逃亡
 
第3章−1

 幸いだったのは、警視総監がガチガチの「お役人」でなかったことだ。
 野上はすぐに東京に呼び戻され、緋村たちを追跡するチームに組み込まれた。しかも、相棒はPFFT対策本部に配
置換えになった西岡である。
 それでも、既に緋村が逃亡を始めた日から三日が経っていた。
「PFFT指導者の緋村一輝と連れ去られた早瀬瑞紀警部補の行方は、今日になってもわかっておりません。」
 カーラジオがニュースを報じている。
 取材陣に紛れての追跡は高坂サービスエリアで断念せざるをえなかったものの、瑞紀が全裸のまま連れ回されてい
ることもあって、逃亡の日と翌日ぐらいまでは、かなりはっきりした目撃情報が捜査本部に次々に飛び込んできていた。
ところが、警察がその場に急行する度に、タッチの差で緋村たちの車は消えてしまっている。それはまるで、警察の動
きが逐一知られ、翻弄されているかのようだった。しかも、昨日になってからは全く情報が入らなくなってしまったのだ。
「まあ、俺が悪い頭を抱え込んでても時間のムダだな。よし、とにかく足でかせぐか。」
 そう決断を下すと、野上は西岡を連れて、緋村の車が逃亡したとおりの経路を、目撃情報をたどりながら走ることにし
たのである。
「森橋法務大臣は、今日の記者会見で、今回の事件を契機に政治団体に対する規制を強化する必要があるとの認識
を示しました。」
 続いて、ラジオからは法務大臣のインタビューが流れていた。
「俺、親父が新潟なんですけど。この法務大臣って、新潟弁丸出しなんですよね。」
 ハンドルを握る西岡が言うのに対して、野上は「ああ…」と生返事で答えた。どうやら西岡は手足に徹するつもりで、
考えることは野上に任せきっているようだ。
 緋村たちの車は湯沢インターチェンジで関越自動車道を下りたことがわかっている。冬になるとスキー客で賑わうあ
たりだ。
 しばらく行くと、ガソリンスタンドが見えた。ウインカーを出すと、赤いつなぎの制服を着た若者が手を振って、野上たち
の車を誘導してくれた。
 緋村たちの車はこのスタンドで給油しているのだ。

 秋の夕日が沈んで、あたりが薄暗くなって来た頃、ガソリンスタンドのアルバイト林真一郎は一人、ホースで洗車の泡
を洗い流していた。スキーシーズンにはまだ少し間があり、スタンドに入ってくる車はそう多くなかった。
 林が道路に目をやった時、一台の白いセダンが入ってきた。
「オーライ、オーライ!」
 給油機の前までセダンを誘導して、運転席を見た林は言葉を失った。
 運転席には、アイドル女優のような若い女性が乗っていた。もし普通に乗っていても目を奪われるような美人だった
が、なんと全裸で乗っていたのだ。林が言葉を失うのも無理はない。
 ハンドルを持つ手につながる白くなだらかな肩のライン、形のいい胸の膨らみとピンク色の可憐な乳首、太腿の間に
淡い繊毛が三角形の薄い翳りをつくっていた。
 どう声をかけていいのかわからず、ボーッと見とれていると、横からにゅっと大きな手が伸びてきて、いきなり女の美し
い乳房を揉みしだく。
「満タン入れてくれ。」
 助手席の男に言われて、ハッと林の呪縛が解けた。その時になって初めて、男の存在に気が付いた。頭の良さそう
な、それでいて、どことなく冷酷で物騒な雰囲気を感じさせる男だ。
 ガソリンタンクを開けて、給油する。車内をチラチラ見ると、男がなおも女の乳房を弄んでいるのが目に入った。柔ら
かな隆起を掴み、しこった乳首をコリコリ指先で転がしている。
 満タンになるまでの間を使って、林はサービスでフロントガラスを拭き始めた。
 ふいに助手席の男がフロントガラスをトントンと叩いて、ニヤリと林に笑いかけ、続いて全裸の美女の耳元で何か囁
いた。
 女は目を閉じ、下唇を噛んで耐え忍ぶような表情を浮かべたかと思うと、両膝を少しずつ広げていく。
 林の目は女の股間に釘付けになった。フロントグラスを拭く手も完全に止まってしまっている。絨毛の茂みの下にプッ
クリした柔肉と、そこからはみ出したピンクの肉花までが顔を出していた。
 女の頬は羞恥の火照りで火のように真っ赤になっている。
 女が両脚をそれ以上開けないぐらいに開き、陰裂がすっかり露わになると、男が手に持っていたバッグから何かを取
り出し、フロントガラス越しに林に見せた。それは男根を型どった黒いバイブレータだった。実際のペニスより一まわり
か、二まわり程太く、胴の部分にはイボのような小さな突起がびっしりと植えられ、クリトリスとアヌスを責めるための突
起までついている。
 男は指で女の花弁の合わせ目を押し広げた。サーモンピンクの濡れた肉孔が露わになると、柔襞をかきわけてバイ
ブを浅く突っ込み、ゆるやかに回転させていく。
「ううう…、くうっ…」
 女の押し殺したような呻き声が聞こえてくる。
 林はどうしていいのかわからないまま、助手席に声をかけた。
「あ、あの…」
 窓に近づくと、バイブが発するブーンというモーター音と、女の身悶えする声が生々しく聞こえた。林は言うべき言葉が
見いだせないまま、決められた台詞に逃げ込んだ。
「吸い殻、いいですか?」
「ああ、お願いするよ。ただし、もうちょっと見てからでいいぞ。これからが面白いところだからな。」
 そう言いながら、男はバイブの亀頭をぐいっと力強くねじ込んだ。いやらしいバイブがクネクネと性感帯を責めている
らしい。女は苦悶の表情を浮かべ、必死で堪えようとしているものの、堪え切れずに小さな喘ぎ声をもらしている。
 その時になって林は、二人が誰であるかに思い当たった。数時間前からたいへんな話題になっている釈放されたテロ
リストと婦人警官に違いない。午後からずっとバイトに追われていた彼はテレビを見ていなかったが、来るお客、来るお
客、話をすることといったら、そればかりである。しかし、彼がラジオのスイッチを入れた時は、すでに中継は終わってお
り、評論家と称する連中が、いろいろと事件経過の分析をしており、つまらなかったのですぐに音楽番組に切り替えた
のだった。
(そう言えば、婦人警官はミスコンにも優勝したことのある美人だって言っていたな。)
 そして今、目の前でバイブに翻弄されている全裸の女は、彼の想像を上回る美女だった。しかも、漠然と予想してい
たのと違って、「整った」というよりも「可愛い」顔立ちで、林の好みとバッチリ合っている。
 ラジオで聞いた名前も思い出した。テロリストの名前は緋村一輝、そして、彼女は早瀬瑞紀だ!
「くふぅ…、んんっ、」
 感じている姿を見せたくないのだろう、瑞紀は声が洩れるのを必死で抑えようとしているが、もはや我慢も限界に来て
いるようだ。噛みしめた唇がほつれ、くぐもった喘ぎがもれてしまう。
「どうだ。気持ちいいだろう。」
 緋村が冷やかすように大声で言い、濡れそぼった秘花の中でバイブを激しく動かした。亀頭をくわえこんだ肉孔から、
小さな突起がびっしり生えた胴の部分が出たり入ったりしている。
「ああん…、あぁ…、あぁ…」
 瑞紀はとうとうよがり声をあげ始めた。目の縁を紅く染め、バイブのうねりに合わせてヒップを振りながら喘いでいる。
 その艶めかしさに、林は作業用のつなぎの中で既に勃起しているモノが、痛いほど硬くなるのを感じた。
「も…、もうやめて…」
 瑞紀は息も絶え絶えになって哀願するが、緋村の悪戯はエスカレートする一方だった。バイブを持っていない方の指
で包皮をめくると、敏感な芽を人差し指でクリクリと転がしていく。
「あぁっ…、あぁっ…、あぁぁ…」
 喘ぎ声とともに、みるみるうちに肉芽がルビーのように充血してくる。緋村はクリトリス用の突起をそこに触れさせた。
バイブがジジジ…と音を発して、女のもっとも敏感な部分を刺激してくる。
「ああっ…、そこ、だめっ!」
 あまりに激しい刺激に、瑞紀は思わず悲鳴をあげた。
 緋村がニヤリと笑って林を見た。その一瞬で、林は正気に返った。
(そうだ、警察に通報しなきゃ!)
 今、スタンドにいるのは林だけだ。通報するためには、とりあえず事務室に入ることだ。
「あっ、吸い殻、捨ててきます。」
 しかしその時、ガチャッと音を立てて、運転席のドアが開いた。
「待った。吸い殻はもういい。警察に通報されても面倒なのでね。」
「あっ…」
 考えを読まれたような格好になった林は言葉を無くした。
「それより、君もやってみたまえ。」
 緋村が林の手を掴んで、瑞紀の股間に導く。黒いバイブが嵌められている陰裂が丸見えになっている。
「アウッ…、あ、あああ…」
 瑞紀は頬を真っ赤に染めて目を閉じ、愛らしい唇から切なそうな声をあげている。シートの合成レザーには陰部から
溢れる蜜が水たまりを作っているのが見えた。
 それが、男の本能に火を点けた。林は思わず瑞紀の性器に埋まっているバイブを握りしめた。少し動かしてみると、
クチュッという音がして、ヌルッとした手応えがあった。
 触ってみたいという欲望のままに、林はバイブが嵌まった膣口に指先を這わせた。バイブが瑞紀の胎内で激しく振動
しているのがわかる。そのまま、めくれた肉襞をなぞり、合わせ目でプックリ赤く膨らんでいる肉芽をくすぐった。
「あんっ!」
 太腿の内側がブルブルと震え、タラタラと蜜が垂れてシートを汚す。
「見てみたまえ、この女、イキそうになってるんだよ。」
 そう言う緋村の声が、自分の中から聞こえてきたような気がした。もはや自分も共犯なんだ、ふとそんな思いが心の
片隅に浮かぶ。
 緋村は揺れ動く瑞紀の乳房を掴んで揉んでいた。時折、固く勃起している乳首を摘んでクニュクニュといじっては、刺
激を与えている。
 林は緋村と息を合わせるように、夢中でバイブを抽送して膣肉を犯していった。ねじ込まれるたびに、瑞紀のすすり泣
くような声のピッチが上がっていく。
「あうッ、あン、ううゥゥ…」
「そら、そら、イッていいぞ!」
 そう叫んだのは、緋村だったのか、自分だったのか、もはや林にはわからなかった。
「あん、あん!」
 激しいピストン運動に、瑞紀は体を弓のように反らせながら、せっぱ詰まった悶え声をあげていく。
「うくっ…、あひぃ!」
 開いた下肢が小刻みに波打ち、ついに瑞紀はアクメを迎えた。
 ガソリンはとっくに満タンになっている。放心状態にある林の目の前で、車のドアが音を立てて閉まった。
「よし、じゃあ瑞紀、出発しよう。」
 緋村の声とともにセダンが動き出した。バイブは瑞紀の陰裂に挿入されたままだった。


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