第6話 過激なプロモーション


 昨今の春波原は、若者の街として有名になっている。週末ごとにメインストリートの大通りは歩行者天国になり、ストリ
ートミュージシャンやアマチュア・バンド、前衛劇やコントなど、ありとあらゆる若者たちのパフォーマンスが繰り広げられ
る。
 そんな土曜の昼下がり、大勢の人でごった返す大通りから一つ入った裏道に、目立たないワゴン車が止まっていた。
「さあ、朱美ちゃん、早く着替えてね。」
 スタイリストの夏野が衣装を取り出した。映画「バトルプリンセス」のヒロイン「紅珠姫」の衣装だ。
「あの…、やっぱり、これを着なくちゃいけないんですか?」
 朱美が眉をひそめて尋ねる。衣装と言っても、要はビキニである。ストラップレスのブラジャーと、お臍の下が深くV字
にカットされ、サイドが紐になったパンティなのだ。これを着て、人通りでごった返す春波原を歩く自分を想像して、朱美
は思わず赤面した。撮影の時は構わないが、街の中で着るのは、あまりにも恥ずかしい衣装だ。
「もちろんだよ。だって、映画のプロモーションなんだから。」
 越河監督が、当然だという表情で答えた。今回のプロモーション企画に監督自らディレクターとして参加している。
「わかりました…、着替えますから、外に出ていてください。」
 あきらめた表情の朱美は衣装を受け取ると、同乗してきたスタッフを見た。堀河、夏野の他に、カメラマン、マネージ
ャーの焼津に付き人…、男性ばかりのスタッフ6人がワゴンに乗っている。
「ダメダメ、着こなしをチェックするのが僕の仕事だからね。僕もプロだから、朱美ちゃんが素っ裸になっても、変な目で
見たりしないよ。」
 そう言う夏野の目は明らかに好色な期待に輝き、十分に「変な目」であった。
「朱美もプロだったら、スタッフの前で着替えるのは平気にならなきゃあね。」
 堀河までがそう言い、マネージャーの焼津が肯く。男たちの下心は見え見えだが、そこまで言われて、ぐずぐずしてい
るわけにはいかない。
「わかりました…」
 少しムッとした表情で朱美が着替え始めた。
 撮影等がある時は、下着のラインが残らないよう、ゆったりとしたワンピースの下には何も身につけていない。ワンピ
ースを着たままパンティをはき、背中のファスナーを下ろす。滑らかな白い背中にスタッフたちの視線が注がれている。
「そんなに見ないでください…」
 ワンピースの胸を押さえながら振り返った朱美が言う。視線の中に潜む男たちの欲望を感じた途端、恥かしさに襲わ
れたのだ。しかし、男たちは意に介さず、ニヤニヤ笑うばかりである。
 手で胸を隠しながら衣装のブラをつけ、ティアラに腕輪、金の装身具で身を固め、剣を下げると、凛々しい紅珠姫が
完成した。
 若々しく隆起した双乳、キュッと締まったウエスト…、とれたての果実のような瑞々しい肢体だ。パンティからすらりと伸
びた長い足も印象的で、ビキニの衣装を着ると、スタイルの良さがより強調されていた。
「これ…、ちょっと小さいです。」
「えっ、そうかなぁ?」
 夏野はとぼけるが、朱美が身につけた衣装は、明らかに撮影の時よりワンサイズ小さかった。ブラにはパッドが入っ
ておらず、胸の頂上に小さな膨らみが見える。ハイレグになった生地が引き伸ばされて、少しでもずれると割れ目まで
見えそうだ。
「朱美ちゃんの胸が、大きくなったんじゃない?」
 そう言いながら、夏野は両手を朱美の胸にあてがい、ブラジャーの上からギュッと掴んだ。
「あっ!ちょっと…。だめっ」
 朱美が夏野の手を振り払うと、今度は堀河の手が伸び、ブラジャーの上から乳房を強く弱く揉んでくる。
「どれどれ?」
 鷲掴みにされた胸の膨らみが淫らに形を変える。
「キャアッ!」
「こらっ!じっとして!」
 マネージャーの焼津が、悲鳴をあげて逃れようとする朱美を叱りつけた。担当するタレントを守るより、あくまで監督の
意向を優先する男だ。調子に乗った堀河の指が、ブラジャーの上から朱美の乳首を摘み、コリコリと転がす。
「あんっ…、だめです…。やめてください…」
 弄られた乳首が尖り始めているのが、ブラジャーの上からも見てとれた。
「ここは、もうちょっと、こうした方がいいな。」
 夏野がパンティを引っ張って、恥丘の盛り上がり強調した。股に食い込んだ薄い生地が亀裂の形まで露わにする。
「確かに、衣装が小さいようだが、まあ、これでいいんじゃないか?」
 パンティの上から割れ目をなぞりながら、堀河が言った。

 ワゴンのドアが開き、肌も露わな格好で中から飛び出してきた女の子に、通行人が驚いた表情を見せる。
(…恥かしい…)
 好奇の視線を浴びた朱美は顔を真っ赤に染め、うつむきながら小走りで走り抜ける。
 そのまま通りを駆け抜け、歩行者天国に入るなり、数人の通行人が声をあげた。
「あっ、朱美ちゃんだ!」
「見ろよ、火山朱美だぞっ!」
 この数人は、プロダクションが仕込んだサクラである。しかし、一旦、群衆が彼女の存在に気づくと、もうサクラなど必
要なかった。あっと言うまに人だかりができ、駆けつけたスタッフが朱美の身辺を警護し、交通整理をしなければならな
い状態になる。
「やっぱ朱美ちゃん、可愛いよな。」
「スタイルいいし、あの体、たまらないよな。」
 集まったファンは朱美のビキニ姿に歓喜し、足の先から頭まで視線を這わせる。
(いやだぁ、透けちゃってるの気づかれないかな。どうしよう…)
 周りを大勢のファンで囲まれた朱美は冷や汗をかく思いだった。自然と手で胸と股間を隠してしまう。心臓がドキドキ
している。
「撮らせてよ!」
 集まったファンは、手に手に携帯やカメラを構えている。
 衣装に乳首や割れ目が映った写真が雑誌に投稿され、ネットで世界中に流される様子が脳裏をよぎる。一瞬、逃げ
出したくなったが、こういう状況になってしまえば、朱美もタレントとして割り切るしかない。もちろん、堀河からは快く撮
影に応じるよう指示されていた。
「はーい、可愛くとってね!」
 気さくな感じでそう言うと、朱美は笑顔を振りまきながらポーズをとった。
「朱美ちゃん、今度はこっち向いて!」
「じゃあ、ポーズ決めてみようか。」
 アクション・ヒロインらしい凛々しいポーズ、アイドルらしいキュートな仕草、ファンのリクエストに応え、限界ギリギリの
セクシーポーズまで披露する。
「おい、あの胸のポッチ、乳首じゃないか?」
「さっきから気になってたんだ、やっぱ、ビーチクだよな!」
「見ろよ、アソコ食い込んでるぜ…」
 案の定、そんな囁き声があちこちで聞こえ、朱美は頬が熱くなるのを感じた。ファンたちは、アクシデントで見えてしま
っているものだと思い、幸運に感謝している。
 突然、ピーッというホイッスルのような音が鳴り、スタッフが集まったファンを移動するよう誘導する。
 大通りの向こうから、古代の戦士を思わせる扮装の男たちが十数人登場してきて、朱美を取り囲んだ。戦士達が剣
を抜き放つ、「紅珠姫」の朱美も腰の剣を手にした。
「でゃあーっ!」
 掛け声とともに戦士達が朱美に殺到し、激しい剣の打ち合いが始まった。歩行者天国に繰り出した人々も、それが新
作映画のプロモーションだと理解し、遠巻きにして、突然のパフォーマンスを楽しんでいた。
 何度目かに剣と剣を切り結んだ瞬間、戦士の手が衣装のブラに伸びる。
「きゃあっ!」
 朱美の悲鳴が響く。引っ張られたブラがに千切れ、戦士の手に握られていた。
「おおっ!」
 ギャラリーから驚きの声があがる。
 戦士が切りつけてくるのを、右手に持った剣で受ける朱美。相手の剣を振り払うのも片手だ。左手は胸を抱くようにし
ている。激しいアクションで、窮屈なパンティは股間に食い込み、きれいに剃りあげられた大陰唇まで見えそうになって
いる。
 集まったファンたちは、予想外の嬉しい展開に心を弾ませ、半裸の朱美に熱い視線を送っていた。
 胸を庇い、剣をふるいながら、朱美の姿は近くの雑居ビルに消えた。
「よーし、いいぞっ、もっと、スキャンダラスにいこう!」 
 ビルの中で待ち構えていた堀河監督がそう言うと、スタイリストの夏野がハサミを手に朱美に近づいてきた。
「ちょっとっ、何するんですかっ!」
「動かないで、微妙な力加減が要るんだから…」
 夏野が、パンティの腰紐にハサミを当てる。
「よーし、OK!」
 わずかな布地をつなぐ紐は、切れ目を入れられて、いまや数本の糸でかろうじてつながっているような状態だ。
「よし、いよいよクライマックスだ!」
 まるで映画撮影の時のように、堀河がスタートの合図を出した。

「おおーっ!」
 再び朱美が登場すると、通りをびっしりと埋め尽くした観客が、一斉に歓声をあげる。おそらく衣装を整えるためにビ
ルに入ったのだろうと思っていたのに、朱美は上半身裸のまま、剣を振るいながら登場したのだ。その後を追うように、
ボスキャラらしい敵役も現れ、一騎打ちのバトルになる。
 手で胸を隠しながら必死で戦う朱美。激しい打ち合いに、何度も乳房がこぼれ出そうになり、かばう手の間から胸の
膨らみがチラチラ見える。乳頭こそ見えないが、十分にエロティックだ。
「あ…、うっ…」
 小さな声を漏らしながら、朱美が剣を振る。殺陣師の振り付けどおり動くのだが、その動きにぎごちなさが見られた。
今にもパンティの紐が切れてしまうのではないかと思うと、気が気ではないのだ。
 敵役のスタントマンが繰り出した必殺の突きが、腰のあたりに触れる、手にした剣でそれをいなした朱美が、返す刀で
切りつけた。敵役がバッタリ倒れ、ポーズを決めた朱美に、集まった観客が一斉に拍手をする。
 ところが、その瞬間、とうとう腰紐が切れ、衣装のパンティがハラリと道路に落ちた。



「キャアーッ!」
 悲鳴をあげてうずくまる朱美。
「おおっ!」
 一瞬のこととは言え、剥き出しの下腹部やお尻を見て、観客が興奮した歓声をあげる。トップアイドルの美少女が、白
昼の大通りで全裸になったのだ。
 スタッフが駆け寄り、慌てたそぶりで朱美の体を隠すようにして、路地裏に飛び込み、指示された雑居ビルの裏口か
ら中に入る。
「おい、今、見えたよな!」
「すげぇ、ラッキー…」
「朱美ちゃん、可哀想…」
 思いがけないアクシデントに遭遇したファンたちの様々な声で、歩行者天国は騒然となった。
「みんな演出だとは思ってない様子ですね。」
 外の様子を見ていた焼津がそう言った。
「朱美が、ホントに恥ずかしがってるのが、良かったよ。」
「アクシデントだと思われた方が、話題になりますからね。」
「このストリートファイト、きっと新たな都市伝説になるぞ。」
 スタッフの言葉に、堀河が満足げに頷いた。
 朱美を乗せ、春波原を出たワゴンは、都心の映画館に向かった。封切り初日の今日は、堀河監督と朱美に、赤峰も
合流して舞台あいさつに立つことになっている。
「ねえ、早く着替えをちょうだい!」
 後部座席に蹲るようにして、朱美が手を伸ばす。
「ハイハイ…」
 そう言いながら夏野が取り出したのは、またしてもバトルプリンセスの衣装である。朱美はうんざりしたが、それでも全
裸でいるよりは、はるかにマシだ。
「それを着る前に…」
 堀河が意味ありげにニタッと笑った。悪い予感がして、朱美の表情が強ばった。彼が取り出したのは、膣内に挿れる
タイプの卵形のバイブレーターだった。
「えっ、それもですか…」
 朱美が露骨に嫌そうな顔をした。「バトルプリンセス」の撮影中、朱美はこのリモコン式のバイブをずっと挿入されてい
た。
 朱美が演じる「紅珠姫」は、超人的な身体能力を得るために「魔法の虫」を胎内に埋め込まれている。しかも、その虫
は男性の精液を餌とし、催淫効果のある物質を分泌するという設定になっており、それをリアルに表現するために、こ
のリモバイが使われたのだ。
「当然!」
 堀河がそう言うと、スタッフが寄ってたかって彼女の身体を押さえた。そして、抵抗する朱美の脚を広げていく。いつで
も水着が着れるよう、つるつるにした股間が露わになった。
「や、やめて…。いや、恥ずかしい。」



 男たちの視線が、朱美の太股の間に注がれる。無毛の割れ目からピンク色の襞肉がはみ出しているのが見えた。朱
美は身体を必死でくねらせて逃れようとする。堀河はバイブを朱美の秘孔にあてがった。
「ちょ…、ちょっと待って、い…、いやっ!」
 バイブが朱美の陰裂を押し広げる。堀河は卑猥な笑いを浮かべながら、淫具を持つ手に力を入れた。


「堀河監督、主演の赤峰雅之さん、そして、火山朱美さんです!」
 満員お客の拍手で3人が順に舞台に登場する。堀河、赤峰に続いて、朱美がバトルプリンセスの衣装で登場すると、
一際大きな拍手が起き、カメラのフラッシュが焚かれた。
 宣伝ポスターの映像が大きく映し出されたスクリーンの前で、3人がそれぞれに撮影の裏話や映画の見所を説明す
る。
「今、お三方は、あえて触れられませんでしたが、この映画の見所と言えば、朱美ちゃんのセクシーなシーン!」
 インタビューに立った司会者が、堀河に尋ねる。
「赤峰さんとの絡みもありますが、あれ、ホントにやってたんですか?」
「さあ、どうでしょう?」
 堀河が思わせ振りな返事をする。
「あっ!」
 その途端、朱美の顔が歪み、クイッと腰を引くような動きを見せた。リモコンバイブのスイッチが入ったのだ。朱美が
少し怒ったような表情で、ズボンのポケットに手を入れた監督を睨む。
「僕は暁監督とは違うので、どちらとも言いません。」
 澄ました顔で堀河が答える。
 朱美が眉を寄せ、もじもじしているのを見た人たちは、ラブシーンのことが話題になって恥ずかしがっているのだろう
と思った。しかし実際は、身体の奥から湧き起こる性感にじっと耐えていたのだ。
「『分水嶺』の時は、暁監督の記者会見が話題になりましたけど、肝心な部分は吹き替えだとか、暁さんならホントにや
らせてるとか、両論あって、真偽の程はわからないと言われてますよね。どうなんですか、朱美ちゃん…」
「え…、あの、ご想像にお任せします…」
 そう答えながら、朱美は太股を擦り合わせ、股間の疼きと戦っていた。
「ううん、そんなこと言うと、エッチな想像しちゃいますよ。ねぇ、赤峰さん。」
「みなさんに映画で見ていただくことが、全てです。」
 赤峰が関係ないとばかりに、面倒そうにコメントをすると、鼻白んだ司会がまとめに入った。
「では、そのあたりも、じっくり見せていただきましょう。」
「ううっ、ううう…」
 朱美は声が漏れそうになるのを必死にこらえて、小さく呻く。
「朱美ちゃん、最後に、良かったらキメポーズとか見せてよ。」
 司会が彼女に振ったのを合図に、バイブのスイッチが最強になった。会場の視線が一斉に朱美に向けられる。
「ああっ、ああん…」
 朱美が思わず声を漏らしてしまう。丸みを増したお尻がクネクネと揺れる。
 朱美は、その場に座り込んだ。宣伝用のキメポーズでも見せてくれるのだろうと思っていた観客たちは、意外な展開
に驚きながらも、何が始まるのだろうと固唾を呑んで見詰めている。
「う、ううっ…う」
 朱美が仰け反るように喉を伸ばした。
「ああん…も、もうだめええ…」
 我慢は限界に達していた。朱美は、股を強く擦り合わせながら、腰をくねらせた。この恥態を演技だと思わせるため
には、映画のセクシーシーンでの台詞で決めるしかない。朱美は恥かしさに頬を染めながら、身体をクネクネとくねら
せ、必死の思いで恥辱の台詞を口にした。
「ああっ、ああん…、お願いタルカス…、私を抱いて…」
 観客の歓声とともに舞台が暗転して、映画が始まった。

 多忙な一日を終え、自分のマンションに帰り着いた朱美は、オートロックのテンキーに手をかけた瞬間、後ろから呼び
止められた。
「おーい、朱美!」
 親しげな笑いを浮かべて声をかけてきたのは、前のマネージャー炭谷だった。
「久しぶりだな、最近はえらい人気じゃないか。鳳の件じゃあ、迷惑をかけたからな。俺もやっと一安心だよ。」
「ありがとう。」
 朱美もにっこりと笑った。一時は炭谷を恨んだこともある。しかし、本当に悪いのは鳳である。炭谷とはデビュー以来
のつきあいでもあり、今となって見れば、すっかり許す気持ちになっていた。
「折り入って、頼みがあるんだ。」
 朱美の柔らかな表情にホッとした様子で、炭谷が話を切り出した。
「俺、今は独立して企画会社をやってるんだ。やっと軌道に乗ってきたと思ったら、ブッキングしてたタレントに穴を空け
られちゃって、困ってるんだ。」
 不審げな表情を浮かべる朱美を真剣な顔で見ながら、炭谷が言葉を継ぐ。
「ほら、ワガママ娘の栗田真由だよ。」
「そうなの…」
 彼女ならやりかねないと、妙に納得した表情で朱美が頷く。
「助けると思って、代わりに出て欲しいんだよ。」
 炭谷は拝むようなポーズで頭を下げた。朱美の顔に困惑の表情が広がる。
「でも…、ATプロは勝手な営業はNGだって、炭谷さんも知ってるでしょ?」
「事務所の方には、話を通してあるんだ。朱美がOKしてくれれば、構わないって…」
「ホント?」
 朱美が疑わしげな視線を向けた。
「もちろんだよ。タイラー社長も、今は俺のことを許して、応援してくれてるんだぜ。」
「わかったわ。事務所がOKしてるんなら…」
「よかったぁ、助かったよ。じゃあ、これから打ち合わせなんだ。一緒に来てくれよ。」
「じゃあ、まず焼津さんに連絡して…」
 マネージャーと連絡を取るために、バッグの中から携帯を出そうとする朱美を押し止どめて、炭谷はマンションの前に
停めた車を指さした。
「車の中で連絡すればいいだろう。時間がないんだ。」

「…確か、このあたりだよな…」
 そう呟き、町並みを見ながら歩いてくるのは、赤峰である。彼の手には、朱美の携帯電話が握られていた。
 朱美が控え室に置き忘れていたそれを見つけた時、スタッフに知らせるのではなく、自分で届けようと思い立った自
分の心の動きに、赤峰は心地よい驚きを感じていた。
「おや…、あれは?」
 十数メートル先のマンションの前、一台の車が停まっている。がっしりした大柄な男に促されるようにして、車に乗り込
む朱美の姿が見えた。
 不審なものを感じた赤峰の横を、朱美を乗せた車が走り去って行った。



 
 目次へ
 
 「星たちの時間」トップページへ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ
 
動画 アダルト動画 ライブチャット