国防省附属「星園・癒しの館」
 
第3章 運命の交差点 3
 
 横木港の夜は更けていく。
「いよいよ明日、出航だな…。」
 喫水線のわずかだけ上に取り付けられた小さな丸窓から外を眺めて、西崎康平がぽつりと呟いた。那須信彦が振り
返って彼の顔を見ると、康平は人なつっこい笑顔を浮かべる。
「おい、優等生。結局、オレ達二人だけだったな、最後まで抵抗して、ここに閉じこめられたのは。」
 ここはフサイン派遣部隊の輸送艦の中。普段は武器庫の1つとして使われている小さな船倉だ。
「ああ、そうだな。」
 憔悴した顔でしゃがんでいた信彦の表情が、わずかに緩んだ。普通の高校生活を送っている間、典型的な不良少年
である康平とは、同じクラスにいながら、住む世界が違うとばかりにお互い無視し合ってきた。こういう場面にきて、初
めて心が通じ合ってみれば、なかなかイイ奴だと思う。
 横木高校の男子生徒たちは、あの日、いきなり学校から連れて行かれて、一人残らず防衛隊の訓練所に送り込まれ
た。そこで、約1月間、野戦を想定したハードな訓練を受けさせられたのだ。肉体的にもギリギリのところまで虐められ
る過酷な訓練だったが、それ以上に、正規隊員から虫けらのように扱われ、奴隷のようにこき使われるという、精神的
にもハードな毎日だった。
 人間性を徹底的に無視した生活を強いられると、そうした生活に順応して少しでも楽になろうとする本能がはたらくの
か、人はいつの間にか自らの人間性を失っていく。最初の頃は、信彦たち以外にも理不尽な扱いに抗議したり、反抗
する生徒がいたが、その多くは日に日に気力を失い、防衛隊員の奴隷か家畜そのものに成り下がっていった。
 その中にあって、拷問のような毎日に屈することなく、プライドや人間性を失わなかったのが、信彦と康平の二人だっ
たのである。
「これは、ギブアップするか、死ぬかどっちかだな…」
 康平がまた、ぽつりと呟いた。横木高校の生徒たちはこの輸送艦で戦地に送り込まれるのだが、他の生徒たちが二
人一組あるいは三人一組で、狭いながら船室を与えられたのに、最後まで抵抗を続けた信彦と康平は、この小さな船
倉に押し込まれている。
 居住性など全く考えていない軍艦の船倉は、穏やかな日本の港に停泊していてさえ、どことなく息苦しい。ベッドどころ
か、エアコンもない船倉では、中東まで行く道のりで観念して屈服するか、体調を壊して倒れるかの二通りしかなさそう
だ。
「そうだな…。」
 そう返事をしながら、信彦は全く別のことを考えていた。
 それは、他でもない。安藤茉莉のことだった。
 茉莉とは幼馴染みで、幼稚園、小学校と同じ学校に通った。茉莉が私立の中学に進学したので別々になったが、高
校になって再び同じ横木高校に通うことになったのだ。茉莉の父が会社をリストラされて、私立に通えなくなったとの噂
も聞いたが、その点については、今日に至るまで確認していない。
 それはともかく、久しぶりに会った茉莉を見て、信彦は驚いた。たしかに幼い時から、可愛らしい女の子だったが、テ
ィーンの彼女はまぶしく、輝くばかりの美少女に成長していたのだった。
 再会した幼馴染みの親しさで接した時期、相手を意識してちょっとぎごちなく振る舞った時期を経て、切ない思いが募
っていき、とうとう告白した時、茉莉も同じ思いで自分を見てくれていたことを知って、信彦は有頂天になった。
 そして、交際し始めた矢先、「有事」が二人を引き裂くことになってしまったのだ。
「ははあ、女のことでも考えてるんだろ。」
「何を!そんなこと…」
 康平に図星を指されて、信彦はムキになって否定しようとしたが、すぐに思いとどまった。格好をつけてもしかたがな
い。間違いなく、茉莉のことを考えていたのだ。ただでさえ、置いてきた恋人のことは心配なものである。しかし、信彦の
胸を苦しくしているのは、さらに差し迫った思いだった。
『お前たちのクラスメートの女子がどうしているか教えてやろう。』
 昨日、点呼のために横木高校の生徒たちが甲板に並んでいる前で、派遣軍の若い士官が言った言葉が、信彦の頭
に響いてくる。
『防衛隊の兵士を慰安する慰安嬢になってるんだ。わかるか、裸になって股を開いて、防衛隊の男たちのセックスを処
理するのさ。もちろん、男が萎えてしまいそうなブスは、別の仕事をさせてるがな。』
 茉莉が泣きながら凌辱されている姿が妄想となって信彦を苛み、全身の血が逆流してくる。信彦は、茉莉とはまだ手
くらいしか握った事がなく、セックスどころか、キスもしたことがなかった。
『…と言っても、慰安所のオープンは明日なんだ。俺たちが、最初のお客として招かれているのさ。お前たちのクラスメ
ートの体をたっぷり楽しんできて、後で感想を聞かせてやるよ。ひょっとしたら、処女がいただけるかもしれないなぁ。フ
フフ…』
 信彦に限らず、同じ学校の女生徒と交際している男子は少なくない。坂巻と名乗るその士官はそれがわかっていなが
ら、おもしろがって、わざとそんな話をしたのだ。
 得意げな坂巻に対して、拳を握りしめてかかっていったのは、やはり信彦と康平だった。しかし、すぐに他の隊員たち
に取り押さえられ、二人仲良くこの船倉に放り込まれる羽目になった。しかも、その時に逆に殴られたり蹴られたりした
ため、二人は顔も身体も青痣だらけだった。
「逃げたいか、優等生…」
 康平の声で、信彦はやっと昨日から陥っている思考のアリ地獄から抜け出した。
「ああ、もちろんだ。できるものならな…」
「よし、決まった。」
 そう言う康平は、指先でクルクルと鍵の束を回している。
「西崎、おまえ、その鍵は…」
「俺のスリの技術は、名人と言われた石川宗平の直伝なんだ。」
 そう言いながら、康平はニヤリと笑った。石川某がどういう人物か、そもそも本当にそんな人物がいるのかどうかは定
かではなかったが、防衛隊の精鋭から鍵をスリ取る腕前は相当のものだと、信彦は感心した。
「善は急げだ、行くか!優等生!」
「行こう!」
 2人はスッと立ち上がった。少年たちは、連日の訓練でヘトヘトになっているはずの全身に、どこからか湧いてきた力
がみなぎっていくのを感じた。
 
 コンコン…
 服従の誓いをしたクラスメートたちが、防衛隊員とペアを組まされ、どこかに連れて行かれる中で、茉莉は一人、担任
の平沼に命令されて校長室へ行き、マホガニー製の立派なドアをノックする。校長室の中から「教師」の小林麗奈の声
がそれに応えた。
「入りなさい」
「失礼します。」
 茉莉はドアを開け、きちんとお辞儀をして校長室に入った。
 顔を上げると、校長室の椅子に座っていたのは、館長の諸藤ではなかった。見知らぬ男のはずだが、茉莉はその顔
をどこかで見たことがあるような気がした。
「須崎先生にごあいさつなさい。」
 入り口に近い壁際に立っていた麗奈が言う。
「2年生の安藤茉莉です。」
「ほう!これは、たしかに美少女だ。」
 須崎と呼ばれた男は、驚きの表情を浮かべて茉莉を見た。一方、茉莉は目の前に座っている男が誰かを理解した。
テレビのニュースなどで見たことのある政治家。自政党の幹事長、須崎晋次だ。
「安藤茉莉。2月9日生まれの16歳…」
 麗奈に渡されたファイルを読み上げながら、須崎は茉莉にからみつくような視線を投げた。由利美智恵デザインの清
楚で可愛らしい制服は、まるでこの娘のためにあつらえたようだ。
 「青年将校」と呼ばれた若手議員時代から、アイドルタレント、高級クラブのママ、果ては女性議員まで、いろいろな女
と浮き名を流してきた彼である。現役女子高生を集めた「癒しの館」と言っても、所詮、小便臭い小娘か、擦れたコギャ
ルを想像して、さほど興味を惹かれなかったのだが、予想は良い方へ裏切られた。今目の前にいるのは、世慣れた須
崎ですら、ハッと胸を突かれるような美少女なのだ。
「身長156センチ、体重43キロ、バスト80、ウエスト53、ヒップ82か…」
 そこまで読み上げると、須崎はファイルを机の上に置き、引き出しの横についているスイッチを入れた。新しい物が大
好きだった渡部校長は、校長室での会議や生徒たちの指導に使おうと、プレゼンテーション用の装置を校長室に設置
していた。机の上に置いた資料が、書画カメラで壁際の大型モニターに映し出される仕組みである。
「あっ!」
 茉莉は思わずそう叫んだ。モニターに映し出されたのは、彼女の全裸の写真だった。気をつけの姿勢で立っているそ
の写真は、最初の身体検査の際に撮られ、身分証明書にも使われているものだ。
「しかし、直立不動じゃあ、ちょっと色気がないなぁ。」
 そう言うと、須崎はさらにページをめくっていく。すると、制服や体操服、スクール水着姿で可愛いポーズやセクシーな
ポーズをとる茉莉の写真が、彼女の詳細なプロフィールとともにファイルされていた。
「おっ、これはちょっとした写真集だなぁ…」
 この1か月の準備期間をかけて、星園の慰安嬢1人1人について、こうしたファイルが作られている。これは、男が自
分の欲望を処理する相手を選ぶためのカタログだった。
 モニターに映る写真は下着姿に、そしてとうとうヌードになった。茉莉の頬がみるみるうちにピンクに染まっていく。須
崎は目の前の美少女と画面に映し出されたヌード写真をじろじろと見比べて、卑猥な笑みを浮かべる。
「可愛い顔をして、こんなエッチな写真を撮ってるのか。」
 須崎が嬲るように言い、茉莉はとうとううつむいてしまった。
「それにこのプロフィールの細かいこと。ほう、君のお父さんは三紀商事本社に勤めていたのに、成績不良でリストラさ
れて、クビになったのか。」
「本人はもちろん家族のプロフィールもできる限り網羅してあります。国民ネットワークを使えば、どんな個人情報でも自
由に手に入りますからね。一般庶民にプライバシーなどありませんわ。」
 麗奈がそう言って、愛想笑いを浮かべた。須崎は、国民ネットワークの確立にも力をふるった政治家だ。
 自分についてのあらゆる情報を見られることについて、実のところ、茉莉はこれまであまり深く考えたことはなかった。
しかし、二人の会話を聞いているうちに、怒りと恥辱がもやもやと胸に湧き起こってくる。裸にされ、見せ物にされている
のは、身体だけではないのだ。
「おおっ、これは凄いぞ!」
 突然、須崎の興奮した声がする。
「キヤッ!嫌っ!」
 おそるおそるモニターを確認した茉莉が、悲鳴をあげた。最後のページにあったのは、性器検査の時の、大きく股間
を開いた写真だった。
「フフフ…。きれいなオ××コだ。」
 須崎の指先が、写真の性器をゆっくりとなぞっている。茉莉は本当に秘所を撫でられたような気がして、思わず身震
いした。
「さあ、写真は見飽きた。そろそろ、本物を楽しませてもらうとしよう。」
 そう言うと、須崎は椅子から立ち上がって、ゆっくりと茉莉に近づいて来た。
「…あ、い、いや…」
 じりじり後ずさりして逃げようとする茉莉を力ずくで抱きすくめると、部屋の中央に置かれた応接ソファの上に押し倒
す。
 麗奈が寄ってきて、死に身を捩って逃げようとする茉莉の両肩を掴み、その抵抗を押さえて、須崎の愛撫を手伝
う。
 須崎は、茉莉の身体を抱き締めると、頬や耳に息を吹きかけたり、舌を這わせてくる。
「こんなのいやぁ…」
 茉莉は涙声で叫んだ。
 その目にたまった涙を見て、須藤の嗜虐的な官能はますます刺激を受けた。須崎は甘美な果実を思わせる唇を無理
やり奪うと、激しく吸って、歯をこじ開け、ヌメヌメした舌をもぐりこませる。
「むむ…」
口をふさがれた茉莉が、くぐもった声を出す。 柔らかな少女の唇と舌、口腔のぬくもりが、男の官能をますます昂ぶら
せ、股間を硬くさせていく。
 茉莉の口の中を隅々まで舐め回しながら、須崎は制服の胸元を開き、ブラジャーをずらして愛らしい乳房をはみ出さ
せ、柔らかな膨らみを絞り上げるようにして、若い果実の感触を楽しんだ。その弾力は須崎の手のひらに、快い感触を
与えてくる。
 少女の唇を離れた舌が白い首筋を舐め下り、桜色の初々しい乳首に吸いついた。制服の内にこもった甘い匂いが須
崎の性欲をさらに刺激する。彼は夢中になって左右の乳首を吸い、舌で転がしていく。
「あ、あぁ…、ああ…、いや…」
 たっぷりの唾液で濡れた乳首を、男の指がクリクリとしごくように刺激する。茉莉は全身に電気が流れているかのよう
に、ビクッと体を震わせて喘いだ。遊び慣れた大人の男の愛撫の前に、性体験のない少女の官能はひとたまりもなか
った。
「さあ、オ××コを見せてもらおう。」
 そう言いながら、須崎は半分捲れかかったスカートの中に顔を潜り込ませた。ムッチリと健康な張りに満ちた白い太
腿を撫でながら、可愛らしいレースの下着を引きずり下ろしていく。
「ほら、見えたぞ!」
 スカートの中で須崎が言う。その目の前に美少女の秘所が露わになったのだ。若草は恥ずかしげに楚々と煙り、ぷっ
くりとしたワレメからピンクの陰唇がわずかにはみ出していた。指を当てて左右に開くと、かすかに蜜をはらんだ柔肉が
覗いた。
 須崎は茉莉の中心にギュウッと顔を埋め込み、少女の秘めやかな匂いを嗅いだ。
「やっ!イヤッ!お願い…やめて、やめてくださいっ!」
 最も恥ずかしい部分に顔を埋められ、茉莉はパニック状態になって、逃れようとする。
「大人しくなさい。先生に失礼でしょう!」
 麗奈が肩を押さえる両手に力を込め、卑猥な含み笑いをしながら茉莉を叱った。
 須崎は茉莉の割れ目に舌を這わせ、細かな襞に覆われた膣口から、ツンと勃起したクリトリスまで、溢れる愛液をす
くい取りながら、ゆっくりと舐め上げていった。
「うっ…、ああッ!やめて…」
 生まれて初めて受ける刺激に、茉莉が声を上げ、キュッと内腿で須崎の顔を締め付けながら身悶えした。汚辱感に
翻弄されながらも、やがて処女の秘所が淫汁を滴らせる。
「なんだ。こんなに濡らして、感じているじゃないか。」
 そう言うと、須崎は再び茉莉の陰部に顔を埋め、肉裂の淵を舌先でなぞったり、唇を付けて淫汁を吸ったりして、若い
肉体を思う存分楽しんでいく。
 
「たしかこっちの方へ逃げたぞ。いいか、逃がすな!」
 軍用犬の吠える声に混じって、隊長らしき兵士の声が貨物埠頭に響く。
 隊員たちが手にしたライトが闇を切り裂いて、コンテナの山を照らし出した。
「隊長、姿が見えません。」
「よし、二、三人で組になって、手分けして捜すんだ!」
 隊長の命令で散らばっていく靴音を聞いて、コンテナの蔭から西崎康平が顔を出した。
「今だ。一気に駆け抜けて、あそこの倉庫に隠れようぜ。」
 彼が指さす方向には、大きなコンテナ倉庫がある。見ると、入り口が少し開いているようだ。
「わかった。」
 那須信彦がうなずき、二人はバッと駆けだした。
 コンテナまでは約10メートルだったが、永遠の距離があるように感じた。軍用犬の鼻をごまかすために、とっさに倉
庫の中にあった石油に足を突っ込んだために、ズボンの裾がじっとりと重い。まとわりついた裾を気にした一瞬、信彦
は痛恨のしくじりをやってしまった。足がもつれ、近くにあったドラム缶にぶつかってしまったのだ。
 ガンというドラム缶の音は、とてつもなく大きな音に聞こえた。
「見つけたぞ!」
 遠くで、追っ手の声が聞こえる。倉庫に逃げ込む計画は放棄して、信彦と康平はとにかく港の外に向かって必死で走
った。
「止まれ、止まらないと撃つぞ!」
 横木港は都市の港だ。二人の少年の前に、街の華やかな夜景が広がっている。もうすぐ港から出られる。街の中に
紛れ込めば、隊員たちもそう簡単に追いかけて来られないだろう。
 ドギューン!
 銃声が響く。
「やばい、本当に撃ってきやがった。」
「国民を守るのが防衛隊じゃないのか。」
「まだそんなこと言っているのかよ、優等生。軍隊なんて結局、軍隊を守ることしか考えちゃいないさ!」
 康平が鋭い指摘をしたのと、再び銃声が聞こえたのは、ほぼ同時だった。
「アツゥッ!」
 康平が叫び声をあげて、地面に転がった。
「どうした!大丈夫か!」
「ち…、畜生、足、撃たれた…」
 康平が押さえた脛のあたりを見ると、グレーの作業ズボンの布地に赤黒い血がにじんで、みるみるうちに広がってい
く。
 呆然とする信彦を、康平が怒鳴りつけた。
「何してんだ!い…、行け!早く逃げろよ!」
「でも、お前…」
 地面で苦痛に呻く康平を心配そうに見つめる信彦。その間にも、追っ手の足音が近づいてくる。
「い…、いいから、お前一人で行け。女子を救うんだろ…」
 信彦はハッとして康平の顔を見た。苦しい表情の中で、歪んだ笑顔を見せた康平がポツリと言った。
「1年A組の嶋田麻衣も、頼むよ。」
「わ、わかった。お前も、がんばれよ!」
 そう言った信彦は、三度目の銃声を背中で聞きながら、夜の闇の中に消えていった。
 


 
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