第9話 凌辱のスタジオ


 炭谷に連れて来られたのは、築20年以上の古びたマンションだった。臭いのこもった、狭く、動きのぎごちないエレベ
ーターで5階まで上がると、ペンキの剥げかかったスチール製の扉があった。ここにスタジオがあると言う。
「やあ、久しぶり」
 ドアを開けるなり、男が駆け寄って、親しげに声をかけてきた。
「えっ、鳳さん?…いつ…」
 出て来たのかと言いかけて、朱美が言葉を飲み込む。鳳龍之輔は詐欺などの罪で逮捕されて、今も裁判中だと聞い
ている。
「うん、先月、保釈になったんだ…」
 そう答える鳳の髪の毛はボサボサで、目は完全に宙を泳いでいる。かつての傲岸とも言える自信に溢れた青年実業
家の姿は、そこにはなかった。
「おい、早くしろ!」
 奥の方から、巻き舌の怒声が響いた。
(ちょっと、普通じゃないよね、これ…)
 スタジオに入った朱美は、周囲のスタッフを見回して、そう思った。普段接しているマスコミ、芸能関係者とは明らかに
違う。そもそも、この場所自体、マンションの一室を改造した、スタジオとは名ばかりの部屋だった。
「おい、鳳。朱美ちゃんに、段取りを教えてさしあげろ」
 ディレクターだと紹介された坂村が、ドスの効いた声でそう言った。年齢は40歳ぐらい。目付きの鋭い、見るからに柄
の悪そうな男だった。
「すぐに、撮影、始めるで」
 関西弁で言ったのは、プロデューサーを名乗る大倉だ。50歳代半ばと思われる恰幅の良い男で、高級そうなスーツ
を着ているが、こちらも、どう見ても堅気には見えない。
 彼らだけではなく、撮影スタッフはみんな一癖も二癖もありそうな連中ばかりだ。
「えーっと…、あの…下着モデルの撮影なんだけどね…」
 鳳がしどろもどろになりながら、説明を始めた。
 釈放されてから、炭谷と一緒に芸能プロダクションの仕事を始めた彼は、多額の借金をしている大倉の依頼で今回
の仕事を受け、モデルとして栗田麻由を口説き落としたものの、ドタキャンされたのだと言う。
「………」
 下着モデルと聞いて、朱美は改めて部屋を見渡した。大倉と坂村に加えて、カメラマンと照明などスタッフが5人ほど
いるが、いずれも男性だ。お世辞にも上品とは言えない面々が、粘りつくような視線を彼女に向けている。その前で下
着姿になることを想像するだけで、顔が強ばってくる。
「困ってるんだ、やってくれるよね…」
「わかりました」
 文字どおり拝み倒す鳳に、それでも朱美は頷いた。鳳のインチキ商法のあおりで、苦労した時期もあったが、確かに
一緒に仕事をしたこともあり、無下に断るのは忍びなかった。
「それで、どこで着替えればいいんですか?」
「そこでやってくれ、次々に下着を着て撮影するから」
 鳳と炭谷が答える前に、坂村が指示した。朱美の表情に明らかな躊躇いが浮かぶ。パーテーションすらない所で裸に
なって、下着を着替えなければならないのだ。
「朱美、この仕事、引き受けてくれたんだろ」
 炭谷がすがるような口調で言った。かつてのマネージャーの言葉に、朱美のプロ意識が呼び起こされる。
(わかったわよ、脱げばいいんでしょ!)
 ちょっと開き直ったような気分で、朱美がジャケットを脱いだ。途端にライトが灯り、カメラが回り始めた。
「えっ、脱ぐところも撮るんですか?」
「カメラテストだよ、カメラテスト」
 ニヤニヤ笑うカメラマンに、心の中でアッカンベーをしながら、朱美はお洒落なTシャツを脱いだ。恥ずかしい仕事は、
これまでだって、数え切れないほどこなしている。
 スタッフたちが思わず息を呑む気配が部屋に広がった。
 朱美は、身体に線を残さないため、仕事で出掛ける時は下着をつけていない。乳房が見えてしまわないよう、手で胸
を隠しながら脱いではいるが、腕の間から、豊かで柔らかそうな膨らみがのぞいている。
 スカートを脱ぐと、一瞬だったが、下腹部に小判型の恥毛がふんわりと生えているのが見えた。
「チチは大きいし、腰がキュッとくびれて、ええ身体してるやないか」
 大倉が下品な声を上げた。スタッフたちは、ギラギラした視線を遠慮なく朱美に注いでいる。朱美は頬が羞恥に火照
るのを感じた。

 撮影が始まった。
「朱美はやっぱり、スタイルがいいなぁ…」
 鳳はさりげなく朱美の胸や尻を触りながら、彼女をカメラの前に立たせた。先程ほどまでの萎縮した姿とは打って変
わった様子だ。
 健康的なお色気をたたえた肢体が、男たちの目に晒された。
 朱美が身に着けているのは、パステルピンクのブラジャーとパンティだ。シルク製のランジェリー特有の艶を放ってい
る。キュートなデザインではあるが、生地の絶対的な面積は圧倒的に少なかった。
 レースで飾られた肩紐についているカップは胸の膨らみの下半分を包むのがやっとである。肩紐の位置も普通ブラジ
ャーより外側にあり、豊かな胸を強調している。パンティはお臍の少し下で腰にかかり、生地は両サイドからV字を描い
て股間に吸い込まれる、かなりのハイレグだ。
 仕事だと割り切ろうとするが、まじまじと男たちに身体を見られるのは、やはり恥ずかしかった。カメラの前で、ランジ
ェリー姿になった朱美の身体が、ほのかに桜色に染まっていく。
 朱美は用意されていた下着を次々に身につける。ショッキングピンク、パープル、赤…、渡される下着が徐々にセクシ
ーでエロティックなものになっていく。
 男たちは、普段はけっして見ることができないアイドルの下着姿を堪能した。
「じゃあ、最後はこれね」
 そう言って、黒のブラとパンティのセットが渡された。
(何? この下着…)
 ブラジャーは、胸を包む三角の布地がメッシュで出来ていた。レースで飾られた黒いパンティは、生地の向こうが透け
て見えている。手にとると、三角の生地の中央で縦に走るレースが二つに分かれた。
「えっ、これって…」
 その割れ目が何のためのものかは、一目瞭然だった。それを身に着けた自分の姿を想像するだけで、朱美の頬が
熱くなった。
「おおっ!」
 着替えた朱美がを見て、スタッフたちが一斉に歓声ともため息ともつかない声をあげる。メッシュのブラジャーから
は、案の定、乳首と乳輪のピンク色が覗いている。恥丘を包んだ薄い布地は、下腹部の翳りを透かしていた。
 次々にポーズをとる朱美の、足元から顔へと、カメラが舐めるように全身を収めていく。足を開くポーズでは、股間の
レースが開く感覚があり、中が見えてしまわないか、朱美は気が気ではなかった。
「じゃぁ、次は手を床について、そう、四つん這いになってこちらを向いて…」
「えっ?」
 坂村の指示に、朱美が戸惑いを見せた。股間が開くデザインのパンティをはいて、無防備なお尻を晒すことになる。
秘部が見えてしまうのではないかというおそれが、彼女の動きを鈍くした。
「何してるんだ、さあ、早く!」
 坂村に睨まれて、朱美はうつむいたまま、手と膝を床につけた。
「膝を伸ばして…、目線はこっち」
 次々と注文が飛ぶ。朱美はゆっくりと膝を伸ばしていく。レースの間から空気が流れ込むのを感じた。女陰はまだか
ろうじて隠れている。
(ダメ、これ以上、膝を伸ばしたら…、アソコが見えちゃう…)
「もう少しヒップ、上げてみよう」
「無理っ、無理です…」
 朱美は、思わず鳳を見て泣きついた。
「だって…お尻が…」
「アイドルだからって、ワガママ言ってんじゃねえぞっ!」
 とたんに坂村の怒声が飛んだ。もはや選択の余地を失った朱美は、ゆっくりとヒップを上げていく。後ろからカメラを
構えて撮影していたスタッフが、うれしそうな声を上げた。
「おぉっ、オ××コ、丸見え!」
「どれどれ…」
 スタッフみんなが後ろに回る。パンティのレースが左右に開き、プックリとした大陰唇が完全に見えてしまっている。
「おお、ほんとだ!」
「完全に見えちゃってるよ!」
「いやっ、見ないでっ!」
 思わず悲鳴をあげた朱美は、四つん這いをやめて、その場にしゃがみ込んだ。
「さあて、そろそろいこうか。おい…」
 坂村の合図で、スタッフたちが、床に蹲った朱美を取り囲んだ。
「何?何するんですかっ!」
 恐怖の色を浮かべて男たちの顔を見上げる朱美を、背後から近づいた大倉が抱きすくめる。
「鳳の作った借金は、下着モデルぐらいでは返されへんのや。あんたをわしらとセックスさせて、それを裏ビデオに撮っ
て売りさばくっちゅうのが、契約の中身や…」
 そもそも、鳳と炭谷がやっている「芸能プロダクション」というのは、街でスカウトしてきた女の子を騙して、裏ビデオを
撮影するのが仕事らしい。
「そんなの、聞いてません!」
 気丈に言い返す朱美だったが、その声は震えていた。
「ごめん、朱美ちゃん…」
 鳳がばつの悪そうな顔で頭を下げる。
「借金の大部分は、鳳グループがらみのものだ。お前も、まんざら関係ないわけじゃないだろう」
 坂村がそう言って近づいて来た。
「キャンペーンガールやったんやからな」
 そう言うと、大倉は朱美を立ち上がらせ、豊かな胸を鷲掴みにした。
「いやあっ、やめてっ!」
 朱美は悲鳴をあげ、大倉をはね退けようとする。しかし、簡単に手首を取られ、後ろ手に押さえ付けられた。
「いやっ!イヤよっ!」
 必死で抵抗する朱美を、スタッフが寄ってたかって押さえつける。
「男優は、俺と大倉さん、それと…」
 坂村が鳳を振り返った。
「おまえもやりたいんだろ、鳳」
 朱美が驚いた表情で鳳を見つめた。
「はい」
 鳳の顔が期待に輝いている。もとから、そのつもりで朱美を誘い出したのだ。栗田麻由の代役というのも、朱美のライ
バル意識を利用して、仕事を受けさせるための作り話だった。
「なんて、卑怯な人なの!」
 朱美が柳眉を逆立てて、鳳を睨みつけた。
「気の強い娘だな」
 坂村があきれたように言うと、大倉がニヤニヤ笑う。
「わしは、そういう娘が好きやで。気の強い娘が、ひいひい泣くのを見るのがな」
 そう言いながら、大倉は朱美の首に舌を這わせた。
「キャアッ!」
 あまりの気味悪さに悲鳴をあげた朱美の唇を、坂村が奪った。いくら首を振り、身を捩っても、キスをかわすことがで
きない。
 前後から、荒い息を吐いて淫靡に絡みつく男たち。ズボンの中の陰茎が勃起し、朱美の腰や太腿にグリグリと押しつ
けられる。その熱くおぞましい感触に朱美はゾッとした。
「おい、椅子、持って来い」
 坂村の指示で、スタッフたちが籐製の肘掛け椅子を持ってきた。そこに朱美を座らせると、幼児がオシッコをするよう
な格好で、下肢を開いて縛り付ける。
「い、いやっ、いやぁ…」
 椅子の上で朱美がもがく。上体は後ろ手に緊縛され、卑猥なブラに包まれた柔らかな隆起が、食い込む縄で楕円形
に歪む。大きく割られた両肢の中心で、パンティのレースが開き、陰毛に彩られた秘部が露わになった。
「へっへっへっ、アイドルのオ×コ、ご開帳や!」
 大倉がうれしそうに、朱美の鼠蹊部をいやらしい手つきで撫でさする。
「きゃああっ!」
 陰部に指を突っ込まれた朱美は悲鳴をあげ、ムチムチの内腿をピーンと突っ張らせた。そこにカメラが近づいてくる。
「はい、こっち、カメラ目線!」
「いや…、いや…、恥ずかしい…やめて!」
 朱美は、なんとか脚を閉じようとする。しかし、力いっぱい引っ張ってみても、両足首が固く椅子に縛られ、全く無駄だ
った。
「朱美、なかなかいい表情してるぞ」
「億単位の借金を返してもらうんや。オ×コはもちろん、口もケツの穴もとことん使うてセックスする姿、撮らせてもらう
で」
 大倉が指先をクレヴァスにあてがう。朱美の腰がブルッと震えた。折り重なった肉門がこじ開けられ、ピンク色の粘膜
が顔を出す。
「ヤダ…、やめて…」
「さすが、綺麗な色やな」
「あ…、い、いやあ…」
 たたみ込まれた肉襞が抉り出され、クリトリスを嬲られる。無駄とは知りつつ、朱美は目に涙を浮かべながら、身を捩
る。
「どれ、味見したろ…」
 大倉が朱美の股間に顔を埋める。舌が女の急所をとらえた。下からゆっくり花弁をなぞりあげると、朱美は椅子の上
で身悶えし、艶っぽく啜り泣いた。
「いい声で泣きやがる」
 坂村はにやりと笑い、ブラジャーをずらして、乳房を剥き出しにした。プックリした乳房を揺さぶっては、乳頭を口に含
む。
「いっ、痛い!」
 乳首を軽く噛まれ、ビリリッとした痛みに、朱美はたまらず悲鳴をあげる。それでも坂村は執拗に乳首をこねくりまわ
してきた。
「い、痛い…、も、もうやめて…」
 坂村の荒々しい行為に、朱美は涙を浮かべて訴えたが、男は気遣うそぶりも見せない。なおもしつこく唾液に濡れた
乳首を蹂躙する。
 大倉の舌先が肉層を抉ってきた。そうしながら、指先ではクリトリスに微妙な刺激を送り続ける。
「…あぁん、ダメぇ…」
 朱美が髪を揺すって喘いだ。リンスに汗が混じった甘い匂いが、男たちの獣欲を刺激する。



「俺とキスしようか」
 図々しくも近づいて来た鳳が、ニヤニヤ笑いながら言った。
「いやっ!誰が、あなたなんかと!」
 卑劣な相手が許せず、朱美が激しく拒絶した。
「そう嫌がらずに、相手をしてくれよ」
 力ずくで頭を押さえられ、無理やり、鳳に唇を奪われた。
「ええか、鳳の舌を噛んだりしたら、クリを噛み千切ってしまうで」
 敏感な芽に軽く歯を当て、大倉が残酷な脅しをかける。
「む…むむ…」
 抵抗を封じられた朱美の唇がこじ開けられ、ヌルッと男の舌が侵入する。舌を激しく吸い上げられ、口腔をヌチャヌチ
ャと舌でこねくりまわされた。
「う…、うぐっ…むんっ…」
 鳳が深々と接吻し、坂村が乳首を舐め、大倉が股間を弄る。その度に朱美の優美な腰が左右にうねる。
 たまらなかった。感じてはいけない、いけないと身体にいいきかせても、執拗な愛撫に身体がひとりでに反応してしま
う。切なげな吐息がこぼれ、のけ反った白い喉が苦しげに上下する。
「ほれ、見てみい。トロトロに濡れてるで」
 大倉が花びらを開いた。充血した秘口に果汁がヌラリと光り、赤く膨らんだ肉芽が露わになった。
「スケベなオ××コだな」
 坂村が嬲るように言う。
「朱美、そろそろ、入れて欲しいんやないか」
 そう言いながら、大倉が指先を濡れた陰裂の中へ潜らせる。
「最初は、誰や?」
「もちろん大倉さんですよ」
 鳳が、媚びへつらうように答えた。プロデューサーと自称しているが、大倉は有名な広域暴力団の幹部である。芸能
関係をシノギにしており、「演歌の帝王」西郷公彦ともつながりが深い。
「火山朱美を食えるとは、うれしいなぁ。たっぷり味わわせてもらうで」
 ズボンのベルトを外しながらそう言うと、大倉は下半身裸になった。籐椅子の上で股を開く朱美にのしかかるようにし
て、少女の甘い香りを吸い込む。股間には、黒光りする男根がそびえ立っていた。
「ダメぇっ!」
 朱美が叫び声を上げた。大倉が自らの怒張を手に、レースの割れ目から覗く陰裂に狙いを定める。
「いやっ!しないでっ!」 
 朱美が激しく首を振り、なんとか逃れようと身体を捩る。
 これまで、仕事でいろいろとエッチなことをさせられ、赤峰とのセックスも経験させられた。しかし、チンピラのような男
たちに寄ってたかって、乱暴に犯されるのは、あまりに屈辱的で、恐ろしかった。
 右に、左に、上に、下に、少しずつ外れていた肉棒が、徐々に膣口に近づいて来る。
「お願いだから…やめて…」
 イヤイヤするように首を左右に捻る朱美の目尻から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
 その時、音もなく影が動いた。朱美に覆いかぶさっていた男の体重がフッと消える。
「いい加減にしろよ」
 抑えた声が室内に響く。赤峰だった。彼は朱美にのしかかっている大倉の襟首を、後ろから掴んで引き立てた。
 大倉が腹立たしげに後ろを向いた瞬間、赤峰は素早く動き、顔面と鳩尾に正拳を見舞った。大倉が音を立てて、床に
倒れる。
 唖然としていたスタッフたちが、我に返って赤峰に向かってくる。罵声を上げるその様子は、どう見ても、ヤクザそのも
のであった。
「この野郎!」
 わめきながら殴りかかってくる相手に、赤峰は逆に一歩前に出た。相手のパンチに沿うように手を伸ばす。相手の顎
に見事なカウンターが決まった。
 赤峰の強さは映画の中だけのことではない。そもそも空手の有段者だった彼は、アクション映画に出演する度に、新
たな格闘技を身につけていた。一人、二人とスタッフが床に倒れていく。
 しかし、赤峰の動きはそこで止まった。
「そこまでだ。アクション・スター」
 坂村が赤峰の背後に立って、ニヤリと笑う。その手には拳銃が握られていた。
「残念だが、映画のようにはいかないのさ」
 坂村の声と同時に後頭部に衝撃があり、赤峰の視界が暗転した。





 
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