テニス少女・果てなき闘い 第1章

 着替えを終えてグラウンドに出た美奈は、穏やかな日差しに目を細めた。見上げた空は青く澄みわたり、時
折吹き抜ける風が秋の終わりを告げていた。
 冬の足音を感じさせる冷たい空気に、上だけ羽織ったジャージのチャックを上げた時、美奈はふと、胸を締
めつけられる思いを感じた。
 毎年この時期には大きな大会が開かれ、その成績によって強化選手に選ばれたり、国際大会への推薦が受け
られる。しかし、今年の自分には大会の日程すら知らされていない。
 女子高校生、テニスプレイヤーとして当たり前だった生活から切り離され、この数か月、美奈の人格と尊厳
は徹底して踏みにじられ、否定され続けた。
 他のライバルが大会に向けて練習に明け暮れている大切な時期に、自分は男の性欲を満たすための筆舌に尽
くしがたい恥ずかしい訓練を施され、テニスとは名ばかりの屈辱的な練習や試合を重ねてきた。全ては生きる
ため、仲間を守るためとは言え、虚しさや悲しさはどうしようもなく募り、アスリートとして遅れをとってい
るという焦りがじりじりと胸を焼く。
「キャプテン!」
「有岡先輩!」
 声をかけてきたのは千花と明穂だ。
「寒くなってきたから、このジャージうれしいです。ありがとうございます」
 千花が頭を下げた。露出度の低いジャージなど、本来、この館では許されない。しかし、美奈は慰問試合で
の奮闘を主張し、館長の諸藤と直談判して支給を認めさせたのだ。仲間たちが寒さで体調を崩さないようにと
考えたからだ。
「女の子は身体が冷えやすいんです。身体が冷えると、免疫力も下がります。慰安嬢が身体を壊しては、館と
しても困るんじゃあ、ありませんか?」
 そう言う美奈の主張は、医療スタッフなどの管理側にも一定の共感を広げ、結果、ジャージの支給をはじめ
として、様々な防寒対策がとられるようになった。
「他のクラブの子からも、お礼を言われました」
 明穂が誇らしげに言う。ジャージの支給は、テニス部員だけではなく、体育科の全員が対象になったのだ。
「そう…」
 美奈はニッコリと笑った。それが何であれ、自分の努力が形になったことはうれしい。
(焦っても仕方がない、今は少しずつでも、自分ができることやるだけ…)
 美奈は心の中でそう呟いた。

 岩口基地を皮切りに3か所の基地を巡った慰問試合から戻って、既に2週間が経った。慰問試合を成功させ
た面々は、あるいは館の中での発言力を増し、あるいは処遇上のメリットを受けるようになった。松川もテニ
ス部の雇われコーチという立場から、館の幹部の一人に加えられた。
「チーフ、お手紙をお持ちしました」
 部室棟の中に新しく設けられた松川のオフィスに手紙を運んできたのは、20歳代後半と見られる女性であ
る。慰問試合の成功を経て強化されたテニス部には、新たに3人のコーチが迎えられ、松川がチーフとしてそ
れを統括する体制となった。そのうちの一人が彼女である。
「おっ、原田、ご苦労様」
 そう言いながら、松川の手が女性のお尻を軽く撫でる。
「キャッ、もう…、やめてください!」
 そう言って松川を軽く睨むものの、その様子には媚態が入り混じっている。彼女は原田晴亜と言い、松川の
教え子にあたる。容姿は十人並み、テニスの腕前もほどほどだが、松川と妙に波長が合った。大学卒業後、テ
ニスのインストラクターをしていたところ、今回コーチとして館に呼ばれることになった。もちろん、松川と
は肉体関係がある。
 ニヤニヤ笑いながら原田を見送った松川は、待ちに待った封筒を開けた。送り主は、全日本テニス連盟だ。
中に入っていた「理事選挙について」という文面に、松川の視線が吸い寄せられた。候補者の欄に自分の名前
を確認して、満足の笑みを浮かべる。
「やっぱり、敵はこの御仁か…」
 候補者の氏名をざっと見た松川は、自分がたたかうべき相手が誰なのかを理解した。
 日比谷信夫。かつては名選手と呼ばれ、テニスの実績は文句なし、一流選手を多数育てた後進の育成にも定
評がある、性格温厚にして人格高潔。相手にとって不足はない。

 ランニングを終えたテニス少女たちは、テニスコートで整列すると、準備運動を始めた。テニス部の練習に
は、以前にも増して大勢に観客が訪れるようになったが、集まった観客から一斉にどよめきが起こる。
 花も恥らう美少女たちが、いきなり自らの手でテニスウエアの胸を揉みしだき、スコートに手を入れて股間
を撫で始めたのだ。驚いた観客たちは一様に、目を皿のようにして、いきなり始まった少女たちの集団オナニ
ーを見つめている。
「…うんっ…」
「あぁ…」
 しばらくすると、あちこちで甘い声が漏れ始めた。中にはウエアやアンスコに手を入れて、直接身体を弄っ
ている者もいる。部員たちは恥ずかしさで顔を真っ赤にしていたが、淫らな行為をやめるわけにはいかなかっ
た。練習開始時には、十分に性器を濡らして待つようにというのが、新しく来たコーチ、玉田万純の指示なの
だ。
「よろしくお願いします!」
 やがて、コーチが登場すると、テニス少女たちは服を調えて改めて整列し、声を揃えて挨拶した。さっきま
で展開していた狂乱が嘘のような清楚さだ。
「よろしく!」
 やや甲高い声で玉田が答えた。小柄でがっしりしたマッチョ体型、ゲジゲジ眉毛にギョロリとした目、大き
な鼻に厚い唇という濃い顔立ちのこの男は、意外にも理論派で、スポーツ医学の専門家である。新体制のもと
で、筋力トレーニング等を主に担当する。
「今日は、これを装着して練習します」
 そう言って、一人ひとりに渡されたのは直径3センチ、長さ十数センチ程のステンレス製の棒だった。両端
と真ん中付近に丸いボールのような部分があり、手にするとずっしりとした重さを感じる。
「これは、PCマッスルを鍛える器具です」
「PCマッスル?」
 美奈が怪訝そうな顔をした。「精神論ではなく、科学的・合理的なトレーニング法を採用する」という恵聖
学園の方針のもとで、アスリートとして必要な医学生理学の基礎知識を身につけていた美奈だったが、聞いた
ことのない言葉だった。
「女性は恥骨から肛門にかけて、男性で言えば肛門から前立腺にかけての筋肉で、括約筋とも呼ばれます。こ
の筋肉を鍛え、コントロールすることが出来るようになると、膣が締まり、オーガズムも深まると言われてい
ます」
 部員たちの表情が、見る見るうちに曇っていく。やはり、テニスのための訓練ではないらしい。
「これは膣バーベルと言って、オ××コに入れてPCマッスルのトレーニングをする物です。みんな、すっか
りオ××コを濡らして、準備はできているでしょう。さあ、アンスコを脱いで、これを入れなさい」
「………」
 部員たちの中に躊躇が走った。女の子としては当然のことながら、性器の中に見慣れない異物を入れること
には、やはり抵抗がある。戸惑う部員たちを、玉田が一喝した。
「返事は?!」
「ハイっ!」
 反射的にそう返事をすると、少女たちは諦めてアンスコを脱ぎ、濡れた性器にバーベルを当てがった。
「膣バーベルは実際に市販されているものなので、怖がる必要はありません。ただ、君たちに入れてもらうの
は市販品の倍の1キロの重さがあります。なにしろ、君たちはセックスでお国に奉仕する慰安嬢なのですから
ね」
「ヒッ…」
 ヒヤッとする感触に、恭子が思わず声をあげる。
「ステンレスの、その冷たい感触が、PCマッスルを自然に収縮させます。膣に緊張感をもたらして、しっか
りと握っている、という感覚が膣に分かるようにする効果もあるのです」
 玉田がニヤリと笑って、解説した。エラの張った四角い顔、マッチョな外見に似合わない丁寧な口調が、独
特の気持ち悪さを感じさせる男だ。
 部員たちが、先端についている大きい方のラージボールを恐る恐る膣内に入れる。観客たちは好奇心に満ち
た視線で、少女たちが膣バーベルを挿入するのを見つめていた。
「基本的なトレーニング方法を教えますよ。まず、手で軽く抑えながら、深呼吸をし、膣の力を使って、バー
ベルを引き上げたり、抜いたりしてみなさい。…そう、そして、慣れてきたら、手を使わずに、同じように膣
の力を使って、出したり引いたりします」
 少女たちはずっしりと重いバーベルの違和感を感じながら、玉田の指示に従った。
「今日の練習が終わるまで、常に今のトレーニングを意識して行うように。それと、くれぐれもバーベルを落
とさないように。では、次は馬跳びです」
 三つのグループに分かれて列を作った部員たちは、最初に跳ぶ一人を除いて、前屈みになり、両手で足首を
掴んで馬になる。膝は伸ばしたままで、お尻を高く突き出した格好になった。
「おおっ!」
 観客の声が上がった。並んだ馬に銀色の尻尾が生えている。ぷっくりした大陰唇が露わになり、濡れた割れ
目を押し開いて、太いステンレス製のバーベルが埋め込まれている様子が、なんとも卑猥で刺激的だ。
 玉田が少女たちの列に近づく。最後尾でお尻を丸出しにしているのは、いずれも三年生。朋美、千春、そし
て美奈だ。玉田の目がキラリと光り、美奈に近づいてくる。
「有岡、PCマッスルのトレーニング!」
 玉田がぴしゃりとお尻を叩く。
「はい!」
「膣に力を入れて、センターボールまでバーベルを飲み込みなさい!」
「はい!」
 唇を噛み締めて、美奈が膣口をきつく締めたり緩めたりを繰り返す。きれいなピンク色をした肉襞がピクピ
クと動き、括約筋の力だけでバーベルが徐々に膣内に入っていく。そうしているうちに、中央のボール部分が
中に埋まった。
「ほう…、一発で決めるとは、さすがだね。この半分の重さでも、センターボールまで飲み込むのは、普通の
女の子なら一か月はかかるんだが。毎日、男のチ×ポを何本も咥えて、精液を搾り取っている慰安嬢のマ×コ
は違うよね」
 嬲るような玉田の言葉に、美奈は屈辱で顔が熱くなるのを感じた。自分は「普通の女の子」ではないと言わ
れているのだ。
「次は、膣の力を抜いて、ラージボールの根元まで出してみなさい」
 美奈が深呼吸して力を抜くと、バーベルはぬるりと滑って、先端についた大きなボール部分の手前まで飛び
出した。
「よし、もう一回飲み込みなさい」
 玉田は美奈に、バーベルの出し入れを何度か繰り返させた。観客が息を飲んで、それを見ているのがわか
る。目を見張る程の美少女がお尻を丸出しにし、銀色に輝く太い棒を自らの膣の動きだけで出し入れしている
姿は、男たちの興奮をかき立ててやまないものがあった。ましてや、彼女は「テニス界のプリンセス」と呼ば
れた国民的ヒロインだ。
「よし、他の者も有岡を見習って、馬になっている間はバーベルの出し入れを続けなさい」
 そう言って玉田がスタートのホイッスルを吹いた。
 一人目がスタートする。跳び終えたらすぐに自分も列の先頭で馬になり、次は最後尾で馬になっていた子が
跳んで、どんどん前進していく。そうして、コートの周りを10周することになっているが、もし、誰かがバ
ーベルを落としたら、そのグループは、さらに1周が追加される。
 美奈の列を飛ぶのは明穂だ。
「あっ…」
 明穂が思わず声を漏らした。走り始めると、股間にずっしりした重みを感じ、思い切り違和感がある。気を
抜いたら、バーベルが抜けて落としてしまいそうだ。それが気になって、うまく走れない。
 気がついた時には、美奈の背中がすぐ近くにあり、中途半端な踏み切りになってしまった。
「うぐぅっ!」
 明穂の呻き声が聞こえ、美奈の背中に拳で殴られたような衝撃があった。一瞬呼吸が止まりになるのを堪え
て、ゆっくり立ち上がると、明穂が地面に蹲り、股間を押えて悶絶している。
「明穂、大丈夫?!」
 自分の背中の痛みなど気にせず、美奈が明穂の肩を抱く。頷いてみせる明穂だが、目に涙が滲み、痛さのあ
まり声が出せない様子だ。美奈の背中に乗った時に、おもいきりバーベルを膣内に突っ込まれたのだ。
「全部埋まっても膣を傷つける程の長さはないですからね。しばらくじっとしていれば治まるでしょう。です
が、気をつけて、しっかり飛ばないと危ないですよ」
 冷酷な玉田の言葉を耳にして、美奈がキッとその顔を睨む。一瞬、ひるんだ玉田だったが、同時にゾクゾク
する気分を味わっていた。そして、心の中で呟いた。
(そうそう、この顔です…、この子は、すっかり忘れているようですがね…)

 少女たちはぐったりとした身体を引きずるようにして、部室に入った。練習が終わった時に膣バーベルは回
収されたもの、今も何かが股間に挟まっているような感じがする。結局、今日の練習では筋力トレーニングば
かりで、ラケットやボールに触れることすらなかった。
「酷い練習だったわ…」
「…あたしたち、何をしてるのかしら…」
 部員たちからそんな声が漏れる。2時間以上、ずっしり重い金属の塊をお腹の中に入れられていたことは、
括約筋の疲労と同時に、少女たちのメンタル面にダメージを与えているようだ。
「あのいやらしいバーベルはともかく、筋トレで身体を鍛えておくことは無駄じゃないわ」
 美奈が部員たちを元気づけるように言った。
「ほら、前に冴子も言ってたじゃない、全ては来るべき日のための準備…」
「那珂さんの話なんか、聞きたないわ…」
 千春がポツリと呟いた。冴子が海外トーナメントの選手に選ばれたことで、彼女に不信感を持っているの
だ。美奈の表情が曇った。
「冴子のことだもの、何か考えがあるのよ。信じてあげましょう」
 美奈が説得するような口調になる。普段はおっとりしていて、人の悪口など言うことのない千春の言葉だけ
に、事態は深刻だ。ここで仲間割れをすることは絶対に避けなければならない。
「森脇さんも言ってたじゃない、冴子、相当酷い目にあったって…」
 テニス部が慰問試合に出発した日、冴子は全校生徒と集まった訪問客の前で、公開お仕置きにされた。グラ
ウンドの真ん中で全裸にされ、陰部を剥き出しにした格好で縛り付けられた冴子は、まる一日、様々な凌辱を
加えられたという。その果てに、息も絶え絶えの状態で館長の前で土下座し、館に逆らったことを反省し、服
従を誓ったと言うのだ。
「那珂さんのことを悪く思わないであげて。本当に酷くって…、もし他の子だったら、死んじゃうか、頭がお
かしくなってたぐらいなの」
 慰問から帰って来た美奈、千春、朋美をこっそり呼び出した生徒会長の森脇亜弓は、目を潤ませて、そう説
明した。具体的なことは言わなかったが、あのタフな冴子が屈服したのだから、その苛烈さは想像に難くな
い。
「そやけど、それにしては、早すぎると思わへん?」
 千春が、彼女にしては珍しく、意地の悪い表情を見せる。公開お仕置きの翌日には、冴子はトーナメントの
選手に選ばれ、記者会見までやっている。亜弓は「逆らう者にはムチを、従うものにはアメを与える」という
他の慰安嬢に対する見せしめだと言うのだが、それにしても極端すぎると千春は言うのだ。
「千春…」
 美奈はそれ以上、説得の言葉を持たなかった。冴子は既に代表選手の強化合宿に出掛け、館にはいない。彼
女が帰ってきてから、直接、話し合うしかなさそうだ。

 翌日の練習は、試合形式で行われた。
 淫らなサービスを期待して館を訪問している男たちも、やはり有岡美奈のテニスは見たいと思わせるだけの
ものがあり、週に一度は、コーチたちや腕自慢の訪問客を交えた練習試合が行われる。ただし、美奈と対戦し
てまともに試合になるのは、依然として、千春、朋美、そして松川だけであった。
 最終戦、美奈と千春がコートに入ると、観客から大きな拍手が起こった。
「ワンセットマッチ、プレイ!」
 審判台に座った松川が大きな声でコールし、美奈が引き締まった表情で、レシーブの態勢を取った。中腰に
なって股を開き、男根を模したグリップを、先端がめり込むほど割れ目に押し付ける。観客のひやかすような
歓声が聞こえるが、一切気にしない。
 慰問試合を経験した後、美奈は、不本意な館のルールに従いながらも自分の納得するプレーを目指すことを
考えるようになった。どんな形であれ、ボールとラケットに接することの出来る貴重な時間を生かし、一球一
球を大切にすることで、自分はまだ何も諦めていないことを自分自身に示しておきたかった。
 千春がサーブの動作に入った。
 昨日、冴子の件で千春と言い合ったことを思い出すが、美奈は慌てて頭を振った。プレー中は余計なことを
考えてはいけない。
 トスがあがり、ボールが美奈のコートに飛び込んで来た。
 千春のサーブはスピードこそ美奈には劣るが、際どいコースを突いて来る。しかし、美奈は慌てることな
く、上半身の力を抜き、重心移動とフットワークを素早く、そして正確に行う。
 美奈のスコートが大きく捲くれ、白いアンスコに包まれたお尻と、割れ目の食い込みを見せるVラインが露
わになった。館のルールでは「エロが足りない」と言ってポイントが認定されないことがあるが、動きに余裕
が出来れば、プレー中にスコートの中をわざと見せるくらい問題なくできる。
 軸足を踏み込み、腰を軸にラケットを振り抜く。ノーブラでウエアを着ているため、乳房が大きく揺れて、
観客の目を楽しませる。しかし、美奈に動揺はない。全身を使ったショットでは、ブラで固定されていない胸
は揺れて当然、むしろ、揺れ方が毎回同じあればフォームが安定している確認にもなる。
 千春の放ったコーナーいっぱいのサーブにも難なく追いつくと、逆に美奈の鋭い角度のリターンが決まっ
た。どれもテニスの基本、それ故、極めれば館のルールに従いながらも自分が納得するプレーは出来るのだ。
 リターンエースでもおかしくないショットだが、さすが千春だ。なんとかボールに追いつくと、態勢を変え
て美奈の隙をつくコースに返してくる。
(このショット…)
 美奈の記憶が蘇える。かつてこれを何度か決められ、試合をひっくり返されたことがある。
(千春…)
 千春も自分のテニスを諦めていない事を確信した美奈は、心からうれしくなった。自分達はまだまだ大丈夫
だ。
 以前ならダッシュが遅れ、追いつかなかっただろう。しかし、この間の過酷な状況のもとで、神経を研ぎ澄
ませてきた美奈は、かつての様に油断することなく次の動作に移っていた。狙いは反対側のガラ空きのスペー
ス、しかもラインギリギリを狙いフルスイングのショットを放つ。
 狙い通りのコースにボールが吸い込まれていく、相手は一歩も動けない。ギャラリーからひときわ大きな歓
声が上がり、美奈も自然とガッツポーズが出た。
 何事も前向きに考え最善を尽くし努力すること、これが自分を見失わずここで生き抜くため美奈が選んだテ
ニスだった。
「美奈、美奈、美奈!」
 観客が彼女の名前をコールし、手拍子を始めた。ポイントが認められるためには、アピールが必要だという
のが、館のテニスの最大のルールだった。
 それは、テニス少女たちにとって、自分たちがやっているテニスが見世物であることを思い知らされる、最
も辛いルールである。審判と観客に自ら卑猥な格好をして見せ、それによって得られるポイントが変わるの
だ。
 美奈の頬が染まり、唇を噛み締めた。さすがの彼女でも、羞恥心を乗り越えるためには、何らかのエネルギ
ーが必要だ。彼女はそれを「怒り」に求めた。
(思い出せ、有岡美奈。これまで自分達がされたこと…)
 思い出すだけで恥ずかしくて悔しくて、死にたくなるほどの経験を脳裏に浮かべると、その理不尽さに強い
怒りが込み上げてくる。激情で手が震え、怒りの感情が羞恥心を凌駕した。
(絶対に負けないわ!)
 心の中でそう叫ぶと、美奈は興奮に沸く客席に手を振り、一気にウエアを捲くった。
 こぼれ出た白い乳房が上下に弾む。客席から大歓声が上がった。型崩れすることなく美しい形を保ち、日の
光を受けてより一層白さを増している。その膨らみの先端には、ツンと上を向いた乳首が、乳房の揺れに合わ
せプルプル踊っていた。
 続いてスコートをつまみ上げ、腰を突き出して、アンダースコートにくっきり浮かんだ亀裂を見せる。常識
では考えられない美少女の行動に、観客たちは身を乗り出し大歓声で応えた。
「マ×コ、マ×コ!」
 猥褻な連呼が起きる。美奈はアンスコを指でずらし、ツルツルに処理された恥丘と割れ目を観客に示す。性
奴隷の証として、慰問試合後も脱毛処理を命じられ、今も陰部には産毛すら生えていない。

「…あ、有岡君?」
 集まった人と人の合間からちらりと見えた少女の姿に、男は人垣を掻き分けるようにして前に進んだ。
 学校を訪問した時の習慣で、テニスコートに足を向けてみたところ、練習試合をしている様子なので見てみ
ようと近寄った。集まったギャラリーの多さに驚きながら、覗いていると、スマッシュを放つプレイヤーの姿
が見えた。見覚えのあるフォーム…、見間違うはずがない、9月から消息を絶っていた自分が育てた最後にし
て最高の愛弟子がそこにいた。
 ポイントを取った少女が客席に近づいて来る。やはり間違いはなかった。
「有岡君、有岡君!」
 男は必死で名前を叫んだ。しかし、次の瞬間、思わず男は絶句した。
 美奈は客席に向かって、テニスウエアの胸を捲り上げたのだ。ブラジャーはつけておらず、剥き出しの乳房
が露わになる。観客が歓声をあげると、美奈は自らアンダーバストに手をやり、双乳を持ち上げ、卑猥に揺す
って見せる。
「いったい、これは…、一体、何なのだ…」
 「マイスター」と称されるテニス界の名伯楽、日比谷信夫は白髪の頭を抱えるようにして、苦悩の表情を浮
かべた。




小説のトップへ
小説のトップへ
戻る
戻る



動画 アダルト動画 ライブチャット