮き出るよう、しっかり布地を食い込ませた。
 自分だけでなく、朱美の仕事もまた、普通のアイドルとは少し様子が違うようだ。

 イベントが終わったその足で、汐理はニュース・タイム出演のためにTBC放送に移動した。
「おはようございます!」
 挨拶しながら廊下を小走りに駈ける汐理に、テレビ局のスタッフが声をかけてくる。
「汐理ちゃん、最近、急に女らしくなったよね」
「えっ…、あっ、そう…ですか…」
 どぎまぎした汐理が、しどろもどろに答えた。
「スタイル良くなったよ、胸とか腰の辺りなんか特に…」
 汐理は真っ赤になった、身体の変化に気づかれたのだろうか。西郷や島津と毎日のように肉体関係を持つようになっ
た影響が、周りから見てもわかるぐらい、自分の体に刻印されているのかもしれない…。
 望んでそうなったわけでないだけに、相手が褒めているとわかっていても、恥辱と悲しみだけが胸にこみ上げてくる。
「なんか演技に余裕が出てきたよね。男性相手でも気後れしてないし…」
「ありがとうございます…。これから、打ち合わせがありますので、失礼します…」
 汐理はそう言うと、逃げるようにして会議室へ駆け込んだ。
 会議室には、すでにニュース・タイムの出演者と主立ったスタッフが全員、集まっていた。
「おはようございます」
 礼儀正しく挨拶をして、いつもの席に着こうとすると、いきなり島津に呼び止められた。
「汐理、今日は、ここに座りなさい」
 島津が示したのは椅子ではなく、彼の膝の上だった。オフの時間に呼び出せない分、仕事で会った機会に、汐理の
身体を存分に楽しもうと考えているらしい。
「はい…」
 スタッフの視線を気にしながらやって来た汐理を、島津は膝に座らせて、後ろから抱きしめた。その手はブラウスの胸
を鷲掴みにし、いやらしい手つきで揉み始める。
「…さあ、始めようか」
 二人の痴態を見て見ぬふりをするように、プロデューサーの山本が言った。彼は島津の大学の後輩にあたり、この二
人の上下関係が、専制君主としての島津の行動を容認させる一因となっていた。
「では、今日のトップニュースですが…」
 ディレクターが番組の流れを話し始めた。
 打ち合わせが始まっても、島津の手は汐理の胸を揉み続けている。しかも、服の上からでは飽きたらず、汐理のブラ
ウスのボタンをはずし、手を潜り込ませてきた。
「うっ…」
 汐理が眉根を寄せる。島津の手がブラジャーをズリ上げ、指先で乳首を撫で始める。汐理の頬が赤らみ、呼吸が荒く
なってくる。
「あっ、だめです…」
 汐理の狼狽えた声が漏れる。島津の手がスカートの中へ入り込んできたのだ。慌てて閉じようとする太股を、島津が
ピシャリと叩いて開かせた。
「…、ニュースに対するコメントですが、トップ・ニュースは島津さんの解説をいただきます…」
「うむ」
 尊大に頷きながら、薄布越しに股間を撫で回していた島津の手が、パンティの中に入ってきた。指が割れ目をなぞ
り、大陰唇を開く。中指が膣に挿入されていく。
「そこは…、ダメっ…」
 汐理が泣きそうな声を漏らす。敏感な肉芽の鞘を剥かれ、露出したクリトリスを親指の腹が軽やかなタッチで揉んで
いるのだ。
「う…ううぅ…」
 鋭い快美感が沸き上がり、汐理が全身を震わせた。
「…ここで、汐理ちゃんのコメントをお願いします…」
 ディレクターの声が聞こえた。
「…えっ、あっ…、すみません、もう一度お願いします…」
 身体を執拗に弄られているため、打ち合わせに集中できず、汐理は何度も、ディレクターに聞き返さなければならな
かった。
「コメントだよ、3つ目のニュースだ。いくらオ××コが気持ち良くても、打ち合わせに集中しないといけないぞ」
 島津がわざとらしく、注意する。言いながらも、その手は、汐理の濡れたパンティの股間部分をずらしていく。
「…すみません…」
 悔しさで思わず汐理の目に涙が滲む。自らも出演する番組の打ち合わせなのに、島津を相手に淫らな行為をしなが
ら話を聞かなければならないのは、真面目な彼女にとっては、これ以上ない屈辱だった。
「…その後のニュースは、『火山朱美、失踪か?』です。ここも、同じオーディション出身の汐理ちゃんにコメントをお願い
いします…」
「はい…」
 そう返事をしながらも、汐理は島津の動きが気になってしかたがない。何かもぞもぞし始めたかと思うと、ズボンの前
を開け、勃起した陰茎を取り出している。その意図を察して、汐理がいやいやをした。
「えっ!無理、無理ですっ…」
「何が無理なんだ…」
 島津がとぼけた顔で尋ねる。その手はそそり立つ肉棒を握り、汐理の亀裂にあてがっていた。
「だって、打ち合わせ中です…」
 汐理が必死で押し止めようとする。しかし、そんな抗議など意に介することなく、島津の手が汐理の腰に回された。汐
理は、腰を揺すって逃れようとするが、その動きがかえって島津の欲情を刺激する。
「んん…、あっ、だめ…、…んっ」
 島津が腰をクイッと前に出すと、亀頭がヌプッと膣口に入った。
「うっ、くうぅ…」
 汐理が押し殺した声を漏らす。十分に濡れた秘孔は男の肉棒を根本まで受け入れていった。
「うっ…、うっ…」
 体内に埋められた肉棒が動き出すと、嗚咽にも似た汐理の声が会議室に響く。
「…えーっと、…スポーツのコーナーですが…」
 二人をチラチラと見ながら、ディレクターが打ち合わせを進行している。しかし、そこにいるスタッフのほとんどが、上
の空になってしまっていることは明らかだった。
「あぁっ…」
 島津の怒張がズンッと強烈な一撃をたたき込む。汐理の肩が、ガクンッと跳ねた。
「どうした?気持ちいいのか?」
 耳元で囁きながら、島津がリズミカルに肉路をえぐる。
「あッ、あッ、あッ…」
 島津の腰の動きに、汐理がつづけざまに喘いだ。島津は、結合部に手を忍ばせ、媚肉を嬲りながら、腰をローリング
させる。
「あん、ああん…、ああん…」
 汐理がたまらず、喘ぎ声をあげた。指で充血したクリトリスを擦り上げると、汐理の膣が島津の怒張を絞り上げる。
 こうなっては、打ち合わせは中断せざるを得ない。戸惑うディレクターに、さすがの山本も苦々しげな表情を見せて、
首を振った。
 射精に向けたラストスパートが始まった。島津が腰を振る度に、バコッ、バコッと肉を打ち合わせる音がする。
「あぁッ!あぁッ!」
 喘ぎ声をあげる汐理の膣がキュッ、キュッと収縮し、島津の怒張を締め上げてくる。汐理が絶頂を迎えそうなのを感じ
取り、島津はピストンの動きを速めた。
「イク時はちゃんとイクって言えよ…」
「あっ、あ、ああ、だっ、だ、だめえええ…い、いい、イクううう…」
 汐理の背中が反り返り、絶頂を告げる声が噴きこぼれた。同時に、島津が汐理の中に精液を放つ。汐理の膣は、最
後の一滴まで男の精液を絞り取ろうとするかのようにピクピクと痙攣していた。
 呆然としているディレクターに、山本が進行を促した。
「…では、今日の特集コーナーですが…」
 ディレクターは咳払いを一つして平静を装い、打ち合わせの続きを始めた。
 汐理は島津に抱かれたまま、俯いて啜り泣いている。その様子が、島津の嗜虐心をかき立てた。
(ふふふ、やっぱり可愛い娘だ。今日はたっぷり可愛がってやるぞ…)
 肉棒を挿入したまま、射精の余韻を楽しみつつ、島津は心の中でそう呟いた。

 シャワーを浴び、メイクを終えた汐理がスタジオに入って来た。
「おそかったじゃないか。早くしないと、本番に間に合わないぞ」
 島津がニヤニヤ笑いながら、そう言った。すでに島津も栃尾貴美アナウンサーも自分の席についている。
 汐理は、自分の椅子だけが、いつものものと変わっていることに気がついた。座面に直径3センチ、長さ15センチぐ
らいのゴム製の突起がついている。その形状は、生々しいほど男性器そっくりだった。
(まさか…)
 汐理は表情を固くして、島津を見た。彼は何も言わず、ニヤニヤ笑いながら、汐理の顔と椅子を見比べていた。それ
が意味するものは、何の説明がなくても明らかだった。
 島津やスタッフが見つめる中で、汐理は一旦椅子に座った後、腰を少し浮かした。そして、パンティのクロッチ部分の
布をずらし、突起を陰部にあてがう。
 しかし、一度腰を下ろそうとしたものの、すぐに中腰のまま顔をしかめた。
「入れる前に、オ××コをよく濡らさないと、痛いだろう」
 島津が意地悪く言う。
「胸を揉んだり、オ××コをいじったりしてれば、濡れてくるだろ?」
 戸惑いを見せる汐理に向かって、島津はいやらしい笑いを浮かべて、そう言った。
(そんなこと、出来るわけがない…)
 人前で自慰行為をするなど、考えただけで恥ずかしくて目眩いがしてくる。ここは、多くのスタッフが見つめている本番
前のテレビ・スタジオなのだ。
「ムリ…、ムリです…、そんなこと…」
 汐理は下を向き、ふるふると首を振った。
「どうした?早くしないと、本番が始まるぞ」
 島津はニヤつきながら、汐理に言った。
「そんな…」
 激しく頭を振ったものの、島津の表情に変化はなく、許してはもらえないとあきらめるしかなかった。
 汐理は俯いたまま、右手をゆっくりと下腹部にもっていった。手のひらで股間を覆い、全体を柔らかく押しながら、目を
瞑った。もう一方の手はブラウスの上から胸を揉む。ブラジャーの布地が尖りだしていた乳首に擦れ、刺激を与える。
「あっ…、ぅんっ…」
 やがて、汐理の口からくぐもった声が漏れ始めた。
 スタッフたちが息を呑んで見つめる。美少女アイドルが羞恥で頬を赤らめながら、胸を揉み、性器を擦り上げる姿は、
最高に淫らなエンタテイメントだった。
「本番、5分前です」
 ADの声がスタジオに響く。
「あぅんっ…くっううっ…」
 鼻に掛かった甘い声が漏れ、腰が微妙に震え出す。高まる声を必死に押し殺そうとする様子が、男たちの欲情を激
しく揺さぶった。
 汐理の呼吸が次第に早くなっていく。ハアハアと息を弾ませながら、むせび泣くような声を漏らす。
「本番10秒前!」
「そのまま本番にいくぞ」
 ディレクターの掛け声とともに、島津の声が聞こえた。
「待って、お願い!」
 汐理はうめき声を漏らして、疑似男根を自らの穴にあてがった。
「5秒前!」
 ディレクターの声がスタジオに響く。
「ううっ…」
 汐理が呻き声とともに腰を落とす。その身体がビクンっと小さく跳ね上がった。番組のタイトルロールが表示されると
同時に、突起が彼女の体内に埋め込まれた。

「人気アイドルの火山朱美さんについて、所属するAT・プロダクションは当初、病気療養中だと発表していましたが、今
日になって、朱美さんの行方がわからなくなっていることを明らかにしました。朱美さんの家族と事務所は、警察に捜索
願いを提出している模様です」
 栃尾アナウンサーがニュースを読み上げると、カメラが汐理に切り替わった。
「朱美ちゃんとは事務所も同じで、大の仲良しなので、私もとても心配しています。もし、朱美ちゃんがこのテレビを見て
いたら連絡して欲しいと思いますし、何か知っている方がおられたら、ぜひ、ご連絡いただきたいと思います。よろしくお
願いします」
 真剣な汐理のコメントでCMに入り、モニター画面が切り替わった。
 それを合図にするかのように、島津がリモコンのスイッチを入れた。椅子のバイブが振動し始めた。
「うっ…」
 頬を真っ赤にした汐理が、非難するような視線で島津を見た。島津は卑猥な笑みを浮かべ、むしろ、リモコンを誇示し
て見せる。
「うっ、ううっ…」
 耐えきれなくなった汐理が机に突っ伏して、くぐもった喘ぎ声を漏らした。椅子の上でもじもじとヒップを振る様子が艶
めかしく、島津のズボンの股間が勃起してくる。
「あっ…んっ…」
 CMが終わって、カメラがスタジオに戻る。映し出された汐理の口が開き、吐息とも喘ぎ声ともつかない声が漏れる。
スイッチは切れていたが、身体をかき回された余韻は、容易には引いてくれない。なんとも艶っぽい表情の汐理が、一
瞬だがテレビに映し出された。
(恥ずかしい…、エッチな顔、放送されちゃったかもしれない…)
 汐理は全身に冷や汗が流れるような気がした。
 しかし、それは始まりに過ぎなかった。島津はその後も、ニュース映像やCMが流れる度、淫らなスイッチを入れる。
「お願いです。もう、やめて下さい…」
 画面がCMに切り替わったのを見た汐理は、こらえきれない、といったように島津に訴えた。
「そんなに気持ちいいのか?」
 とぼけた表情で言いながら、島津がスイッチを入れる。振動が膣内に広がっていく。
「あぁっ、うっ、うぐっ…」
 スタジオには、島津の笑い声と汐理のくぐもった悲鳴が響いた。
「ひっ、ひいい…、ひいい…ううあ!」
 汐理が絶頂の淵まで登りつめた瞬間、バイブレータは動きを止めた。CMが終わり、スタジオにカメラが戻ったのだ。
そんなことが、何度となく繰り返される。
 特集のコーナーになり、長めのVTRが流れ始めた。
「さあ、思いっきり感じていいぞ!」
「はあっ、あああ…、いやあ、だめえ…」
 汐理は顔をビクッと反らせ、切羽詰まった声をあげた。アクメの前兆が迫ってきたらしい。艶っぽく眉根を寄せ、全身
をわななかせている。
「ああ、もう許して…」
 息も絶え絶えになりながら、汐理が呟いた。

 エンディング・テーマが流れる。
「それでは、また明日…」
 知的で柔和な笑みを浮かべて、島津がカメラに向かって頭を下げる。「ニュースの鉄人」と称され、「日本の知性100
人」にも選ばれたことがあるという、我が国を代表するジャーナリストにふさわしい表情だった。
 しかし、エンディング・テーマが終わるなり、その表情は一変した。
「なんだ、汐理、今日は噛みまくってたぞ!」
「すみません…」
 本番中ずっと性器に異物を挿入され、刺激されていたのだ。噛まずに喋れる方が奇跡と言うものだ。
 しかし、その理不尽を指摘しても意味がない。島津はもとから、汐理を虐めて楽しむためにやっているのだ。
「俺のチ×ポをしゃぶらせて、かつ舌の訓練をさせてやる。だが、その前に、ここで裸になって反省しろ!」
 残忍な笑みを浮かべて、島津がいつものように汐理をいたぶり始めた。それ見たADとカメラマンが目配せをし、ニヤ
ッと笑った。
「どうした、さっさと脱げ!」
 島津に怒鳴られ、俯いた汐理の指先がブラウスのボタンに掛かる。震える指が一つ、二つとボタンをはずしていく。
 その時、女性の凛とした声がスタジオに響いた。
「汐理ちゃん、そんな命令、聞く必要はないわ」
 それは、栃尾アナだった。普段は悲しげな表情を浮かべて目を逸らしているだけの彼女が、今日はなぜか、島津と汐
理の間に敢然と立ちふさがった。
「なんだ、栃尾、俺に逆らってただで済むと思うのか?」
「逆らったら、どうするって言うんですか!」
 栃尾アナも珍しく強気を崩さない。それが島津の怒りに火をつけた。
「何だと!よし、二人とも裸にひん剥いてやる、おい、誰かこの生意気な女たちの服を脱がしてやれ!」
 しかし、今日に限ってスタッフの誰もが、島津の言うことを聞こうとしない。スタジオの隅でフロアディレクターが下を向
いてニヤニヤ笑っている。
 副調整室の電話が鳴った。
「おい、何を放送してるんだ!」
 受話器から番組編成局長の怒鳴り声が響く。
「えっ、何かまずいことでも…」
 電話に出たプロデューサーの山本が答える。
「さっきから、抗議の電話が鳴りっぱなしだぞ!」
 編成局長の怒鳴り声を受けて、山本が周囲のスタッフの顔を見渡した。
「まだ、オンエアが続いてます!」
 スタッフの誰かが声をあげ、山本は慌てた声を出した。
「おかしいな、番組は終わったんじゃないのか?」
「おや、たいへんだ。スタジオの時計、10分ほど進んでますよ」
 そう言うタイムキーパーの声は、なぜか愉快そうな響きを含んでいた。
「それは、たいへんだな」
「おい、島津さん、まだ怒鳴り散らしてるぞ!」
「あーあ、オンエアであんなこと言っちゃ、島津さん、もう終わりだよな」
 スタッフたちが口々にそう言う。その表情には一応に、小気味の良さそうな笑いが浮かんでいる。彼らの中には、島
津に対する反感と、汐理に対する同情が確実に広がっていたのだった。
「…わかりました。とにかく何とか善処します…」
 そう言って電話を切った山本の顔が、困惑した表情から、満足そうな笑みに変わる。
 スタジオの中ではフロアディレクターが、そっとメールを送った。「やったぞ!」のメールの宛先は、レインドロップスの
リーダー、ケンジのアドレスだった。



 
 目次へ
 
 「星たちの時間」トップページへ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ
 
動画 アダルト動画 ライブチャット