夏は猟奇なアルバイト

第1話
 
 「ただいまより、第1展示室で、デモンストレーションが始まります」
 開演のアナウンスとともに、教授と麻衣が展示室に登場した。「教授」は本当の大学教授で、佐渡伸吾と言う。背が高
く、センスの良いサマー・スーツを身につけ、白くなった髪をきれいに撫でつけている。麻衣の父親ぐらいの年齢だがな
かなかのハンサムで、お洒落な独身男性で、すでにアルバイトの少女たちの密かな好意を勝ち取っていた。
 彼はこの「犯罪歴史研究館」のオーナーであり、大学で刑罰と拷問の歴史を研究している。研究館は、彼が収集した
コレクションを展示する目的で建てたもので、各国の刑罰と拷問に関する資料や、実際に使われた道具などが、ずらり
と展示されていた。
「第1展示室は、火責めがテーマになっています」
 教授がそう言った。
「怖いですねぇ…」
 教授の横で、本当に怖そうにしている麻衣は、真っ赤なビキニの水着を着ていた。
 肩までの長さのふんわりした黒髪、いかにも健康そうほっぺ。大きく見開かれたつぶらな瞳に、少し低めの鼻。唇は
小さく愛らしい。性格の天真爛漫さがそのまま出たような愛嬌のある容姿は、少し幼く見える。
 よく中学生に間違われる麻衣だったが、水着になると、そのスタイルの良さが目を引いた。胸は過不足ない大きさで、
腰がキュッとくびれている。引き締まったヒップと、すらりと伸びた脚線美は、モデルのようだ。
 しかし、本人はその肢体を見られるのが恥ずかしいらしく、時折、胸や下腹部に手をやっている。
 来館した見学者は30人ぐらい。山間の名もない博物館にしては、上出来かもしれない。すべて男性で、麻衣の水着
姿を食い入るように見つめていた。
(…あんまり見ないでよ…)
 集中する視線を感じて、麻衣の頬が熱くなった。
「火責めというのは、文字どおり、炎や熱を用いた拷問です。直接、火で身体をあぶる、あるいは焼くというのが火責め
のもっとも基本的な形で、人間が火を使うことを覚えた直後から行われていた、古い拷問や刑罰の方法ですね」
 教授は、ひとしきり蘊蓄をかたむける。
「火あぶりというのは、洋の東西をと問わず、処刑方法として、よく用いられてきました。麻衣ちゃん、あそこにあるのは
誰の人形ですか?」
 部屋の中央には、中世ヨーロッパの刑場が等身大のジオラマで作られ、若い女性の人形が、まさに火あぶりになろう
としている姿が展示されていた。
「ジャンヌ・ダルクです」
 世界史はそれなりに得意な麻衣は、自信を持って答えた。
「そう、魔女の濡れ衣を着せられたジャンヌ・ダルクをはじめ、歴史上、火刑に処せられた人はたくさんいますね。魔女
狩りや異端審問で火あぶりにするというのは、『罪を浄化する』という宗教的な意味あいが強いとも言われています」
「へえぇ…、そうなんですか」
 感心したように麻衣が相槌を打った。それは演技ではない。今日がアルバイト初日なので、彼女自身も初めて、教授
の説明を受けている。事前の打ち合わせは、特に何もなかった。
「火そのものではなく、石とか、鉄とか、加熱した物を用いる場合もありますね」
 そう言うと、教授は展示物の中から、鉄製の棒状の物を取り出した。先端に小さな三角の鉄板が付き、持ち手にドラ
イバーのような柄が付いている。
「例えば、これは、焼きゴテです。真赤に焼けた鉄の鏝を身体に押し当てます」
 そう言うと、教授はいきなり、コテを麻衣の脇腹に当てた。
「キャッ!」
 思わず叫び声をあげて、逃げる麻衣。しかし、当然のことながら、コテは熱しているわけではなく、ヒンヤリと冷たい感
触があっただけだ。
「もう…、やめてくださいよぉ…びっくりさせるの…」
 そう抗議する麻衣の目は、涙目になっている。
「ごめんごめん…」
 必死で謝る教授だったが、麻衣のふくれっ面はおさまらない。その様子がまた可愛らしく、観客たちの笑顔を誘った。
「さて、焼きゴテには、こんな種類もあります。押すよ、麻衣ちゃん…」
 そう言うと、教授は麻衣の胸にコテを押し当てた。柔らかさと弾力を示す膨らみに、観客の目が集まる。インクがつい
ていたらしく、白い肌に「Luxuria」とアルファベットが描かれた。
「こちらは、罪が確定した罪人に押されたものですね。刺青と同じで、焼き印は一生残りますから、罪人は一生、その罪
を背負って生きていかなければなりません。焼き印を押す場所は、肩など、普段は見えない場所に押されることが多か
ったのですが、頬や額に押される場合もありました。女性の場合は、こんなふうに胸に押されることもあったんですね」
「これ、何って書いてあるんですか?」
 小首を傾げる麻衣に、教授は軽く答えた。
「後で調べてみてね」
 アルファベットはキリスト教の七つの大罪のうち、「色欲」を意味するラテン語である。
「さて、麻衣ちゃん、こっちに来て…」
 教授は麻衣の手をとって、ジャンヌ・ダルクのジオラマの所に進んだ。薪が山のように積まれた上に、十字架型の火
刑台がにょきっと突きだしている。
 ジオラマの火刑台は、階段で登れるように作られており、教授は麻衣をその上に立たせた。
「これから、麻衣ちゃんが、ジャンヌ・ダルクになります」
「えっ?」
 麻衣が戸惑っていると、展示室の端で控えていたスタッフがやってきて、人形をどかせ、かわりに彼女を十字架の柱
に括りつけた。
 続いて、教授が台の上に上がってきて、磔になって不安そうな顔を見せる麻衣の背中に手を回す。
「あの…、ちょっと…」
 教授の手が、狼狽する麻衣のビキニの紐を引いた。水着がハラリと落ち、双乳がプルンと波打って露わになった。
「キャアッ!」
 麻衣が悲鳴をあげて、身をよじる。なんとか体を隠そうとするが、十字架に磔にされているために、身動きも自由にな
らない。そんな麻衣に、観客たちの淫らな視線が注がれる。桜色の乳首がちょこんと乗った、少女らしいお椀型の乳房
だ。
「いやっ、何するんですか、ちょっと…放してください…」
 泣きべそをかいて抗議する麻衣に構う様子もなく、教授の手が彼女の腰に回った。
「あっ、いやです…許してください!」
 教授の狙いを察知して、麻衣が必死で哀願する。ビキニの下も両サイドを紐で括るタイプだ。
 ゆっくりと紐が引かれる。麻衣は両膝をくの字に合わせて水着の落下を防ごうとするが、所詮は無駄な抵抗だった。
 下腹部の小判型の翳りが露わになった。幼い容姿にふさわしい、生え揃ったばかりという印象の恥毛である。
「ひどい…、ひどすぎます…」
 泣きべそをかきながら、麻衣は両腿をよじりあわせる。その足首を掴むと、教授は手際よく足枷をはめた。脚を肩幅
に開いた状態で固定されたため、下から見上げる観客の位置からは、陰毛に飾られた縦裂がはっきり見える。
「う…、ううぅ…」
 クスンクスンとすすり上げながら、麻衣は羞恥に染まった顔を横に向け、唇を噛みしめて震えている。身体がピンク色
に染まり、胸の膨らみが、大きく波打っていた。
「火刑台で衣服が焼け落ちるや否や、死刑執行人はいったん火を弱めて、薪をかきわけ、彼女の焼けただれた秘所を
群衆に見せつけました。容赦なく裸身を晒すことで、ジャンヌの聖性を傷つけようとしたんですね」
 説明を続ける教授の口調は穏やかなままだが、その目は異様な輝きを放っていた。
「ああッ、いやッ!」
 再び悲鳴があがる。教授の手が下腹部の膨らみに伸び、指先が麻衣のクレヴァスを撫でたのだ。そんな部分を他人
の手で触れられるのは、生まれて初めてだった。
「いやですっ!ちょっと…、やめてくださいっ!」
 麻衣が血を吐くような声で訴えるのを無視して、教授はぷっくりした舟形を開き、指先で花びらを捲る。サーモンピンク
の媚肉が露わになり、観客たちが伸び上がるようにして、少女の秘所を覗き込んだ。
「ああっ、見ないでっ!」
 麻衣が全身を捩って、声の限り叫んだ。
「こういうことは、どの国でもよくあります。女性を処刑する場合、裸にしたり、乳房や陰部を晒しものにしたりするんです
ね」
 麻衣はギュウと目を閉じ、唇を何度も噛みなおしては、見学者たちの突き刺さる視線に耐えていた。
「公開処刑は娯楽の一つで、老若男女、大勢の見物人がありましたが、それも見物に集まった群衆の楽しみであった
ようです」
 その時、観客の一人が手を挙げて尋ねた。
「あの…、撮影してもいいですか?」
「ダメっ、ダメですっ!」
 必死で叫ぶ麻衣のことなど意にも介さず、教授が答える。
「どうぞ、撮影は自由ですよ」
 観客たちが一斉にカメラや携帯を構え、火刑台に縛られた麻衣の裸体を撮影し始めた。
「いやぁ…、たすけて…こんなのイヤッ!」
 フラッシュが光る度、麻衣の喉から泣き声に近い悲鳴が迸る。
「さて、いよいよ火責めの実演です。しかし、薪に火をつけると、麻衣ちゃんが死んでしまいますから、これを使いましょ
う」
 教授が取り出したのは、赤い蝋燭だった。教授はポケットからライターを取り出して、蝋燭に火をつけた。照明を少し
落とした展示室に、ゆらゆら揺れる蝋燭の炎が幻想的な陰影を作る。麻衣がすっかり怯えきった目で、それを見つめ
る。
「日本でも蝋燭責はSМの定番になっていますが、外国でもメジャー化しています。これは、17世紀頃に松明から滴る
溶けた樹脂を拷問に用いたことから転化したものと思われます。英語でろうそく責めをキャンドル・プレイではなくワック
ス・プレイと呼ぶのは、それが理由のようです」
 蝋燭を近づけていくと、麻衣がイヤイヤするように首を振り、身体を震わせた。
「このように、肉体に火が近づくことで本能的な恐怖も演出されます」
 教授が見学者に説明をしながら、蝋燭を傾けた。溶けた蝋が二滴、三滴と肩に落ちて、紅い花を咲かせる。
「あつっ、熱いっ!」
 麻衣の身体がピクンと跳ね上がり、続いて熱さに身悶えする。
「熱い蝋が無防備な肌に触れると、かなり熱さを感じるとともに、蝋が固まるまでその熱さがじんわりと続きます」
「あうッ!あっ、熱いっ!」
 蝋燭の炎が揺れ、小さなしずくが、なだらかな起伏を描く乳房に滴り落ちた。
「ああっ、くうぅ…」
 熱く溶けた蝋が乳房に垂れ、赤い血のように付着していく。教授が手を振ると、溶けた蝋が、敏感な乳首にボトボトと
滴り落ちた。
「ひぃっ、あぅぅっ、熱い、熱いぃっ、いやぁつ!」
 麻衣は歯を食いしばり、火刑台に縛り付けられた縄が身体に食い込むのもお構いなしで、激しく暴れた。喘ぐように
胸の膨らみが弾んでいる。
「やめて、もう…やめてください…」
 麻衣が泣きじゃくるのも構わず、教授は、容赦なく麻衣の白い肌のあちこちに熱い蝋を落としていく。背中に垂らされ
た蝋は赤い水滴となり、ポタリポタリと麻衣の白い体を赤く染める。
「あっ、あっ、ああっ!」
 麻衣の慄えが激しくなり、しなやかな肢体が強ばる。乳首が蝋で覆われ、連続して垂らされた滴が太腿を流れ、白い
ヒップが赤い蝋涙に染まっていく。
「もうちょっと、ジャンヌの気持ちを味わってみようか…」
 そう言うと、教授はその場でしゃがみ込み、ゆっくりと女陰に蝋燭を近づけていった。
「ああ、ああ…、だめっ…」
 麻衣は激しく腰を揺らして、大事な部分を炙られる熱さから逃れようとする。
「動いちゃダメだよ。ホントにアソコに火傷しちゃうよ」
 脅されて動きを止めた麻衣の股間に、教授は慎重に狙いを定めて蝋燭を近づけていく。開かれた女性器の複雑な造
形が、蝋燭の光で幻想的な陰影を見せる。客たちがゴクリと息を呑む音が響いた。
「あッ…」
 腿の内側に熱を感じて、ひとりでに腰が逃げる。半開きになった唇をわななかせ、泣き出しそうな顔で首を振る麻衣
に、教授は無言で炯々とした眼光を浴びせると、蝋燭を持つ手がさらに少し上げた。
「あつぃ…、熱いっ!」
 内腿を、股間を、炎がジリジリと炙る。数秒も経たないうちに、麻衣は熱さが我慢しきれなくなった。顔面蒼白になり、
額には冷や汗が滲んでいる。
「あついの…、お願いっ!ごめんなさい…もう許して…」
 麻衣が顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、泣き出した。ヒリヒリした、痛いような感覚が柔らかな肌を襲う。麻衣はクネク
ネと腰を左右に振って、熱さに身悶えるしかなかった。
「ああっ、いやっ、熱いっ、あついーっ!」
 ジリジリという音とともに、恥毛が縮れていく。熱さと、陰部を焼かれる恐怖に麻衣が絶叫した時、やっと蝋燭の火が
離された。
 麻衣はぜいぜいと荒い息を吐いている。額に滲む脂汗が、苦痛の程度を物語っていた。
 教授が火刑台から降りた。「うっ、うっ…」としゃくりあげながら、やっと解放される…と思った麻衣の希望は、次の一言
であっさり裏切られた。
「それでは、みなさん順番にどうぞ…、おっぱいでも、アソコでも、お尻でも、好きな所に蝋を垂らしても結構ですが、くれ
ぐれも麻衣ちゃんに火傷させないよう気をつけてください」



 
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