公園の泡姫
 
第2章
 
「ホントか、久志?」
 男は、頭をボリボリと掻きながらそう言った。長い間着替えたことがないらしく、色も柄も判然としない煮染めたような
服を着ている。ぼろぼろの服はところどころ破れて、垢だらけの肌を覗かせていた。
「嘘じゃねぇって、親父さん。まあ、来てみろや!」
 相方の男がそう言った。こちらは、まだ若く、着ているシャツとジーンズもそれほどは、汚れていない。
 二人は缶拾い仲間である。松吉は五十代、久志は二十代。親子ほど年が離れているが、なぜか馬が合った。公園の
ホームレスたちも、この年代が最も多い。長期間ホームレスから抜け出せない五、六十代と、最近の経済危機による
「派遣切り」で職を失った二、三十代だ。
 二人が近づいてくると、公園にいた人たちは、そそくさと遠ざかっていく。まるで、見てはならない物を見てしまったか
のように視線を逸らしながら…。

 午前中の講義を終えた明日香は、金盥を抱えて公園にやってきた。犬飼に与えられたホームレスの体を洗う課題は
5回。今日はその3回目にあたる。
 いつもの水飲み場付近には、既に長蛇の列が出来ていた。公園で身体を洗ってくれる明日香のことは、ホームレス
たちの間で話題となり、多数のホームレスが集まっているのだ。
 表情が強張りそうになるのを、頬を撫でてほぐす。ボランティアは、どんな時にも笑顔が大切だ。
「こんにちは、明日香ちゃん」
 ホームレスたちがニコニコしながら、声をかけてくる。明日香の方も「こんにちは」と優しい笑顔で答えた。身体を洗う
日以外も、彼女は時折、生活支援でテント村に足を運ぶようになっていた。人間的な触れ合いを作ることで、犬飼の課
題に対する気の重さが、少しだけ和らいでいた。
 明日香はブルーシートを地面に敷き、服を脱ぎ始めた。
 男たちが見つめる前で、明日香がブラウスのボタンを外していく。一つ二つとボタンが外されるたび、胸元が露出して
いく。三つ目のボタンが外され、双乳を包む白いブラジャーが露わになった。
「あんなカワイイ娘とデキるのか!」
 久志に連れられて水飲み場までやってきた松吉は、驚きの声をあげた。
 身体を洗うと言っても、普通にタオルで洗うだけではなく、可愛い女の子がソープ嬢のように自分の身体を使って洗っ
てくれ、本番にも応じてくれるというのだ。半信半疑で来てみたが、本当に、目の前で若い女の子が服を脱いでいる。既
に下着姿になっている娘は、頭がおかしい様子はなく、その表情はむしろ賢そうに見える。清楚で、それに何より美人
だ。
 ブラジャーのホックが外された。胸元ではずんだ双乳は、瑞々しい白桃を彷彿とさせた。裾野が描く丸いカーブも、ツ
ンと上を向いた膨らみも、ピンク色の乳首も、官能的でありながら、初々しい。ホームレスたちは、ポカンと口を開けて、
それを見つめている。
「あんな娘が…、ホントかよ?」
 松吉が驚いているうちに、彼女はとうとうパンティを脱いでしまった。匂い立つような草むらが見えている。
「お尻なんか、ゆで卵みたいだぜ」
 スベスベのお尻を見て、松吉が歓声をあげた。久志も「うんうん」と頷いた。
 準備を整えた明日香の前に、一人目の男が立った。よれよれのスーツは、以前の彼が会社勤めをしていたことを窺
わせる。何日も頭を洗っていないのか、脂と埃で絡まった髪の毛にフケが浮いていた。
「初めての方ですね…」
 優しく尋ねる明日香に、男は無言で頷いた。揉め事を避けるために、ホームレスたちは、前回からくじ引きで順番を
決めるようになっていた。それでも不満は隠せず、今日の一番を引き当てた新顔を、以前からの住人たちが睨んでい
る。
 新顔だと一目でわかったのは、その汚れからだ。
 明日香が来るようになってから、この公園に住んでいるホームレスたちの様子が変わり始めた。どことなく身奇麗に
する者が増えてきたのだ。
「せっかく明日香ちゃんに洗ってもらうのに、あんまり汚いと申し訳ないから…」
 照れ臭そうにそう答えた男は、先週、仕事を見つけてホームレスを抜け出していった。失業が原因で離婚し、生きる
張りを失ってホームレスになった彼は、明日香と肌を合わせたことで、生きていく自信を取り戻したのだった。
 それでも、不況の深刻さと政治の無策は、公園の住人を増やす一方だった。完全失業率は5%台で高止まり、失業
者数は増加し、有効求人倍率は過去最低水準を更新している。一番手の男もそんな「新顔」の一人らしい。
 汚れた頭を洗ってやり、普通にタオルを使って男の体を洗った後、明日香はボディソープを手にとった。タオルは既に
真っ黒になっており、一人ごとに使い捨てにせざるを得ない。金盥にも垢がびっしりと浮いている。
 ボディソープをたっぷり胸に塗りつけると、明日香は、座っている男の背後から抱きつくようにして、泡まみれの身体を
密着させる。乳房を使って男の背中を洗うのだ。
「おう、おおっ!」
 男が戸惑いと喜びの入り混じった声をあげる。ヌルヌルした感触とともに、柔らかな肌が押し当てられ、乳首が背中に
妖しい軌道を描いていく。
「失礼します…」
 明日香の手が伸び、男のペニスを両の掌ですっぽりと包んだ。明日香の手に握られた肉棒は堅くなり、天を突いて勃
起している。彼女は、しなやかな手で上下にしごくようにして、それ洗った。
「ううっ…」
 呻き声とともに、男の怒張がビクンビクンと跳ねる。
「こりゃあ、すげえ!」
 口をポカンと開けて見ていた松吉が、思わずそう叫んだ。
 明日香は、男の前に回る。女らしい薄い掌と細い指が、肩や首筋を丁寧に洗っていく。
 再びボディソープを手にとった明日香は、それを泡立てて自らの股間に塗り込んだ。そして、男の膝に乗り、陰部を擦
り付けるようにして、膝から腿を洗っていく。ソープを含んだ陰毛と柔らかな肉襞の感触が男をゾクゾクさせる。
 男の目の前で乳房が揺れる。美しく揺れるバストに、思わず男は手を伸ばしそうになり、慌てて手を引っ込めた。
「いいですよ。どうぞ…、触ってください…」
 明日香は男の手をとって、自分の胸にあてがった。
 キメの細かい柔肌を確かめるように撫でた後、男の手は膨らみを揉みしだいて、柔らかさを味わう。手のひらの中
で、双乳がぷにゅぷにゅと形を変える。太腿の上で明日香の腰がくねっている。
 次は両手である。腕を股間に挟んで洗った後、泡まみれになった指を一本ずつ膣内に入れて壷荒いする。
 興奮した男は、差し込んだ指をかぎ型に曲げ、媚肉をグルグルとかき回した。
「ううっ…、ああん…」
 明日香が目を瞑り、呼吸を荒くして腰をくねらせた。膣が収縮し指を締め付ける。男は肉襞をこねくりまわしては、淫
らにズポズポと抽送する。
「ああっ…、あまり激しくしないで…、洗えません…」
 たまらず腰を左右にローリングさせながら、明日香が喘ぎ声で哀訴した。
「おい、すごいぜ、こりゃあ!」
 松吉が興奮した声をあげた。

「あなたも、初めてですね…」
 そう言って、明日香が松吉の前に跪いた。松吉は7番目を引き当てた。洗ってもらえるのは十数人が限界だ。これだ
けのホームレスが集まるようになると、もとから見物するだけの者を差し引いても、文字どおり貴重な「ラッキー7」であ
る。
 明日香は松吉の足を捧げ持つようにして、丁寧に舐め洗いしていく。自分の足指の一本一本を口に咥えてしゃぶる
美少女の姿に、松吉の優越感が刺激される。こうした優越感が、それまで社会から痛めつけられてきたホームレスた
ちを癒すのだ。
 明日香の両手が松吉の陰茎を柔らかく掴み、唇の先でそっと触れた。美しい唇を割って出た舌が亀頭を這う。
 松吉は、明日香が己の男根に舌を触れさせたことに感激した。可愛い女の子に舐めさせていると思うだけで、自然と
血流が下半身を痺れさせる。
 明日香が鈴口を舌で突付き、カリの裏側へと舌を這わせ、びっしりと溜まった恥垢をきれいに舐め取っていった。
「ふぅーっ…」
 松吉が深い息を吐いた。明日香が勃起した肉棒の裏に舌を這わせ、丹念に舐め上げる。濡れた、温かい感触が伝
わってくる。
「気持ちいいですか?」
 上目遣いで肉棒を舐めながら、明日香が尋ねた、
「い、いいよ、気持ちいいよ…」
 松吉が歓喜の声をあげた。有頂天になるほど、いい気分だった。
 相手にそう言われると、明日香の心に、妙な高揚感が湧き上がってくる。明日香は上目遣いのまま、肉棒の先を唇に
含んだ。
「んふん…うふん……」 
 明日香は夢中でフェラチオに励んだ。怒張を口に含み、自分の唾液でネットリと濡れる竿を手で擦りながら、先端を
吸う。



 普通のボランティアではなく、淫らな肉体奉仕だと言うのに、相手を喜ばせていることに、どこか満足感を感じてしまう
のだ。無理矢理させられているはずの淫らな行為なのに、もっと奉仕したいという感情が湧き起こってしまう。
 明日香はゆっくりと頭を前後に揺すり、優しく舌を使って刺激を与え続ける。サラサラの髪が揺れ、クチュッ、クチュッ
と唇から卑猥な音が漏れる。
「ううっ…、いいっ、すごくいいっ!」
 男の声を聞きながら、明日香はもっと感じてもらおうと、怒張を唇で強く挟み、舌を絡めながら顔を前後に揺する。頬
を窪ませ、内側の粘膜で男根を擦り、出し入れを激しく行う。
 その一方で、なぜそうしてしまうのか、困惑する自分がいた。

「ねえ、この臭い…」
 麻里子が鼻と口で手を押さえた。
「風下だからかしら、ここまで臭ってくるなんて」
 夏希が思いきり顔をしかめた。テント村はずっと先なのに、動物園のような悪臭がただよってくる。
「犬飼先生ったら、ひどいよね。うら若い女子学生に、ホームレスの実態調査をさせるなんて!」
 気の強い優美が憤慨した様子で言う。三人とも明日香の同級生であり、社会福祉学の課題でこの公園のホームレス
を調査するよう、担当講師の犬飼美千代に指示されたのだ。
 しばらく行くと、水飲み場の周りに多数のホームレスが集まっているのが見えた。臭いはそこから漂ってくるのだ。
「何、すごい人ね…」
 少し恐怖を感じた様子で夏希が言う。
「もう帰ろうか?」
 気の弱い麻里子は既に逃げ腰だった。
「そんなことしたら、犬飼に叱られて、もっと嫌な課題を出されちゃうよ!」
 優美がそう言うと、二人も大きく頷いた。
 とにかく近寄って見ようということになり、三人はおっかなびっくりの足取りで前に進んだ。
「えっ!」
 夏希が驚きの声をあげた。
「何、あれ!」
 信じられない光景に麻里子が絶句する。
「もう少し近くに行ってみよう…」
 優美が水飲み場に近づいていく。
「優美、ちょっと待って!」
 他の二人が慌ててその後を追った。
 優美が息を飲んで立ち止まった。裸の女がホームレスの上に跨がっているのが見えた。下腹部の淡い翳りの下で、
勃起した肉棒が出入りしている。白昼の公園でセックスしているのだ。
「ああっ、ああん…」
 喘ぎ声が聞こえてくる。若い娘がすすり泣くような声を漏らしながら、腰を激しく振っている。目の前で繰り広げられる
異様な光景に、優美のたちは驚きのあまり瞬きさえも忘れていた。
 男に跨がって身をくねらせる娘の姿を呆然と眺めていた夏希が、ふいに凍ったような表情で呟いた。
「ねえ、あれ、まさか…」
 それは、見覚えのある娘だった。
 娘が三人の方にボウッと朱に火照った顔を向けた。お互いの視線がぶつかる。
「えっ…、明日香…?」
 麻里子が息を飲むようにして呟いた。それは間違いなく、同級生の藤原明日香だった。
(麻里子、優美、夏希…、どうして…)
 明日香は動揺を隠すことができなかった。無意識に下腹部に力が入り、膣内の肉棒を締め上げる。
(最高だぜ!)
 松吉は血液が股間に流れ込むのを感じていた。明日香の収縮する膣がまるで血液を呼び込んでいるかのように、怒
張が熱くなっていく。もっと強い快感を求めて、松吉が腰を突き上げた。華奢な肢体が揺れる。
(ああ…、み、見ないで、見ないでぇ…)
 明日香はギュッっと目を瞑り、声が漏れないように歯を食い縛った。
「いいよ、ああ…、すごく気持ちいい…」
 松吉が激しく腰を振り続ける。明日香のしなやかな肢体が上下動する。
「うっ…、い、いっ、だめっ…」
 明日香が仰け反るように喉を伸ばした。松吉の手に鷲掴みにされた胸の膨らみが淫らに形を変える。激しく突き上げ
てくる怒張に膣壁が擦られ、明日香の頭が真っ白になった。
「ん、んっ、んんん…」
 明日香の唇からくぐもった声が漏れ、全身を痙攣させた。
「ちょっと、明日香よ、あれ!」
「えーっ、ウソおっ!」
 三人が驚きの声をあげ、ホームレスたちが一斉に彼女たちの方を見た。
「おっ、姉ちゃんたちも裸になって、身体を洗ってくれるんか?」
 ホームレスの一人がそう声をかけ、ニッと歯を剥き出した。口元から覗く歯は、黄色いのを通り越して褐色に見えた。
三人は悲鳴をあげてその場を逃げ出した。
(見られちゃった、どうしよう…)
 とんでもないハプニングに、明日香は真っ赤に染まった顔で俯いた。



 
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