夏は猟奇なアルバイト

序章
 
「スゴーイ、なんかお城みたいですよねっ」
 1年生の麻衣が驚きの声をあげた、その建物は山の中腹に、海を見下ろすように建てられていた。両翼を広げた大
きな鳥のような、堂々たる洋館である。
「こんなところでバイトするなんて、夢みたいね」
 ロマンチックな表情でそう言ったのは、2年生の亜紀だ。彼女たち5人は、同じ高校の演劇部に所属している。クラブ
の卒業生を通じて紹介された、夏休みのアルバイトで、この地を訪れたのだ。
「でも、何のバイトなのかしら、詳しく教えてもらえなかったけど…」
 同じく2年生の梓が、少し不安そうに言った。避暑地での1か月近く泊まり込みのアルバイトだとは聞かされていた
が、少しバイト代が高目なのも、無邪気な麻衣などは単純に喜んでいたが、心配性の彼女にすれば、きつい仕事なの
ではないかと気になるところだ。
「何か、博物館でやってるアトラクションに出るって聞いたよ。だから、演劇部の子がいいんだって…」
 もう一人の2年生、先頭を歩いていた千佳が、みんなを振り返って、そう言った。バイトを紹介した先輩を相手に、粘っ
て聞き出したところでは、大学教授が監修している「歴史研究館」で、訪れる観光客に展示内容を説明するコンパニオ
ンのような仕事らしい。
「だから、そんな変なバイトじゃないよ」
 千佳の言葉に、梓も少し安心した様子を見せた。
「さあ、急ぎましょう!」
 約束の時間が近づいてきた。3年生で部長の愛美がそう言うと、一同は、夏の日差しの中を洋館へと続く坂道を上っ
ていった。



 
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