兄嫁
 

 
「あっ、降ります、降りますっ!」
 慌ててホームに飛び出した途端、プシューッと音を立てて電車のドアが閉まった。気づかないうちにうたた寝
をしていたようだ。前の夜、悶々として一睡もできなかった雄二は、予備校の講義の最中も何度も居眠りをしてしまっ
た。
(しっかりしなきゃ、こんな調子だと、来年も浪人だぞ…)
 自分を戒めながら家に帰り着き、ドアを開けると、真季の電話する声が聞こえた。
「えっ…、遅いの…。うん…、仕方ないけど…」
 不満そうな、そして、どこか甘えるような声だ。相手は浩一だろう。電話の内容からすると、今日は帰りが遅くなるとい
うのだろう、そう推測はついたものの、真季に話しかけたくて、雄二は近寄って尋ねた。
「兄さんから?」
「うん、そうよ。」
「何だって?」
「仕事で遅くなるんだって…」
 真季は少し寂しそうにそう言った。それは、雄二の心に兄に対する激しい嫉妬心を呼び起こした。思わず「僕がいる
よ」と言いかけて、雄二は、危うくその言葉を飲み込んだ。

 その夜、二人で食事をする間、真季は雄二のものだった。
 真季は聞き上手だ。雄二の話を感心して聞いてくれ、時折、的確な質問で話を波に乗せてくれる。雄二の下手な冗談
に応えて見せてくれるのは、とびっきりの笑顔だ。
「雄二君、第一志望はどこなの?」
「慶稲大学の政経学部。」
「浩一さんと同じなのね。私も慶稲大学よ。文学部だけど。」
「でも、偏差値がちょっと足りないんだ。先生はもっと自信を持て、そうすれば大丈夫だって言うんだけど…」
「そうよ。雄二君、実力はあるんだから、自信を持って勉強すれば、来年はきっと大丈夫よ。」
「うん、義姉さんにそう言ってもらうと、本当に合格しそうな気がするよ。」
「あら、気がするだけじゃなくて、本当に合格するのよ。」
 真季にそう言ってもらえるだけで、雄二は志望校に合格できそうな気がした。
「ねぇ、ビール飲もうか?」
 いたずらっぽく笑って、真季が言う。
「僕、未成年だよ。」
「でも、飲んでるんでしょ?」
「うん!」
 そう言って笑い合いながら、真季は350ミリの缶を2つ持って来た。
 アルコールが入ったせいで、会話もぐっとなめらかになってくる。そのうち、浩一の話になると、頬をほんのり染めた真
季が、拗ねたような表情を見せてぼやいた。
「あの人ったら、私のことより、仕事の方が大切なんだから…」
 そんな真季は、あどけない少女のように見える。そんな彼女が愛しくて、雄二は思わず言った。
「俺が兄さんなら、義姉さんを放っといたりしないけどな。」
「ふふっ…、雄二君って、優しいわね。」
 そう言って見つめられると、雄二の心臓はドキドキ音を立てる。
 その時、風呂場からお湯が張れた合図のメロディが聞こえた。
「雄二君、お風呂、入ったら?」
「僕、後で入るよ。風呂に入ると眠くなって、勉強できないんだ。」
「じゃあ、私、先に入ってくるね。」
 そう言って真季が立ち上がる。
 やがて、浴室のドアが閉まり、シャワーを流す音が聞こえた。
(いけない…、いけない…)
 そう思いながらも、雄二は足音を忍ばせて、脱衣室のドアを開けた。磨りガラスに、立ってシャワーを浴びる真季の姿
が映っている。
 豊かな胸とお尻、キュッと締まった腰のくびれ、スラリと伸びた両足。その中心に黒い陰りが見える。雄二は、思わず
股間が熱くなってくるのを感じた。

 夜中になって、雄二は足音を忍ばせながら二階に上がって行った。何を期待していたわけでもないが、真季の寝てい
る姿を見たいと思ったのだった。
 階段を一歩一歩のぼるごとに、昨日、真季と浩一の夜の生活を覗いた記憶がまざまざと浮かんでくる。
 真季が寝ている部屋の前に来ると、やはりドアが少し開いていた。どうやら建て付けが悪くなって、何かの拍子に開い
てしまうのだろう。雄二は思わず部屋の中を覗き込んだ。電球はついていなかったが、煌々と照らす月の光で、部屋の
様子はだいたい見て取れた。
 目の前に、ベッドに寝ている真季の姿が見えた。掛け布団は掛けず、その上に横たわっている。
「あぁ…」
 ふいに、真季の声が聞こえた。泣き声のような、甘えるような、男の官能をくすぐる声だった。
 見ると、右手がパジャマの上から胸を撫でている。
「!」
 息を飲んで見ていると、パジャマの裾から中に入った右手が、ゆっくりと左乳房を揉み始める。ベッドの上に投げ出さ
れた美しい脚がもじもじとよじり合わされていた。
「んんっ…、ん…」
 押し殺してはいるが、真季は今や、はっきりとわかる喘ぎ声を漏らしている。眠っているのではなく、自ら身体を愛撫し
ているのは明らかだった。
(ね、義姉さん…、オナニーしてるんだ…)
 真季は横になったまま、手と足を使ってパジャマのズボンを脱いだ。軽く開いた足の間に白い下着の底が覗いてい
る。一方の手がそこに伸びて、パンティの上から陰部を撫で始めた。
 軽く折り曲げて、しっかりと揃えていた両脚がついに崩れた。右足はまっすぐ伸ばしたまま、左足がおずおずと90度
上に持ち上がり、折り曲げた足の膝小僧が天井を向いた。雄二の位置から、さっきよりはっきりと下着が見えた。
(パンティ…、濡れてるのかな…)
 雄二はそう思って目を凝らすが、月明かりぐらいでは、それを確認するのは無理だった。
「ん…、んっ…、んんっ…」
 真季の自慰は激しさを増していく。胸を愛撫していた手がパジャマから出て、シーツをぎゅっと掴んでいる。足の指が
閉じたり開いたりしているのが目に入った。
「あっ…、いっ…、いやんっ…」
 とうとう、真季はパジャマの上も脱いでしまい、パンティ一枚になっている。冴え冴えとした月の光を浴びて輝く肌が見
える。
 その手が乳首に触れた。ぴくんと身体が反応し、伸ばした足が一瞬、内股に少し縮まる。
「あ…、いやっ…」
 そして真季はついにパンティの中に右手を差し込んでいく。敏感な部分に触れたらしく、頭を後ろにぴくっと反らせ、投
げ出していた足の膝が持ち上がった。
 真季は身体をよじり、パンティを足から抜き取った。手の動きが制限されるのを嫌ったのだった。
「あンっ…、あンっ…、はっ、はっ…、」
 全裸になった真季は、大きく足を広げた「人」の字型の姿勢で仰向けになっていた。左手は右の乳房を握りしめ、右
手を激しく股間に突き立てている。
(凄い…、感じてるんだ…)
 雄二の目は真季に釘付けになった。普段、清楚な分だけ、快楽に悶え狂うその姿はたまらなく淫靡であった。
「んん…、あっ、だめ…んん…」
 真季が甘えるような喘ぎ声を漏らした。ドアの隙間から見つめる雄二は、強烈な興奮に、夢中で自分の物を擦りたて
ている。
「いやっ…、やンっ…、あぁん…、あっ…、あっ…」
 美和の姿勢はさらに変化していく。一度は伸びきった両脚が少し縮まり、その足を支点にして腰が少しずつ持ち上が
り始めた。
「あっ…、あぁっ…、あっ…、あっ…」
 真季は無茶苦茶に指を動かした。指の動きに合わせて、くいっくいっと腰が持ち上がる。
(義姉さん、いきそうなんだ…)
「あっ…、いっ…、いっ…、あっ…、あぁっ!」
 真季の体が、ぶるっぶるっと断続的に震えだした。
「やっ…、やンっ…、あっ…、んっ…、くぅ…」
 真季は腰をがくがくと突き上げ、頭を大きく後ろに反らした。
「んっ…、んっ…んんんっ!」
 そして、糸が切れたように、がくんとシーツの上に身体を落とした。荒い呼吸の中で、なお、しばらくぴくぴくと身体が痙
攣している。
 思わず身を乗り出した途端、雄二は態勢を崩してしまった。とっさにドアの把手を掴んだものの、半開きのドアは彼の
体重を支えてくれるわけもなく、勢いよく部屋の壁にぶつかった。
 ガターン!
 大きな音とともに、雄二が部屋に転がり込む。

「雄二君、見てたの?」
 真季が掠れた声で尋ねた。雄二と視線を合わせることなく、掛け布団を胸まで引き寄せて、裸身を隠している。
 雄二はそれには答えず、ベッドに駆け寄ると、真季の肩を抱きしめてキスをした。
「んん…、雄二くん、だめ…」
 真季はもがいて、雄二を引き離す。伸ばした両手が雄二の肩を掴んでいるために、掛け布団が捲れ、豊かな乳房が
揺れているのが露わになった。それが雄二の興奮にさらに火をつけた。
「義姉さんっ、好きだ!」
 そう言うと、雄二は倒れ込むようにして、真季の身体をベッドに押し倒す。その手は、真季の胸の膨らみを押し潰すよ
うに揉みしだいていた。たわわに実った乳房はなんとも心地よい弾力で、脳まで溶かすような感触を掌に伝えてきた。
「いやっ、やめて…」
 そう言って拒もうとはするものの、恥ずかしい姿を見られた負い目からか、自慰行為の余韻が残っているせいか、真
季の抵抗はとても弱々しいものであった。
(乳首が硬くなってる…)
 指先でなぞると、乳暈が微かに隆起し、乳首がすっかり尖っているのがわかる。雄二は夢中で乳首にむしゃぶりつい
た。
「ふぅん…、ああぁ…」
 強く吸うたびに、真季の唇から甘い吐息が漏れてくる。乳輪をなめまわし、乳首に軽く歯を立てると、真季はピクンと
身を震わせ、切なげな喘ぎ声を響かせる。
 柔らかな肌を全身で味わいたいと思った雄二は、もどかしげな手つきで着ている物を全て脱ぐと、真季の体に覆いか
ぶさり、体を重ね合わせた。頬と頬を擦りつけ、胸板と乳房を触れ合わせ、再び唇を奪う。汗をかいた真季の髪の毛か
らリンスの甘い匂いがした。
 雄二は夢中で真季の唇を吸った。今度は真季もそれを応え、タイミングを合わせながら互いの唇を貪った。真季の喉
の奥からは、ひっきりなしに可愛らしい哭き声が漏れている。雄二は舌を差し入れ真季の舌と絡ませた。真季も雄二の
舌を受け入れ、自ら舌を絡ませてくる。次から次へと雄二の唾液が真季の口に注ぎ込まれた。
 もっと真季の体のいろいろな部分に触ってみたいと思った雄二は、左手で乳房を揉みながら。右手は体側にそってす
べりおろし、ふとももの内側にあてがった。むっちりした肉の感触が掌に伝わってくる。
 そして、下腹部に手を滑らせる。陰毛のシャリシャリした感触の真ん中に、ヌルっとした手触りがあった。
(どうなってるのか、見て見たい!)
 そう思った雄二は、真季の下半身の方に体を移動させ、太腿を大きく開かせた。
「あっ、いやっ…」
 股間を隠そうとする手を払いのけて、雄二は真季の秘部を見た。ふっくらと盛り上がった外陰唇から、濡れた花弁が
わずかにはみ出している。ラビアの合わせ目の包皮の間から小さな突起が顔をのぞかせているのが、月明かりの中で
も見て取れた。
(これが、義姉さんのオ××コ…)
 ふと、浩一がそこをなめていたことが鮮明に思い出され、雄二は真季の陰毛に鼻先を埋めた。
「ああっ…」
 真季は背をのけ反らせ、太腿をギュッと締め付ける。
 雄二は夢中で真季の陰部をなめた。陰核をしゃぶり、ラビアを含み、尖らせた舌先で膣口をほじってゆく。
「あんっ…、んんっ…、ああっ…」
 真季が喘ぎ、少しもじっとしていられないようにクネクネと身悶えている。真季の性器をなめている、そう思っただけ
で、あやうく射精しそうになることが何度もあった。
 限界だと思った雄二は、体を起こすと、大きく勃起しカウパー腺液まみれになっているペニスを握って、グッと真季の
秘部に押し付けた。
「あっ、だめ!」
 真季が慌てて声をあげる。しかし、もはや止めることはできなかった。亀頭の先に愛液のぬめりを感じた直後、雄二
はたまらず腰を突き出したのだ。屹立した肉棒がずぶずぶと真季の膣に潜り込んでいく。
「ああっ…」
 雄二は声にならない快感の声を吐き出した。こんなに気持ちがいいのは、生まれて初めてだった。
 今にも射精しそうになるのを必死で耐え、真季の体を抱き締めると、唇に、頬に、首筋にキスをした。
「ああ…、だめ…、やめて…」
 真季の哀しげな声に、雄二はハッとした。自分はいけないことをしているんだという罪意識が強く湧いてきたが、すぐ
に、真季とつながっているという快感と興奮がそれを上回った。
 雄二は腰を使い始めた。肉襞にペニスをこすられ、何度も暴発しそうになりながら、その都度、なんとか踏みとどまっ
た。しかし、それも長続きしないのは明らかだ。
「あん…、あっ…、あぁ…」
 真季のよがり声が雄二の興奮を煽る。もうこれ以上、雄二に耐える術はなかった。肉棒が脈動を開始し、溜まった白
濁液が真季の体内に向かって噴出していく。
 数秒遅れて、真季の体を大きな痙攣が走り抜けた。ふと見ると、真季の右手が股間にあてがわれている。彼の肉棒
を迎え入れたまま、真季は自らの指で秘部を愛撫していたらしい。
 射精の余韻を味わいながら、雄二は真季の体を抱き締める。すると、閉じた真季の目から大粒の涙がポロポロこぼ
れ落ち、裸の胸を熱く濡らした。
「ごめん…」
 その声が引き金になったかのように、真季が小さな声を漏らして泣き出した。雄二は掛ける言葉が見つからず、た
だ、真季の髪を優しく撫でていた。
「こ、このことは…、雄二君と…、私だけの…、秘密にして…」
 真季が涙声でそう言った時、二人は「共犯」になった。

 雄二が真季を抱いたのは、その時一回だけだった。
 数日後には両親が旅行から帰って来たし、浩一も意外に早く新しいマンションを見つけて、すぐに引っ越して行った。
 以前と変わらない日が戻ってきたが、それ以来、雄二は見違えるように勉強をするようになり、翌年の春、見事に大
学に合格した。しかし、それは、当初の志望校の慶稲大学ではなかった。兄と違う大学、そして、兄と違う進路を選んだ
のだ。もやは、浩一は雄二の憧れの存在や自慢の兄ではなかったし、競争相手でもなかった。
 それから二、三か月経って、浩一から電話があった。
「よろこんでくれ、真季に子どもができたんだ。どうやら、うちにいる時にできたらしいよ。」
 浩一がそう言っていたと母から聞いた雄二は、心の中にムクムクと疑問が湧き起こってくるのを感じた。しかしそれ
は、けっして口に出してはならない疑問である。

 それから2年程の月日が流れた。
「ただいま。」
 雄二が大学から帰ってくると、玄関に黒い紳士物の革靴とネイビーブルーのおしゃれな婦人靴、そして、掌に乗りそう
な小さな可愛い靴が並んでいた。
「おう、雄二、元気にしてるか!」
 浩一はいつも変わらない口調で声をかけてくる。その横で、以前にも増して美しい真季が、膝の上に小さな子どもを
乗せて、にっこりと笑っていた。
 膝の上の幼児は、雄二を見ると、ニコニコ笑いながら手を伸ばし、口を開いた。
「パパ…」
「おっ、直人がしゃべったぞ!」
 浩一がうれしそうな声をあげた。
 雄二が凍りついたように見つめる幼児は、無邪気に微笑みを返してくる。
「きっと、直ちゃんは、雄二叔父さんが好きなのね。」
 穏やかにそう言った真季は、そっと子供を抱き上げると、優しい微笑みを浮かべて雄二を見た。その姿は、ラファエロ
の聖母子を連想させ、雄二はただ黙って見つめていた。

 


 
 「兄嫁」目次へ
 
 「Novel」へ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ 
動画 アダルト動画 ライブチャット