国防省附属「星園・癒しの館」第2部
 
第3章 砂漠の国で 3

 画面の右上の隅に「12:00」と時刻が表示された。テレビはオアシス都市の町並みを遠景で映し出している。
 しばらくして、ビルの上空にチカッ、チカッと光が見えた。遙か遠い国でテレビ映像として見るそれは、生々しいリアリ
ティを失っており、真昼の花火のような存在感の無さだ。
「始まったようですね…」
 コーヒーカップを片手に画面を眺めながら、滝川がそう言った。今日の正午をもって、アルメイア・日本連合軍がフサ
インの首都攻略作戦を開始することは、全世界にアナウンスされていた。滝川は諸藤に招かれ、館長室で昼食をとりな
がらテレビを見ている。デスクに座って画面をじっと見ていた諸藤が呟いた。
「激戦になりますかね…」
 青い空に黒い煙が立ち上る。そこに送り込んだ少年たちのことが、諸藤の脳裏をかすめた。無論、彼の思考回路に
は、異国に散るかもしれない少年たちに対する同情も後悔も入り込む余地はない。
 開戦前は、核兵器まで保有しているという噂があったフサイン共和国だが、現実には核兵器はおろか、通常兵器すら
アルメイアを初めとした大国のお下がりの、旧式のものしか持っていなかった。そもそも軍隊自体がそれほどの規模で
はなく、アルメイア軍が陸上作戦を開始してから、軍隊同士の衝突などは皆無と言って良い。
 すると今度は、フサイン軍が首都防衛軍に力を集中させているのだとの噂が世界中を駆け巡った。そうでなければ、
アルメイアが宣戦布告した大義が立たない。
「…とは言われていますがね、例えて言えばゾウ対ネズミです。正面切っての戦闘はすぐに終わるでしょう。問題はむし
ろ、その後だ。」
 滝川が、意味ありげにそう答えた。

 滝川の予想どおり、多少の抵抗はあったものの、首都アグラバーはあっけないほど簡単に陥落した。アルメイア軍の
圧倒的な軍事力の前に、フサイン軍は、たった二、三時間でほぼ壊滅状態に陥ったのだ。
 わずかな警備兵を退け、アルメイア軍がなだれ込んだ大統領府は、既にもぬけの殻だった。広場に集まった群衆の
前で政府高官の銅像が引き倒され、アルメイア国旗が掲げられた。それをテレビで見たアルメイアの政治家たちは「フ
サイン共和国を独裁者から解放するため」という新たな大義を捻りだした。
 一方、現地の最高責任者であるグローバー大将は、大統領府に入るなり、戦闘の一切から興味を失った。あとは、
側近たちの報告を上の空で聞きながら、ひたすら自らが作り上げた魔宮のことを考えていた。
 横木に赴任したばかりの彼がいきなり本国に召還されたのは、幕下の将校が大統領公邸に送信した内部告発メー
ルのせいであった。メールには、これまでの捕虜虐待や軍需産業との癒着、その夜の星園での乱交まで、グローバー
にとって不都合な内容がこれでもかというぐらいに盛り込まれていた。
 野戦将軍としての彼の能力と実績ゆえに、その地位から追われることはなかったものの、再び前線に送られることに
なり、密かに狙っていた政界への転身の道も閉ざされたことは間違いなかった。そんなグローバーにとって、砂漠の国
で作り上げた「魔宮」が、今やただ一つの生きがいとなっていた。
 目を閉じ、思い浮かべたのは、このところ気に入っているファーティマという娘の姿だった。清楚、可憐で、グローバー
の嗜虐心を大いにかき立てる少女だ。
 全裸の彼女を床に跪かせる。アーモンド型の大きな目が恐怖で見開かれている。そそり立った肉棒を、キュッと締ま
った小ぶりだが厚めの唇に押し当てる。ほどよいふくらみをもった頬があどけない。
"うっ、うぐっ…"
 口の中いっぱいに怒張で塞がれたファーティマの呻き声が漏れる。グローバーはそのまま放尿し、ファーティマがそ
れをゴクゴクと飲み干す。顔をくしゃくしゃにし、涙を流しながら、細い喉が動いて男の排泄物を流し込む様子が見え
る。すっかり出し終わったら、このままフェラチオをさせてもよい…。
 グローバーは閉じていた目を開くと、魔宮の少女たちを呼び寄せるよう、側近の将校に命じた。

 星園ボランティア隊の面々はアグラバーの街に入って驚いた。街は空爆を受けて、既にほとんど廃墟といってよい印
象だった。
「ひどいな、こりゃあ…」
「どう見たって、普通の民家だよな。」
 アルメイア軍からは、軍事施設のみをピンポイントで爆撃したと聞いていたが、あきらかに学校や病院らしき施設も破
壊されている。現実には無差別攻撃以外の何物でもなかった。
 無造作に投げ出された遺体の回収が、彼らに与えられた仕事だったが、女性や子供のものも少なくなかった。作業を
始めた時は、遺体に手を触れることもためらわれ、少なからず精神的ショックもあったが、次第に感覚がマヒして、ひた
すら物を運ぶように体を動かすだけになっていった。
 遺体の回収を進めつつ、街の中心部に入ったあたりで、星園ボランティア兵の乗っているジープが止まった。
「あれ?」
「故障かな…」
 口々にそう言って車を降り、みんなで集まって途方に暮れていると、上官の吉川がやって来た。
「ちょっと見せてみろ。」
 そう言うと、吉川は工具を取り出し、ジープの下に潜り込んで車をいじり始めた。やがて、ブルブルとエンジンがかか
る。
「スゴイですね。車、直せるんですか。」
 立花が感心したように言う。
「防衛隊に入る前は自動車工場で働いていたんだ。」
 そう言って、吉川は世界的な自動車メーカーの名前をあげた。彼はその工場で働いていたが、不況で首切りにあい、
食うや食わずの状態になった時、ふと街角に貼られた防衛隊員募集のポスターを見て、入隊したのだと言う。
「戦争に行きたいとは思わなかったけど、背に腹は変えられなかったんだ。あの当時、同じように、仕事がなくて、防衛
隊に入った連中は多いと思うよ。」
 吉川は苦々しげにそう言った。

 首都攻略にとりあえず成功すると、アルメイア・日本連合軍は、その本拠をアグラバー市内に移して駐留することにな
り、星園の部隊も、空爆を免れた民家の一つを割り当てられ、宿泊することになった。
 その夜、そこに思いがけない来客があった。
「ここに、星園から来たボランティア部隊は配置されていますか。」
「ええ、彼らですよ。」
 日本語の質問に、玄関で見張りをしていた防衛隊員が答えるのが聞こえた。立花が警戒心に満ちた表情で部屋の入
り口を見る。しばらくして、40歳代の日本人の男が入ってきた。
「こんばんは。私は、毎朝新聞の記者で、森脇と言います。」
 怪訝な表情を見せる少年たちに、男はニッコリ笑いかけた。
「星園高校2年、森脇亜弓の父親です。」
「森脇…?」
「あっ、委員長の!」
 男子たちの表情が一瞬で和らぎ、高校生らしい笑みが浮かんだ。
「差し入れを持ってきたよ。」
 部屋の中に入ってきた森脇は、そう言いながらアルメイアの基地から持ち出した食料や雑誌などを取り出す。森脇を
少年たちが取り囲んだ。
「…それは酷い!許せんな!」
 森脇は、少年たちが日本から連れてこられて以来の出来事を詳しく聞き、防衛隊のやり方に憤慨の声をあげた。そし
て、ひとしきり話が終わった後、森脇は手にしていたナップザックから一通の手紙を取り出した。
「これは、君たちに宛てた手紙だ。偶然、私が預かることになったんだ。」
 差出人を見て、少年たちの表情が変わった。「学園一の美少女」「ミス星園」と呼ばれた少女の姿が目に浮かぶ。
 森脇が差し出した茉莉の手紙を受け取ると、立花が封を開けるのももどかしい様子で、手紙を開いた。男子が一斉
にのぞき込む。

 星園高校のみんな、元気にしてますか?
 私たちも、いろいろあるけど…、とにかく元気でがんばろうって励ましあっています。
 私たちには、みんながどうしているのか教えてもらえませんが、こちらの様子は、みんなに伝わっているのだと聞かさ
れています。それを考えると、哀しくなるので…、考えないようにしています。
 でも、覚えていてください。私たちの時間は、みんなと一緒に過ごした時から、ずっと止まったままなのです。

 男子たちは、茉莉の言葉に、女子たちの切ない思いを感じ取った。星園で何が行われているかは、十分過ぎるほど
知っている。
 坂巻たちがいた時は、時折集められて、かつてのクラスメートが、風俗嬢のように男たちの性欲を処理する姿を衛星
通信で見せられた。
 また、防衛隊員の中には『星の園』を持って前線に来る者もいる。自分の彼女が、あるいは憧れていた女の子が、淫
らな姿を晒す写真をオカズに、見ず知らずの隊員たちが卑猥な笑い声をたて、オナニーしているのを見かけることさ
え、しばしばなのだ。
 「ふーっ…」と富田が大きく息を吐き出した。彼の脳裏に、椅子に腰掛けた男の膝に屈み込むようにして肉棒をしゃぶ
りながら、後ろから別の男に犯されている由香の姿が浮かぶ。彼女が今も誰かと肌を重ね合わせているかと思うと、息
苦しいような、胸の奥をチリチリと炎で炙られるような感じがする。富田は、なんとかそのイメージを頭から振り払おうと
した。
 男子たちを励まし、無事を祈る言葉に続いて、茉莉の手紙には、知っている男子に宛てたメッセージが書き連ねられ
ていた。

 …立花君、遠山君、二人が琴美のことを好きだったこと、琴美にバラしちゃいました。でも、琴美も、結構うれしそうだ
ったよ。
 富田君、CD借りっ放しでゴメン。帰国したらママに言って、返してもらってください。それと、由香もホントは富田君の
ことが好きなんだよ。意地っ張りで自分からは言い出せないから、きちんと告白してあげてね。
 那須君、…無事で帰って来てください。ずっと待ってます。

 立花と遠山のバッテリーは、照れ臭そうな表情でお互いを見た。富田は、食い入るように手紙の文章を見つめてい
る。西崎は港で脱走した那須の後ろ姿を思い出していた。
「帰りたいなぁ…」
 誰かがぽつんと漏らした言葉は、みんなの思いだった。
「帰ろう、みんなで!」
 森脇は、しんみりしてしまった少年たちを見渡し、励ますようにそう言った。
「そうですね。」
「そうだ、帰ろう、みんなで!」
 遠山と立花が答えた。少年たちは祈りの言葉のように「帰ろう」を繰り返していた。
「これ、お前に預けておくよ。」
 そう言って富田が西崎に渡したのは、例の「憲法前文」が書かれた手帳だった。
「どうして俺に…、これはお前のお守りみたいなものなんだろ。」
「だから…」
 そう言って、富田は西崎のなくなった足をちらりと見た。
「一緒に日本に帰りたいと思ってさ…」
 富田の気持ちをうれしく思った西崎は、何も言わずに手帳をポケットに入れた。

 ちょうどその頃、星園の少年たちと同様、「一緒に帰ろう」という森脇の言葉を心の支えに、歯を食いしばっている少
女がいた。ウッド隊に拉致された麻衣である。
 アルメイア兵に変装した麻衣は前線まで連れて来られ、今夜も兵士たちの慰み者になっていた。
 ウッド隊に割り当てられたのは、街の中心部にある民家の一つである。住人はそれなりに豊かな暮らしをしていたらし
く、広いリビングを備えた瀟洒な家だ。そのリビングに、他の部隊からやってきた面々も交えて男たちが集まっている。
「ああっ…」
 十数人の男に囲まれ、床に倒れこんだ麻衣の身体には、男たちの放った精液がべたべた付着しており、蜜壷からあ
ふれた大量の蜜が、床に水たまりのようにたまっていた。赤いキスマークや歯形の痕跡が首筋から双乳、腹部から太
腿一帯まで、白い肌に無数に刻まれている。
"おい、早く来いよ…"
 褐色のガッシリとした体格のアルメイア兵が裸になり、ソファに座って、麻衣を呼んだ。男の怒張は既に天を向いて屹
立していた。男が右手に握った黒光りする怒張を振って見せ、ニヤニヤ笑っている。
"さあ、自分で繋がって来いよ!"
 ウッドに背中を押され、起き上がった麻衣はよろよろと歩いてソファに上がっていく。肉棒の先端にヌレヌレになった
秘唇をあてがい、ゆっくりと腰を落としていく。
「うっ、あぁ…」
 麻衣は、ゆっくりと腰を沈めていき、ついには怒張を根元まで呑み込んだ。そして、ゆっくりと腰を揺すりだした。
"へへっ…、こりゃあ気持ちいいぜ…"
 男は興奮した様子で腰を突き上げた。
「はうぅぅッ…」
 黒人の太くて硬い怒張に貫かれて、麻衣の華奢な肢体がわななく。
 男は目の前にある双乳を両手で揉みしだいた。麻衣の乳房が淫らに形を変える。飛び出した乳頭が天を向く。麻衣
は顎を仰け反らした。
「あ…ああん…う、うふン…」
 麻衣が腰を振るたび、グチャグチャと肉棒が愛液をかき回す音がする。愛蜜は、男の怒張を伝い、ソファに染みを作
って行った。
"いい具合だぜ、お前のオ××コ…"
 男は麻衣の耳元でそう囁くと、彼女の腰を掴み、怒張を奥深くに送り込んだ。
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ…」
 麻衣の呼吸が荒くなる。麻衣の膣がキュッ、キュッと収縮し、怒張を締め上げてくる。ついに男は我慢できなくなり、麻
衣の膣めがけて精液を放った。
「い、いい、イク、イクゥ…」
 麻衣の身体が痙攣し、顎を仰け反らし絶頂の喘ぎ声をあげた。

"随分あっけなかったな…"
"ああ、楽勝すぎて、アクビが出ちまう。"
 首都攻略作戦から一夜明けて、アルメイア兵たちは口々にそう言い合った。
 しかし、そこからが、アルメイア・日本連合軍の地獄の始まりであった。
 市街地の一角。建物の前に巨大なすり鉢状の穴が開き、内部は黒焦げになっている。玄関は吹き飛び、窓ガラスも
大半が割れ、階段の鉄製の手すりは脱落していた。そんな廃墟を前にして、黒いヴェールで頭を覆った少女が佇んで
いた。
 それは彼女の家だったのだろう。可愛らしい顔立ちの、まだあどけなさを残す少女なのに、表情はいかめしく、現世に
倦んだ老婆のような目で廃墟を見据えている。
 そこに、家も両親もなくした彼女をさらに痛めつけようとする輩が近づいて来る。
"よう、お嬢ちゃん!"
"俺たちと遊ぼうぜ…"
 五、六人で固まってやって来るアルメイア兵の姿を見て、少女は逃げるそぶりを見せた。しかし、すぐに力ずくで捕ら
えられ、いきなり顔を殴られた。少女の意識が一瞬で朦朧とする。
 男たちが地面に倒れた少女を取り囲んだ。
 あお向けになった少女の上に一人の男が馬乗りになり、胸元を生地を引きちぎる。少女の絶叫がとどろく。
 剥き出しになった双乳を両手で掴まれ、いやらしい手つきで揉みこまれる。男がピンク色の愛らしい乳頭に吸いつい
た。清楚な膨らみが、たちまち唾液でグチョグチョにされる。
 別の男が、下半身の辺りに屈み込み、民族衣装の裾を捲る。
"いやぁ…"
 少女が脚を綴じ合わせようとする。そうはさせじと、男はすばやく手を股の間に差し入れた。太腿を撫で、陰毛を掴ん
でシャリシャリと弄ぶ。割れ目に沿って人差し指を這わせた。
"はあ、はあ、はあ…"
 荒い吐息を吐いて横たわる少女が、喉を仰け反らせた。男の指が陰裂に挿入されていく。
"ん…?"
 彼女の体を弄っていた男が、怪訝な表情を浮かべる。指先に堅い感触があったのだ。嫌悪感に歪んでいた少女の表
情に、一瞬、うっすらと笑みが浮かぶ。
 次の瞬間、爆音と光に包まれ、少女の体は群がっていた男たちとともに木っ端みじんに吹き飛んだ。
"自爆テロか…"
 生き残った兵士が呆然と呟いた。ふと見ると、あちらこちらで爆発音が起こっている。
 地下に潜ったフサイン兵が住民と結び付き、ゲリラ戦を仕掛けてきたのだ。こうなると、いくらアルメイア軍が強大な軍
事力を持っていても、どうしようもない。ただ、終わりのない泥沼の戦いに引きずり込まれるしかなかった。



 
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