逃亡
 
第3章−2
 
「捜査にご協力いただきまして、本当にありがとうございます。」
 西岡がニッコリと笑って言う。
「いえいえ、市民の務めですから。喜んで協力いたしますよ。」
 相手もニッコリ微笑んだ。
 野上が入って来て、警察手帳を突きつけた時に店内を漂った剣呑な雰囲気が嘘のようだ。西岡が持つ雰囲気は周り
を和ませるものがあり、礼儀作法もホテルマンに負けない。容疑者の取り調べにどれだけ役に立つかわからないが、
少なくとも善良な市民相手には抜群の効果を発揮する。
「もちろんすぐに警察に通報しましたよ。実は、最近は物騒なので、店には隠し電話があるんですよ。ですから、テロリ
ストの車がいるうちにこっそり通報したんですがね。」
 店長はペラペラと当時の様子を話している。
(これが、西岡が本庁配属になっている秘密だな。)
 出されたコーヒーをすすりながら、野上は一人納得していた。
 ここは新潟市郊外にあるハンバーガーショップ。西岡が事情聴取をしている三十歳前後の男が店長である。緋村は
ここのドライブスルーで買い物をしていた。
 店長に呼ばれて、緋村の応対をしたというアルバイトの女子店員がやって来た。目が大きい、ショートカットのなかな
か可愛い娘である。さっそく西岡が尋ねた。
「運転していたのは、全裸の女性だったんですね?」
「いいえ。男の人でした。」

 芦川美咲は、毎日午前七時の開店から午前十一時までの四時間、このハンバーガーショップでアルバイトをしてい
る。彼女が通うデザイン専門学校の授業はたいてい午後からなので、その時間帯にアルバイトをするとちょうど良いの
だ。
「スペシャルハンバーガーのセットを2つ。」
 ドライブスルーに設置されたマイクから、店内のスピーカーに注文の声が入った。時間は午前七時十五分、今日、二
組目か三組目の客である。
「恐れ入ります。スペシャルハンバーガーのセットは、ただいま十分ほどお待ちいただくことになります。」
「ああ、いいよ。十分ぐらいなら。」
「かしこまりました。黄色い線に沿ってお進みください。」
 そう返事をして、美咲はカウンターから顔を出して車に声をかけた。
「お先にお会計の方、よろしいでしょうか?」
 止まっていたのは白いセダン。そして、男の顔を見た途端、美咲は息を呑んだ。普段はニュースなどほとんど見ない
美咲だったが、昨夜は報道特別番組を深夜まで見ていた。おかげで寝不足だったのだが、眠気もいっぺんで吹き飛ん
でしまった。番組で何度も何度も映し出されていた顔が、今、目の前にあるのだ。車を運転しているのは逃亡中のテロ
リスト、緋村一輝ではないか。
 美咲の表情の変化に気づいた緋村は、ニヤリと笑ってこう言った。
「お嬢さん、彼氏はいるのかね。」
「…は、はい…」
 相手が相手だけに、答える美咲の声は震えていた。二か月前から付き合い始めた彼は、同じ専門学校のデザイナー
の卵だ。
「じゃあ、彼氏にこんなことをしてあげたことはあるかね。」
 緋村は運転席のドアを開けた。
「あっ…」
 美咲の口から思わず鋭い叫びがもれた。男の股間から剥き出しの肉棒がそそり立っていたのだ。毒々しい青紫色を
した太竿が隆々と反り返っている。
 そして、美しい女性が座席の下にうずくまるようにして、ほっそりした指を男根に絡みつかせ、しごいていた。全裸の美
女。人質になっている早瀬瑞紀警部補だ。テレビで見るより、ずっと可愛い人だと美咲は思った。
 その美女が車の中でペニスを愛撫させられている。昨日美咲が見た番組では大幅にカットされてはいたが、関越自
動車道のサービスエリアで、彼女が徹底した陵辱を受けている様子が映っていた。
「瑞紀、アルバイトのお嬢さんが今後の参考に見ているんだから、ちゃんとしごけよ。」
 言葉を失い、目を見張る美咲の反応を楽しむように、緋村は瑞紀に命令した。
 ちらっと美咲の顔を見て、哀しげな表情を浮かべると、瑞紀はためらいながらも、また、太棹を前後に擦り続ける。ぎ
ごちない指の動きが徐々に速まっていった。
「そうすると、フェラチオもまだかな。」
 逆らってはいけないと思い、美咲がうなづく。美咲は処女ではなかったが、セックスの経験も数えるほどしかなく、まし
てやフェラの経験はなかった。男性器を口で舐めるなどたまらなく不潔な気がする。しかも、女が男の股間にひざまづ
いてペニスを愛撫するその姿は、美咲には屈辱的なもののように思えた。
「では、この女がやって見せるから、よく見ていなさい。」
 冷酷な命令に、瑞紀は泣き出しそうな顔で緋村を見上げた。この事件が起きるまでヴァージンだった瑞紀にとって、フ
ェラチオに対する嫌悪感は美咲以上である。ましてや、他人が見つめる前で、自分から男の陰茎を舐めたり、しゃぶっ
たりするなど、とてもではないが平気でできることではなかった。
「早く舐めるんだ!」
 緋村に怒鳴られ、鋭い眼光で射すくめられると、瑞紀は観念したかのように、そそり立つ肉棒に桜色の可憐な唇をゆ
っくりと近づけていく。男の性臭がムッと鼻をついた。
「まず、亀頭の部分を丁寧に舐めるんだ。」
 赤黒いキノコの様に傘を開いて大きく膨らみ、粘膜がテラテラと光っている。先端の鈴口からは既に体液が滲み出し
ていた。
 瑞紀はためらいつつも、小粒の真珠のような歯の間から、艶やかなピンクの舌を差し出し、黒光りする亀頭を恐る恐
るひと舐めした。肉茎が指の中でピクン、ピクンと跳ねる。豊潤な唾液を唇に乗せて亀頭部にたっぷりとまぶし、エラの
張った雁首の隅々まで舐めさせられた。肉棒がさらに充血して、大きく膨らんでいく。
「竿の部分もな。」
 緋村の命令に応えて、唾液でキラキラ光る舌先で胴の部分を舐め始めた。太ミミズがのた打っているような血管を膨
張させ、下腹を打たんばかりにそそり立つ太棹の裏筋へとねっとりと舌を走らせ、根本から全体をペロリ、ペロリと舐め
さすっていく。
「なかなか上手くなってきたじゃないか。」
 緋村は気持ちよさそうに目を細めた。瑞紀はポウッと頬を上気させ、瞳を閉ざしている。
「どうかね、お嬢さん。おいしそうに舐めてるだろう?」
 美咲は息を殺して、肉棒を舐める瑞紀の様子を見つめていた。ひとりでに顔が火照ってくる。緋村に声をかけられて
も、「えっ…、あっ…」と意味にならない言葉しか出てこない。
 もともと緋村の言葉は、美咲が見ていることを瑞紀に意識させるためのものだったのかもしれない。屈辱的な奉仕を
している姿を見られている惨めさが胸に迫ってきて、瑞紀の閉じた睫毛の間から光る滴が一筋こぼれ出る。
「そろそろ口にくわえて、おしゃぶりしろ。」
 しかし、緋村の命令は容赦ない。心の葛藤を振り切るように、瑞紀は口を開き、唾液にまみれた肉茎に唇をかぶせて
いく。
「いいか。奥まで呑み込んで、唇でしごけ…」
 瑞紀は肉棒を口腔に深々と呑み込み、唇を絡めてゆっくりとしごきあげていった。緋村が深い唸り声をあげる。
「そうだ。口がオ××コになったつもりで、しごくんだぞ。」
 緋村の言葉を機に、瑞紀はいっそう激しく顔を振りはじめた。
 男の股間に顔を埋め、一心不乱に肉棒を頬張っていた瑞紀だが、やがて顎が痺れてきた。それを見計らって緋村が
言う。
「よし、手を放せ。」
 緋村は、瑞紀の指を退かせておいて、両手で美しい黒髪を乱暴に鷲掴みにする。可憐な唇を筋立った怒張がズブズ
ブと犯していく。
「うぐっ…」
 肉棒が咽の奥まで入って吐き気を感じ、瑞紀はくぐもった声をあげた。眉根を寄せた切なげな顔が、緋村の嗜虐欲を
一層かき立てる。
 緋村は腰を前後に打ち振りはじめた。すっかり充血し、青紫から赤紫に変色した怒張が、グイグイと口腔を犯してい
く。
「ほらほら、自分でもちゃんとしゃぶれ!」
 緋村は腰のピストンを早めていく。そして、もっとしごけとばかり瑞紀の顔を揺さぶった。
 自分が強制的にフェラチオをさせられているような気がして、美咲は口を半開きにしたまま、可愛らしい顔を歪めてい
た。しかし、どうしても目の前で繰り広げられている光景にから目を逸らすことができない。
「出すぞ!」
 緋村が腰を激しく打ち振った。桜色の唇から唾液でベトベトになった一物が出たり入ったりする眺めが、いっそう男の
官能を刺激する。
「うむ、うむむっ…」
 口の中に精液を流し込まれそうな気配に、瑞紀は不安げに瞳を開き、頭を振った。
「おおっ!」
 緋村が咆哮した。同時に口のなかの肉塊が爆発した。
「う、うー!」
 喉に打ち込まれるドロリとした液体から逃れようと、瑞紀は首を振る。しかし、緋村は瑞紀の頭をしっかりとおさえたま
ま、小便をする時のようにブルッと身震いして、彼女の口の中に最後の一滴まで精液を噴射した。ドロリとした液体が
瑞紀の口の中に溜まっていく。
 放出を終えた緋村が肉棒を抜いた。瑞紀の口から白い糸を引いたように精液が垂れている。
「ゴックンするんだ。一滴でもこぼしたら、やり直しだからな。」
 緋村が恫喝すると、瑞紀は気持ち悪さを堪えて、口の中一杯に貯まった精液を飲み込んでいった。一部が気管に入
ったのか、全て飲んだ後、ゴホゴホと苦しそうにむせている。
「ハンバーガーはまだかね。」
 いきなり美咲の方を振り向いて、何事もなかったかのような顔で緋村が言う。
「あっ、ただいま…」
 美咲が我に返って紙袋を渡そうとするが、届かない。しかたなく、カウンターを出て、紙袋を渡した途端、緋村は美咲
の手首を掴んだ。手首に火を押しつけられたような感じがして、美咲がビクンと全身を大きく震わせる。
「さて、次はお嬢さんにも参加してもらおうかな。」
 自分を見る緋村の目が異様な光を放ち、美咲は蛇に睨まれたカエルのように声も出なかった。身体がガクガク震え
るのがわかる。
「…や、やめて…」
 その声は、緋村の背後から聞こえた。
「ん?」
 緋村は意外そうな顔で助手席を振り返ると、瑞紀が思い詰めた眼差しで緋村の目を直視している。口の端に精液が
こぼれた痕があるのが痛々しかった。
「やめてください、一般市民を巻き込むのは…。」
「おやおや、まだそんなことが言えるのか。」
 さすがの緋村も一瞬あっけに取られたような顔をした。しかし、すぐに嘲るような表情を浮かべる。
「だが、せっかくの楽しみなんだ。ご立派な警部補殿のお言葉に従うわけにはいかないな。」
 そう言いながら、緋村が美咲を車に引きずり込もうとしたまさにその時、車の中の無線機が鳴った。
 緋村は、腹立たしそうな表情で無線機を取り上げ、相づちを打っている。
 そして、心底残念そうな表情を浮かべて、緋村は美咲の手首を放した。
「残念だが、時間切れのようだ。この埋め合わせは警部補殿にしてもらうことにしよう。」
 瑞紀は緋村に頭を押さえられて、再び口に肉棒を入れられた。
 次の瞬間、バタンとドアが閉まり、車が発進した。

「そして、すぐにパトカーが来たんだな?!」
 それまで黙ってコーヒーを飲みながら聞いていた野上が、いきなり大声で尋ねた。
「…は、はい…。」
 美咲はどぎまぎしながら答えた。叱られた時のように、今にも泣き出しそう顔をしている。慌てて西岡がフォローする。
「あっ、別に君を怒鳴ったわけじゃないよ。本当に参考になる話を聞かせてくれてありがとう…。」
 西岡が必死で美咲をなだめている横で、野上は眉間に皺を寄せて考え込んでいた。これまで一つの可能性として考
えに置いていたものが、急に現実味を持ってきた。
(おそらく内通者がいる。しかし、誰が、何のために?)


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