国防省附属「星園・癒しの館」第2部
 
第5章 明日へ…  5


 第2次試験は、横木特別区をあげてのお祭りとなった。基地に所属する防衛隊員はもちろん、特別区の自治会にも
声をかけ、住民も含めて全面的に公開されることになった。さらに、政財界からは来賓が数多く招かれる。
 こうした背景には、体育科創設を内外に宣伝する狙いがあった。体育科の責任者となった石堂が事務長の南原と相
談して決めたことである。
 横木基地の幹部としても、隊員たちの士気を高めるイベントとして利用したいとの思いから、一にも二にもなく賛同し
た。
「おはようございまーす!」
 正門に並んだ半袖の体操服にブルマ姿の女生徒たちが、続々とやってくる訪問客に元気よくあいさつをする。
 ずらりと並ぶ太腿、うっすら透けた胸、もちろん下着は着けていない。いきなりの目の保養で、訪れた客たちのボルテ
ージも上がる。
 彼女たちは先日の第1次試験にパスしなかった、普通科残留組だ。試験に参加しない彼女たちが、今日の運営を手
伝う。
「おはようございます!」
 亜弓は、新たにやってきた数人のグループに声をかけた。体格の良い男たちは私服を着ていても、一目で防衛隊員
だとわかる。
「グラウンドはこちらです。ご一緒にどうぞ!」
 朝一番の仕事として、亜弓は、訪問した観客をグラウンドに誘導していた。
「…太腿、見放題だな」
「食い込みもすげえよ、お尻の形がまるわかりだぜ」
 後からついてくる男たちの声が聞こえる。亜弓の美貌にカーッと血がのぼり、男たちに気づかれないように、そっと唇
を噛みしめた。
 館の存在が知れ渡るにつれて、普段は真面目な男でも、相手が「星園の慰安嬢」だとわかると、途端に卑猥な目で見
てくるようになった。そんな経験をする度に、繊細な少女たちの心は深く傷ついていく。
「…ホントか、じゃあ、試しに触ってみるか」
 そんな声が聞こえたかと思うと、すぐ後ろにいた男が手を伸ばし、亜弓の尻を撫でた。
「あっ…」
 小さな叫び声をあげ、反射的に身体が強張ったものの、それ以上の抵抗はなかった。調子に乗った男は、紺色のブ
ルマの上から、いやらしく全体を撫でまわし、連れに向かって、ニヤッと笑う。
 それを見ていた男たちが、「それなら自分も」と次々に触ってきた。
 周りにいた男たちも集まってきて、いつの間にか、亜弓は男たちに囲まれ、胸や股間には数え切れないほどの手が
這い回っていた。
 男の一人がブルマの中に手を突っ込んだ。下腹部を撫でながら、中指を股間に滑らせて直接性器に触り、中に指を
入れようとする。
「あっ、ちょっと待ってください…」
 亜弓が慌てて、男の手を押し止めた。
(やっぱり、中に入れるのは、まずかったかな…)
 男がきまり悪そうな顔で頭を掻いていると、亜弓は手にしていたナップサックの中から、消毒用のアルコールスプレー
を取り出し、男の手に噴きつけた。
「ごめんなさい…、お待たせしました」
 そう言うと、亜弓は自ら男の手を取り、指を膣内へ導いた。
「みなさん、アルコールで消毒してから…オ××コの中に指を入れてください…、お願いします」
 恥ずかしそうに言う亜弓を見て、男たちは我先にスプレーを奪い合った。
(これでいい…)
 亜弓は心の中でそう呟いた。
 こうしたイベントでは、これまで何人もの女の子が、雑菌だらけの手で敏感な粘膜を触られ、性器が腫れあがって、苦
しんでいた。
 それを見た亜弓が苦渋の選択で、この方法を考え出したのだ。今日も、案内役の女子は全員、消毒用アルコールを
持っていた。自分の性器を玩られると引き換えに消毒が徹底されるのなら安いものだ。

 少し遅れて、編入テストを受ける女生徒たちが登校してきた。こちらは体操服ではなく、普通に制服を着ている。
 由香やミキたち陸上部の面々は、正門を入ってすぐの植え込みの周りに集まった。
 ここが陸上部の着替え場所と定められていた。今日は、更衣室は使えない。
 更衣室と言っても、館では、訪問客が自由に出入りしたり、覗いたりすることができるので、あまり意味はなかった
が、それでも屋内で着替えるのと、屋外で着替えるのとでは、心理的にずいぶん違う。
 しかも、この場所は、「植え込みの陰に隠れて」というのは形だけで、正門から入った来た訪問客に丸見えの場所だ。
むしろ、訪れた観客に生着替えを披露するために、ここが選ばれたようだった。
 他のクラブもそれぞれ、木や建物の陰などが指定されているが、いずれも隠れているように見えて、実は丸見えのポ
イントばかりである。
(覗かれてる…)
 由香は、数え切れない男の視線が自分たちに注がれているのを感じた。そう思うと、途端に心臓がドキドキし、服を脱
ぐ手が自分のものではないように、ぎごちなくなった。
 少し躊躇った後、思い切ってブラウスを脱いだ。白いブラジャーが姿をあらわす。
「あの子は、脱ぐときに恥じらいが足りないな」
「いや、体育会系なら、あのくらいの大胆さがあってもいいんじゃないか」
 そう言い合いながら、何か手元のボードに書き込んでいる男たちがいた。編入試験の採点係に選ばれた、自治会の
役員であった。着替えの見せ方も採点の対象となっているのだ。
「ここは…、どこのクラブですかな?」
「陸上部ですよ、ほら、柴崎由香ちゃんがいる」
 こちらを指さして、そう答えたのは文房具店主の広山だった。ニヤッと笑って手を振る広山を見て、由香は思わずブラ
ジャーの上から両手をクロスし、胸を隠した。
「ほら、やはり女の子は恥じらいですよ」
「確かに、そそられますな」
 粘りつく視線にさらされながら、由香がスカートのフックを外し、ファスナーを下ろす。
 普通に着替えるのなら、下着姿を見られるだけで済む。しかし、館の規則では、クラブ活動での下着の着用は認めら
れていない。しかも、一旦全裸になってからでなければ、ユニフォームを着ることは許されなかった。
 気持ちを落ち着かせるために、由香は深呼吸し、髪の毛に手をやって耳のあたりをかきあげた。その仕草に、少女ら
しい色気が漂う。
 覚悟を決めてブラジャーを外し、パンティを脱ぐと、周囲から拍手と歓声が起こった。由香は慌てて左手で胸を隠し、
右手は股間の茂みを覆い隠す。そして、鞄の中からユニフォームを取り出した。



「由香ちゃん、全員が脱ぐまで、裸のままで待っていなきゃダメだよ」
 急いでユニフォームを着ようとした由香に広山が声をかけた。見ると携帯電話で写真を撮ろうとしている。
「いやあ、息子に写メを送ってやろうと思いまして。あの子と同級生だったものでね」
「あの娘は、この近くの子なんですか?」
「ええ、ご家族は、引っ越されましたがね」
 星園高校が接収されたのにあわせて、港区内の女生徒の家族は、忽然といなくなった。無事ではいるらしいが、どこ
に引っ越したかは、一切、教えられていない。
「小さい頃から知ってるんですが、見てください、あのオッパイと腰つき、アソコにおケケまで生えて、すっかり女っぽい
身体になりましたよ」
 自分を指さしてうれしげにそう言い、他の自治会役員と笑い合う広山を見て、由香の顔は真っ赤になり、表情が怒り
に染まる。
 ちょうどその時、ギターケースを抱えた暗い顔の男が正門をくぐった。
「おはようございます…」
 挨拶をした少女は凄い形相で睨みつけられ、涙目になっている。
 それは、由香への規定違反SM行為以来、館への出入りが禁止になっていた坂巻であった。今日は身分証明なし
で、横木特別地区の住人なら誰でも館に入ることができる。彼にとっては、千載一遇の機会であった。

 第2次試験の午前中は、クラブごとに試合や演技をして、その様子が審査対象となる。
 クラブに所属していない生徒は、学校側が指定したクラブと一緒に試験を受けることになり、真澄は体操部に組み込
まれた。
「工藤のレオタード姿なんて、滅多に見れないもんな」
 体育館の進行を手伝っている男子が顔を揃えて、真澄の方をみている。
「見ろよ、スケスケの白レオタードだぜ!」
 真澄はキッと男子を睨んだが、その気丈な性格は慰安嬢となった今、男たちの嗜虐心を煽るスパイスにすぎない。男
子たちは、いっそう卑猥な視線を送り、結局、真澄の方が顔を真っ赤にして、視線を逸らすしかなかった。
「1年生、工藤真澄さん」
 床の演技で名前を呼ばれ、12メートル四方に区切られたまっ白な演技面の前に立つと、麻衣のことを思い出す。行
方不明になった親友は、体操部に所属し、それほど上手いわけではなかったが、真面目で、放課後も熱心に練習して
いた。
(麻衣、今、どこにいるの?)
 何かのトラブルに巻き込まれたことは確かで、できれば探しに行きたいと思うのだが、この館を出ることすら、今の彼
女には許されていない。体育科に編入されれば外に出る機会が増えると聞き、真澄はそれに期待をかけていた。
 演技前に直立のポーズをとり、片手をあげて、観客に挨拶をする。デザインは袖つきのオーソドックスなレオタードだ
が、布地が薄く、胸の頂上に薄紅色の小さな膨らみが見え、股間にはうっすらと翳りが映っている。それは、全裸でい
るよりも、なお艶めかしい姿だった。
 真澄が床の上でブリッジの姿勢をとった、上向きになった胸が強調され、恥丘の盛り上がり強調された。股に食い込
んだ薄い生地は、亀裂の形まで露わにする。
「うおぉ…」
 観客が歓喜の声をあげた。
「すごいな。乳首も陰毛も、映ってるじゃないか」
「今にもオ××コが、見えそうだ!」
 そんな観客の会話が聞こえる。真澄は必死で恥辱に耐えながら、演技を続ける。
(ホントに、あの子、いいわね…)
 体育館に試験官としてやって来た石堂の目が、真澄を捉えて妖しく輝く。
 歓声とともに、会場が拍手に包まれた。床の演技の最後に、真澄は合気道の型を取り入れたのだ。予想外の動きだ
ったが、合気道なら師範レベルだ。さすがの迫力に、観客は惜しみない拍手を与えている。
 床演技だけでなく、持ち前の運動神経の良さや身体の柔軟性を生かして、平均台、跳馬となかなかの成績を見せた
真澄だったが、段違い平行棒を使っての鉄棒では、さすがに経験のなさが響いて、懸垂をするのがやっとだった。
 石堂の目がキラリと光った。バイセクシャルの石堂だが、同性を相手にする時はサディストの傾向が強くでてくる。
「このままだと、鉄棒のポイントが足りないわよ。追加点のチャンスをあげましょう。鉄棒にぶらさがりなさい」
 石堂が真澄に近づいて、そう声をかけた。
「はい…」
 なんとか合格したいと思っている真澄は、素直に鉄棒を掴んだ。すると、石堂はロープを取り出し、慣れた手つきで両
手首を鉄棒に縛り付けていく。真澄の表情に不安の色が広がる。
「これでいいわ」
 石堂が満足そうに頷く。真澄の身体は、爪先がやっと床に着く高さで固定されてしまった。
 すらりとした長い脚、鍛え上げた太腿、艶やかな弧を描く双臀、引き締まったウエスト。石堂好みの肢体だった。
「難しいことじゃないわ、私の相手をしてお客さんを楽しませるだけ…」
 石堂は真澄のレオタードのヒップの布を捲りあげ、白桃のようにお尻を剥きだしにした。
「そのままにしてなさい」
 そう言うと、石堂は愛用の鞭を取り出した。生徒指導の名目で持ち歩き、慰安に支障が出ない範囲で生徒にそれを
ふるうことを、諸藤に認めさせている。
 石堂が手に持った鞭を、真澄のお尻めがけて振り下した。パシーンと柔肉を打つ音が体育館に響く。
「きゃあっ!」
 真澄は悲鳴をあげ、身悶えするように、吊るされた体を揺すった。
「ふふふ…、痛い?」
「………」
 圧倒的優位に立って相手を嬲る石堂に、真澄の心にムラムラと反抗心がこみ上げてきた。しかし、今の真澄には、石
堂を睨みつけるのが精一杯だ。
「あら、気の強い子ね。私の好みだわ」
 そう言うなり、ビシッ、ビシッと真澄のお尻に連続して鞭が飛ぶ。
「あぁっ!ううッ!ああーっ!」
 真澄が身を捩り、手首と右膝を吊ったロープがギシッギシッと音を立てた。突如として始まったSMショーに、観客もス
タッフも度肝を抜かれ、固唾を飲んで見つめている。
「あなた、ちょっと躾が必要ね」
 石堂はレオタードの肩に手をかけ、一気に引き下ろした。瑞々しい乳房が露わになる。
 石堂の手が真澄の乳房を交互に揉んでいく。指先が勃起した乳首をクリクリと転がす。
「ん、ぁ…っ!」
 背骨の中を電流が流れたようにビリビリと痺れ、真澄の表情がとろけていく。
「あら、気持ちいいの?こんなに乳首が立ってるわよ」
「う、う、あうう…ち、ちがいます」
 石堂は、真澄の乳房をギュッと掴んだ。
「次はオッパイを叩くわよ」
 鞭が空気を引き裂き、胸を狙った鞭が乳首をかすめ、形よく張り出した肉丘に赤い筋を残す。
「あぐううッ…!」
 あまりの痛みに、真澄の目から涙がポロポロこぼれてくる。
 石堂は、鉄棒にかけたロープを真澄の右膝に巻きつけた。
「あっ、いやっ!」
 羞恥を含んだ声とともに、すらりとした脚が膝から持ち上がった。右膝が腰のあたりまで上がったところで、ロープが
固定される。
 石堂の手がレオタードの股間をずらし、陰部を剥き出しにした。抵抗しようとしたが、両手と片足を吊るされてできる抵
抗など、わずかに体を揺するくらいが関の山だった。
「あっ…」
 石堂が指を膣口に差し入れる。
「いやっ…、やめてェ…」
「ここもぐっしょりよ…」
 石堂は2本の指を秘孔に差し込み、グチュグチュと音を立ててかきまわす。真澄の優美な腰が左右にうねる。
 石堂が一歩下がって、鞭を構えた。
 ヒュンッ!
 ピシィッ!
「ひぐぅっ!」
 くぐもった呻き声とともに、真澄の身体が空中でもんどりを打った。力を込めた石堂の一撃が、性器に命中したのだ。
一瞬呼吸が止まり、気を失いそうになる。
「待ってください、先生!」
 続けて鞭をふるおうと振りあげた手を引っ張られて、石堂が怪訝な顔で振り返る。必死の形相で彼女の手を掴んでい
るのは、体育館の設営担当になっている普通科残留組の女生徒だった。
「そんなにしたら、可哀想です。それに…、体に鞭の痕が残ったら、慰安に差し支えます」
 清楚な、目を見張るぐらいの美少女だ。1次試験でそれなりの点数をマークしたものの、諸藤の鶴の一声で、あえて
普通科に残した女生徒である。
 二人並べて裸にひん剥き、鞭でぶちのめすことを考えた石堂だったが、すぐに思いとどまった。彼女が、須崎首相お
気に入りの慰安嬢だということを思い出したからである。権力には正面から逆らわないのが、石堂の流儀だ。
「あなた…、2年生の安藤さんだったわね。よく覚えておくわ」
 そう言うと、何食わぬ顔を装って、石堂は体育館を立ち去った。
 茉莉の体がその場に崩折れた。今になって、全身が恐怖で震え出す。鉄棒から下ろされた真澄が、彼女に抱きつい
た。
「安藤さん、あなた、すごいわ」
 試験官の補助をしていた篠原美咲が駆け寄って来て、感嘆の声をあげた。
「………」
 茉莉が黙って首を振る。
 何度も死のうと思っては、思いとどまったのは、岩田から託された「思い」があったからだ。自殺にみせかけて殺害さ
れた恩師の志を継ぎたいと思ったことで、茉莉は少しずつ強くなってきた。
 「権力者の愛玩動物」という哀しい立場も、使いようによっては「力」になることを、茉莉は意識し始めていた。
 しかし、託されたものを一人きりで守るのは難しい…。茉莉は心を決めた。
「篠原先生、実は…、お話があるんです」

「ここよ…」
 美咲に案内されて、信彦は音楽室にやってきた。編入試験の間、文化系の部屋が使われることはなく、館のスタッフ
たちも試験にかかりきりになっている。
 説明どおりに床板が外れ、隠し部屋への入り口が開く。
 中に入って調べていた信彦が、苦悶の表情を浮かべて出て来た。もはや、誰が岩田先生の協力者だったかは、明ら
かだった。
「さあ、この結果をふまえて、あなたはどうするの?」
 かつての教師の声で、美咲は信彦に質問した。
 しかし、ここに至っても信彦はまだ、その答えを持ち合わせていなかった。

 新しくなったテニスコートでは、テニス部が試合を行なっていた。
 テニス部は、体育科設置の目玉になる予定で、これまでの地面にラインを引いてあるだけのコートから、観客スタンド
まで設置した、本格的なコートが作られていた。やはりテニス人気は高く、スタンドはすでに満員になっている。
 転入してきた生徒の中にも、テニス経験のある者がおり、星園高校テニス部から選ばれた3名とあわせて、10名が
試合をして、体育科への編入生が決まる。
 その中で、植田陽子はかなりの健闘を見せていた。
「アマチュアレベルですが、一般的な女子高生としては、なかなかの技量ですな」
 来賓として招かれたテニス連盟の重鎮、赤坂がそのプレイを誉める。
「4月からのメンバーに入れても、問題ありませんか?」
 文教省の富士審議官の質問に、赤坂が頷いた。富士は、4月以降のテニス部の人選を赤坂に依頼していた。赤坂は
何か心当たりがあるらしく、二つ返事で快諾した。
 ゲーム内容以上に、観客たちは熱い視線をテニスウエア姿のまばゆい肢体に注いでいた。
 半袖シャツの胸元は優しく膨らみ、膝上15センチ以上の短さにされたスコートからは、細くしなやかな脚がまっすぐに
伸びている。よく見ると、テニスシャツ越しに乳房の形がよくわかり、乳首もうっすらと映っている。
 陽子がコートを駆けて、ボールを打ち返した。走るたびにスコートがヒラヒラし、純白のアンスコが見え隠れする。
 黄色いボールが相手方のコートを転がる。勝利を決めた陽子がガッツポーズを見せた。集まった観客が拍手を送
る。
「せっかく勝ったんだ。見せるテニスをするなら、もっと、喜びを表現すべきじゃないかね」
 赤坂がポツリとそう漏らした。
「そうですな。サッカー選手がゴールを決めた時、上着を脱いで観客に掲げながら喜びを共有するみたいな」
 富士の言葉に、体育科への配転が決まった平沼が頷いた。
「わかりました」
 そう言うと、平沼は陽子を呼んで何か耳打ちする。一瞬、陽子の表情が強ばり、激しく頭を振るが、平沼は厳しい表
情を崩さない。
 やがて、陽子は、テニスウエアの裾を両手を交差させ、捲り上げていく。引き締まったお腹に、縦長のお臍が覗く。
 スタンドを埋め尽くした観客が固唾を飲んで見守る中、陽子が思い切って乳房を剥き出しにすると、一斉に歓声があ
がった。
「もっと、パフォーマンスが欲しいなぁ」
「乳房を揉んでみろ」
「乳首を親指と人差し指で挟んで」
「よし、そのまま、両胸を鷲掴みにし、揺すりながら、コートを一周!」
 赤坂と富士の注文はどんどんエスカレートしていく。陽子は泣きべそをかきながら、恥ずかしいパフォーマンスを強要
された。
「観客に抱きついてキスするんだ!」
 陽子が近くにいた観客に抱きついて、唇を重ねた。周囲の観客の手が次々に伸びてきて、乳房が激しく、無惨なほど
に形を変えて揉みにじられた。
「あぁ、あぁぁ…」
 観客に揉みくちゃにされた陽子が、黒髪を振っていやいやをする。その仕草は男たちの欲情を刺激するばかりだっ
た。
「いいね。どうだね、これを当学園のテニスのルールにしては」
 富士が言うと、平沼がしたり顔で頷いた。
「そうしましょう。ポイントをとったら、恥ずかしい格好を晒しながら、観客にアピールする。それが不十分なら、ポイント
は取り消しになる、ということで…」

「さあ、設営よ!」
 校庭の一角で、樫村美里が声をかけた。集まった3年生が工具を手に持ち、積まれていた資材を使って、ブースのよ
うな物を建てていく。
 何が始まったのかと、近くにいた訪問客が集まってきた。
 彼女たちが建て始めたのは、野戦用の仮設慰安所だった。この中で、我慢できなくなった見物客の射精を引き受け
るのが、3年生たちの役割である。これは、館を卒業した後、戦地での慰安の任務に就く彼女たちの訓練でもあった。
 見る見るうちに組みあがったブースは、設置も撤去も簡単なように、最低限の資材で作られていた。高さは、立つと胸
が見える位までの高さしかない、隣の個室との間仕切りは、下も30センチ以上の隙間がある。入り口などは、暖簾の
ように布が掛けられているだけだ。
 続いて物資が運び込まれ、見物していた男たちの顔に卑猥な笑いが浮かんだ。
 コンドームの他に、極太バイブやアナル洗浄用の浣腸器もあり、袋は透明なうえに中身が何か大きく表示されてい
る。見物人たちの妄想をかきたてるには十分だった。
 準備が終わると、女子隊員たちは、さっそく個室の前に立ち、入り口に写真入りの名札を下げた。
「慰安場所は10箇所あります、どこでもお好きな娘のところで、楽しんでください」
 設営作業では適当に手を抜いていたくせに、いざとなると仕切役に回るのは、言わずと知れた浜本明日菜だ。
 しかし、訪問客は好奇心に満ちた目で、慰安嬢たちをじろじろ見てはいるものの、なかなかブースに入ろうという者は
現れなかった。午前の日の高い時間帯に、屋外の仮設ブースでセックスするのは、さすがにきまりが悪いのだろう。
「Hey!Baby!」
 微妙な空気が流れる中、平然とブースに近づき、明日菜に声をかけたのは、アルメイア軍の軍服を着た背の高い白
人だった。
 慰安体制の拡充と引き替えに、館の使用は、アルメイア軍と防衛隊の間で燃料や物資などを融通しあう物品役務相
互提供協定の対象に含まれることになり、アルメイア兵たちも気軽にやって来るようになった。かつて、アルメイア兵の
受け入れを巡って大騒ぎになったことが、遙か昔のことのようだ。
 明日菜は、授業で習った片言のアルメイア語で兵士の質問に答え、ブースの前に並んでいる3年生たちを指差した。
どうやら、自分が相手をするつもりはないらしい。
 クチャクチャとガムを噛みながら、舐めるような目つきで少女たちの品定めをしていたアルメイア兵が目に留めたの
は、美少女ぶりが際だつ吉永紗季だった。
「よろしくお願いします」
 紗季が丁寧にお辞儀をして、アルメイア兵を迎え入れた。体操服とブルマを脱ぐ様子が、光の加減で入り口の布にシ
ルエットで映し出され、見物客の興奮を煽る。
「おおっ、スゲエ…」
 日本人ではありえない太さと長さを持ったペニスの影が映り、誰かが思わず声をあげた。それを紗季が両手で抱える
ようにして、しゃぶっている様子が窺える。
「ああっ…」
 やがて、ブースの中から悩ましげな紗季の声が聞こえた。騎上位でつながっているらしく、上気した紗季の顔が上下
するのが見えている。
「あうぅ、はうっ、はうぅぅっ!」
 紗季は激しく喘ぎ声をあげながら、腰を淫らに振り続けていた。そこにいた誰もが、巨根に貫かれ、今にも裂けそうな
ぐらい大きく口を広げられている女性器を想像した。
 男がアルメイア語で大声で何か言い、卑猥な笑い声を立てるのが聞こえる。
「はぁっ、あぁん…、気持ちいぃ…」
 紗季が目に涙をにじませながら、激しいよがり声をあげる。
 見物していた男たちの胸に、ムラムラとこみ上げるものがあった。それは、燃え上がる性欲であると同時に、自国の
少女を貪る異邦人への本能的な反感でもあった。
「おい…」
「俺たちも、やろうぜ!」
 そう言い合うと、それまで迷っていた男たちが、次々にブースに入り、長蛇の列ができていった。

 体育科の「花」になるのが、チアリーディング部である。そもそも見せる種目で、国威発揚にも使えるということで、国
防省サイドの期待はどのクラブよりも大きかった。
 チアリーディング部の演技にはメイン・グラウンドが割り当てられ、演技開始にあたっては、全校放送がされたうえで、
他のクラブの試験も一時中断された。
 演技を正面から見ることができる場所には、テントが立てられ、VIP用の席が作られている。
「北部地方での災害救助活動、ご苦労様でした」
 経済省の幹部が、隣に座った防衛隊幹部に声をかける。
「いやいや、防衛隊の役割を国民にアピールする絶好の機会でしたよ。これで、来年度の予算はガッポリいただけそう
ですわ。アルメイアから、戦闘機も買わんといかんしね」
 今も苦労が続く被災者や、必死で活動にあたった現場の隊員たちが聞いたら憤慨しそうなことを言って、防衛隊幹部
がニンマリする。
(ふん、焼け太りか…)
 さすがに鼻白んだ表情を見せた経済官僚だったが、彼らも同じ穴のムジナだった。彼らが立てている復興計画の狙
いは、被災者に関係ない特区構想で、大企業のビジネスチャンスを増やし、経済省のイニシアチブを強めることにあ
る。
「しかし、問題は財源ですな…」
 館の常連客となっている財界のトップがポツリと呟いた。
「企業に負担を求められても困りますよ。今はいくらでも海外に出ていけるんですからな…、それをお忘れなく」
「わかっておりますとも」
 すかさず財政省の幹部が答えた。
「当然ながら、負担は全国民が負うべきです。ただ、見栄えということもありますので、法人減税は数年間お待ちくださ
い。もちろん、別の減税措置をとって、大企業にはいっさいご負担をおかけいたしません」
 揉み手をせんばかりに言う官僚に、財界人は尊大に頷いた。
「しかたありませんな。しかし、3年ぐらい先には法人税減税もお願いしますよ。消費税を上げればいいんだから…」
「さあ、皆様方、無粋な話はこれぐらいにいたしましょう。演技が始まりますよ」
 ホスト役の南原事務長が声をかけた。
 チア部のメンバーが登場し、VIP席の前で一列に並んだ。ノースリーブの赤いウエアは膨らんだ胸を強調し、膝上20
センチの白いスコートから健康的な脚線美が伸びている。成熟する一歩手前の新鮮なプロポーションがなんとも官能を
くすぐった。
「これから体育課編入試験、チアリーディング部の演技を始めます」
 校内放送ですっかりお馴染みになった小森美緒のアナウンスが聞こえ、チア部員たちがフォーメーションを組んだ。
「Yeah!」
 ビートを効かせた音楽が始まると、可愛いかけ声にあわせて、アクロバティックな動きを交えた躍動的なダンスが始ま
る。
 星園高校の頃と比べて練習量が格段に多くなったためか、当時からのメンバーが中心になっているのに、その完成
度はかなりのものだ。第1次試験をパスして、追加で2次試験に進んだ紺野希も、リズムに乗った軽快な動きを見せて
いる。
 中でも、センターで元気に飛び跳ねる琴美の姿が、ひときわ目を惹いた。他のスリムな少女も魅力的だが、中学生か
と思うほどの童顔に肉づきの良いミニグラマーの体型は、躍動感溢れる健康美を感じさせる。性格の天真爛漫さがそ
のまま出たような、人好きのする明るい容貌は慰安嬢になってからも変わらず、誰からも愛される人気者だ。
「あのオッパイ、迫力だよな」
 そんな声が聞こえる。とりわけ、男の目を釘付けにするのが、その豊かな胸の膨らみである。前かがみになった胸
は、大きさがさらに強調され、釣り鐘のように飛び出している。
 バック宙を決めた琴美は、観衆が見守る中で、手をスコートの中に入れ、パンティを腰から少しずつおろしていく。
 目に滲みるような美しい雪肌の下腹部に、小判型をした漆黒の飾り毛が顔を出す。
 琴美は、パンティを足首から抜き取ると、それを高く掲げた。
 リズムに乗って踊りだすチアリーダーたちに、歓声をあげた観客が手拍子を始める。ポンポンがわりにパンティを振っ
て踊るダンスは、すでに星園チア部の名物になっていた。
「チア部は全員合格だろ」
 そう言う声があちこちから聞こえた。この演技は試験というよりは、とびきりのエンタテイメントとして完成しているの
だ。
 琴美がタワーの上で、Y字バランスのポーズを決めた。下着をつけていないため、女陰があまさず丸見えになる。観
客たちが、喜んで拍手喝采した。
 演技は後半に入り、男子たちの一団が登場した。
「ここからは、男子を交えてのフォーメーションをご覧いただきます」
 美緒のアナウンスを合図に、男子たちが下半身裸になった。
 チアリーダーたちはペアになった男子のペニスを口にくわえ、手に握り、乳房に挟んでこすりあげる。演技の後半は、
集団セックスショーと言うべき内容になっているのだ。
 琴美はウエアの胸を捲って、ペアになった益本の肉棒をパイ擦りする。
「ううっ…」
 気持ち良さそうに呻く益本の陰茎が、みるみる硬くなってきた。このところ、ますます精神的な失調が進み、他の女子
を相手にすると、勃起しないこともある益本だったが、琴美を相手にした時だけは、一気に元気になる。
 曲調が変わり、ペアとなる男子がチェンジした。琴美の前では、大谷が地面に仰向けになっている。
「ああっ…」
 琴美は大谷に跨り、腰を下ろして肉棒を挿入する。一列に並んだチア部員たちが順番に騎上位で男子とつながって
いく。
「あんっ、あんっ!」
 琴美は喘ぎ声を漏らしながら、男根が出来るだけ奥まで届くように、自分の腰を大きく上下に振った。他の部員もそ
れに続く。ピストン運動を繰り返すその動きは、見事なウエーブになっていた。
 女子が回転して背面騎上位、男子が上半身を起こして座位、そしてバック…と、次々に体位を変えてみせる。
「あっ、いぃ…、あぁん…」
 琴美はビクンビクンと身体を震わせた。濡れた膣が大谷のペニスを強く挟み、痺れるような快感をもたらしていく。
「うおっ、気持ちイイ!」
 大谷が歓喜の声をあげ、ひたすら琴美の身体を楽しんでいた。ここでの生活は異常だと思うが、深く考えてもしかた
がない。大谷は、琴美をはじめ可愛い女の子と連日セックスできることに溺れ、そこに満足を見出そうとしていた。
 それまで希の相手をしていた北上が、大谷にバックから犯される琴美の前に立つ。琴美は大谷を挿入したまま、北上
のペニスを口にくわえる。
「あぁん…、はぁ…あぁぁ…」
 その横で、希は自ら乳房と股間を弄ってオナニーを始めた。男子から解放された後も、演技が終わるまで、休むこと
なく、観客に自慰行為を見せ続けなければならないのだ。
 1人の女子が2人の男子の相手をするようになり、そのまま1対4、1対8と少数の女子に集中していく。
 最後に、男子全員が琴美を取り囲んだ。
 琴美は、すでに上下の口を塞がれ、左右の乳房をそれぞれ別の男子にしゃぶられている。
 琴美を四つん這いにすると、1年生の町田が後ろに立ち、肛門に肉棒を挿入した。
「うぐっ、ううぅ…ううぅ…」
 琴美が淫らに腰を揺すり、怒張を飲み込んでいく。
 他の男子も思い思いに手で、舌で、口で、ペニスで琴美の全身を愛撫する。
「かーっ…、たまんねーっ」
 北上が叫んで、琴美の乳房に擦りつけていたペニスから白濁液を噴射する。ねっとりした体液が、琴美の顎にかか
る。
「くーっ…、気持いい…」
 別の男子が琴美の顔面を狙って射精した。しかめた顔が白濁液にまみれる。それを見た男子たちが、次々に琴美に
精液をかけ始めた。あっと言う間に、琴美の顔も身体も男の粘液でベトベトになっていく。
「う…、うぐっ、うぐーっ!」
 男の白濁液が噴水のように飛び交う中、琴美の身体がピクピク痙攣し、豊かな双乳を波打たせて絶頂を迎えた。

 拍手に包まれてチアリーディング部が退場すると、トラックを使って、陸上部の試験が再開された。
 400メートル走のアナウンスがされ、由香とミキがトラックに現れた。
 スタートを前にして、由香はランニング・ショーツの食い込みを直す。「直す」と言っても、普通とは逆にきつく食い込ま
せるのだ。
 隣のミキは小さめに作られたユニフォームから、下乳をはみ出させていた。
 恥ずかしさで真っ赤になりながらも、前は大陰唇の形が浮き出るようにし、後はお尻の半分近くをはみ出させている。
 由香はクロッチ部分を横に引っ張り、その中身までもチラチラと観客に披露する。指で割れ目を開き、そこにショーツ
の布を食い込ませた。スタートまでのこうした行為も、採点の対象になっているのだ。
 そんな由香を、暗い目でじっと見つめている坂巻の姿があった。
(あの淫乱娘、色仕掛けで男を誘ってやがる…)
 身勝手な憤慨にかられた男は、手に持ったギターケースの握り手をギュッと掴んだ。

 パーン、パーン、パーン
 最初にその音が聞こえた時、スタートの合図だと多くの者が思った。由香たち走者も一斉に走り出した。
 しかし、何か様子がおかしい。
 やがて悲鳴と怒号が起こった。
 パーン、パーン
 再び銃声が聞こえた時、観衆の一角が崩れ、何人かがその場に倒れるのが見えた。
 走る速度を緩めた由香は、いきなり腕を捕まれ、グイッと引っ張られた。
「さあ来い、俺と一緒に…」
 由香の表情が凍りつく。それは、銃を手にし、血走った目をした坂巻だった。



 
 「国防省附属「星園・癒しの館」目次へ
 
 「Novels」へ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ 
動画 アダルト動画 ライブチャット