テニス少女・果てなき闘い 第13章

「いくわよーっ!」
 向こう側のコートで、中西朋美が引き締まった表情で叫んだ。トスがあがり、強烈なサーブが唸りをあげて
飛んできた。最近は、なんとなくマネージャー的な役回りが多い印象の朋美だが、美奈たちと鎬を削ってきた
テニス巧者のボールは鋭く、絶妙なコースで飛んでくる。
 必死でダッシュしてボールに追いつき、打ち返した瞬間、長畑明穂は足をすべらせて派手にコートに転ん
だ。スコートが捲れ、健康的な太腿と純白のアンダースコートが覗く。慌てて隠そうとした明穂だったが、い
つもと違って、卑猥な笑いや冷やかしの声は一切飛んでこない。改めて、この場には、ギャラリーの男が一人
もいないことを思い出した。
「大丈夫―っ!?」
 すぐに立ち上がらない明穂を気遣って朋美が声をかけた。
「はいっ!次、お願いしまーす!」
 明穂はラケットを構え、元気な声で答えた。その表情は、館に来てからついぞなかったぐらいに明るい。
 二人だけではなく、コートのあちこちでテニス少女たちの練習が繰り広げられていた。この間の慰安漬けの
生活で鈍った感覚を取り戻すための厳しいトレーニングだったが、部員たちの表情は生き生きと輝いていた。
いやらしい見世物ではなく、本当のテニスの練習ができるのだ。
 美奈が松川との賭けによって、約束した一週間の間、テニス部員たちが十分なトレーニングをする時間が保
障された。もちろん、完全に慰安から解放されるわけではない。しかし、夜、寮に帰ってから数人の訪問客の
相手をする以外はテニスの練習に没頭することができるのだ。
「ボールを打つときの肘の位置は、もう少し上に…、そう、そんな感じよ」
「はいっ!ありがとうございます!」
 岡崎里穂が目をキラキラさせて、丁寧に指導してくれる美奈を見た。
 実力のない者、実力が伸びない者は防衛隊員として海外に送るという松川に対して、「誰一人として送らせ
ない」と啖呵を切った美奈は、自らそうした危険性の高い部員たちを集中的に指導していた。
 公立高校のテニス部でがんばって努力し、県大会に出たことがある里穂だが、選りすぐりのテニス少女が集
められている中では、かなり見劣りしてしまう。このままだと、彼女の派遣部隊送りは確実だと思われた。
 女の子らしいふんわりした可愛らしさを持った里穂が戦場に送られ、帰国のめども立たないまま、過酷な環
境の中で群がる隊員たちの性欲処理の玩具になることを想像しただけで、美奈の心が痛む。それだけは、何と
か食い止めたいと思い、指導に熱が入っていく。
「素振りが終わったら、ランニング。体力づくりも大事だからね」
 美奈がそうアドバイスすると、里穂は「はいっ!」と頬を紅潮させて答えた。
 そんな二人の様子を、近くでサーブの練習をしていた菱田由加理が見ていた。社会の動きを知ることが好き
で、よくニュースやSNSの社会的な記事を見ていた由加里は、自分が館に連れて来られ、世間に流されていた
ニュースの出鱈目さに気づいてからも、マスコミで報道され、ネットで流布していた「反愛国者」「裏切り
者」「失墜」といった美奈のダーティーなイメージを拭いされずにいた。
 熱心に後輩たちを指導する美奈の姿を見詰めながら、由加里は館に連れて来られた当時の、今も忘れられな
い出来事を思い出していた。

「おい、お前、何を睨んでるんだよ!」
「慰安嬢のくせに、生意気だぞ、こいつ!」
 由加理の周りを男たちが取り囲んだ。フォームの練習と称して胸を触って来た男の手を、思わず振り切って
しまったのがきっかけだった。
 館のテニス部は薄手のユニフォームをノーブラで着るため、乳房の膨らみがはっきりわかり、白い生地に乳
首と乳輪が透けている。いやらしい目でじろじろ見られるのさえ恥ずかしかったのに、ペアを組んだ防衛隊の
男がいきなり抱きついてきて、乳首をなぞるように触ったことで、とうとう我慢できなくなってしまったの
だ。
「俺たちは、客としてここに来てるんだぞ!」
 大声で怒鳴りつけられ、由加里の目から涙が溢れ出した。体格が大きく屈強な防衛隊員数名に囲まれ、恐怖
で全身が震えている。
「失礼します!」
 よく通る声とともに、そこに割って入って来たのが美奈だった。美奈はいきなり由加里の頬をビンタした。
その勢いに、周りを取り囲んでいた隊員たちも気圧され、思わず一歩後退る。
「あなたはもう慰安嬢なのよ、ちゃんと自覚を持ちなさい!」
 美奈が由加里を叱りつける。続いて、さっき居丈高に怒鳴った隊員に向かって、美奈は深々と頭を下げた。
「この子はつい先日、ここに来たばかりなので、よくわかっていないんです。どうか私に免じてお許しくださ
い」
「そうか…、でも、俺たちが悪いことをしたみたいに言われると面白くないわな。ちゃんと教育してくれない
と…」
「いい加減な気持ちで慰安嬢になった者はいません、みんな必死で真剣です。ただ、女の子ですから、胸を見
られたり、アソコを見られたりするのはやっぱり、とっても恥ずかしいのです。それでも、私たちを守ってく
ださる防衛隊のみなさんに、喜んでいただきたくて、すべてをお見せしているんです。アソコやお尻にオ×ン
×ンを入れていただいても構わないって思って、納得していますが、やっぱりその時には躊躇いや不安もあり
ます。そのことはわかっていただけるとありがたいです」
 随分とトーンダウンしたものの、なおも不満を口にする隊員に向かって、美奈は穏やかにそう話すと、謝罪
の証しにその場でユニフォームを脱いで全裸になった。
「さあ、あなたも脱ぎなさい。私たちの覚悟を見ていただきましょう」
「でも…」
 由加里は「ムリ」とばかりに首を横に振る。館に連れてこられた日に強姦で処女を奪われて以来、二、三日
のうちに既に10人近い訪問客とセックスさせられたが、まだ屋外で裸になったことはなかったのだ。そうし
て必死の抵抗を見せる由加里のことを、美奈は厳しい目で睨みつけた。その視線は、けっして逃げることは許
さないと告げている。
 由加里はとうとう、あきらめたようにユニフォームを脱ぎ始めた。露わになった双乳は大きくはないが形の
整った隆起を見せ、若々しく張り出している。その中央で天を向いた乳頭が、小さめの乳輪の中に埋もれてい
る。由加里の心臓は恥辱でドクン、ドクン、ドクンと、張り裂けんばかりの鼓動を刻んでいた。
「おおっ、思ったとおり、可愛いオッパイしてるじゃないか!」
 由加里の乳房に触り、ことの発端を作った隊員が満足そうに声を上げた。卑猥な笑いを浮かべ、じろじろと
由加里の胸を見て、いやらしく舌なめずりしている。心を空っぽにして、淡々と脱ごうとしていた由加里の決
意がその瞬間、脆くも崩れ去った。
「いやっ、いやあああ…。み、見ないで! 見ないで!」
 由加里は両手で胸を隠し、その場に蹲った。小さく丸まった肩がガクガクと震えている。
「うっ、ううっ…。も、もう許して…」
「ほら、しっかりしなさい!」
 そう言って、背後から由加里の身体を抱き起したのは、美奈だった。そして、そのまま由加里の身体を羽交
い絞めにする。
「なにするの、やめてっ!」
 由加里が逃れようとしても、美奈の手が緩むことはなかった。さっきの男が由加里に近づいて来て、彼女の
胸に手を伸ばしてくる。
「さっきはユニフォームの上からだったけど、今度は直接、乳首を弄りまくりーっ!」
 おどけるようにそう言うと、大きな両手で由加里の乳房を揉みしだき、指先で乳首をクリクリと転がして勃
起させる。
「あっ、あぁ…いや…」
「うへへへ…、乳首も立ってきたぜ。感じるんだろ?」
 そうしている間に別の男が、由加里のアンダースコートに手を掛け、ゆっくりと捲っていく。
「だめえ、ぬ、脱がさないで!」
 由加里は腰を引き、太股に力を入れて抵抗するが、アンスコはじわじわと太腿まで下げられた。男は、服従
の証しとしてつるつるに剃毛された下腹部を撫で回し、陰裂に指を忍ばせる。
「ううっ、いっ…、いや…」
 由加里の眉が恥辱に歪み、太腿の力が緩んだ。次の瞬間、一気にアンスコがずり下ろされる。
「おおっ!」
「オ××コ丸見え!」
 周りにいた男たちがそう言いながら、由加里の前にしゃがんで、露わになった股間を覗き込む。
「いやあーっ!」
 由加里が羞恥のあまり悲鳴をあげる。男の手が女陰に伸び、大陰唇の膨らみを押しひろげた。別の男の指先
が淡い色合いの二枚の花弁をなぞっていく。
「やめて、やめてっ…いやぁっ!」
 由加里が激しく抵抗するが、美奈に後ろから押さえられているため、身動きすらまともにできない。男の指
が膣口から差し込まれ、かぎ型に曲げた指先で媚肉をグルグルと掻き回した。もう一人の男は、小陰唇の割れ
目をなぞり、上部に埋もれた敏感な芽を探り当てた。
「あっ、あっ、ああぁぁぁ…」
 二人がかりで性器を弄り回されたせいで、由加里は軽いアクメを迎えた。腰を振り、女陰からピュッピュッ
と潮を噴く様子に男たちは笑い声をあげ、手を叩いてはしゃぐ。由加里の頬が燃えるように熱くなった。
 やがて他の男たちも手を伸ばしてきて、何本もの手と指が由加里の柔肌を味わうように全身を這い回る。
「なんてすべすべの肌なんだ!」
「柔らかくて、指に吸い付いてきやがる」
 口々にそう言いながら、男たちは由加里の瑞々しい肌の感触を楽しんでいる。玩具のように身体を弄られな
がら、由加里は目を瞑り、恐怖と恥辱に身を堅くしてすすり泣くしかなかった。
 その後、由加里はその場で男たちに代わる代わる犯された。途中から美奈も加わって、白昼の屋外、多くの
見物人がいる前で10人近い男と2人の少女が乱交することになったのだ。子どものように泣きじゃくりなが
ら輪姦された由加里は、とうとうその場で気絶してしまった。

 あのことがあってから、由加里は美奈に憎しみを抱いていた。
 どこであろうと構わず、人前で平気でセックスし、感じて絶頂にまで達する美奈。訪問客やコーチたちのい
やらしい命令に従って淫売ぶりを発揮し、意味のない練習を真剣に指導して、自分も喜んで行っているキャプ
テン。部員のユニフォームの着方まで指示し、こんな感じだと言って露わにした自分の胸や局部を見せて回
り、平気で男たちに触らせている最低の女…。
(でも…)
 この間、美奈がコーチたちのプライベートレッスンでずたずたにされる姿を、由加里も自分の目で見てき
た。その直接のきっかけは、由加里を庇うためだった。スマッシュのフォームを崩したくないと、由加里が訪
問客の要求を拒否したことがきっかけだ。
 美奈と組んだダブルス、コーチたちとの練習試合で自分は全力を出し切らなかった。美奈への反発があった
からだ。
 もし、あの練習試合に勝っていたら、その報酬は美奈が部員たちの練習のカリキュラムを自由に組むことだ
った。そして、今、回り道はしたものの、美奈はそれを実現させている。
(やっぱり、凄い人だわ…)
 あの時だけではない。テニス部員たちは常に美奈に庇われ、守られていた事に、由加里も実はとっくに気づ
いていた。彼女の淫らな振舞いも、他の部員たちではなく、自分に視線が集まるようにわざとやっていたこと
だし、率先して凌辱されることで後輩への負担を減らしてくれてもいた。クラスで他の部の様子を聞くと、美
奈がキャプテンを務めるテニス部は、実はかなり恵まれている事がわかった。
(私も、あの人の役に立ちたい…、有岡美奈と一緒に闘いたい!)
 そう自覚した途端、由加里の目から涙が溢れて止まらなくなった。
「ほら、ボーッとしないで!ここでの練習時間は貴重なのよ」
 鳥居仁美にポンと肩を叩かれ、由加里はハッと我に返った。
「はいっ!」
 慌てて手の甲で涙を拭うと、由加里はサーブの練習を再開した。仁美がにっこり笑って、ガッツポーズを送
って来た。
 美奈は指導する部員たちの前で、軽くサーブを打って見せる。その様子を険しい視線で見ている者がいた。
「恭子、何、見てるん?」
 美奈の動きを目で追う小倉恭子に、井上千春が声をかけた。
「有岡さん…、変ですよね…?」
 恭子の言葉に、千春が眉をひそめた。
「やっぱり、恭子もそう思うんやね…」
 二人の視線の先で、美奈が部員にボレーの練習をさせるために、ボールを打ち込んでいる。
「フォームが微妙に狂っていて、ボールのアタックが僅かに早い…」
 恭子の呟きに、千春がため息をついた。
「あのレベルになると、精密機械の調整みたいなもんやから、私たちが心配しても、どうもでけへんわ。有岡
さん自身も気づいてると思うから、本人に任すしかあれへん」
「でも…」
 恭子が心配そうな表情を千春に向ける。
「有岡さんを信じて、私らは私らができることを頑張るしかないんよ」
「はい…」
 不安な思いを拭えないまま、二人は練習に戻った。

「コーチ、どういうことなんですか?」
「そうです、ちゃんと説明してください!」
 晴亜と玉田が松川に詰め寄った。その後ろでは、曽根が無言のまま、明かに不満げな視線を向けている。
「まあまあ、そういきり立つなよ」
 そう言うと、松川は諸藤館長と会った時の様子を話し始めた。
 諸藤が提示した二つの条件、テニス部の実力を回復し、理事選を手伝うことを部員たちに了解させるには、
有岡美奈を完全回復させるしかない。彼女がいてこそ、部員たちをまとめあげ、その二つの条件を満たすこと
ができる。
「だから、お前たちの玩具にさせて有岡を潰すわけにはいかないんだよ」
 そうして順を追って、美奈のプライベートレッスンをやめさせた説明されると、コーチたちも黙るしかなか
った。しかし、全く納得してはいない様子は明らかで、晴亜などは露骨にふくれっ面になっている。
 松川はさらに説明を続けた。実力がないと判断したテニス部員たちを魏国沿岸配備部隊に配属するというの
は、美奈を奮起させるための方策として、松川が考え出したものだ。責任感が強く、心優しい美奈にとって、
彼女自身の利害よりも、テニス部員たちを盾にとることの方がはるかに効果的だ。
「だからって、私たちをクビっていうのは酷いじゃないですか!」
 晴亜がなおも食い下がる。
「心配するな。美奈は『派遣部隊には、誰一人として推薦させません!』などと言っていたが、そんなこと、
できるかどうかだ…」
 そう呟いて松川はニヤリと笑った。
 テニス部員のうち何人かでも部隊に配置することができれば、実力のない者を切り捨てることで、結果とし
てテニス部全体としては実力がアップすることになるし、彼の後ろ盾になった南原事務長のご機嫌を取ること
にもつながる。ひいては、防衛隊にも恩を売ることができそうだ。
「でも、万が一、全員実力アップしたら、どうするんです?」
 それまで黙っていた曽根が、剣呑な低い声で尋ねた。
「ははは…、それを判断するのは誰だと思ってるんだ?」
 松川は邪悪な笑いとともにそう答えた。彼の頭の中では、そもそも初めから派遣部隊編入者のリストができ
あがっているらしい。美奈との賭けなど端っから茶番に過ぎないのだ。
 その時、松川の携帯電話が鳴った。
「はい…」
「諸藤だ」
「あっ!館長!」
 電話越しの声だけで、思わず松川の全身に緊張が走る。ボソボソした話し方で、感情を窺わせる様子が何一
つない低い声なのに、それだけで聞く者を震撼させる迫力があった。
「有岡美奈との賭けの件、聞いたよ。一週間の練習の様子を見て、実力のない者は全員、派遣部隊に推薦する
ことにしたそうだね」
「はっ…」
「君に、そんな権限があるのかな…?」
「えっ、あ…、申し訳ございません、実は南原事務長と相談いたしまして…」
 必死で弁解する松川に、コーチたちの冷ややかな視線が注がれる。彼らに対してはボス然として偉そうな男
だが、目上の者に対しては滑稽なぐらいに卑屈だ。
「面白いじゃないか、その審査、私も加わらせてもらおう」
「えっ?しかし…」
「楽しみにしているよ」
 そう言うと、電話は一方的に切られた。それは、自分に審査させろという絶対者からの命令であり、松川ご
ときに選択の余地など与えられてはいなかった。わずかに言葉を交わしただけで全身のエネルギーを吸い取ら
れたかのように、松川はぐったりと椅子に座り込んでコーチたちに向かって言った。
「お前たち、前言撤回だ。ガチの勝負になっちまった…」

 夕刻になり、他の部員たちが寮に帰った後、一人だけテニスコートに残って練習する美奈の姿があった。
「ダメだわ…」
 フォームが決まらず、ボールが思うように飛んでくれない。ここまで調子を落としたことは、テニスを始め
てからついぞ経験したことがなかった。
「どうすればいいのかしら…」
ついつい弱気が口をついてしまう。部員全員の実力アップ、それがなければ、派遣部隊に参加させられる部員
が出てくる。そのためには、まず、彼女自身の実力を回復させることが必要不可欠だった。しかし、そのため
の糸口を掴むことができず、もがき苦しんでいるのだ。
「ああ…」
 どうして良いかわからず、悔し涙が滲むのを感じたその時だった。
「有岡さん、まだ練習してるの?」
 制服姿の少女が一人、コートに近づいて来た。生徒会長の森脇亜弓だ。
「有岡さんが探していた人の居場所がわかったわ」
「えっ、日比谷先生、どこにいるの?」
 日比谷が館内にいるのではないかと良宏に聞かされた後、テニス部員たちは、美奈を元気づけるために、日
比谷を見つけ出そうとそれぞれに努力を尽くしていた。そんな中、朋美に協力を依頼された亜弓は、普通科の
女生徒たちに対する聞き取り調査を進めていたのだ。
普通科を含めた大勢の生徒を対象に話を聞き、館側に気づかれることなく行動できる者がいるとすれば、彼女
を置いて他にはあり得ない。
「ありがとう…、みんな…」
亜弓から事情を聞かされ、美奈は思わず涙ぐんだ。
「先日、日比谷先生の身の回りのお世話をしていた女生徒が体調を崩したということで、生徒会の役員の一人
が替わって受け持つことになったの」
 そう言うと、亜弓は、生徒会役員の女生徒から聞いた話を始めた。
「…というわけなんだけど、誰か、心当たりはない?」
「私、館内に監禁されている人に食事を持って行ったことがあるの…。その人じゃないかしら…」
 そう答えたのは、2年生の樫村舞だった。
 「癒しの館」が公立高校だった頃からの生徒で、小さくて丸い童顔の「癒し系」と呼ぶのがピッタリの女生
徒だ。おっとりした話し方も雰囲気を和ませるので、お世話係には適任だろう。
「とても真面目な人よ。私、何回かお相手したのだけど、いつも『そんなことしちゃダメだ』と言って拒もう
とされて、必ず、するように指示されてたから、逆レイプみたいになっちゃったわ…」
 舞が哀しげな笑いを浮かべた。慰安嬢の生活は、毎日、四六時中レイプされているようなものだ。性的自由
を奪われることの辛さ、哀しさは骨身に沁みている。館の指示とは言え、真面目な大人の男性に淫らな行為を
仕掛け、自分が凌辱する側に回ったことで、舞は何重にも傷ついているのだ。それが、乾いた笑いになって顔
に貼りついている。痛ましい思いで、亜弓は思わず視線を逸らした。
「それでね…、今夜も舞が代役を命じられているの…」
 亜弓がそう言って美奈を見た。美奈は亜弓が言うことを理解して、コックリと頷いた。

 校舎の最上階の奥の部屋、かつては視聴覚室と呼ばれていた部屋に、指定された時間どおりに美奈は向かっ
た。食堂で受け取った一人分の食事を手に持っている。お世話係になっている舞とすり替わって日比谷を訪問
するのだ。
「失礼します」
 薄暗い部屋に入っていくと、初老の男性が目を閉じて椅子に腰かけていた。紛れもなく日比谷信夫、その人
だ。美奈は思わず涙がこみ上げそうになった。
「先生…、日比谷先生…」
 押し殺した声に、顔を上げた日比谷の目が驚きで見開かれた。
「あ…、有岡君、有岡君なのか…?」
「先生、ご無事で何よりでした…」
 美奈は椅子に駆け寄り、日比谷の手を取った。
 それからしばらく、美奈はこれまでの経緯を洗いざらい日比谷に話した。食事を取るのも忘れて聞き入って
いた日比谷は、美奈がスランプだと言う話を聞くと、その場で立つよう彼女に指示した。
「…ラケットを持っている状態をイメージして構えて、ゆっくり手を振って見なさい」
 そうして、美奈に素振りの姿勢をチェックすると、何かに気づいた様子で頷いた。
「なるほど…、そういうことか」
「えっ、何かわかったんですか?」
「少し、視線を上に上げてごらん、…もうちょっと、そう、そこだ」
 美奈の表情がみるみるうちに変わっていく。たったそれだけのことで、スランプの原因が見えた気がした。
この間の精神的なダメージは自覚以上にひどかったようで、視線が知らず知らずのうちに下がってしまい、そ
のことがフォームに微妙な狂いを生じさせていたのだ。その他にも、日比谷は自分が気付いたことを美奈に伝
え始めた。その一つ一つが適切なアドバイスで、わずかこれだけのことで問題点を見抜く日比谷の指導者とし
ての力量に、美奈は改めて感動を覚えた。
 その時、ガタンと音を立てて扉が急に開かれた。
「個人レッスンはそこまでにしましょうか、日比谷先生」
 そう言いながら中に入って来たのは、松川だった。それに続いて、晴亜、玉田、曽根が入ってくる。
「今夜、先生のお世話係に当たっている女生徒がこの部屋に向かっていないことが、たまたまわかって、不審
に思って来てみたら、こういうことだったわけだ」
「松川君、君はいったい何をするつもりなんだ!」
 久しぶりに目の前に現れた松川を、日比谷が糾弾しようとする。松川はちらりと一瞥しただけで、それを無
視し、美奈に向かって言った。
「生徒会の連中を巻き込んだようだな。あいつらに迷惑がかかっても構わないのか?」
「生徒会は関係ないわ、私が直接、樫村さんにお願いしたのよ!」
 美奈が必死に言い返す。
「監視カメラで確認しようと思ったら、どうしてだかモニターが故障していたんだが…」
 首を傾げる松川を前に、平静を装ってはいたが、美奈の心臓は激しく脈打っていた。もし、自分たちに協力
している良宏の存在が館の知るところとなったら、取り返しがつかないことになる。
「まあいい、この際だから、日比谷先生を監禁状態から解放して差し上げても良いぞ」
「えっ?」
 思いがけない言葉に美奈が目を見張った。
「ただし、条件がある。今ここで、日比谷先生とセックスし、その様子を俺たちに撮影させることだ」
「えっ…」
 美奈が絶句している様子を楽しみながら、松川は言葉を続けた。
「毎晩、ここに送られているお世話役の役割は聞いているだろう。食事の上げ下げと同時に、日比谷先生のセ
ックスのお相手をすることだ」
「松川君!」
 日比谷が抗議の声をあげると、松川はニヤニヤ笑った。
「樫村と交替したのなら、お前にもその役割をきちんと果たしてもらわないとな。そして、その様子を撮影し
ておけば、先生を解放したとしても、万が一の時の切り札をこちらが握っておけるというわけだ」
「どういうことだ?」
 そう質問したのは、日比谷だった。
「もし、先生が俺たちに不利な動きをしたら、動画を世間に公表するということですよ。『テニス界のプリン
セスと人格者の仮面をかぶった淫行コーチとの爛れた肉体関係』…、どうですか、週刊誌が飛びつきそうなタ
イトルでしょう。先生だけじゃなくて、可愛い教え子の有岡のダメージにもなるから、先生も自由に動けなく
なるはずだ。解放する条件としては、ちょうどいい」
「何をバカなことを、松川君、いい加減にしろ!」
 普段は温厚な日比谷が、今にもかみつきそうな顔で松川を睨みながら叫んだ。その隣で俯いていた美奈がパ
ッと顔を上げ、日比谷の方を向き直った。
「先生、お願いがあります。私と…、してください…」
「えっ?」
「今は、この状態から抜け出すことが必要です。だから…」
「何をバカなことを!」
「私は構いません…、お願いします」
「だめだ!」
 日比谷が押しとどめようとするのを振り切って、美奈は松川に向かって言った。
「わかりました。私、先生とセックスします」
「ふふふ…、これは見ものだな、よし、お前たち、しっかり撮影しろよ」
 松川の合図で、3人のコーチたちがビデオやカメラを抱えて、二人の周りを取り囲んだ。
 美奈が制服を脱ぎ始めた。セーラーカラーのブラウスを脱ぐと、白いブラジャーが露わになった。純白の生
地に控えめにレースを施して、清楚な可愛らしさを強調するデザインは館が支給する下着に共通のものだ。女
生徒が着用した後は、そのまま記念品として訪問客にプレゼントされることが多い。
 コーチたちのカメラがグッと接近し、日比谷は禁忌に触れるのを恐れるように、反射的に視線を逸らす。
 美奈がプリーツスカートを素早く脱ぎ、ブラジャーとお揃いのデザインのパンティ姿になった。脱ぎっぷり
の良さとは裏腹に、純白の下着姿になった美奈は、目の下を羞恥で赤く染めていた。考えずにおこうと思って
も、日比谷の前で服を脱いでいることは、どうしても意識せずにはいられないのだ。
「ほら、日比谷先生、有岡が裸になっていくエロい姿、見ないともったいないですよ」
 松川が冷やかすように言った。美奈が表情を強張らせながら、両手を背中に回してブラジャーのホックを外
す。胸元で弾んだ双乳は大きさも形も美術品のように美しく、お椀型の膨らみの頂点に乗っているピンク色の
突起が食べてしまいたいぐらいに愛らしい。
「もういい…、有岡君、やめなさい…」
 視線を逸らしたままの日比谷が苦しげに言った。それは、もはや流れを止める力がないことを悟った哀しい
呟きに変わっていた。その声を聞きながら、美奈がパンティの両端を掴み、心持ち中腰になって下ろしてい
く。
 つるつるに剃り上げられた白い下腹部が見えた。幼女のように、割れ目を刻んだぷっくりした恥丘の膨らみ
が露わになる。晴亜がしゃがみ込み、指先で割れ目を開くようにして股間を撮影していった。3人のコーチた
ちは、美奈の全裸を様々な角度から写真と映像に収めていく。
「さあ、始めようか」
 松川が声をかけると、美奈は日比谷に近づいた。
「いけない、有岡君…、ダメだ…」
 全裸で近づいてくる教え子に、日比谷が後退りし、目を大きく見開いて首を振る。美奈は彼の視線を受け止
めると、穏やかな表情で頷き返し、鍛えられた太い首にすがるように両手を回した。背伸びをするように唇を
奪うと、美奈の両手が背中に回わり、日比谷に全てを委ねるように裸体を押し付けてくる。甘い少女の匂い
が、彼の鼻をくすぐった。
 美奈がズボンの股間に手を伸ばした。硬くなり始めた膨らみの感触が掌に伝わってくる。
「先生、ごめんなさい…」
 悲しそうに呟くと、美奈は慣れた手つきで日比谷の下半身を裸にさせた。股間の肉棒が勢いよく鎌首をもた
げる。反り返る勃起に美奈が手を伸ばす。
「だ…だめだ…」
 苦し気に呟く日比谷の声を打ち消そうとするかのように、美奈の手が一段と淫らさを増した動きで、そそり
立つ肉棒を弄った。
「うっ…」
 日比谷は、こみ上げてくる声を必死で飲み込んだ。指腹がカリ首の上を這い回る。少しでも気を許せば声を
あげてしまいそうな衝撃的な快美感が、幾重にも折り重なった津波のようになって、次々と襲い掛かってく
る。
「もう、いいんです…、気持ち良くなってください…」
 覚悟を決めた囁きが聞こえたかと思うと、美奈は片方の手で日比谷の手を取って、強引に掌を乳房に押しつ
けた。滑らかな手触りとともに、弾力のある柔らかさが伝わってくる。
「あんっ…あ…、あ…」
 親指と人差し指で日比谷の指を摘まんで、指先で自らの乳首を転がし、鼻の奥で喘ぎ声を漏らす。乳首が
徐々に勃起していく感触が日比谷の指に伝わってくる。その間も、美奈の片手は彼の陰茎や睾丸をしきりに撫
で摩っていた。その手に握られた肉茎は限界まで勃起していた。
 美奈がその場に跪いた。
「な、なにを…」
 慌てる日比谷を上目遣いで見つめると、美奈は肉棒の根元をつかんで口づけをし、赤黒く充血した亀頭を口
唇ですっぽり包み込んだ。
「ううっ!」
 日比谷が呻き声を上げた。温かい美奈の口内に、肉茎が呑み込まれていく。妖しく蠢く舌先が、口内でカリ
首に絡んでくる。
「や、やめるんだ…、有岡君…」
 日比谷が身を捩って抵抗しようとする。美奈はいったん肉茎を口唇から抜くと、まっすぐな視線で日比谷を
見詰めた。あまりの淫らな振る舞いに彼女の正気を疑っていた日比谷だったが、今、自分を見る美奈の顔に浮
かんでいるのは、彼が慈しんだ気高いアスリートの表情だった。
「先生…、『状況を分析し、必要なことだと判断すれば、怯まずにやりきる意志と力を持て』…です」
 それは、かつて美奈を指導した時に、彼女に伝えて来た言葉だった。
「有岡君…」
 言葉を失った日比谷に向かって穏やかに微笑むと、美奈は舌腹で裏筋を舐め上げ、肉棒を根元まで咥え込ん
だ。
「ぅんっ…ぅんんっ…」
 唇で竿をぴっちりと締め上げ、ゆっくりとスライドさせ始める。口内でしとどに生唾を濡らし、それを啜り
上げるように亀頭を吸いしゃぶってくる。じゅる、じゅるる…という淫猥な音が室内に響いた。
「ううっ…ううう…」
 日比谷は悶える声をこらえきれなくなった。
「床に仰向けになってください…」
 美奈は日比谷の手を取って、床に身体を横たえるよう促した。躊躇いながらも、なすがままに仰向けになる
と、何も身に着けていない下半身の勃起が天に突いて屹立する。
「…先生、ごめんなさい…」
 美奈が日比谷の腰をまたいだ。騎乗位でつながろうとしているのだ。日比谷の男根が美奈の性器に埋まって
いく様子を余すところなく記録しようと、コーチたちが一斉に近づいて来る。
 肉棒に手を添えて女陰に導くと、ゆっくりと腰を下ろしていった。
「うんっ…」
 亀頭がぬるりと美奈の粘膜に包まれた。日比谷はその感触に腰をわななかせながら、苦痛に耐えるような表
情で目を閉じた。
「…入れます…」
 大きく息を吸い込み、震える声でそう言うと、美奈はポニーテールを揺らしながら、さらに腰を落とし始め
た。ピンク色の花びらを巻き込みながら肉棒が呑み込まれていく。その一部始終を、コーチたちがつぶさに撮
影していく。
「あああぁ…」
 根元まで肉棒を膣内に埋め込むと、美奈は喘ぎ声とともに背筋を伸ばし、全身を小刻みに痙攣させた。
「はあぁっ…、はあっ…」
 美奈は喘ぎながら、ゆっくりと下肢を動かし始めた。肉棒が膣口から出入りし、血管が浮き上がった肉棒の
表面に、美奈の体液が付着し、その光沢が電灯の光を受けて、妖しく輝いている。
「あうっ…、あんっ、あんっ…」
 腰を前後に揺すり、呑み込んだ肉棒を味わうように粘膜で擦りたてた。ずちゅっ、ぬちゃっと淫猥きわまり
ない音が結合部から漏れ始める。
「うっ、ううぅ…」
 日比谷が呻き声を漏らした。最初はゆっくりだった美奈の動きが、徐々にピッチをあげ、激しく上下し始め
る。その腰の動きに合わせて、美奈の股間からは卑猥な音がたち、硬い勃起と温かく濡れた柔肉がしたたかに
擦れ合って、たまらない快美感を運んでくる。たまらず下から突き上げると、美奈が全身をわななかせて喘い
だ。
「ああぁ…、先生、すごく…、すごく、気持ち…、いいです…」
 喘ぎながら、美奈が感極まった声をあげた。日比谷の心の中で、何かがプツンと切れる感じがした。次の瞬
間、彼は上体を起こし、淫らに腰を振る少女を抱きしめた。
「有岡君…、有岡君っ!」
「ああっ、はあっ…、はあぁぁ…」
 美奈はもはやなりふり構わず、端正な美貌をくしゃくしゃにして、喜悦にむせび泣いていた。日比谷が強く
抱きしめても腰の動きがとまらず、咥え込んだ男根を一瞬も間をあけず味わい抜こうとしているようだ。
 恩師の日比谷は、美奈にとって父親のような存在である。あたりまえの日常を送っていれば、とうてい肉体
関係を持つことなど、考えもしなかった相手だ。しかし、今、彼女が置かれている状況のもとでは、どうだろ
う。これまで数限りない相手とのセックスを強制されてきた美奈にとって、これが初めて自分が信頼し、尊敬
する男性との性交なのだ。そこには、父子相姦に似た罪悪感とともに、身体を浄化されるような感覚があった
としても、けっして不思議ではなかった。
 美奈の身体から伝わってくるメッセージに、意を決した日比谷はいったん肉棒を抜くと、美奈の身体を床に
横たえた。着ていたシャツを脱いで自らも全裸になり、彼女の上から覆いかぶさる。
「先生…」
 柔らかな微笑みを浮かべて美奈が囁いた。日比谷がその目を見詰めると、美奈は目を瞑ってコクリとうなず
く。日比谷は肉棒の先端を改めて美奈の秘唇にあてがった。すっかり濡れた秘孔に、怒張がぬるりと滑り込ん
でいく。
「あああぁぁ…」
 美奈が切なそうな喘ぎ声をあげた。
「うっ、いい…」
 日比谷はゆっくりと怒張を抜き差しする。美奈の愛液でヌメッた怒張が出入りする。
「ほほう…、先生、やっと本気になってきたようだ…」
 松川がニヤニヤ笑いながら、言い放った。その声を遠くで聞きながら、日比谷はリズミカルに腰を振り始め
た。たとえ、それが身の破滅につながるものだとしても、もはや大した問題ではないとさえ思えた。
「ああ…、い、いいの…」
 美奈が喉を伸ばし、よがり声をあげる。日比谷は美奈の胸に手を当てた。乳首を指で強く摘まみ、怒張を美
奈の奥深くに突き込む。美奈は腰をくねらせながら絶頂の前の高ぶりを感じている。
「あはぁ、も、もっと…、いいの…」
 コーチたちが二人の周りでカメラやビデオを構え、日比谷の怒張が出入りする美奈の秘孔を、日比谷の手で
揉まれ、形を変える双乳を、喘ぎ声を上げる恍惚とした表情を狙っていた。

 日比谷は我を忘れたように美奈の胸を揉み、乳首を口に含む。日比谷の手で、美奈の双乳が歪む。膨らんだ
乳首を舌で転がしながら、怒張を秘孔の奥に進めた。
「あ、あっ…、ああっ」
 日比谷の怒張が粘膜に擦れるたびに、美奈が悩ましい喘ぎ声をあげる。日比谷は秘孔の感触に酔い、理性の
タガが外れたように腰を繰り出した。
「あ…、あぁぁ…気持ち…いい…」
 美奈の言葉を耳元で感じた日比谷が、一層激しく腰を美奈の恥丘にぶつける。口に含んだ乳首を舌で転がし
ながら、軽く噛んだ。そして、腰の動きを早めて、一気に攻め立てた。美奈の膣の収縮が強くなる。襞肉が日
比谷の怒張に絡み付いてくる。
「ああぁ…、いっ、いく…いくうぅ…」
 美奈が絶頂の声をあげた。同時に昇りつめた日比谷が、ありったけの精液を美奈の中に放った。
「おやおや、人格者を気取っていても、結局、男だということだ。日比谷先生、とうとう有岡とセックスして
しまいましたね!」
 松川が上機嫌ではやし立てる。美奈との結合を解き、仰向けになった日比谷の脳裏に理性が戻って来て、悲
痛な表情を浮かべる。
 深いため息とともに胸元で組んだ日比谷の手の上に、美奈の手が重ね合わされた。
「先生、ごめんなさい…、ごめんなさい…、でも…、でも…ありがとうございます…」
 はあはあと吐息を漏らしながら、美奈は泣き笑いの表情でそう言った。




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