織露府(オルロフ)家の花嫁
 

 
「はうぅっ…」
 娘の喘ぎ声に、宮永弘幸はたまらず、固く閉じていた目を開けた。
 愛娘の千夏が全裸でベッドに横たわり、大きく開かれたその秘部をスラブ系の老人が弄んでいる。
 娘のその部分は、幼い頃、おむつを替えてやったり、お風呂に入れてやったりした時に見えた物とは違い、ふっくらし
た大陰唇に包まれ、黒々とした陰毛で飾られていた。ただ、イヴァン翁が指先で嬲っている肉ビラの色は、幼い頃その
ままに瑞々しいピンク色をしている。
「おいっ…」
 怒りの表情を浮かべ、思わずベッドに駆け寄ろうとした弘幸の腕を、妻の章子が強く引っ張った。
 振り返った妻は悲しげな表情で何度も首を横に振り、目に涙を浮かべていた。
 しきたりがいかに理不尽なものであっても、それを拒絶することは、織露府家を侮辱することになる。織露府家の関
係者ばかりか、自分の身内や仲人、そして何よりも花嫁になる娘本人から、何度も言い聞かされてこの場に臨んでい
るのだ。ここで自分が憤激して、結婚式をぶち壊しにするわけにはいかない。
「うう…」
 弘幸は小さな呻き声をあげて、拳を固く握って、その場に佇んだ。
「うむ、よろしい。」
 イヴァン翁が花嫁の性器を確かめ終えた時、千夏の視線が弘幸をとらえた。
(お父さん…)
 弘幸は怒りとも泣き顔ともつかない表情で顔をくしゃくしゃにして千夏を見ている。その横では母がハンカチで涙を拭
っていた。
(…ごめんなさい…)
 目を閉じて、心の中で謝った千夏を同時に強烈な羞恥心が襲った。大勢の目の前で陰部を露わにするだけでなく、そ
の部分をいじられるというあまりに異常な状況のもと、抗うことのできない性感の高まりとともに、次第に現実感が薄れ
ていた千夏だったが、両親を目にした途端、急に現実に引き戻されたのだった。
 300人は超える人の前で一糸まとわぬ姿になり、女性として最も見られたくない部分をさらけ出している。しかも、そ
の部分を弄ばれ、気持ちよくなって喘ぎ声まであげてしまった。その一部始終を見ているのは、自分の家族や親戚、嫁
ぎ先の人々、親しい友人たちなのだ。究極の恥態を見られて、これからどんな顔をして彼らと接していけばよいのだろ
う。
「いやっ!」
 かすれた声で叫び声をあげ、千夏は両手両足を押さえる男達の手を振りほどこうとした。必死で暴れる千夏を淳哉、
旋太郎、田所の3人が抑え込む。どんなに抵抗しても、男3人の力にはかなわなかった。
「ううう…」
 観念して力を抜いた途端、2人目の梁次郎が小陰唇をまさぐり始めた。哀しくなってきて涙が溢れ、嗚咽がこみ上げ
る。
「あ…、ああん…。」
 梁次郎が巧みな指使いで敏感な肉芽をいじってきた。抑えようとしても喘ぎ声が漏れ、手足の力が急速に抜けてい
く。
「あ…、痛いっ…」
 千夏が小さな叫び声をあげるのが聞こえた。弘幸はまた駆け寄ろうとして、章子に腕を引っ張られる。
 さっき田所が処女検査の結果を宣言した時、弘幸は正直ホッとした。いや、むしろ、こういうとんでもない状況にもか
かわらず、誇らしい思いが胸にわき上がってきた。
(当然だろう。そんなふしだらな娘に育てちゃあいないさ。)
 さっきはそう胸を反らせたが、嫁ぎ先の男達に交替で身体を弄られる様子を見ていると、彼女が処女だということで、
かえって胸が詰まる程の哀しさを覚えた。
「あぁん…、んふぅ…」
 織露府家の男達は次々に花嫁の女陰を確かめていく。再び千夏の意識は朦朧としてきた。だんだん自分が自分でな
くなる感じがしてきて、両親に見られていることも忘れ、せり上がってくる妖しい感覚に身を委ねてしまう。
「はあぁっ!い…、あ…、はうぅ…」
 10人近い男達に性器を刺激され続け、千夏はひっきりなしに喘ぎ、やがて自らその感覚を求めるように、遠慮がち
に腰を動かし始めた。
「感度の良い娘だな。」
「ベッドがビショビショだ。」
「おやおや、腰まで振ってるぞ。」
 織露府家の男達が口々にそう言うのを聞いて、弘幸は屈辱で顔を真っ赤にし、ブルブル震える。
「あぁぁ…、イヤぁ…ダメぇ…」
 喘ぎ声のトーンが変わってきた。そろそろ絶頂を迎える合図だ。旋太郎は千夏のクリトリスを責め立てる。
「よしよし、そろそろイキそうだね。イクところを、みなさんに見ていただきなさい。」
 どこか遠くから旋太郎の声が聞こえるが、言われていることがよく理解できない。千夏はただ次第に高まってくる性感
の波に翻弄され、はあはあと息を荒くして、腰を振っていた。
「あっ、あっ、あっ、ああぁっ…」
 突き上げてくる快感にビクンビクンと全身を痙攣させ、ほとんど反射的に絶叫した瞬間、千夏は目の前が真っ白にな
るのを感じた。生まれて初めて経験する絶頂感だった。
「これで、花嫁は妻としての役割を十分果たせることが確認されました。それでは、ご両親から新婦に激励のお声をか
けていただきたく存じます。」
 田所の言葉で、仲人に腕を引かれて弘幸と章子が千夏の側に寄っていく。夢遊病者のようなフラフラした足取りだっ
た。
 ベッドにぐったりと横たわる千夏の上気した裸体は、すっかり大人の身体になっており、美しくそして艶めかしかった。
男達に愛撫された名残りで呼吸が乱れ、剥き出しのままの胸が激しく上下している。開いたままの股間は彼女が分泌
した体液でぐっしょりと濡れていた。弘幸の頭の中で、いつの間にか大人になってしまった娘の、成長の一コマ一コマが
フラッシュバックする。
 両親がベッドの側に来たのを感じた千夏は、慌てて、両手で身体を抱きかかえるようにして丸くし、顔をそむけた。
「…千夏…」
 弘幸が声をかけると、細い肩がピクッと震えた。
「…か、帰ろうか…」
 やっとの思いで口にした言葉に、娘は無言のまま首を横に振った。それが彼女の決断だった。弘幸は小さくため息を
ついた。
「…だ、大事にして…、いただきなさい…」
 すっかり女らしくなった背中の曲線を見つめながら、織露府家の男達にも聞こえるように、万感の思いを込めて弘幸
はそう言うと、天井を仰いで唇を噛みしめた。
「千夏ちゃん…」
 そう言ったきり後は言葉にならず、章子はすすり泣いていた。
 千夏の目からもとめどなく涙が溢れ出た。父と母こそ、間違いなく、彼女にとってこの場に最も居てほしくない人であっ
た。
 


 
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