国防省附属「星園・癒しの館」
 
外伝12 テニス少女・約束

 少年がレジャー・プールでアルバイトをしたのは、高校2年生の夏であった。
 昼下がり、監視役として水の流れるプールを眺めていた少年は、ふと視線の先に違和感を感じた。よく見ると、小さな
人影が水面に浮いたり沈んだりしている。
「あれ、やばいぞ!」
 少年は思わずそう呟いた。トロピカルデザインのカラフルな水着を着ているが、小学校低学年ぐらいの女の子だろう。
しかし、その場所は、子供の足が届く深さではないはずだ。少年は慌ててプールに飛び込んだ。近づいていくと、女の
子が手足をバタバタさせ、必死でもがいているのが見える。やはり、溺れているのだ。
 少年は女の子の身体をぐっと抱き寄せ、そのままプールサイドに上がった。
 激しく咳き込んだ後、女の子はシクシクと泣き始めた。
「大丈夫…、もう大丈夫だよ」
少年はそう言って、女の子の頭を何度も撫でた。
「お嬢様!」
 やがて、二十歳台後半と見える女性が慌てて駆け寄ってきた。その後から、男性が数人駆けつける。会話を聞いて
いると、そのいずれもが保護者ではなく、「使用人」と呼ぶのがふさわしい立場らしい。
 はぐれていた同行者に囲まれて、やっと泣き止み、落ち着いた様子の女の子は、改めて少年を見た。
「ありがとう…」
 ニッコリ笑い、しっかりした口調でお礼を言う。こうして見ると、整った顔立ちの美少女である。幼いのに、どことなく、
おしゃまな色気があり、正面から見つめられると、ちょっとドキドキした。
「あなた、私のボディガードにしてあげる」
 いきなりそう言ったのは生意気だったが、それにも勝る可愛らしさがあった。少年は思わず、こう返事をした。
「承知しました、お姫様。僕はどんな時でも、きっとあなたをお守りします」

「朋美、お前が行ってくれれば、わが社は倒産を避けられる。うちには大勢の従業員がいる、下請けまで含めれば、数
万人規模だ。彼らを路頭に迷わせるわけにはいかん。お前だって、お父さんががんばって築き上げた中西産業をつぶ
したくないだろう」
 父に代わって社長に就任した叔父は、そう言って朋美を説得した。
 中西産業は、流通大手で名前の通った会社だった。ところが、ある日、いきなり「反愛国会社」のレッテルを貼られ
た。有事体制下のこの国で、それは致命的である。経営がみるみる傾く中、会社の危機を乗り切るために、贈収賄に
手を染めた容疑で父は逮捕された。世間の非難が集中する中、逮捕直前に父が言った「私は無罪だ。恥じるべきこと
は何もしていない。朋美、それだけは確かだよ」との言葉が今も耳に残っている。
 星園に来ることになった経過を反芻し、朋美が思いに沈んでいると、部屋のドアがガチャリと開いた。ビクッと身体を
震わせ、慌てて時計を見ると、既に午後9時になっている。心臓が激しく脈打ち、今にも飛び出しそうな思いがした。
 たとえどんな男がやって来ようと、彼女は今やって来た男に無条件で抱かれ、処女を捧げなければならない。それ
が、慰安嬢として生まれ変わる儀式だった。
 叔父に説得された時には、「癒しの館」の実態が慰安施設だということは全く知らなかった。朋美をとらえていた哀し
みも、生まれ育った家を離れ、名門大泉高校を辞めて、テニスに打ち込める環境を失うというものに過ぎなかった。し
かし、彼女を待っていたのは、想像もつかない、過酷な生活だったのだ。
「やあ、朋美ちゃん」
 聞き覚えのある声に、床に正座して三つ指をついていた朋美がパツと顔をあげる。
「寺山のおじ様…?」
 浅黒い肌で小太り、髪の薄くなった初老の男は、日本を代表する重機メーカーの社長、寺山昌久だった。朋美の父と
は古くからの知り合いで、中西産業の主要取引先の一つだ。朋美も幼い頃から、良く知っている相手である。
「元気そうで何よりだね…」
 以前と全く変わらず、人のよさそうな顔でニコニコ笑いながら、寺山は朋美の部屋に入ってきて、ベッドに腰掛けた。
「朋美ちゃんが星園の慰安嬢になったと聞いて、本当に驚いたよ。それで、慌ててやってきたんだ。もう3月も終わりだ
から、4月1日の編入に間に合うかどうか焦ったんだが、すぐに許可が下りたよ。うちは防衛省に兵器を納めている会
社だからね。いやあ、ホントに間に合ってよかった」
 寺山の言葉を聞いて、朋美の表情が輝いた。父の友人は、きっと自分を地獄の縁から救い出してくれるのだ。
「ありがとうございます、おじ様!」
 喜びと感謝で涙ぐんだ朋美の表情は、しかし、次の寺山の言葉で一瞬にして凍りついた。
「これは、何としても私が口開けをしてあげなきゃと思ったんだ」
「えっ?」
「朋美ちゃんはすごい美人さんに育ったからね。テニスで鍛えた身体はムチムチで、なかなか色気もあるし…。中西の
家で見ている時から、一度は裸にして抱いてみたい、できれば、何とかして初体験の相手をつとめたいと思っていたん
だ。大丈夫、慰安嬢になるお手伝い、私がしっかりしてあげるよ」
 あまりの衝撃に、朋美は口をパクパクして二の句が告げなかった。この男は、昔から自分のことを、いやらしい目で
見ていたのだ。そして、今宵、そんな男とセックスして、自分は処女を失う。その屈辱に、朋美は思わず唇を噛んでうつ
むいた。
「おや、星園の慰安嬢が、そんな仏頂面でいいのかな…?」
 朋美の顔を覗き込むようにして、寺山が少し意地悪な口調で言う。
「…よろしくお願いします…」
 朋美は正座したまま、慌てて頭を下げた。例え誰が来ようと、それが彼女の今夜の客なのだ。決められたとおり、身
体を開き、全てを捧げる以外に選択肢はない。
「こうしてそばで見ると、肌がきれいだね。ピチピチしてる…」
 着ている物を脱ぎ、裸になっていく朋美を、寺山は好色な笑みを浮かべて熱く見つめていた。粘りつくような視線を感
じて、朋美の肌がピンク色に染まっていく。
「いやあ、さすが、館長自らが選んだだけのことはあるな」
 全裸になった朋美の身体を鑑賞しながら、寺山が目を細めて言った。
「星園癒しの館は、この4月から大幅に規模を拡張するんだが、それに伴って体育科を新設し、スポーツで優秀な生徒
を編入させることにしたんだ。朋美ちゃんは、その一人として選ばれたというわけだな。なんでも、館の責任者である諸
藤館長が、体育科設置の目玉として、自ら選んだうちの一人らしいよ」
 事情通であることを自慢したいらしく、寺山が得々と説明する。
「さあ、こっちへ来なさい。子供の頃のように抱いてあげよう」
 寺山は朋美の腕を掴むと、彼女を膝の上に乗せて横抱きにした。
「オッパイも大きくなって、綺麗な形だ。骨盤も張り出して、もうすっかり女の身体だな」
 猫撫で声でそう言いながら、左手は腰からお尻を撫で回し、右手は乳房を鷲掴みにして、指あとがつくほど揉みしだ
く。
「い、いやっ…、ううっ…」
 朋美が思わず身を捩る。寺山に抱きすくめられ、荒い息を吐きかけられ、肌を撫で回される。羞恥と汚辱感で、神経
がおかしくなりそうだ。
 寺山の手が下腹部に伸びた。綺麗に生えそろった柔らかな茂みを撫でさする。閉じ合わせた白い内腿をこじ開け、割
れ目に指を這わせた。弄っていると、その部分が次第にぬめりを帯びてくる。
「ここも見せてもらおう…」
 そう言うと、寺山は朋美をベッドに仰向けにし、両脚を大きく開かせて下腹部を覗き込んだ。
「陰毛もよく生え、土手もふっくらして、すっかり女のアソコになってるな。小さい頃に見た時はツルツルで、シジミみたい
に可愛らしい割れ目だったのに…」
 言いながら、寺山は閉じ合わさった肉丘の溝に沿って撫でさする。ぷっくりした唇がわずかに開き、ヌルヌルした愛液
が溢れ出して、指先を濡らした。
「おっ、濡れてきたぞ…、朋美ちゃん、気持ち良くなってきたんだな…」
 寺山がうれしそうな声をあげた。女の子の大事な部分を好き勝手に弄り回され、朋美は眉根を寄せて目を閉じ、唇を
かみ締めている。ベッドに落ちた手が、恥辱に耐えるようにシーツを握りしめていた。
「さあ、いよいよだ…」
 仰向けになった朋美の両膝を立てさせると、寺山は勃起した肉棒を手に、繊毛に縁取られた秘孔に狙いをつける。
朋美はギュウと強く目を閉じ、唇を何度も噛みなおしては、喘ぐような呼吸を繰り返している。これ以上ない程、緊張し
ている様子に、寺山の興奮が高まった。
「うっ…」
 肉棒を入口に押し当てた。朋美の肩がピクンと動く。寺山の先端が浅く粘膜の感触で包まれる。
「いっ、痛いっ…」
 途端に朋美が全身を突っ張らせて逃げようとし、寺山が体重をかけてそれを押さえ込む。どうやら確かに処女らし
い。全身に力が入り、半開きになった唇をわななかせて、彫像のように硬直している。
「力を抜いて、ほんの少しの我慢だ…」
 そう言うと、寺山が下半身をぐいっと送り込む。
「う、うくっ…、い、痛っ…」
 朋美が苦痛の声を漏らしたかと思うと、陰茎の侵入を阻んでいた軽い抵抗がプツンと切れたように無くなった。処女
膜を突き破ったらしい。寺山はそのままの勢いで、肉棒を奥まで押し込んだ。
「うっ…、くっ…あああ」
 無理やり身体を押し広げられる感覚に、朋美が苦痛に喘ぐ。根元まで挿入すると、寺山は動きを止めて、朋美の身
体を抱きしめた。汗ばんだ肌が朋美の肌に密着する。鼻先を包む男の体臭が自分の身体に染み込んでいくような幻想
に、朋美は軽い吐き気を覚えた。
「朋美ちゃん、可愛いよ…」
 寺山の顔が近づき、唇を奪われた。唇がこじあけられ、寺山の舌が侵入してくる。ヌラヌラした舌が朋美の舌先をとら
え、口腔をねっとり舐まわされ、次々に唾液を流し込んでくる。寺山の腰がゆっくり動き始めた。痛みとともに、体内に
埋め込まれたペニスの存在を意識させる。
 全身が汚されていく感触に、朋美はそれまでの自分が死んだと感じ、犯されながら号泣した。

「岩崎君、君の異動希望を見せてもらったが、本当に良いのかね?」
「はい、よろしくお願いします」
「ゴホン…、なんだ…、君のような若者には、その…、魅力的に映るのかもしれないが、ああいう所は結局、イロモノだ
ぞ…」
 上司が苦笑いのような、意味ありげな表情を浮かべている。
(相当なスケベだと思われてるんだな…)
 何しろ良宏が希望した異動先というのは、「国防省附属慰安施設」だ。この春から学校教育法上の高等学校に位置
づけられたため、文教省からの出向ルートができ、スタッフを募集しているのだが、前途有望な者、出世を考える者は
誰も行かない。女子高生ばかりを集めたという慰安施設の、おこぼれを狙う色ボケした連中だけが志願すると言われ
ている。自分もそんな一員だと思われることは、いささか不本意ではあったが、しかし、そう思われていた方が、良宏に
とっても、何かと好都合というものだ。
「君の実力なら、将来、本省の幹部にだってなれるんだ。よく考えた方がいいんじゃないか?」
「いえ、いろいろ考えた結論ですから」
 念押しをする上司に、良宏はきっぱりとそう言った。

 5月に入って、着任が遅れていた文教省から出向組が館に赴任した。
「あら…」
 新しいスタッフを紹介する職員会議に参加した石堂は、思わず目を見張った。
「文教省から出向で参りました、岩崎良宏です。よろしくお願いします」
 この施設に来てから、ついぞ耳にしなかった爽やかな挨拶をした青年は、背が高く、メガネをかけた、知的で細面の
ハンサムだ。
 バイセクシャルの石堂は、相手が男か女かで恋愛のあり方が全く変わる。気に入った少女には拷問まがいのお仕置
きをし、泣き叫ぶ姿を見るのが楽しいというサディストでありながら、好きになった男にはデレデレし、いつもべたべたと
甘えていたいタイプなのだ。
 そして、岩崎良宏は石堂の恋愛対象として、まさにど真ん中、ストライクの相手であった。
(ふふふ…、楽しくなりそう…)
 いつになく上機嫌で微笑む石堂を、周囲の同僚たちが奇異なものを見るような視線で眺めていた。
「まさか…」
 新しく着任したスタッフの紹介を受け、朋美の表情に驚きの色が浮かんだ。一瞬、目が合ったその相手は、慌てて視
線を逸らし、朋美も思わず俯いた。心臓がドキドキと音を立てている。
(良宏さん…、どうして?)
 見間違えようがなかった。
 プールで朋美を救った後、良宏は時折、中西家に招かれるようになり、朋美が中学受験期になると、家庭教師を任さ
れるようになった。一人娘の命の恩人でもある、この優秀な若者に朋美の父はおおいに目をかけ、けっして「使用人」
扱いすることなく、息子のように遇してきた。中西産業が「反愛国会社」のレッテルを貼られて以降、連絡を取らなくなっ
たのも、文教省に入った彼に迷惑をかけることを望まなかった父の判断だった。
「…良宏さんまで…」
 朋美は、掠れた声でそう呟いた。寺山に処女を奪われて以降、かつての父の友人、知人が数多く館を訪れては、朋
美の身体を弄び、慰みものにしてきた。すっかり男性不信に陥った朋美は、良宏も好色な目的でこの館にやってきた
のだと思ったのだ。

 館の中にあるVIP専用のラウンジ、ブランデーグラスを傾ける富士局長を囲むテーブルには、南原と良宏が座ってい
た。
「いやあ、本当にいい人材を送っていただきました」
 南原が富士に深々と頭を下げた。良宏が来てからわずかの間に、館の管理業務は完璧なものになった。世間では悪
いイメージだけが広められているが、官僚とは本来、政策を企画立案し、事務処理を行うプロフェッショナルである。そ
んな、良い意味での官僚の仕事を間近に見て、自らも「実務家」を自認する南原は、感激ひとしおなのである。
「今夜は、自分がスタッフだということを忘れて、楽しんでくれ」
 南原が良宏の労をねぎらって、そう言った時、隣の席で聞こえよがしに言う声が聞こえた。
「所詮、無駄の多い仕事しかできない公務員だろーが!」
 国会議員の西沢だ。野党政友党の論客として名を売っているが、その実、政府・与党が進めたい方向に議論誘導す
る役割を担っており、その見返りとして、内閣官房機密費からの工作資金を手にし、癒しの館に入り浸っている。最近
は、公務員を「国民の敵」だと描き出してバッシングすることで、有事体制に対する国民の不満を逸らす役割を担ってい
た。
「官僚とは道具です。使いこなすのも、もてあますのも政治の責任。無駄が多いのなら、政治の舵取りにこそ、問題が
あるのです」
 良宏はあくまで南原に向かって話すふりを装いながら、淡々とした口調で言った。西沢が不快そうな表情をこちらに向
けていても、物ともしない。
「おっ、いよいよ始まるぞ!」
 二人の鞘当てで微妙な空気が漂う中、富士がうれしそうに言った。今日は、VIP向けに週一回開かれている、オーク
ションの日である。
 ラウンジ内にステージが作られており、煌々としたライトに照らされて、慰安嬢の一人が立っている。小柄で華奢な、
可愛らしい女の子だ。
 オークションが始まった。競り落とした者は、朝までその慰安嬢を独占できる。ステージ上では、司会者が慰安嬢の乳
房や陰部を露わにして見せ、観客を煽って、入札させている。
 彼らVIPたちは別に対価を払わなくても、いくらでも慰安嬢に自由に性的サービスをさせることができる。すべては国
の予算で賄われるのだ。その一方で、このオークションは、一種のお遊びとして開かれていた。オークションの結果は、
広報誌『星の園』に掲載され、高額で入札された慰安嬢の人気を高めるとともに、競落者の自慢の種にもなる。財力を
手にした者は、札束を積んで美少女を競り落とすことに、独特の満足感を感じるものらしい。
「では、今日の目玉となる慰安嬢の登場です」
 数人の少女が競られた後、司会の声が響き、一斉に拍手が鳴り響いた。ステージにあがったのは、朋美だった。昨
秋の選手権で着ていたテニスウエアを身に着けている。優しい顔立ちの瞳が悩ましく潤み、腰まで伸びた長い黒髪が
練り絹のような美しい光沢にきらめいていた。
 客の間からため息が漏れた。ウエアの胸はくっきりと隆起が浮かび、スコートの腰まわりやヒップも涎が出そうに悩ま
しい。下から見ると、脚の長さが強調されて、思わず見とれてしまうプロポーションだ。
 特に目を惹くのは、テニスウエア越しに美しい形を示す胸の膨らみだった。下着を着けていないらしく、頂点に大豆の
ような突起が浮き出ている。
 司会が朋美の背後に回りこみ、ウエアを捲る。張りのある豊かなバストが、男たちの前でたわわに波打った。
「まず、このオッパイが素晴らしいですね」
 そう言いながら、司会が大きさを強調するように胸を掬い上げ、揉み込んだ。真っ白い膨らみが手のひらでこねくり回
され、薄桃色の乳首をいたずらされる。
「あッ、いやン…ああン」
 朋美は顔を伏せて、切なげに胸を捩り、腰をくねくねさせる。
「おやっ、もう乳首が立ってきましたよ。感度もバッチリのようです」
 煽るような司会の言葉に、場内の男たちのボルテージが上がっていく。
 司会がスコートを捲り上げた。アンダースコートの薄い生地がぴっちりと股間に食い込み、秘丘の柔らかなふくらみ
が、ため息が出るくらいに悩ましい。
「もちろん、オ××コもじっくりご覧いただきます」
 司会がアンスコに手をかけ、一気に引きおろす。
「ああン…」
 朋美がうろたえ気味に腰をひねる。司会がくるくると小さく丸めて、アンスコを足首から抜き取ると、観客たちに放り投
げた。奪い合うように集まった一人が、幸運にもそれをゲットする。
 捩りあわされる両腿を、司会がグイと押し広げる。白く美しい内腿の狭間には、柔らかな繊毛に縁取られた、新鮮な
紅い果実が隠されている。指先をクレバスにあてがい、肉門をこじ開けると、ステージ前に集まった男たちが、その部
分を覗き込んだ。
「どうですか?綺麗でしょう?」
「ホントだ、きれいなピンク色だね」
 観客たちは交代で朋美の秘部に指先で弄り、その色や形を品評する。
「ああ…」
 あまりの恥辱に、朋美は目を閉じ、唇を噛みしめた。
「フェラテクも抜群ですよ」
そう言うと、司会は観客の一人を指名し、ステージに上げた。朋美が床に跪いた。
「さあ、みなさんに、テクニックを披露しなさい」
 朋美は垂れかかる黒髪をかきあげ、甘えるような眼差しを相手に注いでから、ズボンのファスナーを下ろす。
「オ×ン×ンを、おしゃぶりさせていただきます…」
 隷従の言葉を口にして、朋美はピーンと張った剛直に指を絡めた。ゆっくりと上下に動かす。それから、長い黒髪を
後ろへ払い、股間に顔を沈めた。
 ペニスを指で押さえつけると、裏筋に吸いついた。たっぷり唾液をのせた舌腹で、雁にかけて重点的にペロペロと舐
めまわす。肉棒はたちまち唾液にヌルヌルに包まれて、しなやかな指が悩殺的タッチでその上を甘くすべる。
「すごいな、これは…」
 ラウンジのあちこちで、そんな声が聞こえる。朋美は「ウフン、ウフウン」と可愛らしく鼻を鳴らしながら、男の股ぐらで
献身的に首を振っていた。
「さあ、そろそろ、入札を始めましょう」
「10万!」
 いきなり10万の値がついた。
 ステージ上では、朋美が深々と根元までスロートさせる。男が切羽つまった唸りを発した。
「12万!」
 高級そうなスーツを着た初老の紳士が声をあげると、精力的な太った中年男がそれを上回る金額を示した。
「…15万!」
 朋美は絡めた指にキュッキュッと力を込め、顔を急ピッチで上下動させる。温かな口腔で、まるで膣のように甘くペニ
スを包み込み、快美なピストン運動をしてくる。
「う、うう…、ああ、気持ちいいっ!」
 ステージで男が声をあげ、身体がのた打った。激しく腰を振り、朋美の口で射精しているのが見てとれる。
「50万!」
 一気に値を吊り上げたのは西沢だった。あたりがシーンと静まりかえる。確かに集まったのは、金回りの良いVIPと呼
ばれる面々ではある。しかし、一人の少女と一夜をともにするだけで50万円というのは、相当思い切った出費だ。さす
がに後が続かないと思った、その時のことである。
「…55万」
 思いがけないところから声があがり、一同が一斉に視線を向けた。最近、出向で館に来た若いスタッフが客として参
加し、その声をあげたことを知って、みんなが驚きと好奇心を露わにする。
「おいおい、岩崎君、大丈夫かね」
「ええ…、負けるわけにはいきません」
 そう言って、良宏は西沢の方に視線をやった。富士と南原は、それを西沢に対する対抗意識だと見たが、良宏の本
心は別のところに向いていた。
「60万!」
 西沢の声が響く。
「…70万」
 良宏が応える。相手が政財界の大物なら、この勝負は勝ち目がない。しかし、野党議員の西沢であれば、自由に使
える資金にも限度があるだろうし、仮に遺恨を残したとしても、影響は限定的だ。
「思い切って、100万だ!」
 真っ赤になった西沢の表情を見て、良宏は自分の読みに確信を深めた。
「…120万」
 そう言った良宏の顔が蒼白になっている。それでも一歩も引かない気合が見てとれる。
「おい、岩崎君…」
「いい加減にしたらどうかね」
 心配になった富士と南原が、思わず良宏に声をかける。
「ううむ…、150万」
「200万!」
「…ええい…」
 さらに値を吊り上げようとした西沢を制したのは、事務長の南原だった。
「今夜は、うちの若手に譲ってやっていただけませんか。西沢様には、あれ以上の娘を用意しますから…」
「そうか…」
 間に入った南原の言葉に、むしろホッとしたような表情を見せる西沢に、良宏は心の中で「…勝った」と呟いた。

 部屋を訪ねた良宏を、硬い表情の朋美が待っていた。眉を引き締め、唇をキュッと結んでいる。
「久しぶりだね。元気だった?」
 館に来てから身にまとっていたクールなポーカーフェイスを捨て、良宏は昔ながらの優しい笑顔で尋ねる。
「………」
 朋美の表情は強張った表情を崩さず、無言だった。良宏が館に来てから、厳しい監視の合間にも、会話を交わすチ
ャンスは何度かあり、良宏が実際に声を掛けたこともあった。しかし、その都度、朋美は視線を合わせず、逃げるよう
にして、その場を去った。
 良宏がオークションで西沢と競ったのも、そんな朋美に接近する機会を作るためだった。
「中西産業の立場が厳しくなっていくのを聞いて、何度もお父さんに連絡をとったんだ。何か力になりたいって…、でも、
『こちらのことは心配するな、自分のことだけを考えろ』と言われたよ。実際、若造の僕には状況を変えるだけの力はな
かった…」
 良宏が苦しげな表情でそう言った。
「それでも、お父さんが逮捕され、朋ちゃんがいなくなってから、必死で情報を集めたんだ。正直、仕事上の権限を使っ
たこともある…、そして、やっと朋ちゃんを見つけ出した…」
 良宏が朋美を見る。しかし、彼女は俯き、じっと黙ったままであった。
「…そうか、話したくなければ、それでいい…」
 そう言うと、良宏はベッドに上がることなく、床にゴロリと横になった。
「じゃあ、寝るから…」
「えっ?」
 てっきり、寺山の時のようにセックスを求められると思っていた朋美は、驚いた表情で、無造作に横になった良宏を見
つめた。
「朋ちゃんも、今夜はゆっくり寝るといいよ。この部屋の監視カメラは二、三日前から原因不明の故障でね。修理に時
間がかかるから、今夜は中がチェックできないんだ」
「よ…、良宏さん…」
 朋美が駆け寄り、背後から良宏に添い寝する。少し躊躇った後、その手が良宏の股間に伸びた。
「ダメだよ…」
 股間をまさぐろうとする朋美を、良宏が押しとどめた。
「私は、慰安嬢になりました。すっかり汚れちゃったから…、だから…もうどうなっても、いいんです…」
「そんなこと言うんじゃない!」
 良宏が語気を強めて言った。
「僕はそんなことのために、ここにやって来たんじゃないんだ!」
 朋美を振り返ることなく、優しく、言い聞かせるような口調で良宏が言った。
「僕がここに来たからといって、何ができるかわからない。お互いに苦しむだけかもしれない。それでも、僕は君の近く
にいなきゃいけないと思ったんだ。ほら、いつか言っただろう…」
 良宏は一呼吸おいて、照れくさそうに言った。
「お姫様、僕はどんな時でも、きっとあなたをお守りします」
 大きく見開いた朋美の目に涙が溢れてくる。泣き笑いの表情で、朋美は何よりも大切な背中をギュッと抱きしめた。


 
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