卒業の日に



卒業の日に


 「今日で終わりなんだね。」
 手には卒業証書と後輩から送られた花束、ある者は目を潤ませ、またある者は満面の笑みで馴れ親しんだ学び舎を
見上げている。
「実感沸かないな、ついこの前入学したばかりだと思ってた。」
 そう言って風にそよぐ長い髪を手で押え、眩しそうに校舎を見渡しているのは学年、いや全校1と言って良い美少女。
「茉莉は春から赤門のエリート大学生か。才色兼備の優等生は違うよね。」
「そんな事ないよ、自分でも受かったのビックリしてるんだから。」
「那須君と同じ学校に行きたいもんね、毎日二人で遅くまで勉強してたんでしょ?」
「愛の成せる業か、でも、してたのは勉強だ・け・か・な〜?」
「もうー、由香、そういう事言うんだ」
 以前なら、軽口とは言え、那須の事を言われれば顔を真っ赤に染めて、黙り込んでしまうほど恥かしがり屋だった茉
莉も、家族から、そしてクラスメートからも祝福され、公認の恋人と認められるようになってからは、はにかみつつも嬉し
そうに答える様になっていた。
「琴美はどうなのよ?野球部の彼は?」
「え?どうって言われても・・・。イイお友達・・・だよ」
 この少女も去年の秋から野球部の男子と交際をはじめている。
野球部は甲子園地区大会決勝進出という創部以来初の快挙を成し遂げた。惜しくも決勝では敗れたものの、その原動
力となったのがこの童顔の少女を始めとするチアリーディング部の応援のおかげだと、野球部員全員が理解し誰よりも
感謝していた。
 そして引退と同時に何人もの部員が琴美を始めとするチアリーディング部の女子に交際を申し込んだのだ。
「でもさ、なんでエースでイケ面のキャプテンの交際断って、野暮ったいキャッチャーの男なんかと付き合ってるのよ?」
「ムッ!そんな事無いもん。そりゃ地味で生真面目な人かも知れないけど、人一倍努力家で誠実で、なにより本当に私
の事大切に想ってくれてるもん!」
 顔を真っ赤にし、ムキになって反論する琴美、だが直ぐにニヤケル二人を見てシマッタという表情で俯く。
「フゥ〜ン、琴美も成長したな〜。いいな〜ラブラブ♪」
「琴美よかったね」
「あ〜あ、1人モンは寂しいヨ〜」
「なに言ってるのよ由香、告白してくる男子を片っ端から振っといて」
「そうだよ、そのうち刺されちゃうよ」
 反撃とばかりに二人に詰め寄られたじろぐ由香、その視界を薄紅色が遮った。
「あっ」
 淡い紅色の花弁が柔らかな春の日差しを浴び、舞っている。
校庭に植えられた桜が満開に咲き誇っている。
もう何年もこうしてきたのだろう、巣立っていく若人たちを祝い、あるいは別れを惜しむかのように。

 門を出た所で誰と言うでなく振り返る。
 この門を、星園高校の生徒としてくぐる事は、もうない。
「私、星園高校で良かった。」
 誰が言ったのか、もしかしたら自分が言った言葉なのかもしれない、それは彼女達全員に共通した想い。
"悩んだ事もあった、悲しかった事も。ケンカもした、後悔も沢山した。"
"三年間いろんな事があった"
"けど"
"みんなに会えた"
"みんなで励ましあい"
"私は、今、笑顔でここにいる!"
気づけば、自然と肩に手をやり抱き合う3人。
"それで十分、これ以上望む事はない"

本当に夢のようだった高校生活
そう
私たちはただの高校生、明日への希望と可能性を持った、ごく当たり前の十代の少女。
そのささやかな願いが今はどんなに尊く感じられる事か。


何が狂ってしまったのだろう。
何を間違えてしまったのだろう。
分かっている、全てが夢であることは。
知っている、もうすぐ目が覚めると、辛い現実がまっていることは。


それでも、これが夢でなかったのなら
もし、ささやかな願いが叶うのなら
もう少しだけ、ほんの少しでいい
なんでもない平凡な女子高校生の自分を
夢の中だけでも
見させてほしい・・・
(イラスト&小説 by nei)


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