国防省附属「星園・癒しの館」第2部
第3章 砂漠の国で 4
新月の夜だった。半分廃墟となった首都アグラバーの深夜は、暗い闇に沈んでいた。今夜は雲も厚い。敵に知られ
ずに動くには格好の夜だ。
闇の中、市街地を駆けていく民族衣装の一団があった。目指すは、首都西部にあるアルメイア兵の駐留エリアだ。主
を失った大統領府に司令部が置かれ、その周辺の高級住宅街が収用されて、アルメイア軍が部隊ごとに駐留してい
る。
ほどなく、エリアの入り口に到着する。このあたりは戦火を免れ、住宅地がそのまま残っている。アルメイア兵たちの
便宜のため、電気も供給されているようだ。一方で、本来の住民たちが瓦礫の中で暮らし、難民テントに追いやられて
いる。穏やかな光をたたえた町並みに舌打ちをして、先頭を行く小柄な影が振り返った。
"さあ、いくわよ…"
押し殺した声が予想外に高い。女性、それも若い娘の声だった。
女の悲鳴が屋敷の中に響いた。
不幸にもアルメイア兵の目にとまった娘たちが十数名連れて来られ、片っ端から犯されているのだ。ウッド隊に割り当
てられたこの邸宅では、連日のように酒池肉林の乱行パーティが催されていた。
「殴り込み部隊」と呼ばれるだけあって、揚陸隊は気性が荒い。失業などで本国での生活に絶望して入隊した者も多
く、日本でも揚陸隊を受け入れた基地の周辺では、兵士たちによる犯罪が後を絶たなかった。ましてや戦地、しかも、
無法者の集まりとして名高いウッド隊の棲み家である。噂を聞きつけてやって来る他の部隊からの参加者も加えて、軍
紀も何もあったものではない乱痴気騒ぎが繰り返される。
"やめてっ!お願い…"
われ先に柔肌を味わおうと10本以上の手が伸びて来る。恐怖の声をあげたのは、十分に胸も膨らみきっていない美
少女だ。
片手に収まるぐらいの乳房を、左右それぞれ別の男が揉みしだく。唇が奪われ、髪に、首筋にキスする男もいる。華
奢な手足はいやらしい手で撫で摩られ、生まれて初めて人前に晒される陰部は、数人の男が群がって弄り回してい
た。
"いやっ…、い、痛いっ!"
その横では、体重が3倍ほどありそうな大男に乱暴にのしかかられ、関節がきしむ痛みに娘が顔をしかめている。男
はそんな娘の様子など気にもとめず、勃起した先端で、柔らかな秘唇を押し破る。
"いや、いやっ、いやぁーっ!"
少しずつ処女の肉路がこじ開けられてゆく。あまりの汚辱に娘が泣き叫んだ。
"へへっ、気持ちいいぜ!"
満足げにそう言うと、きつい粘膜感を味わいながら、男の巨体がピストン運動に入った。
元の持ち主が接客に使っていた大広間のあちこちで、女の悲鳴やすすり泣き、男たちの卑猥な笑い声が響く。
目の前に投げ出された瑞々しい身体は、彼らの収穫物だった。勝利者である彼らは自由にそれをもぎ取り、思う存分
味わう権利がある。そのためにこそ、はるばる海を渡り、こんな遠くまでやってきたのだ。広間に集まった男たちは、多
かれ少なかれそんな思いで女たちを貪っている。
フサインの娘たちが犯される間を縫って、麻衣は酒とグラスの乗ったトレイを持ち、既に一戦を終えて一息ついている
男たちに飲み物を配っていた。
全裸に軍服の上だけをはおり、前ボタンは全開にしている。身動きする度に、盛り上がった乳房ばかりか、可憐な乳
首や下腹部の茂みすら、チラチラ覗いている。
"どうぞ…"
麻衣は、ふんぞりかえってタバコをくゆらせているウッドの前にグラスを置いた。前屈みになったせいで、向かいに座
っている男たちの前に、ツンと引き締まったお尻が露わになった。
目の前で剥き出しの双尻が揺れる。男たちはニヤッと笑い合って手を伸ばし、きれいな曲線を描く臀部に掌を這わせ
る。
「あっ…、だめえ…」
お尻の割れ目に男の指が這い、肛門に侵入しようとする。麻衣が思わず身を捩った。その拍子に、手に持ったグラス
の酒がウッドの膝に零れた。
"おい、濡れたぞ!"
嬲るようにウッドが言い、麻衣の顔色が変わった。
"も、申し訳ございません、隊長!"
慌てて床に跪いた麻衣は、手にしたタオルで必死にズボンを拭う。
"謝罪しろよ…"
ニヤリと笑って言いながら、ウッドはズボンのチャックを下ろした。
"はい…"
癒しの館で教育され、ウッド隊の性奴隷としての日々を送る麻衣には、それだけで十分だった。
"申し訳ございませんでした…"
何度も謝りながら、屹立する肉茎を取り出し、根元から丹念に舐めあげていく。その様子を見て、男たちが卑猥な笑
い声を立てる。
"申し訳ございませんでした…"
なおも謝罪の言葉を繰り返し、幹の裏側から横側、カリ首から先端へと舌を這わせる麻衣。それを見つめていたウッ
ドは、いきなり彼女の髪を鷲掴みにし、硬くなったペニスに顔を押し付けた。
"罰だ…、ほら、早くしゃぶれ"
ウッドは麻衣の頭を両手で押さえ、肉棒を咥えさせると、思い切り激しく突きあげた。
「うぅ…、ぐうっ…うっ」
勃起した肉棒で喉の奥をつつかれて嘔吐しそうになり、麻衣は思わず逃れようとする。しかし、ウッドは彼女の頭を抑
えたまま、ぐいぐいと股間に押し付けて離さない。
"いいか、吐き出すなよ!"
何度もえづき、呼吸困難になりながら、麻衣は必死で舌を動かした。目から涙がボロボロ零れる。
"ほら、尻をもっと上げろ!"
そう言いながら、麻衣のお尻を撫でていた黒人兵が立ち上がり、尻肉に力一杯平手打ちをくらわせた。
「んぐっ!」
一発、二発と打たれる度に麻衣の身体がしなる。男の手の形が赤く残るヒップの間に、ピンク色をした菊座と、その下
に恥毛に囲まれた花唇が縦に口を閉じている。
黒人兵は肉棒を掴んで麻衣の性器を探り、こじ開けるように押し入ってきた。
"もっと激しくするんだ!"
ウッドは、砲弾型になった麻衣の乳房を揉みしだき、喉奥めがけて上下運動を強制する。
麻衣のヒップをしっかり抱えた黒人兵は、時折、アナルを指先でほじりながら、下半身を激しくぶつけて秘肉をえぐる。
「うぅ…、ぐうっ…、うぐぐ…」
喉を激しく突つかれる苦しさと、全身を玩具にされる悲しみに、麻衣の目から涙がポロポロ零れ出た。
アルメイア兵駐留エリアの一角で、いきなり爆発音が響いた。
"なんだ!?"
警戒の表情を見せ、爆発音の方向に向かおうとする警邏隊の耳に、連続して爆発音が聞こえる。エリアのあちこちで
火柱が上がり、黒い煙がもうもうと巻き上がった。
"テロリストの襲撃だっ!"
警報が鳴り響く。警邏隊を残して眠りについていたアルメイア軍は、騒然たる騒ぎに陥った。散発的な自爆テロはあっ
たものの、必勝の決意で臨んだ首都攻略戦があっけなく片付き、早々にアグラバーの街を手中にしたことで、彼らの中
に油断が生まれていたのだ。
仕掛けた爆弾が次々と火を噴き、大地が揺れた。炎の中をアルメイア兵が右往左往する姿が見える。広場を見下ろ
す建物の屋上に立ち、娘はその光景に溜飲を下ろしていた。
"小さな女豹!"
コードネームを呼ばれて娘が振り返る。彼女の配下にある隊員が駆け寄ってきた。
"大成功ですよ!"
興奮した声でそう言う彼も、少年と呼んでいい年齢だ。
アル=ファディルでのアルメイア軍の掃討作戦で両親と妹を殺された彼女は、首都に住む祖母の元に身を寄せること
となった。そんな彼女をレジスタンスに誘ったのは、国軍に入っていた従兄だ。
持ち前の反射神経の良さと、アルメイア軍に対する憎しみは、あっと言う間に彼女を一人前の戦士に育てあげた。今
回の襲撃では、最初に攻撃を仕掛けてアルメイア軍を混乱させる役割を負った少年たちのリーダーを任されている。
"さあ、鬼退治に行くわよ!"
そう言うと『小さな女豹』は、狙いを定めていたある屋敷に、彼女の部隊を率いて行く。そこは、まさに鬼の巣窟であ
る。
「今だつ!」
思わず声に出して、森脇は走りだした。
首都攻略から約一月、彼は取材活動を通じて知り合ったアルメイア将校のもとに身を寄せ、駐留エリアの取材をしな
がら、麻衣救出の機会を窺っていた。
今、これまでにない規模のテロの襲撃を受け、アルメイア軍は混乱している。千載一遇のチャンスとはこのことだ。爆
発音や銃声が響く中、森脇はプレスのパスを片手にエリアを駆け抜けた。
"ブン屋がウロチョロするな!"
行く先々で苛立たしげな怒鳴り声がするが、邪魔をされることはない。アルメイア軍発行のパスの効果は絶大だっ
た。
駆け通しに駆けて、エリアの端にあるウッド隊の屋敷に辿りついた。取材を装って何度も下調べをした場所だ。このあ
たりはまだテロの襲撃を受けていない。
人目を忍んでドアに駆け寄り、手を掛ける。ドアはスッと開いた。乱行パーティに参加する者のために、一晩中鍵を架
けていないことも調査済みだ。
玄関ホールを抜けようとした時、大柄な黒人兵の姿が、目の前にぬっと現れた。
"何者だ?"
訝しげに尋ねる黒人兵はアンディ・カーターだ。ウッド隊の中では「良識派」で通っている彼は、さすがに外の異変に気
がつき、様子を見に出て来た。森脇はそこに出くわしてしまったのだ。
"日本の毎朝新聞です。ちょっと取材中でして…"
森脇はとっさに言い繕って、プレスパスを見せる。
"ブン屋に用はないなぁ"
カーターは顔色ひとつ変えずにそう言うなり、拳を振り上げた。
衝撃とともに、森脇の体が壁に叩きつけられた。気絶しなかったのが不思議なぐらいだ。
"あやしい奴だ"
そう言うと、カーターは拳銃を構えた。
"尋問するのも面倒だ"
そう言うなり引き金にかけた指に力をいれる。その瞬間、耳をつんざく爆発音がして、カーターの体が吹っ飛んだ。
見ると、壁の一部に穴があいている。テロリストの攻撃がここまで及んで来たらしい。間一髪で助かったことを知った
森脇は、殴られたダメージに頭を振りながらヨロヨロと立ち上がり、屋敷の奥へと進んで行った。
緊急事態を告げるサイレンが鳴った。
浅い眠りを妨げられた富田は、簡易ベッドから起き上がった。
「なんだろうな?」
隣で寝ていた西崎が、不自由な身を起こしてそう言った。アルメイア軍と違って防衛隊は、下町の、なんとか破壊を免
れた民家に集団で寝泊まりしている。
「さあ、早く集合するんだ!」
吉川の声が常にない緊張をはらんでいる。星園の男子たちは急いでボランティア部隊の制服に着替える。
先に身支度を終えた富田が、西崎の義足の装着を手伝った。こんな体になれば、普通は日本に帰されるのではない
か。ところが、そうならないところに、大きな悪意を感じる。
「ありがとう…」
西崎はいつものように少し照れながら、しかし、はっきりした口調で礼を言う。かつてのツッパっていた気持ちが消え、
今では素直な気持ちが口に出せるようになった。
「気にするなよ。」
富田がニッコリ笑う。昔、反目しあっていたのが嘘のようだ。二人だけではない。ハンサムなスポーツマンの立花も、
心優しい遠山も、死地に残された少年たちはみんなで支え合って、苛酷な戦場を生き抜いているのだ。
「アルメイア軍駐留エリアがテロリストに攻撃された模様だ。当部隊はすぐに急行して、テロを鎮圧する。」
広場に集まった隊員たちに隊長が指示をし、部隊は深夜の街に繰り出した。アルメイア軍が攻撃を受けた時は、日
本が攻撃を受けたものとみなして、命を懸けて戦うこと…、集団的自衛権の発動である。
「見ろよ、すごい火と煙だぞ。」
立花が顔を曇らせてそう言った。遠くからでも、エリア一体が赤く浮かび上がるのが見える。心なしか煙の臭いも漂っ
てくるようだ。
「戦いになるのかな…」
遠山が心配そうに呟いた。自分たちの身を案ずるだけでなく、殺し合いそのものを嫌悪している。遠山らしいそんな言
い方だった。
乱行パーティの輪から離れた別室で、麻衣は対面座位で、シモンズの怒張に秘孔を貫かれていた。
「あンン、イヤ、いやん…」
麻衣が、よがり泣きのまじった微妙な喘ぎ声を漏らす。肉棒を深々と埋め込まれ、細っそりした腰が少しずつうねり出
す。
片手を麻衣の首の後ろにまわし、シモンズは唾液をたっぷりのせた舌腹を麻衣の口腔に差し込んだ。
シモンズは、華奢で滑らかな肌を持った、この日本娘の身体が気に入っていた。わざわざ日本から連れて来たのも、
そのためだ。今夜も街から攫ってきた娘を幾人も強姦したが、小麦色の肌を堪能した後、最後に抱きたくなるのは麻衣
であった。
「ああん、だめ、だめえ…もう…、壊れちゃう…」
シモンズは、結合部に手を忍ばせ媚肉を嬲りながら、腰をローリングさせる。ヌルヌルッとした快美な感触、キュッキュ
ッと痙攣するような動きに、思わず口元がほころぶ。
"いいぞ、麻衣、オ××コが締め付けてくるぜ。へへっ…"
シモンズが腰を突き上げた。怒張が秘孔の奥に突き当たる。指で麻衣の充血し飛び出したクリトリスを擦り上げた。
「あん、ああん…、ああん…」
麻衣が鼻にかかった泣き声を放ち、身をのけ反らせる。とろとろになった膣壁を、これどもかこれでもかと擦り立てら
れ、半分失神状態で、虚ろな瞳を天井に這わせていた。
屋敷内の奥まった部屋で淫らな欲求を満たしていたシモンズは、邸内の異常に気づいていなかった。
「ああん、ああん…」
麻衣の喘ぎ声が響く中、部屋のドアが音を立てて開いた。
"?!"
ふいにシモンズの動きがとまる。
民族衣装を着た襲撃者が銃を構えてスックと立っていた。白い布の間から見えるその瞳は、憎しみを込めた視線をシ
モンズに投げつけていた。
『小さな女豹』は心から神に感謝した。目の前の男こそ、母と妹を犯して殺した相手に間違いなかった。
ズギューン!
性感の波に翻弄され、ドアの開く音に気付かなかった麻衣の耳に、銃声が響く。
麻衣の瞳がカッと見開かれる。虚ろな瞳の焦点があった時、シモンズの体がゆらりと大きく揺れた。その額に穴が穿
たれ、どろりと血が流れ出す。
麻衣は絶叫した。
「麻衣ちゃんっ!」
彼女を捜して邸内を歩き回っていた森脇が、悲鳴を聞いて駆けつける。その時、襲撃者は既に部屋から姿を消して
いた。
「記者さん…」
森脇は麻衣の震える体を抱き起こし、裸の肩にジャケットを着せかけた。
「さあ、行こう!」
二人は廊下に飛び出した。邸内の動きが急に慌ただしくなり、そこここで銃声が聞こえる。
"テロリストの侵入だっ!"
叫ぶ声が近づいて来る。森脇は麻衣を庇うようにして、近くにあったドアを開け、その中に飛び込んだ。
背中でドアを閉めた途端、部屋の奥に黒い人影を見て、森脇はハッと身構えた。相手は民族衣装を着て、銃を構えて
いる。
身振りで丸腰であることを示しながら、森脇は相手の目を見た。白い布で覆われた顔から見える目が美しい。若者、
いや少年かもしれない。
一方、森脇と向き合った『小さな女豹』は、ある既視感にとらわれていた。違いと言えば、あの時、武器を持っていた
のは自分ではなく相手…、彼女と同じ年頃の少年兵…。
部屋の前をアルメイア兵の足音が通り過ぎて行く。
"さっさと行け、巻き込まれる…"
ややあって片言の英語で言ったそれは、若い女の声だった。森脇は「わかった」というふうに頷き、部屋を後にした。
"トミタ…"
『小さな女豹』…、サーブリーンは淡い胸の痛みとともにその名を口にした。
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