第3章 事務所当番
 
 ここは、港区青山にあるビルの一室。ATプロモーションの事務所である。入り口のガラス戸をくぐった場所にある受
付カウンターの前で、水沢汐理はマネージャーの池尻美津子に事務所当番のレクチャーを受けていた。
「今日から1週間、毎日4時間ずつ、事務所の受付と電話番をやってもらうわ。」
「はい、わかりました。」
 汐理は素直にうなずいた。
 20歳代の半ばぐらいの美津子は、知的で美しく、見るからにキャリアウーマンといった印象を与えるヤリ手の女性マ
ネージャーだ。汐理と二人で並んで歩くと、姉妹のように見える。
「と言っても、いいかげんに考えちゃだめよ。あなたが事務所当番をやってるっていうことは、業界中に流れてるから
ね。レコード会社や雑誌社、テレビ局の人たちが、いろいろ理由をつけて、ここにやって来たり、電話をしてくるわ。」
 汐理は真剣そのものの眼差しで、美津子を見ている。
 「育ちが良い」と言うのだろうか。彼女のようなお嬢様は、甘やかされてわがままに育つことも少なくないが、人によっ
ては日向で育ってきた分、素直で天使のような娘になることがある。汐理はそういうタイプだ。
(可愛い娘だわ。)
 同性愛の傾向がある美津子は、汐理を強く抱きしめたくなるのを、かろうじてこらえた。
「これは、一種のテストなの。業界の人たちが直接、あなたと会ったり、話をしたりして、これは使えると思ったら、仕事
の話を持ってくるってわけ。わかった?」
「はい。」
「じゃあ、まず、パンティを履き替えてもらうわね。」
「えっ、どうしてですか?」
 汐理は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で聞き返した。事務所当番と下着がどう関係するのか、さっぱりわからない。
「どうしてもよ。」
 美津子の視線がキュッときつくなったのを見て、汐理はそれ以上食い下がることなく、急いでパンティを脱ぎだした。
 美津子は普段は優しく、姉のように親身になって汐理の面倒をみてくれる。しかし、一旦キレると、全く手がつけられな
くなるのだ。暴力をふるうことこそなかったが、ののしられ、細かいことまでチクチクと嫌味を言われ、執拗に責められ
る。いつしか、汐理は美津子の機嫌を損ねないよう、細心の注意をはらってふるまうようになり、オーディション以降の
短いつきあいの中で、心理的に美津子には逆らえない立場に自分を追い込んでしまっていた。
(ふふふ。ホントに可愛い子だわ。これからが楽しみ。)
 美津子は目を細めながら、汐理が真っ白なパンティを脱いでいくのを見つめていた。
「じゃあ、これを穿いて。」
 渡されたパンティを穿いた汐理は、戸惑いの表情を浮かべて美津子を見た。股間に何か固いプラスチックのような物
が当たる感触があるのだ。
「この下着…」
「ローターつきパンティよ。」
 美津子はこともなげに言うと、何かリモコンのような物を手に持った。
「こうするの。」
「あっ、ああっ!」
 パンティの中の突起が震動を始め、秘部をなぶった。汐理は喘ぎ声をあげ、慌ててパンティを脱ごうとする。
「ダメよ、脱いじゃ。」
 美津子が言った。その声には、先ほどの厳しさはなく、むしろ優しい。それに力を得て、汐理は美津子に抗議した。
「どうして、こんなの穿かなきゃいけないんですか?」
 美津子は優しい口調のまま、諭すように話をした。
「あなたの最初のお仕事は、ATVの情報番組のリポーターを考えているの。」
「はい?」
 汐理が可愛らしい仕草で小首を傾げた。この恥ずかしい仕掛けと、自分の仕事とどういう関係があるのか理解できな
いのだ。
「いい。リポーターになるには、どんな状態になっても、正しく発声してしゃべることができなくちゃだめなのよ。わか
る?」
「それは、わかります。」
「だから、事務所当番をやりながら、練習するの。女の子の一番恥ずかしい所を責められながら、きちんとお客様と応
対できたら、もう、どんなリポートだって大丈夫よ。」
「でも…、私、嫌です…」
「ぐずぐず言ってると、素っ裸で受付に座ってもらうわよ!」
 いきなり美津子の眉がつり上がった。それ以上、汐理に口答えすることは許されなかった。
「そうそう、これを塗っておかなくっちゃ。」
 そう言いながら、美津子はポケットから小さなチューブを取り出す。
「あなた処女でしょ。塗っておかないと痛いわよ。」
 パンティを膝までずり降ろすと、美津子は床に跪いた。彼女の目の前には繊毛に彩られた汐理の下腹部がある。
 美津子はチューブから不思議な色をしたゼリーをひねり出して、たっぷりと手に取り、淡い陰毛に飾られた恥丘に塗り
つけた。陰毛がゼリーに濡れてテラテラと光り、べったりと恥丘に張りついている。
「あっ…」
 汐理がピクンと全身を震わせ、戸惑いの声をあげた。美津子のしなやかな指が、柔らかな肉のフードをなぞり、その
奥に隠された肉芽を剥き出しているのだ。そして、指先が敏感な肉芽や肉襞の中にまで丹念にゼリーを塗っていく。
「な、なんだか…熱い…」
 美津子が汐理の秘部に塗りつけたのは、強力な媚薬だった。最初は熱く、そして薬が染み込むほどに、強烈な痒み
と疼きが襲ってくる。
 その時、クリトリスに当たったローターが、再び震動し始めた。
「はうっ!あぁぁ…」
 喘ぎ声をあげながら見ると、美津子が受付カウンターに手に乗せて、徐々に体重をかけていく。それにあわせて、ロ
ーターの震動が大きく強くなってくる。
「あっ、あっ、あっ、いやっ!」
「どう?受付カウンターが感圧センサーになってるのよ。カウンターにかかった重さによって、ローターの振動の強度が
変わるの。」
 それだけ言うと、美津子は「じゃあ、がんばってね。」と言って、さっさと事務所を出て行った。
 
 媚薬がジリジリと熱く汐理を苦しめ始めていた。何とかそれに耐えようと、彼女はおしっこを我慢する時のように、モジ
モジと太腿を摺り合わせていた。性器がじっとりと濡れているのが自分でもわかる。
 事務所のスタッフが受付の前を通るたびに、そんな彼女の方を面白そうに眺めていく。
 しばらくすると、ドアを開けて、30歳代半ばぐらいの背の高い男が入ってきた。
「ATVの山本だけど。お美津さん、いる?」
 ジャンパーにジーンズを着た、いかにも「ギョーカイ人」という感じの男だ。
「山本様ですか?池尻にご用ですか?」
 汐理が丁寧に答えた。こうした礼儀作法は、両親にきちんとしつけられている。
「そう。『とっておきセレクション』のプロデューサーの山本だよ。」
 「とっておきセレクション」は10代、20代の若い女の子に人気のある情報番組だ。美津子に用事があって来たという
ことは、彼女が言っていた汐理の仕事の関係かもしれない。「大切なお客様だ」と思った汐理は、媚薬を塗られた股間
の疼きに耐え、できるかぎりのさわやかな笑みを浮かべて答えた。
「ただいま、外出しておりますので、しばらく事務所の中でお待ちください。」
「いや、ちょっと、ここで待たせてもらうよ。」
 そう言って、山本はカウンターに軽くもたれかかった。
 とたんに、ローターが蠢き始めた。
「うっ!ううっ…」
 媚薬で普段以上に敏感になっているクリトリスをモロにつつかれて、汐理はたまらず声をあげた。
「うん?どうかした?」
「い、いえ…」
 汐理が取り繕うと、山本は「そう?」と言いながら、ポケットからラークの箱を取り出し、一本抜き取って火を点けた。
「君、スター・ハント21で準グランプリを取った水沢汐理ちゃんでしょ?」
「は、はい…」
「やっぱりな。俺、スター・ハントの最終審査には行けなかったんだけど、すぐにわかったよ。清潔感がある、知的な雰
囲気を持った美少女だって、噂になってるからね。」
 汐理は少しホッとした。スターハントの最終審査の一部始終は、必ずしも業界全体に明らかにされているわけではな
かった。したがって、むしろ、普通のオーディションが行われたと思っている業界人の方が圧倒的だ。山本もその一人ら
しい。
「いやあ。噂どおりだ。うちの番組は、今度リニューアルすることになっててね。君みたいな清純な感じの子をリポーター
に欲しいなって思ってるんだ。」
 山本は、最終審査のことは知らないし、まして今、自分の陰部に恥ずかしい「仕掛け」がされていることなど気づか
す、リポーターを任せられるかどうか品定めに来ているのだ…、と汐理は信じていた。
「ありがとうございます。がんばります。」
 山本がタバコを吸うためにカウンターから手を離していたことも幸いして、汐理は、なんとか笑顔を作って、山本にお
礼を言った。
 とたんに、山本が再びカウンターに肘を乗せ、グッと体重をかけてくる。
「くうっ…!」
(ふふふ、ローターにアソコを責められてるんだな。)
 快楽とも苦痛ともわからない感触に襲われて顔を歪める汐理を見つめながら、山本は心の中でつぶやいた。彼は、と
いうよりも、ここにくる業界関係者は、受付に座った新人アイドルにされている「仕掛け」のことは百も承知である。むし
ろ、そういう彼女たちの反応を楽しむために来ているのだ。
「どうしたの?体調、悪いんじゃない?」
「いえ。別に…。」
(それじゃあ、もっと、気持ち良くしてやるぞ!)
 山本は、カウンターに両手をついて、思いきり体重をかけた。その圧力に連動して、汐理の股間でローターが暴れ回
る。
「あっ!それ、やめて…」
「うん?どうしたの?」
「い…、いえ…、なんでも、ありません…」
 汐理は耳まで真っ赤になって答えた。
(美津子さん、早く帰ってきて…)
 汐理は切実に願った。しかし、美津子はなかなか帰ってこない。
 そんな彼女に、山本は次々に話しかけてきた。汐理は性感に震えながらも、必死で受け答えする。その間もローター
がクリトリスを刺激し、快感の波がだんたんが強く、短くなってくる。
(そろそろ、限界だな…)
 山本はニヤニヤと卑猥な笑みを浮かべている。さっきから、汐理の回答は熱に浮かされたようにしどろもどろになり、
何を答えているのかわからなくなっている。頭の回転が早い普段の彼女では考えられないことだ。そして、吐息や喘ぎ
声が隠せなくなってきた。
(もう、ダメ…)
 汐理がせっぱ詰まって、そう思った時、
「あら、山ちゃん、もう来てたの。あなたが遅刻せずに来るなんて珍しいじゃない。」
 やっと、美津子が帰って来た。ホッとした瞬間、登り詰めてしまいそうになって、汐理は自らの股間を思いきり押さえ
た。
 
 最大のピンチを乗り切った汐理は、肩で息をしていた。
 椅子に座っているだけでも、太腿に挟み込まれた秘裂の柔肉がキュウッと切なく甘美な感覚を訴え、悶えそうになる。
あとちょっと刺激を加えられただけで絶頂を迎え、気を失ってしまいそうだ。パンティは愛液でビショビショになり、スカー
トの股間にあたっている部分にさえ、小さな染みができてしまっている。
 事務所の中には美津子と山本の他に10人程のスタッフがいる。イッてしまったら、ただならない様子で、みんなにわ
かってしまうだろう。
 その時、再び事務所のドアが開いた。
「ちわっ、宅配便です。」
 配達員が大きな段ボール箱を重そうに抱えて来た。
「えっ!」
 配達員がカウンターの方へ寄ってくる。どうも荷物をカウンターの上に乗せるつもりらしい。汐理の表情が強張った。
ローターはカウンターに乗せられた物の重さによって、強さや激しさが変わる。あんな重そうな物を乗せられたら…。
 配達員が勢いをつけて、段ボール箱を持ち上げる。
「ちょっと、待って!そこに、置かないで…」
 ドスンと音を立てて、荷物がカウンターの上に置かれた。
「ああぁぁぁーっ!」
 汐理は股間を押さえ込み、事務所じゅうに響く叫び声をあげた。ビクンビクンと背筋に電流が走ったように感じ、そし
て、目の前が真っ白になった。
 
 


 
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