美鈴の強化合宿

第2章
 
「こんにちはーっ!」
 明るい挨拶の声とともに体育館のドアが開いて、数名の男がやってきた。スーツを着た男を先頭に、青いラインの入
った揃いのTシャツを着た男が4人、手にはそれぞれファイルやノートパソコン、バッグなどを持っている。
「お疲れ様です」
 スーツの男がにこやかに笑いながら、コーチの島田に声をかけた。島田は男に会釈を返すと、選手たちを呼び寄せ
た。
「全員集合!」
 掛け声に応えて、男子選手たちが島田の周りに集まる。
(えっ…、あの人たち)
 体育館の隅で蹲っていた美鈴は、思わず膝をギュッと抱いた。男子選手に加えて、新しく入ってきた男たちもこっちを
見ている。
「ほら、溝口も、集合だ…」
 島田が苛立ったような声で呼んだ。しかし、これ以上、他人の目に身体を晒したくなかった美鈴は、イヤイヤするよう
に首を振る。
「何をしている、こらっ、早く来ないかっ!」
 島田の怒声が体育館に響く。年端のいかない少女を震え上がらせるには、十分な迫力だ。
「はいっ…」
慌てて返事をした美鈴が、しぶしぶ立ち上がって、男たちの近くにやって来た。ちらりと相葉の方を見ると、その隣を避
け、池下の陰に隠れるように並ぶ。両手は、胸と股間を必死で隠している。
「アレダス技術研究班チーフの川口と申します。今回、レスリング選手の皆様に、ユニフォームを提供させていただくこ
とになりました」
 スーツ姿の男が一歩前に出て、自己紹介をした。アレダスは、有名なスポーツ用品メーカーである。スタッフが着てい
るTシャツの青いラインは、誰もが知っているメーカーのトレードマークになっていた。
「よろしくお願いします」
 島田に先導されて、選手一同頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 アレダスのスタッフも揃って頭を下げた後、川口が選手たちに尋ねた。
「そのシングレット、着用してみた感じはいかがでしたか?」
「そうですね…」
 チーム・リーダーの古河が言いよどむ横で、エースの石原がきっぱりした口調で言った。
「下半身が、妙に窮屈だよ」
 確かに、一般のシングレットと違って、明らかに股間がモッコリと盛り上がって見える。
「動くと、擦れるというか…、股間に違和感があるんだ」
 説明を続ける石原の横で、池下が何度も頷いていた。さっき美鈴とスパーリングした時などは、勃起したペニスがシン
グレットの生地に擦られて、不覚にも射精してしまったのだ。
「そうです、それこそ、狙いどおりなのです!」
 川口がしたり顔で言う。
「昔から日本では、よく褌を締め直すと申しますでしょう。これは先人の優れた知恵なのです。男性はキュッと股間を締
めた方が、足腰の力が出て、踏ん張りがきくというのが、当社の研究結果なのですよ」
「そうですか…」
 腑に落ちないながら、納得しようとする古河の隣で、石原はまだ不審そうな表情を浮かべている。その視線を避ける
ように、川口は美鈴に話を向けた。
「溝口選手は、いかがですか?」
 尋ねられた美鈴は、思い切って言ってみることにした。
「あの…、ちょっと、生地が薄くて…」
「はいはい…」
 川口がにこやかな笑みを浮かべながら、相槌を打つ。
「身体の線がでちゃうんですけど…」
「どれどれ、ちょっと見せていただいていいですか?」
 川口は少し考えた後、そう言った。
「えっ、それは…、ちょっと…」
 美鈴が激しく狼狽した。男子選手に見られただけで、死ぬほど恥ずかしかったのに、ユニフォーム・メーカーのスタッフ
にまで見られるのは、やはり嫌だった。
「…ムリです」
 そう言った途端、例によって島田の叱責が飛ぶ。
「何を言ってるんだ、ちゃんと見てももらわないとダメだろ。みなさんも、仕事でやっておられるんだ!」
 その剣幕に、美鈴は抵抗できなかった。
「…はい」
 美鈴がおずおずと手をどける。薄い布地に包まれた身体が露わになる。
「じゃあ、拝見しますね」
 川口の合図で、アレダスの4人のスタッフが彼女の周りを取り囲み、全身を嘗め回すように、検分し始めた。身体を隠
すことを禁じられた美鈴は、恥ずかしそうに両手で顔を隠す。羞恥心で膝がガクガクしていた。
「ほら、見ろ、ここ、乳首がポッチリと浮き出て、乳輪まで映ってるぞ」
「ホントだな…、ちょっと、失礼…」
 そう言いながら、スタッフは美鈴の乳輪をなぞるように指先を這わせ、乳首を転がした。
「ああっ!」
 身を捩り、思わず逃げようとする美鈴の肩を島田コーチが掴んだ
「ほら、じっとしてろ!」
「股間を見てください。割れ目に、かなり食い込んでますよ」
「アソコの毛も見えてますね」
 シングレットの薄い生地は、美鈴の淡い翳りを透かして見せている。スタッフ二人が膝立ちになり、顔を近づけて覗き
込んでいる。鼻息が何度も太腿にかかり、思わず鳥肌が立った。
「なるほど、こうなるのか…」
 そう言って、スタッフの一人が太腿の付け根から手を入れた。
「キャアッ!」
 美鈴が思わず悲鳴を上げる。
 男は布地を表裏から指先で挟んで擦ったあと、割れ目に生地が食い込んでいる様子を指先で触れて確認する。布地
の上からなぞる指が、時折、割れ目の中に埋もれていく。
(いやぁ…、こんなの…)
 美鈴は今にも泣き出しそうな顔をしている。
 股間を検分する男に、もう一人のスタッフが声をかけた。
「いろいろ修正点がありそうですね。ちょっと写真を撮っておきましょう」
「えっ…、そんな…ムリです…」
 美鈴が激しくイヤイヤをした。こんな恥ずかしい姿、裸の写真を撮られるのと、ほとんど変わらない。
「きちんと研究してもらうんだ、協力しないとダメだろう」
 美鈴の肩を掴んだ島田が言った。がっしりした手で押えられると、それだけで、逃げようと思っても、逃げることができ
ない。
 スタッフは美鈴の身体を様々な角度からカメラに収めていく。
(もう、写さないで…)
 シャッター音が響き、フラッシュが光る度に美鈴はギュっと目をつぶり、追い詰められたような表情を浮かべる。
「よし、今日のところは、これぐらいでいいだろう」
 川口が声をかけると、男たちは名残惜しそうに美鈴から離れた。
「あの…」
 美鈴が尋ねた。
「身体の線が出ないようにしてもらえますか?」
 恥ずかしさに耐えて、チェックを受けたのだ。なんとか、改良して欲しいと切実な思いで、美鈴は川口を見つめた。し
かし、川口は事も無げな調子で、こう言った。
「確かに、身体の様子がわかりますが、女子のシングレットは薄さを追求しているので、それは維持したいですね。この
ままいきましょう」
「でも…」
「オッパイやアソコが見えて恥ずかしいですか」
「はい」
 川口の言い方に、修正してもらえるかもしれないと期待し、美鈴は大きく頷いた。
「でも、大丈夫です。実際の試合では、サポーターをつけることになりますから」
 いや、そういう問題ではない、と言おうとする美鈴の切先を制して、川口は決めの発言をした。
「恥ずかしくても、練習中は我慢してください」
 口調から、それが決定だとわかる。もはや、覆ることはない。美鈴は俯いて、唇を噛んだ。
「それでは、次はシングレットを脱いで、私たちに渡してください」
 選手たちに向かって、川口が指示をする。
「えっ、ここで、ですか?」
 川下が最初に声をあげた。他の選手たちも一様に、驚きの表情を浮かべている。
「はい、申し訳ありませんね。練習直後の汗などの分泌物の様子や、体温の残り具合も含めて、調査したいのです。何
しろ、世界に勝つシングレットを作るのですから」
「いや、しかし、ここでというのは…、ちょっと…、非常識じゃないですかね」
「そうですよ!」
 古河の言葉に、相葉も呼応する。石原などは、今にも爆発しそうな怒気をはらんでいた。
「つべこべ言うな、これもシングレットの開発に必要なんだ!」
 すかさず、島田がそう言った。コーチは全て了解済みなのだ。
「バカバカしい、俺は帰るぜ!」
 肩をすくめてそう言うと、石原はさっさと出口に向かっていく。その背中に向かって島田が声をかけた。
「石原、お前は世界が欲しくないのか!」
 スタスタと歩いていた石原の足が止まった。
 レスリング界のトップ選手として、輝かしい実績を積んできた石原だが、未だ世界を相手にした試合で優勝したことが
ない。「万年2位を脱出するには、脱皮が必要」とマスコミに書き立てられ、決意をこめて、今回、島田に師事することと
なったのだ。
 石原は苦々しげな表情で振り返り、無言のまま戻ってくると、サッとシングレットを脱いだ。男子もサポーターなしで着
ていたらしく、シングレットを脱ぐと、一糸まとわぬ全裸だ。美鈴は「きゃっ」と軽い悲鳴をあげ、思わず目を逸らした。
「これでいいんだろ!」
 石原の決断は、他の選手をも動かした。男子選手たちは、シングレットを脱いで、アレダスのスタッフに渡した。
 アレダスのスタッフは、男子が脱いでいる様子には、あまり興味がないようで、みんな、美鈴の周りに集まっていた。
「さあ、溝口選手も脱いでください」
「えっ…、でも…」
 美鈴がこんな恥ずかしいシングレットでも、脱いでしまうのは、さらに恥ずかしい。
「どうしても、脱がなくちゃいけないんですか…」
「はい、お願いします」
 川口は取り付く島がない。もはや、逃げ道はなかった。
「わかりました…」
 返事をして、とりあえずシングレットの肩を抜いたものの、なかなか下に降ろせない。男たちの視線が、痛いほど美鈴
に突き刺さる。
「さあ、早く!」
 島田の声が飛ぶ。
 美鈴は胸を片手で隠しながら、シングレットを下ろした。そこで、また動きが止まる。腰のところで止まっているシング
レットを脱ぐには、胸を隠していた手を離さなければならない。
「どうしたんですか、早く脱いでいただかないと、きちんとした調査結果が出ないんですよ」
 川口が困ったような表情で言う。
「はっ、はい…」
 美鈴は、胸を隠す手をはずし、シングレットに掛けた。17歳の張りのある乳房が男たちの目に晒される。隆起の先端
には、ピンク色に色づいた乳頭がツンと飛び出している。
 アレダスのスタッフも、その後ろにいる男子選手も、美少女が裸になっていく様子を、固唾を飲んで見つめていた。
 シングレットが、細い腰からヒップへと降ろされる。キュッとしまった双臀が現れた。美鈴は、片手で股間を隠しなが
ら、片足づつシングレットを抜いていく。剥き出しになった肌が、羞恥心で真っ赤に染まていた。
「脱いだシングレットを見せてください」
 美鈴からシングレットを受け取ると、アレダスのスタッフたちは目の前に広げ、順番に手にとって、調べ始めた。無造
作に機械を当てたりしていた男子のシングレットとは、明らかに扱いが違う。中には、顔を近づけて、匂いを嗅いでいる
者までいる。
「おや…」
 股間の部分を指で触っていたスタッフが、他のスタッフに声をかける。
「ほら…、ここ、染みになってる」
 美鈴がハッとした表所を浮かべた。思わず駆け寄って、シングレットをひったくりたくなるのを、必死の思いで押えた。
「汗の染みじゃあ、ありませんよね」
「そうだな…」
 スパーリングで男子と組み合い、相葉に身体を弄られ、男たちに全裸同様の姿を検査されたことで、彼女の性器は
濡れてしまっていた。それは、気持ち良くなったというよりは、身体の反射的なものだったが、それを他人に知られるこ
とは、年頃の少女にとって、死ぬほど恥ずかしいことだった。
「ふむふむ、なるほど…」
 そんな美鈴のことを気にする様子もなく、スタッフたちが交互にクロッチの部分に触れて湿り気を確かめ、匂いを嗅
ぎ、時折、ちらりと美鈴の方に視線を投げる。彼女は、今すぐ消えてなくなりたい思いに耐えていた。
「では、今夜ゆっくり調べさせていただきます。明日、練習前に新しいユニフォームをお持ちします」
 美鈴のシングレットを大事そうに鞄に入れて、川口がそう言うと、他のスタッフたちも一礼して、体育館から出て行っ
た。
「これで、午後の練習は終わりにする。食事の後、ミーティングとイメージトレーニングを行うから、ミーティング・ルーム
に集合すること」
「はい、ありがとうございました!」
 一同が礼をした後、古河が島田に尋ねた。
「コーチ、この格好で部屋まで帰るわけにはいきません。着替えはどうすれば…」
 質問を最後まで聞くことなく、島田が答えた。
「着替えなどない。それに、部屋に帰っても、着るものは何もないぞ」
「えっ!」
 選手たちが驚きの声をあげる。
「どういうことですか?!」
 石原が噛み付くのを全く意に介することなく、島田が答えた。
「お前たちが持ってきた服は全て、事務局で保管してもらっている。この合宿の間、練習でシングレットを着る時以外
は、常に全裸で生活するんだ」
「それは、ないでしょう、非常識だ!」
 さすがの古河も気色ばんでいる。しかし、島田は怯まない。
「古代ギリシアにおいて、レスリングは全裸で行う競技だった。私は、そこにレスリングの原点を見出した。現代社会の
呪縛から解き放たれて、原点に戻ることが重要なのだ。全裸になって、24時間、肉体そのものの感覚を磨き、精神を
鍛え上げる。これこそ、私の訓練法の真髄…」
 普段の無口さが嘘のように、朗々と自説を語る島田にあっけにとられながら、男子選手は既に諦めの表情を浮かべ
ている。その中で、美鈴は一人、不安げな表情で島田や男子たちの顔を見渡していた。
 それに気づいたように、島田が美鈴に宣告する。
「いいか、溝口も全裸で生活するんだぞ。女子だからと言って、特別扱いはしないと言ってあっただろう」
 予想どおりの島田の言葉に、美鈴は目を見張り、真っ赤に染めた顔を弱々しくタテに振った。



 
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