第5話 イロモノ芸人の心意気


「こんな…、あぁ…こんなぁ…」
 汐理が悲しげな声をあげる。後ろに立った西郷は、少女の髪から漂う甘い香りを吸い込みながら、へしゃげるほどに
乳房を揉んでいた。
「ああっ…い…いいっ…す…すごいっ…こ…壊れちゃうっ…」
 美津子はベッドの上で島津に貫かれていた。
 ホテルの一室で男女四人が全裸でもつれあっている。それは「手打ち」の儀式だった。



 美津子と汐理が、西郷と島津の二股をかけたことを謝罪して、今後、二人して彼らのセックス・ペットになる。それで、
ニュース・タイムの降板はなくなり、汐理の芸能活動の自由が保障されることになるのだ。
 島津の怒張が、美津子の秘孔に出入りする。
「い、いいっ…、あああ、そこ、たまらない…」
 美津子が媚びるような喘ぎ声をあげた。彼女はこの「手打ち」を自分が交渉した成果だと思っている。しかし、汐理の
処女を奪うことができず、怒りに燃えていた西郷が折れたのには、実は別の理由がある。
 ニュース・タイムを担当するTBCプロデューサーの山本から、汐理を降板させたくないとの強い働きかけがあったの
だ。
「これは、現場のスタッフたちの思いでもあります。」
 山本はそう述べた。汐理がドッグ・ライフの撮影中に、西郷たちがけしかけた獰猛な犬からポンを救った話は、駆け出
しのADたち、カメラマンや音声、道具係、委託会社の社員など、テレビ業界を支える裏方スタッフたちの間に、あっと言
う間に広まっていた。
 そうして考えてみると、汐理は裏方のスタッフに対して、いつも礼儀正しく、素直で、優しかった。彼らの中に、汐理に
対する同情論が一気に湧き上がりつつあったのだ。一人一人は道具のように扱われているスタッフも、まとまって動け
ば無視できない存在になる。そんな動きに、さすがの西郷も抗し切れなかったのが実情であった。
「あ、あん…、あはぁ…」
(まあいい、これで汐理の身体を好きな時に楽しめるんだからな…)
 汐理の乳首と股間を弄り、可愛い喘ぎ声を楽しみながら、西郷はそう思った。
 転んでもタダでは起きない「帝王」が相手では、汐理にとって、そうした風向きの変化も、本当に幸運だったのかどう
かわからない。仕事がない時は、いつでも呼び出されれば出掛けて行って、どこででもご主人様たちの望むままに身体
を開くことを約束させられたのだ。
「あう、うう…」
 西郷の指がクリトリスを捕え、汐理が身悶えする。ねちっこく愛撫されていたせいで、性器は十分過ぎるほど潤ってい
た。
「そろそろオ××コに入れてやる。四つん這いになるんだ。」
 西郷に言われて、汐理は床に手をついた。途端にそそり立った怒張が汐理の陰部に打ち込まれる。
「あ…、あ…あっ…、あ…」
 西郷は、汐理の肉壁の隅々まで味わうようにゆっくりと怒張を抜き差しする。汐理の小さな背中が、ガクガクッと震え
た。
 一方の島津は、汐理を独占したい思いがなくはなかったが、長年一緒に番組を作ってきた山本の口添えがある以
上、無下にはできないという事情があった。
「いい、い、イク、イク、イ、クゥ…」
 島津に抱かれた美津子が甘え泣くように絶頂を告げる。
(共有とは言え、清純派アイドルと美人マネージャーの二人ながらに手に入れるというのも悪くはないか…)
 美津子の中に精を吐き出しながら、島津はそう思った。
「汐理、きれいにしてくれ。」
 美津子から離れた島津は、女体から抜いたばかりの陰茎を、床で西郷と交接している汐理の鼻先に突き付けた。固
さを失いつつあるそれは、美津子の愛液と島津の精液にまみれて生臭い臭いを放っている。
「あっ、いや…」
 不潔さを感じて、汐理は反射的に顔を背けた。
「おいおい、ご主人様の命令は、素直に聞くもんだぞ。」
 ニヤニヤ笑いながらそう言うと、島津は汐理の頭を押さえ、テラテラ光る肉棒を彼女の口に挿入した。笠を開いた先
端が、唇を押し広げる。
「あぐ…うぐぐ…」
 上下の口に怒張を埋め込まれた汐理は苦しげに眉を歪め、悲しげな声を漏らした。




 TBC放送の近くにあるいつもの公園。いつものベンチに、これもいつものように浮かない表情の汐理がポツンと座っ
ていた。彼女の場合、そうした憂いに満ちた表情も美しく、たまらなく可憐である。
「おやぁ、こんなところにお姫様が…」
 ベンチの後ろから能天気なとぼけた声が聞こえてきた。振り返ると、太っちょのポンが目を閉じ、タコのように唇を突
き出している。
「僕のアツーイキッスで、目覚めさせてあげよう…」
「アホか、お前なんかにキスされたら、永遠の眠りについてしまうわ!」
 チビのケンジが突っ込みを入れる。ただ、それだけのやりとりなのに、間の取り方が絶妙で、汐理は思わず笑い転げ
てしまう。
「笑った、笑った!」
 レインドロップスの3人がうれしそうに言って、汐理の周りに集まった。
「どうしたの、その手?」
 リーダーのヒデの手に包帯が巻かれ、肩から釣られているのを見て、汐理が眉を顰め、心配そうに尋ねた。
「うん…、いや、ちょっと仕事でね…、でも、たいしたことないんだ…」
 ヒデが言葉を濁した。実は、あるバラエティ番組の撮影で、プロレスから転向したタレントに技をかけられ、脱臼したの
だ。
 ポンが「ドッグ・ライフ」で演じた間抜けな泥棒が注目を集めたことで、以前よりは仕事が回ってくるようになったもの
の、まだ、いじられ役のイロモノ扱いから抜け出してはいなかった。それでも前向きに、懸命に仕事に取り組むレインド
ロップスを見ていると、汐理の胸が熱くなってくる。
 ヒデが、急に思い出したという風を装って話を切り出した。
「俺たち、次の日曜日に、新宿でお笑いライブやるんだよ。」
「そうや、売れへん仲間を集めてな!」
 関西弁のケンジは、普通の会話でも突っ込まないと気が済まない。いつも地で漫才をやっているようだ。
「でも。みんな、実力のある奴らなんだぜ。」
 ヒデが誇らしげにそう言った。そして、ふと何か思い出したような顔になる。
「そうだ、汐理ちゃん、誰か司会やってくれる子、紹介してくれないかな?」
「頼んでた子がいたんだけど、ドタキャンされて困ってるんだよね。」
 ポンが言うとちっとも困っているような感じがしない。すかさず、ヒデが突っ込む。
「そら、ホンマにギャラ安いからなぁ…」
「できれば女の子がいいんだけど、ちゃんと司会をやってくれれば、贅沢はいわないよ。ギャラも出すし。」
「安いけど…」
 ヒデがそう言い、ケンジが突っ込む。
「そうねぇ…」
 ちょっと考え込んでいた汐理は、ふと立ち上がった。
「待ってて、ちょっと心当たりがあるから…、予定を聞いてみるね。」
 汐理は少し離れた所で携帯を取り出し、どこかに電話をしていたが、戻って来ると、手に持ったメモに携帯の番号を
書いて、ヒデに渡した。
「OKよ。司会の経験もあるタレントの子だから、大丈夫だと思うわ。当日、会場に行けばいいのよね。何かあったとき
は、ここへ連絡して。」
「ありがとう、ホントに助かったよ。」
「ところで、汐理ちゃんも見に来てくれる?」
 ポンがチケットを渡そうとすると、汐理はそれを遮った。
「えっ、私…、ダメよ!」
「仕事?」
「仕事ってわけじゃなくって…、そうね…、私、その日はどうしてもやりたいことがあるの。」
 どんな楽しいスケジュールがあるのか、汐理は目をきキラキラさせている。一方の3人組の顔は見る見る曇り、失望
の色が浮かんだ。実はライブを見に来て欲しくて、今日はわざわざ汐理を探して、この公園にやってきたのだった。
「ちょっとだけでも、ダメ…?」
「ダメ、私は見に行けないわ。」
 ポンがおずおずと尋ねるのに、汐理はにべもなく答えた。
「そうか…、残念だけど、じゃあ、またの機会に…」
 ヒデが強張った笑顔を浮かべて、そう言った。

 そして日曜日、ライブホールの楽屋には、リハーサルを終えた若手コメディアンたちが集まって、開演時間を待ってい
た。
「見に来て欲しかったな…」
 ヒデ寂しそうに言うと、ポンがポツリと呟いた。
「あの断り方、ちょっと冷たかったよね。」
「アイドルっちゅうのは、あんなもんなんやな…」
 気の短いケンジが憮然とした顔で、吐き捨てるように言う。
 どんよりと落ち込んでいるレインドロップスに、ディレクター役を買って出た演出家の卵が声をかけた。
「司会をしてくれる子、まだか?」
「えっ…、あれっ、まだ来てないんですか?」
 ヒデが慌てた声をあげる。汐理のことがショックで、司会のことはすっかり頭から飛んでしまっていて、あれから一度も
連絡してない。
「おはようございます。」
 楽屋を覗いた顔を見て、コメディアンたちは驚きの声をあげた。やって来たのは、人気アイドルの水沢汐理なのだ。
「汐理ちゃんだぁっ!」
「かわいいーっ!」
 コメディアンたちが一斉に汐理の周りに集まる。駆け寄ろうとしたポンの腕のケンジが掴む。ムッとしたその表情は、
汐理を見て「今さら、何しに来たんだ」と言っている。
「司会、大丈夫か。そろそろ来てくれないと困るぞ、本番前に打ち合わせしたいんだから!」
 イライラした口調でディレクター役が言う。
「電話してみるよ…」
 ヒデは、汐理から貰ったメモを取り出してボタンを押した。すると、何故かすぐ近くから携帯電話の呼び出し音が聞こ
えた。
「もしもし…」
 ヒデの声に応えたのは、電話越しの声と生の声のユニゾンであった。
「はい。打ち合わせですね。大丈夫です。もう楽屋に来てますよ。」
 そう言うと汐理はヒデを見て、いたずらっぽい表情で微笑んだ。
「汐理ちゃん…?」
「今日は、『どうしてもしたいこと』があるって言ったでしょ。」
 ヒデの疑問にそう答えると、汐理はコメディアンたちを見渡してお辞儀をした。
「今日の司会を務めます。水沢汐理です。よろしくお願いします。」
 レインドロップの三人の表情が一気に明るく輝きだした。

 お笑いライブが始まった。
 観客たちは、若手コメディアンの気合の入った芸とともに、テレビでは見ることのできない汐理の魅力を発見すること
ができた。すまし顔で司会をしていたかと思うと、わざとボケてみせ、ツッコミを入れられてオーバーアクションでズッコケ
る。その様子はまるでコントのようで、しかも可愛らしく、観客たちに大ウケだったのだ。
「次は、華麗ライスのシンイチさんとポンさんのお二人…」
「ちゃうやろ!」
「ごめんなさい、傷つかないでくださいね、ポンさん…」
「シンジや、シンジっ!俺は、あんなデブとちゃう!」
 観客が爆笑したその時、汐理の股間に電撃が走った。
「うくっ…」
 汐理は腰を引き、思わず声をあげそうになった。
 手打ちとなった夜、汐理は体内にローターを挿入され、許可なく取り出すことを禁じられた。西郷か島津が汐理に電
話を架けると、汐理の携帯が鳴る。すると、陰部に挿入されたローターが連動して動き出す仕掛けだ。
「これで、いつでも呼び出し可能だ。」
 あの夜、西郷が得意げに言った言葉が耳の奥で蘇る。振動の長短の組み合わせで、西郷が呼び出していることがわ
かった。
 刺激に耐えながら、なんとか漫才コンビ「華麗ライス」の紹介をした汐理は、舞台の袖に引っ込むなり、その場にうずく
まった。
「はあ、はあ、はあ、…」
 その間もローターは激しく動き続け、少し開いた口から荒い吐息が漏れる。
(でも、どうして…)
 今日は、西郷も島津も仕事が入っており、汐理を呼び出すことはなかったはずだ。
「…もしもし…」
「何をしている、早く電話を取れ。ローターの刺激を楽しんでたのか?」
 西郷は卑猥な笑い声を立てると、すぐに来るように命じた。
「すみません、夜にはうかがいます。今は大事な用が…」
「今日は仕事はないはずだろう。すぐに来い!」
 電話の向こうで不機嫌な声になった西郷に、汐理は必死で状況を伝えた。仕事中には、呼出を受けても行く必要はな
いはずである。しかし、西郷の返事は冷たいものだった。
「そんなもの、仕事とは認めん。キャンセルして、今すぐに来い。」
「でも…。すみません、夜には必ずうかがいます。」
 それだけを言うと、汐理は電話を切った。このライブの司会だけは続けたいと思った。心のどこかに、これを最後の仕
事にしようという気持ちがあった。
「あっ、ううっ…」
 強烈な刺激に見舞われ、汐理は股間を押さえてしゃがみ込んだ。膣内のローターが再び激しく動き出したのだ。間断
なく押し寄せてくる性感に、汐理は全身をくねらせながらも必死に耐えた。

 ライブは順調に進み、レインドロップスがトリで登場した。それは、これまでの彼らのコントを遙かに超える面白さで、
会場は笑いの渦に巻き込まれた。
 舞台の袖からこっそり覗くと、汐理が声をかけたテレビ局のスタッフたちも大笑いをしてウケている。忙しい中、時間を
作ってくれたプロデューサーの山本が深く頷いているのを見て、汐理はホッと胸を撫で下ろした。
 拍手喝采に包まれて舞台を後にしたレインドロップスをハイタッチで迎え、汐理は替わって舞台に立った。
「それでは、これで今日のライブを終わります…」
 そう言おうとした時、ホールのドアが開き、お洒落な格好をした二人組が客席を通って、舞台に上がって来た。
「こんにちは、マス・ジャムでーす!」
 客席から拍手と歓声が起こる。マス・ジャムこと「マスタード・ジャム」は、飛ぶ鳥を落とす勢いの人気お笑いコンビだ。
「今日は、イキのいい若手がライブをやってると聞いて、応援に来ましたっ!」
 ハンサムで、俳優としても売り出している誠が言う。思わぬスペシャル・ゲストに大喜びの観客たち。しかし、相方の実
が囁いた言葉で、汐理は彼らが来た本当の理由を知った。
「西郷先生、カンカンだよ…」
 汐理の顔から見る見る血の気が引いていく。
「汐理、何やってるんだ、こんなところで。」
 恋人に呼びかけるようにそう言うと、誠が汐理に抱きつく。キャーッという女性客の声があがる。
「俺達の言葉は先生の言葉だぞ。素直に従えば、今日の無礼は許す。もし、逆らったら、この売れない連中は、一生売
れないままだぞ…」
 そう言いながら、誠の手は汐理のスカートの中や胸をまさぐり、その様子を観客にわざと見せ付けるようにしている。
マス・ジャムはもともと下ネタ系の芸風で、無名時代は過激なアドリブで客の女性に抱きつき、事件になりかけた事もし
ばしばある。
「あのガキ、何さらしよんねん!」
 頭に血が昇ったケンジが、舞台に飛び出していく。その後を、ヒデとポンが追いかけた。
「出番じゃない人たちは引っ込んでてください。目立ちたいのは分かるけど、乱入はダメですよ。」
 あくまで仕組まれたコントを装って汐理が言う。その真剣な目を見て、ヒデとポンがケンジを舞台の袖に引っ張ってい
く。
「なんやねん、あんなことさせててええんか?!」
「落ち着けよ。何か事情がありそうだ。」
 憤慨するケンジをヒデがなだめる。舞台では、マス・ジャムと汐理の掛け合いが続いていた。
「俺、ドッグ・ライフ、毎週見てるんだよ。」
「あれ、撮影ではホントに裸でやってるんだって。」
 誠と実が口々に言う。
「えっ、ええと…、ご想像にお任せします…」
 耳まで真っ赤になって答える汐理。
「みんなーっ、見たいかーっ!」
 そう言って、誠が客席にマイクを向けた。コントのネタだと信じて疑わない客が一斉に声をあげる。
「オーッ!」
「見たいよなぁーっ!」
「オーッ!」
「ジャーン!」
 そう言うと誠がポケットからイヌ耳を、実が尻尾を取り出した。
「それじゃあ、脱いでもらおう…」
「ええっ、そんなの、無理です…」
 真っ赤になって後ずさりする汐理だったが、マス・ジャムの表情から、逃れられない運命を悟った。
(命令に従わなくちゃ、ここで私が我慢しなきゃ…)
 汐理は覚悟を決め、ジャケットを脱ぐと、ブラウスのボタンを外していった。イヌ耳を着けて「ワン」と鳴きマネする程度
のネタだろうと思っていた観客から、驚きの声が漏れる。
 とうとう汐理が下着姿になった。身につけているのは、お揃いのパステルピンクのブラジャーとパンティだけだ。汐理
の眉が恥辱に歪む。
「さあさあ、下着も脱いでね。」
「いつもそうして撮影してるんだろ?」
 美少女アイドルをいたぶる快感に口元を緩ませながら、マス・ジャムの2人は口々に汐理に命令する。
 汐理がブラジャーを外した。表情は硬かったが、その目はどこか決意めいていた。ピンク色の乳首を頂に乗せた白い
膨らみがこぼれ出る。オチがあると思っていた観客たちがざわめいた。舞台の上で、清純派アイドルがストリップをして
いるのだ。
 観客に見られていることを全身で感じながら、汐理がパンティを下ろしていく。繊毛に飾られた下腹部が観客の目に
焼きついた。
 ついに裸になった汐理は、両手で胸と股下を覆い隠した。下唇をぎゅっと噛み、紅く染まった頬を震わせている。マ
ス・ジャムの2人が嬉々として、イヌ耳と尻尾を着けた。
「さあ、犬になったよ。立ってちゃダメでしょ!」
 誠に言われて汐理は、手のひらと膝を床に付け、四つん這いになった。紡錘形になった胸の膨らみが、形の良いお
尻が、観客の視線に晒される。
「ようし、散歩しよう。」
 誠がポケットから首輪を取り出して汐理の首に着けると、実がリードを繋いで歩き始めた。
 屈辱的な格好で舞台を一回りし、正面まで戻ってくると、誠が汐理の前に手を差し出す。
「お手っ!」
 おずおずと汐理が右手を出すと、今度は実が手を出した。
「おかわりっ!」
 そして、マス・ジャムの二人は顔を見合わせてニヤリと笑うと、最後の、悪魔的な命令を下した。
「ちんちん!」
「えっ…」
 汐理は目の前が真っ暗になるのを感じた。
 彼らは観客の前で汐理に陰部を露わにさせようというのだ。しかも、そこにはローターが挿入されており、西郷からの
度々の電話に生理的反応を示している。さほど大きくないホールのことだ。前の方の観客には、性器に異物を挿入し、
濡らしている様子まで見られてしまうかもしれない。それは、あまりに恥ずかし過ぎる。
「お願い…」
 小さな声でそう言って、汐理が訴えるような眼差しで誠と実を見た。しかし、二人の顔には卑猥な笑いが浮かんでいる
だけだった。

「どうする…?」
 舞台の袖でハラハラしながら見ていたポンが、他のメンバーを見て尋ねる。
「決まっとるやろ!汐理ちゃんにだけ恥をかかせるわけにはいかへん。」
 ケンジがそう言って、服を脱ぎ始めた。
「よし、イロモノ芸人の心意気、見せてやれっ!」
 ヒデが2人に声を掛けた。
 汐理が覚悟を決めて、しゃがみ込む姿勢になった時、間抜けな犬の鳴き真似が聞こえた。
「ワンワンワン…」
「ワン、ワワ、ワン…」
「ワ、ワンワ、ワン、ワン…」
 それまで固唾を飲んで汐理を見ていた観客の視線が、一斉に舞台の下手に注がれた。
 観客の爆笑と、女性客の「キャーッ!」という声が響く。全裸になり、股間の一物をブラブラさせて、レインドロップスの
3人が一列に並んで這い出て来たのだ。
「ワンワンワン…」
「ワン、ワワ、ワン…」
「ワ、ワンワ、ワン、ワン…」
 節をつけて鳴きながら、ゾロゾロと舞台を行進する3人。あまりのバカバカしさに、観客は唖然として彼らを見つめてい
る。
「しっかりしいや、尻尾、垂れてるで!」
「いやーん、これは、尻尾じゃないよぉ…」
 ケンジの突っ込みに、ポンが情けない格好で股間を隠す。会場から大爆笑が湧き起こった。
 汐理もマス・ジャムの命令どおり「ちんちん」の姿勢になったものの、その真ん前で犬のマネをして暴れまわるレインド
ロップスの姿で、完全に観客の視線から隠された。
「ワォォーン!」
 遠吠えし、片足を上げてオシッコのマネをするヒデ。丸見えになったペニスに女性客の悲鳴と、男性客の笑いが一斉
に起きる。
「ワン、ワワン!」
「キャイン、キャイン、キャイン…」
 ケンジがポンの足に噛み付き、鳴き声をあげて逃げるポンを追い回す。
 全開まで解放されたエロ、グロ、ナンセンスに、客席は爆笑の渦に巻き込まれた。汐理も思わず笑いながら、彼らの
意図を理解して、じわりと目頭が熱くなった。



 その時、会場に音楽が流れ、出演者全員が舞台に上がってきた。全てが演出どおりだと思い込んだ観客たちが満足
顔で、割れんばかりの拍手をする。
 ピン芸人の一人が汐理にジャケットを着せ掛け、立ち上がらせた。
「おんどりゃあ、どういうつもりじゃ!」
 客席に向かってにこやかに手を振りながら、誠と肩を組んだ華麗ライスのシンジが凄んだ。気がつくと、マス・ジャム
の周りを出演者が取り囲んでいる。その目が笑っていないことに気がついた誠と実は、引きつった笑いを浮かべた。



 
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