逃亡
 
第2章−5
 
 排出される石鹸水に褐色の濁りがなくなるまで、それは繰り返された。
「おい、そこの君!」
 突然、カメラマンの手伝いをしていた若いADが緋村に声をかけられ、表情を強張らせる。
「この脱脂綿で、早瀬警部補の尻をきれいにしてやってくれ。」
「あっ…、は…、はい…」
 緊張しきった声で返事をすると、ADは脱脂綿を受け取り、汚れた瑞紀の尻を拭き始めた。
 瑞紀は、ボンネットにぐったりと上半身を乗せ、むせび泣いている。排泄行為という最も見られたくない姿を見られ、あ
まつさえテレビを通じて実況中継されてしまった今、警察官としての矜持も、キャリアとしてのプライドも吹っ飛んでしまっ
た。見ず知らずの男に排便の後始末をされるという恥辱に震えながら、ただ、子供のように泣きじゃくるしかなかった。
 肛門から蟻の戸渡りのあたりへと、ADはなめるように丁寧に拭いていく。指先がプックリした性器の膨らみに当たり、
マシュマロのように柔らかな感触が伝わってくる。そこから可憐なピンクの花びらがはみ出しているのが、目の前に見え
る。ADは股間が熱く勃起してくるのを感じた。
 その様子を愉しげに眺めながら、緋村はカバンからラテックス製の薄い手袋を取り出してはめると、ADをどかせた。
そして、ぽつりと閉じた瑞紀のアヌスをツンツンつつきながら言った。
「今度は、こっちの穴を調べるぞ。」
 緋村はニヤニヤ笑って、人差し指にたっぷりとワセリンを塗ると、急激な排便のせいで赤く腫れた肉穴にグリグリと押
しつけていく。
「いやぁっ、痛い、痛いっ!」
 焼けるような痛みを感じて、瑞紀が悲鳴をあげ、ボンネットに乗せた上半身を反らす。
「そうら、力を抜け。」
 緋村はグイグイと力を入れていった。
「あうう、む、無理よ、入らないわ…」
 瑞紀がいやいやをしてしきりにもがく。
 強烈な収縮で侵入を拒む菊花は、なかなか指を受け入れようとしない。緋村は指を回転させながら、ゆっくりと侵入を
試みた。すると、固くつぼんでいたアヌスも、やがてわずかに口を開き、ブスリと指が潜り込んだ。
 第一関節くらいまで侵入させると、瑞紀は激痛に耐えかねて、悲鳴をあげた。
「あぁっ、痛いっ! ぬ、抜いてぇっ!」
「ダメだ。ちょっと我慢するんだ。」
 緋村は力任せに人差し指を根元まで挿入していった。
「くうっ!」
 瑞紀はアヌスをふさがれたせいで、息もできなくなった。
 緋村は指を前後左右に動かしてぐりぐり回転させた。瑞紀はヒップを激しく振って、指の蹂躙から逃れようとしている。
肩にかかる髪が激しく波打っていた。
「ふーむ。やっぱり指だけでは奥の方まで調べるのは無理だな。」
 芝居がかった様子で言うと、緋村はズボンのチャックを開けて、再び大きく勃起した陰茎を出した。血管が浮き出たそ
れを瑞紀の菊の中心にあてると、思いきり腰を送る。
「はうっ!」
 瑞紀の身体が一気に跳ね上がった。
 ふいを突かれた瑞紀は、括約筋を締めるひまもなかった。ビクリ、と肛門をしめたときにはもう太い肉棒が、丸くぽっ
かり開いた肛門に突き刺さっていた。
「あ…、あ…」
 排泄するための器官に挿入される痛みは、処女喪失以上の激痛だった。瑞紀は口をぱくぱくさせて苦悶する。
 緋村はかまわず、ズブズブと強引に押し込んでいった。アヌスがギシギシと悲鳴をあげているようだ。
「いたっ、痛いぃ…」
 瑞紀が悲鳴をあげる。肉棒が硬い肉筒のなかを無理やり突き進み、肛門を裂かれる痛みが襲っていく。
「おうっ、しまるぞ」
 丸く締め付けてくるアヌスの感触は最高だった。直腸は膣ほどのヌラつきはなく、むしろ滑らないようなベタつきがある
が、この感触もまた格別だった。
 緋村は、ピストン運動を始めた。
「く…、あうう…、お願い…、やめ、やめて…、ああっ…!」
 瑞紀は声さえ出すのも苦痛でたまらないというふうに、切れぎれに言った。緋村の腰の動きにあわせて、アヌスの粘
膜が内側にめくれこんだり、突き出たりしている。
 しかし、緋村はかまわず腰を律動させている。愛液と精液がまといついた陰茎は、多少の滑らかさを持って瑞紀の直
腸を行きつ戻りつしている。
 緋村は腰を動かしながら、瑞紀の柔らかな胸乳をグニグニと揉み、さらにもう片方の手を股間に這わせていく。
「あぁっ!あぁっ!」
 瑞紀は顔を歪め、喘ぎ声というよりは、悲鳴に近い声をあげている。しかし、徐々に痛み以外の感覚が身体の奥から
広がってきた。いつしか、陰裂から蜜が溢れ出て、緋村の指を濡らしている。
「おや、お露がでているんじゃないか?」
「いや…、言わないで…」
 瑞紀は消え入りそうな声で言った。淫らな刺激に反応してしまう自分の身体が恨めしかった。
 緋村は指で花弁を押しひろげては、トロトロ湧き出る粘液を指先ですくい、ルビーのように膨らんだ陰核をこねくりま
わす。
「うう…ん…」
 たまらず瑞紀の白い喉で呻きが上下する。
 瑞紀の反応の変化に合わせて、アヌスはキュッキュッと切なげな収縮を繰り返し、直腸の襞が膣以上に複雑な締め
つけで緋村の陰茎を刺激していく。
「ううっ、いいぞ、瑞紀!」
「あぁん…、ああぁ…」
 秘裂に挿入された指が粘膜越しにアヌスを貫く肉棒を探っていく。激しい性感に翻弄され、瑞紀の頭の中が真っ白に
なっていく。
「美人警部補が、テロリストの愛撫に、とうとうよがり声を上げ始めました。」
 新山が、その様子を事細かに実況中継していた。
「憎むべき相手に淫らな責めを受けながらも、感じてしまう女体の哀しさでありますっ!」
(いやっ!ここでイクなんて、いやよっ!)
 残酷な新山の声を耳にしながら、瑞紀はイクまいと必死になって最後の抵抗を試みていた。テレビカメラに囲まれ、ア
ヌスを犯されてイクところを実況中継されるなど、死んでしまいたい程の屈辱だ。
 しかし、背中に電気が走るような感覚は、徐々に間合いを詰めて襲ってくる。
「うぐっ…、もうだめぇ!」
「でるぞっ!」
 そう言うと緋村は、激しく全身を震わせ、瑞紀の直腸で爆発した。
 その瞬間、オルガスムスの波が瑞紀を襲った。
「あ…、あっ、あっ、あぁー…」
 身体がビクンピクン震え、自然に声が出てしまう。
 緋村は内臓の奥へ届けとばかりにドクンドクンと脈打たせ、思いきり放出する。瑞紀のアヌスはピクピクと痙攣しなが
ら、それを受け止めていた。
 やがて緋村は肉棒をゆっくりと引き抜きにかかる。直腸ごと押し出されるようにピンクの肉がめくれてついてきた。
「あ…、あうう…」
 瑞紀は全身の肌を緊張させて顔をしかめた。少しでも動き、呼吸すれば、激痛がアヌスから脳天まで突きあがってく
るようだ。
 それでも放出したザーメンのヌラつきに助けられて、陰茎はヌルヌルと引き抜かれてきた。やがてアヌスが大きく広が
り、スポンと抜けるとキュッともとに戻りつぼまった。そこから白い精液が垂れていく様子がモニターに映し出されてい
る。

「さあ、中継はこれでおしまい。撮影隊の諸君とは、ここでお別れだ。」
 瑞紀を縛っているロープを手際よくほどきながら、緋村が言った。
「せっかくの大スクープなんだ。もう少し撮影させてもらえないか?」
 カメラマンの一人が声をあげた。それを聞いて、緋村はゲラゲラ笑い出し、彼に向かって言った。
「これから、私と早瀬警部補は二人っきりでドライブを楽しむんだからね。野暮なことは言わないものだ。まあ、野暮と言
えば、君が隠している桜の紋以上に野暮なものはないかもしれないがね。」
 カメラマンに扮した警察官の身元はすっかり割れていたのだ。緋村はぐったりした瑞紀の身体を抱きかかえるように
しながら、言葉を続けた。
「こちらは先刻ご承知だよ。例えば、あのJBCの運転手もだろ。」
 さらに報道陣の数人を指さした。
「そして、彼と彼だ。さすがにJBCは多いな。他の局に配置しているのも大体わかっているさ。」
「何を言ってるんだ?私にはさっぱり…」
 緋村が、しらを切ろうとする警察官の言葉を遮る。
「そういうこともあって、ここでお別れというわけだ。」
 なお、話しかけて時間を稼ごうとする警察官を、緋村は厳しい顔で睨みつけて黙らせた。
「さあ、瑞紀、運転してもらおう。」
 そう言うと緋村は、一糸まとわぬ姿の瑞紀を運転席に押し込み、自分も助手席に乗り込んだ。ドアを閉め、助手席の
ウインドウを開けると、カメラマンに扮した警察官に声をかける。
「二人きりのドライブを楽しませてもらう。追跡する車両があれば、人質はどうなってもしらないぞ。それに、原発もだ。」
 警察官達が歯ぎしりするのを後目に、緋村と瑞紀を乗せた白いセダンは、悠々と高坂サービスエリアを後にした。

   *

 会議は重苦しい沈黙に包まれていた。
「緋村の逮捕はもちろんだが、まずは早瀬警部補の安全確保に努めてもらいたい。」
 沈痛な声でそう言ったのは瑞紀の直属の上司、加納警備部長だった。
「速やかに、とれる限りの手だては取り、最大限の努力をいたす所存でございます。」
 PFFT対策本部長の細井警視が、顔中を汗にしながら言う。しかし、「最大限の努力」はどちらかと言えば自らの保身
に向けられているようだし、それ以上に具体策があるようには見えなかった。
「とにかく、全力を尽くしてくれたまえ。」
 臨席していた警視総監がそう言い、暗澹たる表情で退席しようとした時、記録係として会議室の端に座っていた若い
捜査官が立ち上がった。
「総監にお願いいたします!」
 思い詰めた表情で、うわずった声をあげたのは警備部の西岡だった。
「野上さんを、野上巡査部長を現場に戻してください。」
「君は?」
 警視総監が怪訝な顔をするのにも構わず、西岡は一気に言葉を次いだ。
「緋村を見つけることができるのは、野上巡査部長以外にはありませんっ!」
 根拠などなかった。ただ、それが西岡の確信だった。


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