「夏だ!!芸能人スポーツ大会」 NO.2
 
無人島
 
「わあ!きれい」
 清香は思わず声をあげた。眼下に小笠原の青い海が広がっている。
 芸能人スポーツ大会の参加者は、ATプロモーションがチャーターした飛行機で会場となる無人島に向かっていた。前
日から出発するこの飛行機に乗っているのは、比較的スケジュールの都合がつけやすい新人やバラエティ系のタレン
トが多い。トップスターたちは、明日の朝の便でやって来て、開会式間際にすべり込むらしい。
「紅茶はどうだい? 最高級のオレンジペコだよ。」
 マネージャーの伊吹が座席まで可愛いティーカップを運んできた。こうして見ると、高級レストランのギャルソンのよう
に見える。仕事では酷いことを平気で強制する反面、普段は、これ以上ないくらい気配りが行き届き、面倒見も良い。
清香は知らなかったが、彼が業界で「タレントあしらいの天才」と囁かれている所以である。
 清香の隣の席に腰をかけて、伊吹は耳ざわりの良い声で解説を始めた。
「会場となるTyler島は、30キロ足らずの海岸線を持つ無人島だ。小笠原は太平洋戦争の後、1951年からアメリカの
統治下にあって、1968年に日本に返還されたんだけどね。小笠原が日本に返還される前、まだアメリカの統治下に
あった時に、ATプロモーションのAlfred Tyler社長のお父さんがこの無人島を手に入れたそうだ。そして、今はプロダク
ションの所有になっている。」
「伊吹さん、よくご存じですね。」
「島にはTyler社長の別荘があるんだが、うちの社長はTyler社長と仲が良いからね。しょっちゅう、招かれて別荘に来て
るんだ。私も何度か、社長と一緒に来たことがあるんだよ。」
 ちょうど清香が紅茶を飲み終えた頃、伊吹が窓の外を覗いて指差した。
「ほら、見えてきた。あれがTyler島だよ。」
 上空から見た島はこんもりとした緑の森に覆われ、角が丸くなった正方形に近い形をしている。その周りには珊瑚礁
の海が広がっていた。
「あのビーチが会場ですか?」
 他の三方は切り立った崖になっているが、島の南側だけは白い砂浜が続く遠浅の海岸が見えた。
「たぶんそうだと思うけどね。ただ、島には本格的な競泳用のプールもあるから、そちらを使うのかもしれないね。マラソ
ンコースや陸上競技場もあるんだよ。」
 飛行機が高度を落とすと、舗装された道と陸上競技のトラックが見えた。そして、それ以上に目を引くのが、島のほぼ
中央にある小高い丘の上に建っている白い豪邸だ。
「あれがTyler社長の別荘だよ。」
「すごい。外国映画に出てくる別荘みたい。」
 夏の昼下がり、南の海の無人島というシチュエーションで、ちょっとロマンチックな思いにひたっている清香たが、それ
もあとわずかの間だったのである。
 
 


 
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