―― 幕間劇 ――
 
 暗闇の中に2人の少女がいた。周りには何もない。ただ闇が続くだけ。
 燈歌の手足はその闇の一部に捉えられ、動きを封じられている。
「またアンタぁ? いい加減にしてくれない?……」
「ふふ、相変わらず不機嫌そうだね、燈歌ちゃん。キミの可愛い顔が台無しよぉ?」
 そう言って燈歌の頬をなぞるように滑った指は柔らかで、なのに張りのある小さめな双丘を制服の上から優しく円を
描くように揉みしだく。
 無駄な肉がまったく無く最小限の大きさで女を表現する燈歌のそれは、彼女の軽いコンプレックスであった。友達から
もよく小さいとからかわれる。しかし17歳のきめの細かい肌から派生するその柔らかさと押すと戻ろうとする反発力、
全てが一級品だった。
「……そりゃアンタに会うたび会うたびこんな事をされればね……ぅんっ!……機嫌良くって方が無理でしょ?」
「ふ〜ん、そんな事言うんだ……でもこの前は気絶するくらい気持ち良かったみたいじゃない?」
 それまで、冷静だった燈歌の顔が瞬間的に紅潮する。その瞳に動揺が走るのが傍目からも良く分かった。
 燈歌は彼女とは何度も何度も面識があった。その度に自分は手足を闇に拘束され、目の前の少女に弄られるのだ。
 最初は嫌悪感だけしか感じなかった悪戯も、段々と自分の中の女を強烈に意識させられてしまう。
 その間も止まる事無く燈歌の胸を揉んでいた手に、制服やブラジャーとは違う手触りの突起物が当たる。
「あはっ、これ何?どしたのどしたの? 感じちゃった?」
 笑いながらそこを中心に更に責めたてる。
「ち、違っ……あぁ………ぁん……こ、殺してやる、絶対! 絶対お前の事殺してやる!」
「まぁだそんな事言ってるの? 聞き分けの無い子にはぁ……こうだっ!」
 燈歌のセーラー服の襟を掴み一気に引き裂く。
 どう考えても少女のか細い体からそんな膂力が出るとは思えないが、実際セーラー服は引き裂かれていて小ぶりな
果実を包む、パステルイエローのブラジャーがはっきりと確認できる。ふちどりにレースの刺繍がしてあり彼女の下着
の中でもお気に入りの1つだった。
「ひゃっ? こ、このっ……」
「まだ、そんな怖い眼するの? 外しちゃうよ……?」
 燈歌のブラジャーに触りゆっくりと少しずつ上に捲り上げていく。
 まだ完全には熟していない果実の膨らみが少しずつ、少しずつ見えてくる。
「や、やめさないよっ、この変態!」
 動かない手足を必死に動かそうとして体をくねらせるが、その行為からは逃げられない。
 そしてその行為はかえって少女の劣情をかきたててしまうのだが。
「私、変態だも〜ん♪」
 ぷるるんっ
 使い古された言い方かもしれないが、そう表現するのが一番適切な胸だった。
 少女の手によって抑える物体を失った双丘は揺れ、その存在を主張する。真ん中にはピンクがかった薄い茶色の乳
首が不似合いなほどに大きくなっている。
「〜〜〜〜っっっ!!」
「あははははっ。燈歌ちゃ〜ん、顔真っ赤だよぉ? どうしたでちゅかぁ、お熱でもありまちゅかぁ?お姉ちゃんが計って
あげまちゅねえ〜」
 燈歌の柔らかく健康的な唇に自身の唇を重ね合わせる。
「ちょ……イヤッ!……むぅ…………うんっ……あはぁ……」
 顔を左右に振り嫌がるが、両手で頬を抑えられると受け入れざるを得ない。
 それを見た少女は更に彼女の口内に舌を入れ唾を流しこむ。
 押し返そうとしても少女の巧みな舌使いによって余計流入量が増える。
 唐突に少女が唇を離し、2本の指で唇に触れる
「んふっ。それ全部飲んだら今日は止めてあげる」
 さっきまで燈歌が有島に対して向けたあの微笑み、一見天使だが悪魔のような微笑みを浮かべ提案してくる。その指
はふっくらと紅に色付く燈歌の唇を押さえている。
「………ほんふぉでひょうね?」
「ホントだよぉ、ほらほらぁ、ぐぐっと♪」
 口内に溜まった液体のためロクにろれつが回らない燈歌の言葉を受け少女は、ほっそりとした顎に手をかけ上を向
かせる。
「あぁ……」
 意を決したように喉を鳴らす燈歌。
「の、飲んだわよ。ほら、もうこれ外してよ」
「えっ、何言ってるのかなぁ? 私は、胸への悪戯をやめるって言ったんだよ」
「なっ……騙したのっっ?」
「心外だなぁ。こんな可愛い胸を弄れないなんて、私ってば可哀想〜。約束だからやめといてあげるけどぉ」
 そう言って少女は限界まで大きくなった乳首を口に含んでから、奥歯で軽く噛む。
「あんっ……! やぁぁぁぁぁぁ………!!!」
 燈歌は電気ショックを浴びた時のように、全身を痙攣させる。
 伸ばしきった手は何かの救いを求めるように差し出された。
 掴めたものは闇しかなかったが……。
「あははっ、か〜わいい♪ さて、こっちはどうかなぁ。まだ早いかな?」
 先ほどの言葉にも関わらず右手は相変わらず胸を弄びながら、左手がゆっくりと下がっていく。
「そっちは……だめっ!」
 もちろん手は止まらず、紺のスカートの下から潜り込んでいく。
「や、めろぉぉぉ!! 外れろっっ……このっ、外れてっ!外れてよぉ!」
 「そこ」に触れようとすると燈歌は体全体を使って逃れようとする。
 しかし必死な彼女をあざ笑うように彼女の四肢は闇にガッチリと固定され逃げられない。
 予感として、感覚として分かっている。自分のそこがどうなっているか。それが、目の前の相手の機嫌をよくする意味
しかない事も。
「もうっ、無駄だよ。今までもそうだったでしょ? さて、どうなってるかなぁ ……あれ、ねぇ燈歌ちゃん。おもらしした?」
 動けない体を自由に弄られ、自分の最も大事な部分に触れられている屈辱に眼を潤ませながらも気丈に燈歌は言葉
を発する。
「す、するわけないでしょ!」
「じゃ、これは何の液なんだろうねぇ〜?」
 淫靡な顔をして下着の上から何度も上下に擦り付ける。
「……うぁぁ………や、やめてぇ……おねがいだから……はぁあっ!?」
 燈歌の顔から堪えていた涙がついに一筋零れ落ちる。
 屈辱、羞恥、悔恨、劣情、様々な感情が混ざったそれを恍惚の表情で嘗めとるとさっきまで擦り付けていた指を見せ
る。
「ほらぁ、これ何なの? 下着の上からなのにこんなに付いちゃった。何なんだろうね、燈歌ちゃ〜ん?」 
 そこには粘度の高い液体が付着し、指を開閉するたびにその間を糸が引いている。
「し、知らないっ!」
「ふふっ。じゃあなんでそんな赤い顔になるのかなぁ?―――――――ちぇっ、もう“来た”の?」
 少女が周りを見まわした瞬間。
 音を立てて闇が崩れ始め、光が差し込み始める。
『先輩っ、燈歌先輩!』
 急速に世界が壊れ始め、燈歌を押さえていた闇も掻き消えた。
 燈歌は向かい合うと与えられた快楽を必死に堪えながら話し始める。
「はぁはぁ……悪いわね、私。も、もう戻らなきゃ。」
「へぇ、もうやるなって言わないんだ? 私の良さに目覚めた?」
「やるなって言っても、やるんでしょ? でも、いつか必ず殺してやるから」
 有島を圧倒した堕天使の微笑みで言うが、この後の答えもわかっている。笑って『へへっまあね』ってとこだろう。
「へへっ、まあね。じゃ、またバイバイ!」
 燈歌の体が浮き始める。最初はゆっくりと、徐々にその上昇の速度は上がっていく。
 燈歌は夢の中で自分に悪戯した少女に目を向けた。
 相変わらずそこには自分とまったく同じ姿形をした少女が笑っていた。
 また、会うのだろうきっと。
 
 目を覚ますとそこには見慣れた天井があった。
「先輩っ、大丈夫ですかっ?」
 清香が自分の顔を心配そうに見下ろしている。彼女の柔らかい髪に手を伸ばしながらながら微笑む。
「うん……大丈夫。そんな心配しなくても大丈夫よ」
「良かったぁ……。えっと校医の先生用事あるからって行っちゃったんで伝言です。顔のハレは良く冷やしておく事。4日
くらいで完全に引くそうです。あと口の中の裂傷は多少長引くみたいで2週間位かかるそうです。あまり無茶はしないよ
うにって。で、今日はもう帰っていいそうです……以上です」
「そう。うん、じゃ帰ろうかな……」
「はい。これカバンです。さ、行きましょう」
「ちょ、清香。待ちなさいって」
 次々と行動し、既に靴も履いている清香を少し焦った口調で、燈歌が止める。
「大丈夫って言ったでしょ? 一人で帰れるわよ。清香は授業出なきゃ」
「えぇ〜〜?」
「当然でしょ。ほら行きなさい」
「ホントに大丈夫です? 倒れたりしません?」
「大丈夫だって。ほら、出ておける時出ておかないと」
「はぁ〜い……。でも、何かあったらすぐ電話してくださいね?」
 渋々と言った様子で清香はようやく靴を脱ぎ始める。
「それじゃ、先輩さようなら。ホントに気を付けて下さいよ」
「うん、ごめんね心配かけて」
「いいえっ! それじゃお大事にぃ」
 燈歌は別れの挨拶を済ませ校門を出ていく。
 
 


 
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