リレー小説「星達の時間〜アナザー・ガールズ〜」
 
第5章 (By クルス)
 
 店内ではコンテストの準備が着々と進められていた。テーブルが一カ所に集められ、椅子は集められたテーブルの前
に並べて置かれていった。作業が終わった時、そこは特設ステージの様になっていた。繋げて置かれたテーブルがス
テージとなり、その前に綺麗に並べられた椅子は客席の役目を担っていた。
「それじゃあ、みんなこっちに集まって」
 チーフの伊井が招集をかける。
「ほら、麻未。行きなよ」
「う、うん。でも・・・」
 麻未はあまり乗り気ではないようだ。
「なに恥ずかしがってるのよ。オーディションに出るんでしょ? こんなので緊張しててどうするのよ」
「うん・・・」
「ほら、行って。良い練習になると思えばいいじゃない?」
「・・・うん。わかった」
 梨紗にさんざんせっつかれ、ようやく麻未はその気になった。
 
 ステージの後ろには目隠しのための大きなカーテンが張られ、その後ろがウェイトレス達の控え所になっていた。
「構成はいつも通りでいくわよ。良いわね」
 チーフの声にウェイトレス全員がうなずく。
「あ、あの・・・」
「なに? えっと麻未さん、だったかしら?」
「はい、そうです。それで、私初めてなんで、いつも通りと言われてもわからないんですけど」
「ああ、そのことね。それなら大丈夫よ。次にやることを随時指示してあげるから。あなたはその通りにしてるだけで良
いのよ。まずは、あの上でみなさんに挨拶してもらうわ。第一印象って大切だから、しっかりがんばってね」
「は、はあ」
「そろそろ客を入れるわ。それじゃあ、みんな頼むわよ」
 見ると、いつのまにか今までいた客達は皆帰ってしまっており、代わりに外で行列を作っていた男性客達が入って来
た。彼らは食事をするためではなく、このコンテストを見るために待っていたようだ。客達は各々の席に座り、コンテスト
の開始を待った。
 
「紳士の皆様。いつも当レストランをごひいきにして下さり、誠にありがとうございます。本日はそんな皆様に感謝を込め
て、ささやかなショウをご用意致しました。当店自慢のウェイトレス達がその美を競うウェイトレスコンテスト。どうぞ、存
分にお楽しみ下さい」
 伊井チーフの挨拶が終わると、一人目のウエイトレスがステージに上がり、自己紹介を始めた。幕の後ろでその様子
を見ていた麻未は、その時になって初めてその事に気付いた。
(あんな所に上ったら、下から見えちゃう!)
 そうなのだ。ただでさえ下着が覗けそうな程短いミニスカートなのに、あんなテーブルの上に上ったりしたらどうなるの
か。しかも、客達は立っているのではなく、椅子に座って下から見上げているのである。
「ちょっと待ちなよ。どこに行く気?」
 その場から去ろうとしていた麻未をウェイトレスの一人が捕まえる。
「私、やっぱりやめます」
「はあ? いきなりやめるだって。ふうん、そうかい。大スターになるような自分には、こんな安っぽいコンテストは参加で
きないっていうのかい? ずいぶんとなめられたもんだね」
 脱色した髪を振り乱しながら、その気の強そうなウェイトレスはすごい剣幕で睨む。
「いえ、そうじゃなくて・・・」
「じゃあ、どういう訳なのさ」
 下着が見られるのが恥ずかしいとは口にできない。そんな事を今言ったら、かえって彼女の神経を逆撫でしかねな
い。なによりもそういう言葉を口にすること自体が恥ずかしかった。
「ほら、次あんたの番だよ。どうすんのさ?」
「・・・行きます」
 要は下着を見られないように注意すれば良いのだ。それで、この場が穏便に済むのであれば。麻未はそう自分に言
い聞かせる事で納得しようとしていた。
 
「それでは、エントリーナンバー7番。今回飛び入りで参加した、恋野 麻未さんです!」
 伊井チーフの紹介に促されて、麻未はカーテンの端から姿を現した。階段代わりとなっている椅子を使い、ステージ
上に上る。中が覗いたり、捲れ上がったりしないように両手でしっかりとスカートの前を押さえ、ステージ前の方に進ん
でいった。
「彼女はなんと、今度Super・Dackのヒロキプロデュースのオーディションに参加するらしいです。いずれは大スターと
なる身。お客様方、今のうちにサインを貰っておいた方が良いですよ」
 伊井の言葉に、会場中が湧き上がる。たしかに今ステージに立っている娘はなかなかの美少女だ。はにかんだ表情
がたまらない。純情派アイドルとしてデビューさせれば、きっとブレイクするだろう。しかし、それならば何故こんなコンテ
ストに。名を売るための顔見せだけだろうか。
「わ、私の名前は恋野 麻未です」
 麻美はスカートの裾ばかりを注意しながらしゃべり始めた。万が一にも中が見えるようなことがあってはならない。普
通に下着を見られるだけでも恥ずかしいのに、今履いているのは陰毛が透けるような物なのだ。こんな物を見られてし
まったら、どうしたら良いかわからない
「えっと、お、お話にあったように今度オーディションを受けます。あ、あの、応援よろしく、お、お願いします」
 30人以上いる観客の前で、麻美は緊張しまくりながら挨拶を終えた。そして、そのまま後ろに下がろうとした時に事
件は起きた。
「きゃあ!」
 なんと麻未は足を絡ませて転んでしまったのだ。後頭部を打ちつけて、一瞬意識が飛ぶ。
「ちょっと、麻未さん。大丈夫?」
 彼女が意識を失っていたのは、ほんの数秒の間だろう。麻未の視界にぼんやりと天井が写る。体を起こした彼女は、
観客達が自分を、いや自分の下半身を見ているのを知った。
「え? え! やだ!!」
 仰向けに倒れた時に、スカートが全部捲れ上がってしまったのだ。しかも、足が大きく開いてしまっており、客の前で
大股開きの格好をとってしまっていた。客の前にショーツを、はっきりと透けた陰毛もまる出しにしていた。しかも大きく
開いた足の付け根、薄い一枚布でしか隠されていないその中心部分さえもかすかに透けて覗いていた。
「だ、だめ!」
 麻未は動転してステージを駆け下りた。スカートが激しく翻って、Tバックのヒップが剥き出しになるのにも気付かず
に。
 
「よしよし。まったくドジねぇ」
 幕の後ろでは麻未が梨紗に泣きついていた。
「ほら、泣かないで。パンチラなんて、アイドルのお約束でしょうが」
「で、でも・・・」
「こんなことをいちいち気にしてたら、芸能界じゃやっていけないわよ。麻未はオーディション受けてスターになるんでしょ
う?」
「う、うん。でも・・・」
「でも、じゃなくてしっかりしなさい。みんなこっちを見てるわよ」
 たしかにその場にいるウェイトレス全員が2人の方を見ていた。麻未もこれ以上の痴態は見せられないと思ったの
か、涙を拭いた。
 
「パンツ見られただけだ泣いちゃってさ。とんだお嬢様よね」
「あんなんで恥ずかしがってちゃてさ。この先、何をやるかわかってるのかしら?」
「でもね。私見たのよ。あの子のパンツすごかったんだから」
「すごいってなに?」
「すんごくきわどいTバックでさ。しかも布がすごく薄くて毛なんか透けちゃってるのよ」
「マジで? やだ、それじゃあの子。あんなで結構好き物なの?」
「最悪。見た目は純情装っちゃってさ、いつもあの手で男を誘惑してるのよ」
「オーディションのことも、きっとあの子が体使ってヒロキさんを誘惑したんだわ」
「いやらしい女。ねえ、どうするの?」
「決まってるでしょう。あんな小娘、潰してやるのよ。ここでめいっぱい恥をかかせてやるわ」
 ウェイトレス達の憎しみに満ちた視線に、麻未が気付くことはなかった。そして、波瀾の幕開けとなったコンテストはさ
らに続くのである。
 
「わかった、予定通り事は進んでいるのだな」
「構わない。それもあの娘の素養を見るための一環だからな。オーディションはすでに始まっているんだ」
「わかっている。オレもすぐ行くさ」
 ヒロキは携帯を切ると路上に止めてある愛車にアクセルを入れる。
「ふふ。予定通りに事は運んでいる。見てろよ、土本。贋作は所詮贋作だということを教えてやる」
 街のネオンの川の間を、4DWは猛スピードで駆け抜けて行った。
 
 


 
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