受賣神社の巫女
 
終章


 
 湯島大学の大学院を卒業し、今年から研究室で助手をしている太野(おおの)安利は、自動車で5時間以上をかけ
て、ようやく目的の神社にたどり着いた。彼を出迎えたのは、目を見張るような美女だった。
「お電話いただきました、稗田美沙子です。」
「太野です。ご無理を言って、申し訳ありません。」
「アメノウズメノミコトの研究をしていらっしゃるんですって?」
「ええ、僕の研究テーマなんです。あちこちの神社を回って、調査をしているんですが、この神社には、一般に伝えられ
るものとはかなり違う、異種のアメノウズメノミコト伝説と神事が残っているとお聞きしまして…」
 太野がそこまで言った時、美沙子が表情を改めて、彼の言葉を遮った。
「先生…」
「はい?」
「異種ではございません。当神社に伝わるものこそが正統、本来のもの。」
「あっ…、失礼いたしました。」
 太野は恐縮して何度も頭をさげる。その様子が、いたずらを叱られた少年のようで、美沙子は思わず微笑んだ。

 美沙子の案内で主な社や祠を参拝し、太野は熱心にメモを取り、写真を撮影した。
 一巡りした後、いよいよアメノウズメノミコトの直系を名乗る巫女に会わせてくれると言う。京都の大きな神社にも劣ら
ない立派な本殿に入り、祭壇の前で待っていると、やがて、衣摺れの音とともに、巫女が静々と現れた。
 白衣の上に花模様の千早を羽織り、緋色の袴を穿いて、長い黒髪を後ろで一つに束ねた、典型的な巫女装束だ。彼
女が現れた途端、目に見えぬオーラに照らされたように、社殿の中がパッと明るくなったように感じられた。
 太野はおもわず息を飲み、声を失った。この世のものとは思えないほど美しいと言うのは、おおげさな比喩ではなか
った。とてつもない美女だ。神秘的で清冽、それでいて、どことなく艶めかしい色香を漂わせている。
「第175世、猿女の巫女君であらせられます。」
 美沙子が厳かに告げた。女神の末裔は上品な笑みを浮かべて、軽く会釈をする。惚けたように見取れていた太野
が、慌てて頭をさげる。
「…できれば、巫女の普段の生活もお聞きしたいですね。」
 巫女から神社に伝わる伝承の数々を聞いた後、太野が何げなくそう言うと、巫女は美沙子に何事かを囁き、本殿を
後にした。

 太野は、美沙子に案内されて社務所に行き、客間に通された。タイムスリップしたような他の場所と違って、そこは現
代風の普通の客間だった。しばらくすると、一人の少女が顔を出した。年は十七、八歳だろうか、ピンクのブラウスを着
て、チェックのフレアミニをはいている。とても可愛い娘だった。
「こんにちは、初めまして、僕は…」
 そう自己紹介しようとすると、少女はコロコロと笑い出した。
「あら、太野先生、さっきまでお話していたでしょう。」
 そう言う少女を見て、太野はアッと声をあげた。少女こそ、猿女の巫女その人だったのだ。
 巫女は本名を那美と言った。先代の巫女は彼女を産んだ時に亡くなり、空位になっていた巫女の座を昨年、16歳に
なったこの少女が継いだのだと言う。
 それからしばらく、太野は那美との会話を楽しんだ。巫女の普段の生活を聞きたいと言ったのに、那美は自分のこと
を話すよりも、大学の話を聞きたがった。求められるまま、キャンパスの話をすると、那美は楽しそうに笑う。それは、
普通の女子高生の笑顔と変わらなかった。
 そこに、美沙子が現れた。
「今夜は、月に一度の夜神楽がございます。当神社に伝わる神事のうち、最も重要なものでございますので、先生もお
いでになってはいかがでしょう。」
「それは、ぜひ見学させていただきます。」
 太野が喜んで答えた。その横で、那美が複雑な表情を浮かべていたが、太野はそれに気づかなかった。

 神楽殿の周りに薪が焚かれた。時刻は午前2時。草木も眠る丑三時である。
 神楽を見に集まったのは、太野を含めて5人。神楽殿の前に見所を設えて座っていた。年格好は異なるが、いずれも
男性である。会話を小耳に挟んだところでは、全国各地からやって来た氏子で、それなりに社会的地位のある人たちら
しい。
 しばらくして、神楽が始まった。
 最初に神々が天孫降臨の場を固めて国造りをしたことを表す神楽、次に激しい日本刀の剣舞があり、獅子を伴う山
神が出た後、いよいよ、クライマックスの天岩戸の物語に入ってくる。
 力持ちの手力雄が岩戸を探し当てた後、竜笛が月に向かって厳かな音色を響かせ、白衣に緋色の袴の巫女装束を
来た那美、猿女の巫女が橋渡りに現れた。天の香具山のヒカゲノカズラをたすきに懸け、ツルマサキを頭に飾り、笹の
葉を束ねて手にもって…、というのは古事記の記述にきわめて忠実なアメノウズメノミコトである。巫女は舞台に進み、
優雅に舞を舞った。
(他の神社の『岩戸』と少し違うが、やはり同じ系譜ではあるな。)
 そう分析し、メモを取り、写真に撮りながら見ていた太野だったが、すぐにその手が止まる。
(それにしても、巫女の美しさは絶品だ。)
 太野は記録する手を止めて、巫女の舞をうっとりと眺めていた。巫女姿の那美は、神々しいばかりに美しい。
 ややあって、舞台の手前中央に大きな桶が伏せて置かれる。すると、太鼓の調子が変わった。激しく荒々しいリズム
叩き出す。
 ピーピー、ピーヒャララ
 ドンドコドン、ドンドコドンドン
 ドンドコドン、ドンドコドンドン
(おっ、『舞』の次は『踊り』になるのか?)
 アメノウズメノミコトが激しい踊りを見せ始めた。神憑りのシャーマンの動きにも見えるし、ビートの効いた洗練された
ダンスのようにも見える。巫女が顔を左右に振ると、汗をかいた頬に髪の毛が貼りつき、さらに色っぽさを増していく。
数本の髪の毛が唇の端に貼りつく。
 舞台の上を所狭しと踊ったあと、巫女は桶に乗り、タップでも踏むように足を踏み鳴らして踊り始める。
「おっ!」
「おおっ!」
 食い入るように神楽を見ている男たちが一斉に声をあげた。
 巫女が踊りながら白衣の胸元を大きく開いたのだ。肌襦袢や長襦袢は着ておらず、はだけた白衣から、乳房がプル
ンと飛び出した。その頂点で乳首がツンと尖って、天を向いている。
「こ、これは…」
 太野は息を呑んだ。古事記に書かれているアメノウズメノミコトの踊りをそのまま再現しているのだ。
 巫女は緋色の袴の紐を緩めて、徐々にずらしていく。下腹部が剥き出しになった。恥毛はきれいに剃り上げられ、幼
女のようにつるつるである。
 自慰行為を思わせる妖しくエロチックな動きを見せながら、巫女が袴を脱ぎ、白衣を脱いで、とうとう全裸になった。 
 裸になった巫女は桶の上に腰をおろした。太鼓に合わせて腰を振りながら、少しずつ脚を開いていき、股間に手を当
てた。
 次の瞬間、巫女は指を花肉に添えてV字に開いた。肉びらが左右に割れて、愛液で濡れた内部が顔を出す。瑞々し
い鮭紅色の肉孔がぱっくりと口を開け、クリトリスが大きく膨らんでいる。
「あっ!」
 太野は思わず、声をあげた。巫女は自ら秘肉に指を這わせ、撫でさすり、閉じたり開いたりしながら、太鼓に合わせ
て腰を振った。指の間から濡れた花肉が見て取れる。
 オルガスムスを模した仕草とともに太鼓の響きが止まり、踊りが終わった。巫女は全裸のまま、舞台にすくっと立っ
た。
「これより、お授けをいたします。」
 そう言うと、巫女が神楽殿の階を降り、見所にやってきた。真ん中で神楽を見ていた初老の男の前に立つ。男は心得
た様子で、巫女の手を借りながら着ている物を全て脱いだ。
 呆然と見つめる太野の前で、男は巫女を組み伏せた。二人は抱き合い、肌をまさぐり合い、そして交わった。
 太野は、かつて読んだ民俗学の論文を思い出していた。
 古来、遊女と巫女とはきわめて密接な関係にあり、その境界は曖昧に交じり合っており、判然としていない。中近世に
は副業として売春をする巫女が多かったし、神事に関わる遊女も少なくなかった。成人の儀礼の一部として、巫女に乗
り移った女神に童貞を捧げる風習を持っていた地域もある。そうした時代や地域において、巫女とは性的な存在でもあ
ったのだ。
 冷静な論考をしながらも、目の前の巫女が那美だと思うと、心が騒ぎ、胸が疼く。巫女は、次々に男たちと性交してい
く。
 最後に、巫女は太野に近づいてきた。
「先生…、胸に触ってください…」
 巫女は太野の顔を見上げて、甘えるようにトロンとした声でそう言った。17歳とは思えない色っぽい瞳に、太野の理
性のたがが緩む。太野は、夢中で乳房を揉んだ。巫女の胸の膨らみが太野の手で淫らに形を変えていく。
 太野は巫女の秘部に指を伸ばす。ヌルッとした感触が、男たちの放出した精液だと言うことに思い当たると、強烈な
嫉妬心が湧き起こる。強引に指を入れると、熱く、柔らかな花弁が誘うように絡みついた。
「あ…、そこ、いい…」
 蜜壷の中を指でかき回すように動かすと、巫女の赤い唇から甘い声が漏れ出した。太野は秘部を貪る指の動きを速
める。
「さあ、して…、ください…」
 可憐な声は、紛れもなく那美の声だ。太野は着ているものを脱ぎ、那美を抱きしめると、濡れた女陰に勃起した陰茎
を押し当てた。肉棒がゆっくり彼女の中に侵入する。
「あぁぁ…、いい…、もっと奥…」
 巫女が腰を突き上げた。太野の男根がぐぐっと奥まで入っていく。太野の腰が激しく上下する。
「あぁ…、あぁ…、あぁん…」
 巫女は両腕を太野の首に回し、太野の動きに合わせて腰を動かした。
「はぁ…あぁッ!あぁぁッ!!」
 男の動きが本格的になるにつれ、巫女も本格的に乱れ始めた。快感のすべてを受け止めようと全身を淫らにくねら
せる。
「ううっ!」
 太野の我慢が限界に達し、肉棒がビクンビクンと精液を噴射した。巫女も絶頂を迎えたらしく、太野にしがみついて身
体を震わせた。
 ふと見ると、夜明けの光が山頂を朱色に染めていく。もうすぐ夜が明け、女神の性交を経て、日の神が再生するの
だ。この神社が太古から守り、伝えて来たことを、太野は身をもって理解した。
 
 出発の時間がきた。最後に一目、那美に会いたかったが、神楽の後、彼女が太野の前に現れることは、ついになか
った。
 美沙子とともに神社の境内をゆっくり歩く。今日は写真もメモも取らなかった。学位論文に、この神社での経験を書く
ことはないかもしれない。それでも、きっと生涯忘れることはないだろう。
 車に乗り込む間際、太野は、昨夜からずっと気になっていたことを、勇気を奮い起こして尋ねた。
「昨夜の神楽で、僕は彼女を抱きました。そして…、その…、もし彼女が妊娠したら…」
「子供ができることはあります。」
 美沙子は当然のことのように言った。
「男の子が生まれれば、この村の子として育てます。全員が私と同じ稗田の姓を名乗り、長じて囃子方や神楽の舞い手
になったり、神社の運営に携わって、巫女に仕えることになります。私の父もそんな男の一人でした。」
 美沙子の父が亡くなっていることは、電話で見学を申し入れた時に聞いていた。それ以来、世俗的な意味での神社経
営は、彼女が責任を負っている。
「もし、女の子が生まれれば…」
 美沙子は話を続けた。
「稗田の一族の者を里親として選び、村を離れて育てさせます。そして、その子が16歳になった時、巫女にふさわしい
ご器量をお持ちかどうかを拝見いたします。」
 そう言いながら美沙子は、昨年、那美を迎えに行った時のことを思い出した。
「ご器量が及ばないのであれば、その子は、この村のことも神社のことも知らずに暮らすことになります。しかし、もしご
器量がおありなら、その御子が次の巫女になられます。」
 美沙子はそう説明して、ニッコリと笑った。
「ひょっとしたら、昨夜の先生のお種から、次の猿女の巫女がお生まれになるかもしれませんね。」



 
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