国防省附属「星園・癒しの館」第2部
 
第1章 それぞれの出発 2
 
 紅葉した街路樹が飾る通りを、女生徒たちが三々五々歩いて行く。セーラー服とブレザーを組み合わせたようなキュ
ートなデザインの制服にタータンチェックのミニスカート、手には革製の通学カバン。どこにでもあるような通学風景だ。
「とうとう秋になっちゃったわね。」
 ため息混じりに由香が言った。琴美と二人でこの道を歩いていると、ふと、以前と何も変わっていないような感覚に捕
われる。このまま学校に行き、授業を受けて、クラブ活動をし、級友たちとお喋りする、そんなあたりまえの、大切な日
常…。
 しかし、次の瞬間には、逃れようのない苛酷な現実が胸に迫る。男たちを相手に性的行為を強制される毎日。彼女た
ちは、もはや普通の女子高校生ではなく、「慰安嬢」と呼ばれる国家の姓奴隷なのだ。
「いつまでこんな日が続くのかな…」
 由香の声が暗く沈む。
「天高く馬肥る秋、お菓子がウマイ、なんちゃって…」
「バカね…」
 おどけた調子でキャンディを差し出す琴美。わざと睨みつけた後、受け取ったキャンディを口に放り込んで微笑む由
香。同じ中学、高校と進んで来た仲の良い二人だ。喧嘩もよくするが、お互い、誰よりも気心の知れた相手である。悪
夢のような日々に、この友が側にいることは、せめてもの救いだった。
「琴美、ほら、あの子…。」
 由香が指さした先を見ると、二人の前を歩いている女生徒がいる。その肩が震え、時折、しゃくり上げるような声が聞
こえる。昨日、二年生のクラスに転入してきた女生徒だ。「授業」で防衛隊の将校に処女を奪われ、その将校に抱えら
れるようにして寮に帰っている。彼女がどういう一夜を過ごしたか、由香たちには手に取るようにわかった。彼女たち自
身も、昨日の夜は数人の見知らぬ男とセックスさせられているのだ。
「昨日、転校してきた子ね。」
 このところ、館には転入生が相次いでいる。それも全国各地から来ているらしい。泣いている少女は、秋田から来た
と言っていた。雪国の生まれらしい色白の可憐な美少女だ。琴美は少女に駆け寄り、肩を叩いた。ビクッと身体を震わ
せた少女が、恐る恐る琴美を見る。
「チョコレート、食べない?」
 人懐っこい明るい笑顔を浮かべた琴美は、そう言って、少女に小さな紙包みを渡す。
「お菓子を持ち歩くのは、禁止されてないのよ。でも、食べ過ぎると、この子みたいに、おデブになるから気をつけて
ね。」
 由香がそう言いながら、琴美と二人で少女を挟むように並んで歩く。
「ちょっとぉ、誰がおデブなのよぉ。私の体重、理想的なのよ!」
 琴美が口を尖らせて抗議する。
「胸がおデブ!」
「失礼ね!グラマーって言ってよね!」
 左右を歩く二人のやりとりを聞いていた少女がクスリと笑った。
「そうよ。負けちゃダメなんだから…」
 由香がニッコリ笑いながら言った。その口調は、まるで自分自身に言い聞かせるようだった。
「キャッ!」
 その時、琴美がいきなり悲鳴をあげた。後ろからやってきたサラリーマン風の中年男が、追い抜きざまに彼女の尻を
撫でて行ったのだ。
「…おはよう…、ございます…」
 振り返ってニヤッと笑う男に、琴美は強ばった笑顔を向けて挨拶した。登下校の際には、出会った住民に気持ちよく
挨拶し、尻や胸を触られるくらいの行為は、当然のスキンシップとして受け止めなければならない。それが、最近追加さ
れた校則だ。これまで館の中だけだった慰安嬢としての活動範囲が、今月から基地のある横木市港特別区全体に広
げられた。基地内の士気を高めるのが目的だと言われ、住民とのスキンシップは、その一環として導入されたものであ
る。
「おはよう…、やあ、おはよう…」
 広山文具店の前で、店主の広山が女生徒たち一人ひとりに声をかけながら、スカートを捲っている。女生徒たちは困
ったような表情を浮かべながら、礼儀正しく挨拶する。これも住民のスキンシップの一つとされており、最近、広山の毎
朝の日課になっていた。店の前にはちょうどバス停があり、列を作ってバスを待っている男たちが、ニヤニヤ笑いなが
らその様子を眺めている。
「おはよう琴美ちゃん、いつ見てもオッパイ、大きいね。」
 広山が卑猥な声をかけながら、琴美のスカートを捲った。白いパンティをはいたお尻が丸出しにされ、太腿が付け根
まで露わになった。すらりと伸びた脚の、きめ細かく白い素肌が眩しい。
 琴美は俯いたまま、「おはようございます」と小さな声で言った。広山は以前から彼女の巨乳に強い関心を示し、文具
等を買いに行く度に、いやらしい目つきで彼女のことを見ていた。「あのエロオヤジ、大嫌い」と言うのが琴美の口癖だ
ったが、今や、そんなことは口が裂けても言えない。
 そこに、防衛隊の制服を来た二人連れがやって来た。男の一人が由香の前に立ち塞がった。階級章で少尉だという
ことがわかる。
「おはようございます。」
「おはよう…」
 そう言いながら、男は由香の胸に手を伸ばし、力いっぱい揉んだ。
「きゃっ!」
 胸に痛みが走るほど強く揉まれた由香は、反射的に男の胸を両手で強く突き放し、後ずさりした。ところが、タイミン
グが悪かったのだろう、思い切り押された少尉はバランスを崩し、その場で尻餅をついてしまった。由香の顔からサー
ッと血の気が引く。
「なんだ!失礼じゃないか?」
 立ち上がりながら、男が厳しい口調で言った。しかし、その表情は本気で怒っているというより、むしろ面白がっている
様子だ。
「申し訳ありません…」
 由香が謝罪の言葉を口にする。ここで、口答えしても事態を悪化させるだけだと言うことは、身に染みてわかってい
た。
「ちょっと、教育してやる必要がありますな。」
 もう一人の男が言った。こちらは軍曹だ。防衛隊員でも、この男たちクラスだと、好きな時に癒しの館に行くというわけ
にはいかない。功績をあげたり、海外派遣軍に入れば慰安を受けることができるが、この2人は基地勤務で、しかも、
功績からは程遠かった。
「青少年の教育は、地域に住む者の責任でもあるからな。」
 そう言いながら、少尉の目がギラギラと輝き、由香の体を嘗めるように見回した。星園の慰安嬢に奉仕させる千載一
遇のチャンスを逃すわけにはいかない。
「私からもお詫びします。ごめんなさい、すみません…」
 琴美も由香に寄り添い、必死で謝る。
「それじゃあ、ここで、校則で決められた正式な謝罪をしてもらおう。」
「二人揃ってだぞ。」
 少尉と軍曹が声を揃えて言った。その表情は期待に輝いている。
「わかりました…」
 そう言うと、由香は制服のボタンを外し始めた。正式に謝罪する時は、全裸でなければならない。それが校則の内容
だった。男たちが校則を知っているのは不思議ではない。活動の場が特別区全域に広がるのに合わせて、防衛隊関
係者や自治会役員には、館の校則が配られているのだ。
 ブラウスのボタンが一つ、二つと外されていく。胸の膨らみと、それを包むブラジャーがブラウスの奥に覗く。
「よしっ!」
「いいぞっ!」
 少尉と軍曹が興奮を隠し切れない様子で言う。
 由香がセーラーカラーのブラウスを脱ぎ、スカートを降ろす。由香も琴美も恥ずかしさから、顔を真っ赤にしている。ち
ょうど朝の通勤時間帯だ。人通りはけっして少なくはなく、車の通行量もかなりある。街頭で、しかも、通い慣れた通学
路で裸になるのは、館や寮で裸になるのとは全く違って、その恥ずかしさは並大抵のものではなかった。
 周囲に丸く円を描くように人が集まってきた。集まった男たちは、服を脱いでいく二人の姿を、涎を垂らさんばかりの
視線で見つめている。バス停にバスが到着したが、乗り込む客はいなかった。全員、時ならぬストリップを楽しんでいる
のだ。見ると、広山が最前列でカメラを構えている。いくら慰安活動の範囲が広がったと言っても、街中で彼女らを裸に
することなど、滅多にあるものではない。
「おおっ!」
 男たちの中から声が上がった。琴美がブラジャーを外し、たわわな乳房が現れたのだ。大きいだけでなく、形もきれ
いで、思わず揉みしだきたくなる魅惑的な乳房だ。
「あとは、これだけだな…」
 少尉はそう言いながら、催促するように由香のパンティのゴムを引っ張った。
「自分で…、脱げますから!」
 由香は反射的に男の手を制し、自らの手をパンティにかけた。パンティのゴム紐の痕をピンク色に刻みこんだ白い腰
がむき出しになる。由香のお尻は、よく引き締まって、雪のように白く滑らかだった。
 全裸になった由香と琴美は、両手をお腹の前で組み、肩を窄めて身を寄せ合っていた。小柄ながら肉付きがよく、ポ
チャポチャと柔らかそうな琴美。スラリとスタイルが良く、スリムで引き締まった感じのするしなやかな由香。二人のタイ
プの違うヌードはいずれも美しく、集まった男たちの目を楽しませる。
 好色な男たちの好奇の視線に晒されようと、謝罪の時に乳房や股間を隠すことは許されない。由香と琴美は、かろう
じて腕を胸の前に寄せて膨らみを少しでも隠そうとし、膝をきゅっと締め、太ももを擦り合わせて、陰部が見えないよう
にしている。恥辱と秋風の冷たさに、細い肩が細かく震えていた。
「よし、謝れ!」
「申し訳ございませんでした。」
 由香と琴美がアスファルトの上に土下座し、声をそろえて謝罪した。二つ並んだ真っ白な、小さな背中が痛々しい。
「よし、じゃあ、お詫びの印に…」
 そう言うと、少尉はズボンのチャックを開ける。そして、軍曹に眼で合図をすると、由香と琴美の前に並んで立った。二
人とも立ち小便でもするように、「社会の窓」から陰茎を出している。彼女たちにフェラチオさせようと言うのだ。これも、
男性に対するお詫びの方法として、校則に書かれていることだ。
「さあ、早くしろ!」
 由香の前に立った少尉が腰を突き出す。エラの張った怒張が由香の目の前で反り返っている。路上で大勢の男たち
に見られながら、全裸でフェラチオするなど、女の子にとってこれ以上の恥辱はない。
(でも、頑張るしかないわ…)
 由香は、いつものように自分に言い聞かせた。恥辱を忘れるためにも、目の前の卑猥な行為に没頭するしかない。そ
れが慰安嬢だ。
「おしゃぶりさせていただきます…」
 由香は、男根に繊細な指を絡め、舌を這わせていった。カリ首の付け根からサオの裏側の縫い目にかけての性感帯
を舌先で突いたり、擦るように舌を押し付けながら舐めていく。その横で、琴美が軍曹の茎胴を指でしごきながら、ピン
クの舌を突き出して、先端から染み出たカウパー氏腺液を掬い取っていた。手で袋を擦ることも忘れていない。こうした
方法は、館の「授業」で繰り返し繰り返し教え込まれていた。
「こりゃあ、うまいなぁ…」
「気持ちいいぜ…」
 美少女が繰り出す濃厚な愛撫に、男たちはすっかり興奮していた。
「ありがとうございます…、少尉のオチ×チ×、とても、おいしいです…」 
 愛らしい顔を赤く染めて由香が言った。館ではただ舐めしゃぶりのテクニックだけではなく、奉仕する際の言葉など、
セックス奴隷としての作法をみっちりと叩き込まれている。もちろん、本心とは程遠く、こうした台詞を言わされるのは、
もともとプライドの高い由香にとっては直接の行為以上に辛いことだった。
「どうだ?俺のチ×ポ、咥えたいか?」
「はい。お願いします。少尉のオチ×チ×、由香の口に咥えさせてください…」
 好きでもない男の汚い陰茎など、死んでも口に入れたくない。心の中でそう叫びながら、由香は膨らんだ怒張を小さな
口に咥え、クチュクチュと唇でしごきたてる。
「パイ擦りしてくれよ。」
 軍曹が、玉袋を口に咥えてしゃぶっている琴美に言った。
「はい…」
 琴美は口に唾液を溜め、卑猥にテラつく亀頭のてっぺんにローションのように垂らしていく。それを何度も繰り返し、唾
液がねっとりと棹へ流れ出すと、豊かな胸の谷間にそれを挟み込んだ。そして、中腰の姿勢になると、自ら乳房を揉み
しだくようにして、肉棒を擦っていく。
「うっ…、これはたまらん…」
 少尉が思わず声を漏らした。由香は頬をへこませ、顔を前後に揺すっている。柔らかな唇を、血管を浮かせた怒張が
出入りする。凶悪な肉の棒は、由香の唾液に濡れ、黒光りしていた。
「二人ともいいテクニックだ…」
「さすが、癒しの館の慰安嬢だな。」
「可愛い顔して、淫乱そのものだぜ。」
 見物している男たちの声が聞こえる。由香が思わず睨むようにして顔を上げると、雪国の少女が少し離れた場所に
立っているのが目に入った。驚きと恐怖の表情を顔いっぱいに浮かべて、男に奉仕する由香たちの姿を見ている。
(お…、お願い、そんな顔して見ないで…)
 少女の視線は、昔の自分の視線であった。それは、羞恥心をかきたて、今の自分の惨めな境遇をまざまざと突きつ
けてくる。しかし、そこから逃れるためには、一刻も早く男を満足させるしかない。
(…早く、早く終わって…)
 そう念じながら、由香は唇を陰茎に強く押さえつけ、唇をすぼめたまま激しく肉棒を出し入れする。
「咥え込んだ表情もイイね!」
 広山は由香の髪をかきあげて、奉仕にふける表情を確認しては、卑猥な笑みを浮べ、肉棒を頬張った横顔をわざと
接写する。
「うぉっ…、気持ちいいぞ…」
 少尉の怒張が、由香の口の中で跳ね返る。喉の奥深くの上部に押し当てられ、由香は激しく咳き込んだ。次の瞬間、
少尉の腰が震え、ドロッとした精液が喉奥深く注ぎ込まれる。由香は、せきこみながらも全部飲み干した。
 その横では、軍曹が琴美の胸の谷間から肉棒を引き抜き、彼女の顔に向けて構えた。軍曹の意図を察した広山が、
嬉々としてカメラで琴美の顔を正面から狙う。
 軍曹は肉棒の先を琴美の顔に向け、摩り始めた。ドロリとした白濁液が勢いよく発射された。
「うっ…」
 呻き声をもらして屈辱に歪む琴美の唇や頬に、生臭い体液が浴びせられる。美少女の顔に自分の放出した精液が
べっとりと張り付いているのを見て、男は深い満足感を得た。
 広山が二人の顔をカメラに収めていく。
「うまく撮れたら、『星の園』に掲載してもらおう。」
 撮影する度に、苦悩の表情を浮かべる二人の様子を楽しみながら、広山が言った。『星の園』というのは、癒しの館
の広報誌だ。慰安錠たちの恥ずかしい写真がふんだんに載り、風俗情報誌ですらもっと上品だと思えるくらい下品な単
語が並んだ雑誌で、港特別区限定で販売されている。
「今日のところは、これで許してやろう。以後、国家のために命をかけて働いている防衛隊員に対して、非礼がないよ
う、気をつけるんだぞ。」
 少尉が尊大な態度で言う。
「はい…。ご指導、ありがとうございました。」
 由香と琴美は再び土下座して、深々と頭を下げた。由香の声は屈辱に震え、琴美は泣き出しそうになっている。その
様子を満足そうに見て、二人の防衛隊員は、笑い合いながらその場を後にした。
 由香と琴美が顔を上げた時、雪国からやって来た転校生の姿はなかった。

 その日の昼休み、食堂に女生徒が集まっていた。みんな一様に食堂の奥に置かれたテレビに見入っている。このテ
レビは、防衛隊フサイン派遣部隊からの衛星通信が受信できるようになっていた。
「今から名前を呼ばれた者は、荷物を持って前に出ろ!」
 防衛隊員の声が響く。映し出されているのは、横木市からフサインに派遣されたボランティア隊員、即ち横木高校の
男子生徒たちの中で、帰国が許される者の発表の様子なのだ。
「浅田、遠藤、北村…」
 次々に名前が呼び上げられる。
 彼氏や仲の良かった男子が呼ばれる度に、涙ぐむ子、肩を抱き合い喜びに浸る子…、少女たちに忘れていた笑顔
が浮かぶ。
「遠山君、立花君…、帰ってくるんだ。」
 琴美が躍り上がって喜び、由香に抱きついた。由香の表情もほころんでいる。ずっと気になっていた富田悠斗の名前
も呼ばれていた。その横で、茉莉が不安げな顔で画面を見つめていた。
(信彦君…)
 那須信彦は呼ばれることなく、名前の呼び上げは「に」で始まる者に移った。茉莉は力が抜けたように椅子に座り込
む。それに気づいた亜弓が、茉莉の肩を抱き締めた。そもそも派遣名簿から信彦の名前が消されていることを、茉莉
は知らない。
「あれは…」
 亜弓が絶句した。両脚を無くした男子生徒が、粗末な台車に乗っていざり進んでいる。西崎康平だ。
 優等生で学級委員長だった亜弓は、クラスのはみ出し者で、不良と呼ばれていた西崎とはよく衝突した。しかし、彼女
は、けっして彼に対して悪い感情を持ってはいなかった。先生に楯突いたり、不良同士で喧嘩をすることがあっても、西
崎には一本筋が通ったところがあった。弱い者に手を出すことはなかったし、卑怯なことを許さない正義感の持ち主だ
った。反骨のジャーナリストを父に持つ亜弓にとっては、むしろ、なんとなく通じ合うものを感じていたぐらいだ。その西
崎の変わり果てた姿に、亜弓は胸が詰まる思いを感じた。
 名前の呼び上げが終わり、画面の向こうに、やつれ切った表情の男子たちが並んでいた。
「よし、今呼ばれた者は、今すぐトラックで移動する。全員ただちに乗り込め!遅れた者は置いていくぞ!」
 大声で指示する隊員の声に続いて、映像はテントの外まで追いかけていく。大きな荷物を引きずるようにして、男子た
ちはトラックに乗り込んで行った。
 トラックの荷台が閉まり、エンジンがかけられた。いよいよ出発だ。
 その時、ボランティア隊員の管理を委ねられている第17小隊長の坂巻博道が画面に登場し、男子たちに向かって言
った。
「お前たちの任期は、あと2年と決まった。」
 一瞬、何のことかわからず、呆然とする男子。画面を見ている女子も突然の展開についていけない。
「新しい赴任地は、激戦が予想される首都近郊になるだろう。」
 しばらくして、坂巻の言葉が理解されると、食堂にすすり泣く声が広がった。画面の中では、自分たちが帰れないこ
と、今まで以上の過酷な地へ向かわせられる事を理解した男子の落胆した表情が映る。
 アルメイアとフサインとの戦争は泥沼化の様相を呈しており、「我々は勝利する」と言うアルメイア大統領の演説を本
気で信じる者は、もはや誰もいない。フサイン内部の権力抗争や宗教対立もあって、首都とその近郊は、誰が敵で誰
が味方かわからないと言われる混沌とした状況の真っ只中にあった。男子たちが送られるのは、そんな地域である。
「しっかり、国家のために尽くしてこい!」
 そう言うと、画面の中の坂巻が振り返る。そこには、名前を呼ばれなかった男子たちが、得意げな表情で整列してい
た。
「帰還者は、既に本人に内示を出しているとおりだ。」
 坂巻は薄ら笑いを浮かべながら、残った面々に呼びかける。
「お前らの活躍は、国も高く評価している。まさに、これからの日本にふさわしい愛国者だ。」
 帰還予定者は一斉に坂巻に向かって敬礼する。女生徒たちは知らなかったが、そこに残っている者は、坂巻たちに
おべっかをつかって気に入られたり、戦場の狂気に馴染んで、平気で住民たちに残虐な行為ができるようになった者た
ちであった。
「さあ、準備しろ。出発は1時間後だ!」
 


 
 「国防省附属「星園・癒しの館」目次へ
 
 「Novels」へ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ 
動画 アダルト動画 ライブチャット