テニス少女・果てなき闘い 第8章

 真昼の青空のもと、スコートを捲り上げた美奈は、すらりと伸びた美脚を肩幅に開き、アンダースコートに
浮かんだ亀裂を観客スタンドに突き出してポーズを取った。常識では考えられない美少女の行動に、詰め掛け
た訪問客は身を乗り出して大歓声をあげた。
 カメラを向ける者、露骨に指をさして卑猥な言葉を投げかける者、ポーズを真似て侮辱する者、客の反応は
様々だが、みな一様に美奈を見て笑っていた。
 有岡美奈は性欲を煽る道化。悔しさで体が震えるのを我慢し、客席に向けて下半身を突き出したまま、カメ
ラのレンズに股間を晒し、客席の前をねり歩く。
「すげぇ…、マンスジ丸見え!」
「チ×ポが起っちまった、一発させろよ!」
 調子に乗った若い男たちの下品な野次が飛び交う。体格の良い、同じような年恰好の男たちが一グループに
なっているのは、内戦が続くダーバン共和国に派兵される部隊のようだ。集団的自衛権の行使が認められるよ
うになった今の憲法のもとでは、常に「殺し、殺される」危険性と隣り合わせの戦場に派遣されることにな
る。
「オッパイ!オッパイ!」
 オッパイコールがギャラリー全体に広がっていく。その声に応えて、美奈はウエアの胸を捲り上げた。ブラ
ジャーは着けておらず、美しい膨らみを見せる双乳が露わになった。美奈はセクシーに身体を揺すり、乳房を
揺らして見せる。
「マンコ!マンコ!」
 調子に乗った観客たちがコールを続ける。
 美奈はアンスコを指でずらし、性奴隷の証ともいえるツルツルに処理された恥丘と割れ目を客席に示した。
自ら大陰唇の膨らみを開いて、膣孔やピンク色の粘膜まで男たちの前に晒す。
「恥ずかしい人…」
 菱田由加理が吐き捨てるように言った。その語調の強さに、隣にいた岡崎里穂が驚いた表情で彼女を見た。
二人はいずれも、最近、館に編入して来た1年生だ。
 体育科に編入されるだけあって、二人ともそれなりのテニスの経験があったが、県大会レベルで活躍してい
た里穂と由加里とでは、雲泥の差があった。由加里は中学時代から、次世代のテニス界のホープと呼ばれてき
た一人である。両親の離婚で地元の高校に通えなくなった里穂とは違い、由加里は本格的にテニスを続けるた
めのスポンサーを探した末、館にやって来たと聞いている。
「由加里ちゃん…」
 咎めるような表情で見つめる里穂に、由加里が強い口調で言った。
「裏切者の、反愛国者だよ!」
 テニスに関心を持つ彼女たち世代の少女にとって、有岡美奈はカリスマ的な人気を持っていた。由加里も里
穂も美奈に憧れ、常に目標にしてきた存在だった。そんな思いが打ち砕かれたのが約3か月前の出来事だ。
 美奈の件は「テニス界プリンセスの転落」として大々的にニュースになった。不順異性交遊を重ねたあげ
く、テロ組織の男と繋がり、他の部員も巻き込んで、破壊活動に加担した反愛国者だと、マスコミでもネット
でも騒がれ、一時はヘイトスピーチの格好の餌食になっていた。ネット・サーフィンが趣味の由加理は、世間
に垂れ流された「裏切り者」「失墜」といったダーティーな美奈のイメージにどっぷりと影響されていた。
「…でも、あれって、本当だったのかな…」
 両親の離婚でさんざん苦労した里穂は、同世代よりも少し早く精神的に大人になり、ほんのちょっと思慮深
くなった。館に来て、美奈たちの姿を身近で見て、そして、自分自身が羞恥と屈辱に喘ぐ中で、世間に流され
ているニュースに疑いの目を向け始めている。彼女にとっては、今も有岡美奈は憧れの存在だ。
「決まってるわよ!それに、見てよ、あの恥ずかしい姿!」
 大勢の観客が見つめる中、美奈が乳房を揉みしだきながら、アンスコから覗く割れ目に指を挿出し、喘ぎ声
をあげながら恍惚の表情を浮かべている。
「有岡美奈イキますっ…」
 そう言うと、美奈は全身を痙攣させ、大声で「イクっ!」と叫んだ。観客が歓声をあげる中、嫌悪感を顔い
っぱいに示して、由加里がそれを睨み付ける。
 テニス一筋で頑張ってきた由加里は、性のことなど何も知らなかった。友達とのおしゃべりの中で、ちょっ
とエッチな話をすることがあっても、ただそれだけのことだった。
 ところが、ここに連れて来られてから、由加里は変えられてしまった。まだ一か月程しか経っていないが、
思い出すだけでも慄えが来て涙が滲む、おぞましい調教と凌辱の日々…。そんな由加里にとって、先輩部員た
ちは自ら浅ましいセックス奴隷になりながら、館の手先となって、屈辱的で恥ずかしい行為を自分たちに強要
する「敵」でしかなかった。
 そして、その中心にキャプテンの有岡美奈がいる。由加里の目には彼女こそが、この忌むべき「館」そのも
のに見えているのだ。しかも、編入生たちの多くが由加里と同じような思いを持っている。
「ほら、お喋りしてちゃダメよ、こっちに来なさい」
 突然、呼ばれて、二人は慌てて返事をした。見ると、まさにその美奈がこちらを向いて手招きしている。
「はい!」
 決められたとおり元気よく返事をした二人だったが、その表情はそれぞれに違っていた。由加里は今にも噛
みつきそうな表情をしている。そんな彼女の表情を里穂は心配そうに見つめた。
「いい?ダッシュして、ボレーを決めたら、ウエアの胸を捲って、大きくオッパイを揺らしながら、コートを
一周回るのよ」
 美奈がそう指示して、編入生たちのボレーの練習が始まった。
 美奈のボールをきれいに打ち返した由加里はくるっと後ろを振り返って、ウエアの裾に手をかけたところ
で、思わず動きを止めた。
 満員の観客スタンドの中央に、さっき美奈に対して卑猥な声をかけていた派遣部隊の一団が陣取っている。
「何してるの、早くオッパイを出して!」
 美奈の叱るような声に、唇をギュッと噛んで由加里は乳房を露わにした。静脈が透けるぐらい白く、年齢の
割には豊かな隆起を見せる膨らみに視線が集まるのを感じる。男たちが口々に自分の胸を品評し、囃す声が聞
こえて、頬がどんどん熱くなってくる。
(ごめんなさい…)
 美奈は心の中で、由加里に詫びた。編入生たちの恥ずかしさや辛さはわかっていながら、彼女たちを守るた
めにも、コーチの指示に従わせなければならない。美奈は後ろめたさを追い払おうとして、あえて厳しい声を
作った。
「コートの外周いっぱいに回って、見学のみなさんに、ちゃんと見てもらいなさい!」
「ヒューッ!」
 案の定、正面の男たちが由加里を指さして歓声をあげ、口笛を吹いてみせる。
「毎日、男に揉まれてるだけあって、オッパイの発育がいいね!」
 腕にタトゥーを入れた男がからかうように大声をあげる。集団心理の一種で、仲間といると、悪ふざけをし
て必要以上に目立とうとするタイプだ。由加里はできるだけ観客と視線を合わせないようにして、スタンドの
前を急いで駆け抜けた。
「今日も、防衛隊員が多いわね」
 ラケットを振りながら、そう呟いたのは鳥居仁美だった。彼女は周囲の状況を良く見て、分析することに長
けている。さすが、冴子のパートナーと呼ばれていただけのことはある。
 これまで、松川の選挙絡みか、そうでなくても、政財界の接待、防衛隊でも内地の将校などが多かったのだ
が、ここ数日は、戦地に派遣される部隊の慰安が増えている。国防省付属の慰安施設としては、本来の形では
あるのだが、何か動きを感じる変化だ。
「そうね…、確かに増えてるわ」
 小倉恭子が頷いた。このナンバー2の二人は気が合うのか、最近よく一緒にいる。この地獄で人間的な温か
さを感じることができるのは、仲間との友情だけだ。
 ちょうどその頃、コートの横にあるコーチ室では二人の男が密談の真っ最中だった。
「館の設立趣旨を踏まえた運営が必要だとの事務長のご意見、私も常々、そのとおりだと考えております。つ
きましては、今後、テニス部も可能な限り、海外派兵部隊の士気の向上や帰還部隊の報酬としての慰安に力を
尽くすべくスケジュールを立てていきたいと思っております」
 もともと熱血キャラで知られた松川が、ここぞとばかりに熱心に語るのを、南原は黙って頷きながら聞いて
いた。生真面目で実直な経営者と言ったその風貌に、満足げな表情が広がっていく。
 文教省派が主流を占める体育科関係者の中で、看板娘と言ってよいテニス部が手駒になることは、国防省派
の南原にとって大きなメリットだ。一方で、諸藤に対して松川の常任理事就任への協力を説き、テニス部員た
ちの国内遠征を認めさせることはそう難しくないだろうと、南原はそう計算した。
「よいでしょう、私が館長に取次ぎましょう」
 館のナンバー2の協力をとりつけた松川は、胸をホッと撫でおろした。

「スマッシュの練習です。それぞれペアになってください」
 美奈の声がコートに響いた。今日の部活は、訪問客を相手にしたテニス教室だ。客たちは、それまでの練習
を見て目をつけていた部員の所に近寄っていく。
 美奈の周りに数人の客が駆け寄る中で、彼女の手を真っ先に握ったのは、テニス連盟理事の井筒だった。
「私に、有岡君のテニスを教えてもらおうかな」
 井筒がニヤニヤと好色そうな笑みを浮かべ、美奈の顔を見つめた。事務方出身のこの理事は、もともと選手
たちとの接触が少なかった分、館で美奈たちの慰安が受けられるようになって、上機嫌でやってくる。連盟の
事務を統括しているその手腕は、今後の松川の計画には欠かせない人物なのである。
「私は事務局出身だから、テニスはあまり上手くなくてねぇ」
「よろしくお願いします、井筒様…」
 舐めるような視線を向ける井筒に対して、そっけない声にならないよう可能な限りの注意を払い、努めて魅
力的な笑顔を浮かべながら、美奈は彼を見た。
(やっぱり、いい女だ…)
 視線を受けた井筒の顔が緩む。
「まず、女子の身体を背中から抱いてみてください」
 美奈の声とともに、客たちがペアになった部員を抱きすくめる。美奈自身も井筒に抱かれた。腕の中の柔ら
かな感触と甘い香りに、海千山千の初老の男が柄にもなく、少年のように胸がときめく気がした。
「フォームの動作を確認しましょう。左右の手首を掴んでください。ショットの動きをしてみます。力を抜い
て、私たちの身体に合わせて肩と手を動かしてみてください」
 美奈の指示を受けて、部員たちがペアになった男の腕の中でラケットを振った。
「わかりますか?」
 筒井に抱かれながら、美奈が二度、三度とラケットを振る。
「うーん、どうだろう」
「それでは、これならどうでしょう?」
 美奈はテニスウエアを脱いで、上半身裸になった。美しい形をした乳房が露わになる。
「もし、よろしければ、井筒様も上を脱いでみていただけますか?」
 春を思わせる小春日和で、今日は寒さもそれほど厳しくない。井筒もウエアを脱いで上半身裸になった。
「それでは、もう一度抱いてください」
 少女の体温とともに、すべすべした素肌の感触が伝わってくる。
「筋肉の動きがわかりますか?」
「腰の動きも知りたいなぁ」
「わかりました」
 そう言うと、美奈はスコートとアンスコを脱いだ。剥き出しになったヒップに井筒の腰が押しつけられる。
いつしか二人は裸で抱き合うような格好になっていた。井筒の肉棒がむくむくと勃起してくる。
「微妙な腰の動きをお教えしましょう…」
 そう言うと、美奈は井筒の肉棒を握って自らの膣口に導き、少しお尻を突き出した。既に男を迎え入れる準
備ができている美奈の性器に、井筒の亀頭がぬるりと潜り込んだ。
「うっ…」
 井筒が気持ち良さそうな呻き声を漏らす。
「さあ…、一緒に…、腰を動かしてください…」
 井筒が腰を動かすと、温かく濡れた粘膜で肉棒が擦られた。
「ううっ…、これはたまらん…」
 井筒が嬉しそうな声をあげた。
「胸をもっと突き出して反らせなさい」
 由加里の相手は帰還部隊の防衛隊員だった。部員が観客にテニスを教えるはずが、自分は経験者だと豪語し
て、由加里にテニスの指導を始めている。
「こうですか?」
「足をもっと開いて、太腿の力は抜きなさい」
 明らかに間違った指導だ。そもそも、この男は本格的にテニスを学んだことがないらしい。由加里は内心う
んざりしながら、男の指示に従った。
「腕だけじゃ駄目だぞ、腰を軸にして全身を使うんだ。」
 男の意図は明らかだった。テニスの指導にかこつけて、自分の指示で女の子があれこれポーズをとるのを楽
しんでいるのだ。
「こんな感じでしょうか?」
「もっと、股を前に突き出すようにしてだな…」
「でも…」
 由加理の表情が次第に強張ってくる。スマッシュのフォームは彼女が苦労して矯正し、やっときれいなスイ
ングができるようになったのだ。
「…それは、許してください」
 迷った末に思い切ったように、由加里が訪問客の要求を拒否した。
「何だと!」
 思わぬ反抗に、男が怒りの声をあげる。
「フォームが…、フォームが崩れちゃうんです、私、必死で練習して、やっときれいにスイングできるように
なったんです。お願いです、もうこんなのは、勘弁して…」
 喋っているうちに気が昂ってきたのか、由加里は一気にそう言うと、その場にしゃがみ込み、両手で顔を覆
って泣き出した。
「かわりに、私がお相手します…」
 慌てて訪問客と由加里の間に割って入ったのは、美奈だった。
「お前の出る幕じゃない」
 由加里にペナルティを与えるために駆け寄って来た玉田が、美奈の腕を掴む。
「でも、お願いします。この子、まだここに来てから日が経っていないんです」
 厳しい顔で首を横に振る玉田に、美奈が食い下がる。由加里の相手をしていた防衛隊員は、思わぬ展開にポ
カンと口を開けて立っていた。
「試合で決めるというのは、どう?」
 膠着状態を破ったのは、晴亜の声だった。特に序列がつけられているわけではないが、いつのまにか、3人
のコーチの中では、なんとなく彼女がイニシアチブを取るようになっている。
「結局のところ、私たちの指導では、これまで自分たちが身につけてきたテニスの実力が衰えるというのが、
あなたたちの言い分でしょ?」
 美奈が黙ったまま、晴亜の顔を見た。テニス教室に参加した客のいたずらに由加里が耐えられなくなったの
も、最近、美奈自身が悩み、苦しんでいるのも、実はそこに核心ある。晴亜は、それを百も承知なのだ。
「有岡さんと菱田さんのペアで、玉田コーチ、曽根コーチとダブルスの試合をやりなさい。あなたたちが勝っ
たら、今後、練習のカリキュラムを好きに組ませてあげる。そのかわり、負けたら、今後、口答えせず、私た
ちのカリキュラムに従ってもらう。これでどう?」
「よし、受けて立とう」
 最初に玉田が答えた。曽根もニヤニヤ笑いながら、無言で頷いている。
「菱田さん、どうする…?」
 美奈は、地面にしゃがみ込んだままの由加里に尋ねた。
「どっちでも…」
 目を伏せたまま、由加理がポツリと言った。さっきまで泣いていたその声は、どこか固くぎごちない。その
態度も、少しふてくされているように見えた。
「受けます」
 美奈が凛とした声で、晴亜に答えた。
「それと…、もし、負けたら、有岡が責任をとって俺たちのプライベートレッスンを受けてもらおう。菱田は
今夜、こちらのお客様の慰安をすることだな」
 曽根がそう付け足してテニス教室は終わり、急遽、試合の準備が始まった。

 審判台に座った晴亜のコールが響いた。
 コーチたちのコートでトスがあがり、強烈なサーブが唸りをあげて飛んで来た。白線をかすめるようにすべ
っていくボールを、由加理が片手をいっぱいに伸ばして拾おうとする。差し出されたラケットの下を、ボール
がすり抜けていった。
「何してるの、あの子!」
 ハラハラした表情で見ていた長畑明穂が、怒りの声をあげる。それなりの経験者なら、必死で食いさがれ
ば、拾えたボールではないか。由加里と同い年で、美奈の一番弟子を自任する明穂には、彼女の動きが歯がゆ
くてならないらしい。
「ドンマイ!」
 美奈が声をかけて、レシーブの態勢を取った。抜群のスタイルを折り曲げ、卑猥なグリップをアンダースコ
ートの股間に直接当てる「館」式だ。スコートが捲れて、まばゆいばかりの太腿が付け根まで覗き、観客たち
の目を吸い寄せる。
 再び、由加理に向けて打ち込まれたサーブを、後衛の美奈が飛びつくようにリターンした。由加里も手を抜
いているわけではなかったが、そもそも美奈に対してわだかまりを持っているせいか、傍から見ていても、チ
ームワークが取れていない。
 長いストローク戦の末、由加理がボールをネットに引っ掛けた。コーチとしてはいろいろ問題があっても、
曽根と玉田ペアの実力は侮れない。
「サーティ、ラブ!」
 晴亜がコールする。
(…やっぱり、変やわ…)
 試合を見ていた千春の表情が曇った。
 美奈が鋭いスマッシュを決める。「決まった」と思ったそのボールは、ギリギリでエンドラインを超えた。
(フォームが違う…)
 そのことに気がついて、千春は愕然とした。あれだけ芸術的に美しかった美奈のフォームが微妙に崩れてい
るのだ。
(まともな練習ができひんのやから、当たり前やわ…)
 千春が哀しげな表情を浮かべた。コーチたちから課せられるトレーニングは、観客の性的好奇心や嗜虐心に
応えるための卑猥な見せ物であって、どこまでいっても、まともなテニスの練習ではありえない。
 それでも美奈は、その中で意味のある動きを見つけ出し、トレーニングの要素をもたせてしまう。しかも、
自らを鍛えるだけではなく、他の部員たちにもそうして見つけ出した鍛錬方法を伝えていた。
 これは、人間の身体の動きを徹底して科学的に解析し、スポーツの中で実践するという恵聖学園の方針が活
かされたものだ。関西圏で活躍していた千春には面識がなかったが、日比谷信夫という指導者がそうした方法
に長けていたと聞く。
「フォールト」
 晴亜の声が響いた。玉田のサーブを受けきれず、ボールが美奈の側のコートを転がっている。美奈でさえこ
れだ、自分たちはもうトッププレイヤーには戻れないのだという想いが、千春の胸に重苦しくのしかかってき
た。
 まだ、松川が自らコーチをしていた時はマシだった。彼自身のテニスの力量は確かなものであり、カリカチ
ュアライズされているとはいってもテニスを基本にした練習が行われていた。美奈としても工夫しやすかった
だろう。
 ところが、このところ、松川は選挙活動が忙しく、日常の練習はコーチに任せっきりになっていた。そし
て、コーチの3人組はみんなクズだ。
 特に、玉田が考案したバイブを使った指示が酷い。練習の間中、あんなものを体内に入れ、女の子の敏感な
部分を刺激し続けて、影響が出ない方が奇跡だ。
(…それに)
 美奈は、腐敗していくテニス連盟の立て直しと自分たちの脱出を日比谷に賭けようとしている。彼は今、こ
の館のどこかに監禁されているらしい。しかし、これもまた雲を掴むような話だと、千春は思わざるを得なか
った。
「よし、これは、もらったわ…」
 千春の表情が輝き、思わず呟いた。力のないボレーが美奈たちのコートに入ってくる。コースは美奈の真正
面だ。
 余裕で打ち返せると思ったその瞬間、美奈が足をすべらせて転んだ。スコートが捲れ、引き締まった太腿と
白いアンダースコートが覗く。ボールが虚しくコートをはねて、転がっていく。
「えっ…、まさか…」
 千春が愕然として声を漏らした。
「ゲーム!」
 うれしそうな晴亜の声が響き、まさかの展開に、テニス部員たちが呆然とコートを見つめる。
 コートに倒れた姿勢のまま、美奈は立ち上がる気力を失っていた。試合に負けたからではない。身体が思う
ように動かないことがわかったからだ。これまでも薄々気づいていたが、認めたくなかった。それが、今の試
合ではっきりと思い知らされたのだ。
 美奈はがっくりと肩を落とし、ギュっと唇を噛みしめた。そして、自分の誇りや矜持を保ち、支えている最
大のものがテニスの実力だったことを改めて思い知った。

 深々と冷え込む空気の中、いつもより大きく見える月が掛かっている。その姿は、美しいというよりは、妙
に不安を抱かせるものであった。
 人影のないコートの脇を通り、テニスウエアを身につけた美奈が鉄筋コンクリート造の新しい建物に入って
いく。いつもなら寮で訪問客を迎える時刻だが、今日は「特訓」のため、コーチ室に呼び出されたのだ。
「失礼します」
 ノックをして、室内に入ると、晴亜、玉田、曽根の三人のコーチが美奈を待ち構えていた。松川の姿は見え
ない。
 コーチたちが美奈を取り囲み、 粘っこい視線を向ける。
「今夜の慰安は、すべて他の部員に割り振っておいたからな。しっかりと特訓しよう」
 玉田がキンキン声でそう言うと、曽根が嘲笑を含んだ低い声でまぜっ返す。
「お偉いさんじゃなくて、ヒラ隊員ばっかりだったからな。ヤレる相手を宛がっときゃあ、文句は言わない
…」
 冷笑的な言い方は、この男の性分になっている。
「はい…」
 美奈の顔はいつもと変わらず端正で美しいが、その表情にはどこか力がなかった。
「一晩かけて、じっくり鍛え直してあげるわ」
 晴亜に顎をしゃくりあげられ、美奈が思わず目を伏せる。いつものように毅然と見返してくる、滲み出るよ
うな覇気がない。
「さあ、準備だ!」
 そう言うと、玉田がテニスズボンのチャックを下ろした。精力の強そうな顎の張った顔が、ニヤリと笑う。
「はい…」
 目を伏せたまま、美奈は床に両膝をつく。既に勃起の兆しを見せている肉棒をブリーフから取り出し、しな
やかな指を絡めて、ゆっくりとしごき出す。掌の中で、反りの効いた肉棒がぐんぐん膨れあがる。美奈は、そ
の先端に軽いキスをする。ヌルヌルした腺液を吸い、鈴口を舌先で小刻みに刺激する。玉田が気持ち良さそう
に息をついた。
「男を悦ばせるテクニックはどんどん上達してるのね。テニスの実力は落ちているのに!」
 聞こえよがしに言う晴亜の声に、美奈の動きが止まった。その表情が硬く強張っているのを見て、晴亜がけ
たたましい笑い声を上げた。
「俺のもしごけ!」
 下半身裸になった曽根が近づいてくる。その股間には、ひょろりとした彼の長身とよく似た、太さはさほど
ではないものの、裕に30センチはある長い陰茎がぶら下がっていた。人間のペニスとは思えない肉棹を握
り、美奈は両手を使って摩っていく。そのリズムに合わせて、口では玉田の肉棒を頬張った。
「いい格好よ、有岡さん。あなたを応援してきた人たちが見たら、どんな顔をするかしら?世界を嘱望された
テニス界のプリンセスが、男のチ×ポしゃぶり…、聞いてあきれるわね」
 晴亜の言葉が、美奈の心を切り裂いていく。今日の練習試合で、改めて思い知らされたことだが、まともな
練習ができない日々の中で、テニス・プレイヤーとしての力が日に日に削られている。そのことは、彼女自身
が一番良くわかっていた。その一方で、淫らなセックス奴隷と化している自分を思うと、灼けつくような屈辱
と焦りが込み上げてくる。
「さあ、曽根コーチのをくわえて差し上げなさい」
 玉田は美奈の口から肉茎を抜き、彼女のバックにまわった。
「しゃぶれ!」
 ドスの効いた曽根の声とともに、長い肉棹が鼻先に突きつけられた。その先端を咥えると、曽根が美奈の黒
髪を掴み、腰を送りこむように、喉の奥まで突っ込んできた。喉奥をいきなり突かれた美奈は嘔吐しそうにな
り、苦しげな呻き声を漏らした。
「ほら、お尻を突き出しなさい!」
 玉田は美奈のアンダースコートを脱がすと、その腰を後方に突き出させ、白い双臀をグイと押し広げた。
 白く光沢を放つ尻たぶが大きく割れ、大陰唇の膨らみが露わになる。数え切れないほどの凌辱を受けてきた
にもかかわらず、美奈の秘部は処女のように楚々としたままだ。ぴったりと口を閉じ、キスをする時の唇のよ
うにわずかに突き出ている。
 しかし、玉田が最も関心を寄せるのは、その上で剥き出しになっている褐色がかったピンクの窄まりだ。ア
ナルマニアの玉田は肛門の色、艶、湿り具合、つぼみ具合を見て相手の体調や状態を把握する。
「ううっ…」
 玉田の指先が襞の一本一本を確かめるようになぞっていく。背筋を電流が走るような感覚を覚え、美奈が全
身をくねらせて呻き声を漏らす。
 玉田と曽根が顔を見合わせてニヤニヤ笑った。美奈に対しては「可愛さ余って、憎さ百倍」という暗い執着
を持っている二人だ。それは、歪んだ愛情だとも言える。松川に誘われ、館に来てから、二人はこうして思う
存分、彼女を凌辱する機会を待っていた。
 これまでは松川の目もあり、訪問客への慰安を優先させる必要もあったことから、そうした機会がなかった
が、ここにきて千載一遇のチャンスがやってきたのだ。
「ふふふ、二人のコーチに、朝までたっぷり特訓してもらいなさい…」
 二人に犯される美奈の姿をビデオカメラに収めながら、晴亜が嘲笑を漏らした。選挙で夢中になっている松
川の了解をとりつけてこの場を作りだしたのは、他でもない彼女である。晴亜も美奈に対して、歪んだ感情を
抱いている一人だ。
 玉田の人差指がアナルの窄まりを荒々しく押し広げた。太い指が一気に腸内に潜り込み、内部で腸壁を擦っ
ているのがわかる。
「うっ、うううぅ…」
 美奈のくぐもった呻きがこぼれ、白い双臀がうねり始めた。付け根まで押し込まれた指がゆっくりと抜き挿
しされる。
「おい、口の方がお留守になってるぞ!」
 曽根に怒鳴られた美奈は、喉の奥まで挿入された肉棹に唾液を含んだ舌を絡ませ、頬の内側で擦るように出
し入れした。気持ちよさそうな吐息をついた後、曽根は残忍な笑いを浮かべると、美奈の後頭部を両手で掴
み、自ら腰の出し入れを始めた。
「うぐっ、うぐっ!うぐぐぅぅ…」
 美奈が苦しげな呻き声を漏らし、両手をつっぱって本能的にイマラチオから逃れようとする。喉の奥を何度
も突かれて呼吸困難になり、顔が涙でグシャグシャになった。苦しさのあまり溢れ出た唾液が、一筋、二筋と
糸を引いて床に滴り落ちる。人一倍大きい曽根の睾丸が、美奈の顎をピタピタと叩く。
「後ろは、後の楽しみにして…」
 そう言うと、玉田は反り返った肉棒を、濡れた割れ目にピタリと押し当てた。
「うぐっ、うぐっ…」
 美奈の呻き声が落ち着いてきた。曽根の動きが緩やかになるのを見計らって、玉田がゆっくりと腰を進め
た。膣口を突破した硬直がからみつく肉襞を押し広げて、柔らかい内部に潜り込む。
「ううっ…」
 テニスウエアの貼りついた背中が弓なりに反った。なおも打ち込むと、狭い肉路が痙攣を起したように肉棒
を絞り込んできた。
「有岡さん、いい格好よ。このいやらしいあなたの姿をビデオにとって、後輩たちに見せてあげましょう」
 晴亜が嬉しそうな声をあげる。
「よし、出すぞっ、全部飲めよ!」
 曽根がそう言うと、再び腰を激しく振った。
「ぐっ、ぐっ、ぐうぅっ…」
 呻き声を漏らす美奈の口に曽根の精液が射精される。細くて長いペニス、大きな睾丸を持つ曽根は射精の量
も半端ではなかった。
 あまりの量に何度も吐き気を覚え、強烈な性臭に咽かえりながら、美奈はドロリとした男の体液を呑み干し
ていく。口に出された精液は残さず飲むよう、慰安嬢は身体に覚え込ませるように躾けられているのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
 全部飲み終えた美奈は肩で息をして、床に突っ伏した。そのタイミングを狙ったかのように、玉田の腰が激
しく動き始める。慰安嬢の身体はセックスの受容体だ。どんなに嫌いな相手に、どんなに悲惨な状況で、どん
なに無残に犯されても、性的な刺激は体内で増幅され、身悶えするような快美の塊りへと育っていく。それ
は、本人の意思とは無関係な、訓練された性奴隷の身体だった。
「ううッ、はあっ…いやっ、イッちゃう…、ううっ!」
 美奈の両腕が伸び、バラ色に染まった顔が持ち上がった。汗みずくのスコートを貼りつかせた双臀が、スト
ロークのたびにブルブル揺れる。
 玉田がとどめとばかり、強烈な一撃を叩きこんだ。その直後、背中が反り返り、艶やかな黒髪がザワッと乱
れ踊って肩口に散った。
「あっ、あっ、いくぅっ…」
 絶頂を告げる声が噴きこぼれた。首がカクカクっと揺れ、美奈は、総身が砕け散るようなエクスタシーの波
に呑まれ、弄ばれる。
 やがて性感の大きな波が小波に変わると、美奈はガックリと床に崩れ落ちた。硬く冷たい床に額が触れる
と、途端に激しい悲しみが襲ってきた。
「うっ…、うっ、ううぅ…」
 気がつくと、美奈は泣きじゃくっていた。自分の中に通っていた芯がポキリと折れたように、感情をうまく
コントロールできなくなってしまったようだ。何も考えることができず、とめどなく込み上げる涙に翻弄され
るまま、咽ぶようにして泣き声をあげる。
「あらあら可哀想に、子どもみたいね…、でも、こんなもんじゃあ、許さない。まだまだ、始まったばかり
よ!」
 悪意に満ちた晴亜の声が聞こえたと思った瞬間、突然、脳天まで響き渡るような衝撃に襲われた。規格外れ
のペニスが容赦なく体内にねじ込まれる。いつの間にか曽根が背後に回っていたのだ。
「あっ、あっ、ああぁぁ…」
 美奈がよがり声を上げて、全身を身悶えさせた。打ち込まれた先端が子宮に届いても収まりきらずに根元を
余した肉棹が、秘孔を出たり入ったりする。そのたびに、玉田の精液の混じる濁った愛液がすくいだされて、
床にポタポタと滴が落ちた。
「さあ、お前の愛液で汚れたチ×ポ、綺麗にするんだ」
 玉田が美奈の前に立って、ダランと垂れたペニスを振って見せた。
「ほら…」
 再び勃起する兆しを見せている男根を振ると、草をすり潰したような強烈な臭いが鼻先に漂った。
 「精力絶倫」という言葉そのものの男たちを前にして、美奈は泣きじゃくりながら、玉田の肉棒を口に含
み、曽根の動きに合わせて腰を振った。
「プリンセスは死んだわ…」
 晴亜がそう言って、高笑いを放った。




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