国防省附属「星園・癒しの館」
 
第4章 非日常の中の日常 4
 
 テレビ画面に、じっと正面を見つめる由香の顔がアップで映し出された。ショートカットが似合う整った顔立ち、見る者
をハッさせ、惹きつけてやまない魅力的なまなざしが印象的だ。
「あなたは、国のために何ができますか?」
 そう呼びかける由香。目を逸らすことができない思いで見詰めていると、画面がパッと切り替わる。
「国際貢献に積極的に参加することが、これからもっと大切になると思います。そのために防衛隊の役割は重要だと思
うんです。」
 マイクを向けられ、インタビューに答える亜弓。真面目な表情で、真剣に語るその姿は知的で清楚な美しさを見せて
いる。
「がんばってねー!」
 制服姿の琴美が愛らしい笑顔で、元気いっぱい手を振った。防衛隊の制服を着て、今まさに艦船に乗り込もうとする
ハンサムな青年が、それに応えて手を振る。
 最後に、茉莉の顔がアップで映し出された。その美少女ぶりは、並みのタレントではとても及ばない。憂いを含んで目
を伏せた表情を見ていると、思わず抱きしめたくなる。
「守って…」
 切なく、ささやくような茉莉の声。
「国を守る、大切な人を守る。この大切な仕事に、あなたの力を…。」
 ナレーションとともに、茉莉の表情がやわらかくなり、ゆっくりと花のような微笑みを浮かべる。
「…国防省」
 その字が浮かび上がり、画面が暗転した。
「どうです。よくできているでしょう。」
 テレビのスイッチを切ると、リモコンを手にした国防省官僚の伊東がにこやかな笑顔を向けてそう言った。癒しの館の
職員室に、手の空いている教師やスタッフが集まって、国防省が製作したCMを見ていたのだ。「館」の生徒たちを使っ
た防衛隊のイメージCMである。
「どうですかな。諸藤館長。いいでしょう?」
「そうですな。」
  政敵と言ってよい伊東の得意げな様子に、面白くない表情で諸藤が答えた。
「二週間ほど前からテレビ放映が始まって、大反響のようです。テレビに出ている少女たちは誰かという問い合わせ
が、国防省の広報課に殺到しているそうですよ。防衛隊の志願者も目に見えて増えているようです。」
 伊東はスタッフ達を見渡しながらそう言うと、諸藤に向かって言葉を続けた。
「これから、慰安嬢…じゃなくて、ここの女生徒たちに新聞、テレビ、ラジオ、あらゆるメディアに出演してもらって、防衛
隊や国防省の政策を宣伝してもらいたいと思っています。これは、須崎先生にも了解をいただいていますので、いいで
すね。」
「そして、須崎幹事長の狙いどおり、徴兵制に向けた地ならしも進んでいるわけだ。」
 諸藤はポツリとそうつぶやく。彼のパトロンと呼んでもいい権力者の自信に満ちあふれた顔が脳裏に浮かんだ。

「それじゃあ、5時間目の授業よぉ!」
 ちょっと舌足らずのしゃべり方、鼻にかかった色っぽい声でエリカが言った。しかし、ここは教室ではなく、プールに隣
接して新たに作られたクアハウスの脱衣場だ。「教師」のエリカこと柳本朋子は、つい先日まで、有名な風俗店のナン
バーワンだったソープ嬢である。星園高校が「癒しの館」になって「教師」に招かれた一人だ。
 今日、癒しの館は、新たにフサイン共和国北部に派兵されることになった部隊を受け入れている。憲法が改正され、
集団的自衛権の行使ができるようになったことから、これまでのような後方支援ではなく、アルメイア軍と一体になって
戦闘行為ができるのだが、今回派兵される部隊は、戦闘地域で兵器を輸送する業務を受け持つことになっていた。フ
サイン共和国北部では、アルメイア軍が掃討作戦を続けており、市民を巻き込んだ大規模な空爆が繰り広げられ、戦
闘が激化している地域だった。教師たちは、危険な地域に赴く隊員たちに、手厚いサービスをすることを決めた。「癒し
の館」は防衛隊員のための慰安施設であるとの、それは、彼らなりの職業意識なのかもしれない。
「5時間目は、お風呂の入りかたなのよねぇ。どうしてそれが授業かって、思ってるでしょ。でも、これはね、保健の授業
なのよぉ。」
 エリカの声は男心をくすぐるような甘い声だ。タイトな白いスーツは、肉感的な体のラインを覆い隠すどころか、むしろ
強調している。隊員たちは、これから始まることを予想して、期待に胸をふくらませている。
「女子は、これから男の人と一緒にお風呂に入る時は、今日の授業で習うことをしっかり思い出して、楽しく入ってね。」
 エリカが女生徒たちの方を向いて、そう言った。授業に出席しているのは、イメージCMで話題になっている4人を含
む2年生の女生徒だった。いずれも清楚で可愛らしい制服姿で隊員たちの前に立っている。
「おい、あの子、CMに出てた子だぜ。」
「ホントだ。あっ、あの子もだ。最後に『守って…』って言う子。」
「インタビューに答えてた子もいるじゃないか。俺、ああいう優等生、タイプなんだよな。」
「ホントに女子高生だよ。ホントに一緒に風呂に入って、エッチなことしていいのか。」
 隊員たちが興奮した様子でしゃべり合う中、女生徒と隊員とのペアが決められていく。もちろん、誰とペアになるか
は、男の希望で決められるのだが、CMに出演している4人の相手は希望者が集中し、結局、抽選で決められた。
「じゃあ、女子は男の人の服を脱がせてあげなさい。脱がせた服は丁寧にたたんでね。」
 エリカが指示すると、女生徒たちは恥ずかしそうな表情を浮かべ、慣れない手つきでペアになった男の服とズボンを
脱がせていく。
「男性がパンツ一枚の姿になったら、膝にバスタオルをかけて、今度は自分が服を脱ぐのよ。」
 女生徒は男がじっと見つめる前で制服を脱いでいった。少女の肌が露わになるにつれて、男の膝にかけられたバス
タオルがムクムクとテントを張ていく。
「ただ脱ぐんじゃないわよ。キスしたり、オッパイを触ってもらったり、パンツの上からおチンチンを舐めてあげたりして、
十分、気分を出しながら、裸になるのよ。」
 下着姿になった女生徒の何人かが、エリカの命令で男に抱きつくようにして唇を重ねた。相手の男は興奮して女生徒
の体を愛撫する。それを見ていた隣の男がペアの女生徒のブラを外し、乳房を揉みしだく。レイプ同然に男に襲い掛か
られている女生徒もいる。たちまち脱衣場のあちこちで裸になった男女が抱き合い、体をまさぐり合っていた。
「ふふふ、だいぶ気分が出てきたようね…。じゃあ、ペアで仲良く手をつないでお風呂にいくわよぉ。」
 自分も全裸になったエリカが言うと、裸になった参加者たちは、相次いで浴室に入っていった。
「最初はあたしがお手本を示すから、みんなよく見ててね。男の人は、あなた…」
 そう言うと、エリカは立派な体格をしたガッシリした男に手を差し伸べ、洗い場に置いてあったスケベ椅子に座らせる。
男は最も危険な任務に関わる部隊の責任者で、階級は大尉だ。
 エリカはボディソープをたっぷりと手につけ、豊かな胸に塗り付けると、胸を擦り付けて大尉の背中洗い始めた。プル
ンプルン震える乳房が男の背中に押し付けられて、マシュマロのようにつぶれる。男は気持ちよさそうに目を細めた。
「さあ、私のお手本はここまで。あとは、誰かにやってもらうわよぉ。はいっ、やりたい女子、手をあげて。」
 当然のことだが、誰も手を挙げない。ゾープランドという言葉は聞いたことがあっても、そこがどんな所か具体的には
知らない少女たちである。まして、そこで行われているサービスなど知りようもなかった。お手本として、みんなの前で恥
ずかしいサービスを実演してみせるのは強い抵抗がある。女生徒たちは一様にうつむき、しばしの沈黙が流れる。
「じゃあ、委員長の私が…」
 亜弓が一歩前に出た。男とのセックスを免れて以来、健気にも、他の女生徒たちができるだけ恥ずかしい目に会わ
ないよう、彼女はこういう役を自ら買って出るようになっている。
「あらあら、自分から名乗りでるなんて、あなた、ホントにエッチな子ね。」
 そういう亜弓の心情を百も承知しながら、エリカはわざとあきれたような声をあげる。うつむいて唇を噛む美少女の様
子を、男たちはニヤニヤ笑いながら見つめている。
「まず、オッパイで男の人の胸やお腹を洗ってあげなさい。」
 亜弓は体に泡立ったボディソープをつけると、男の前に跪き、抱きつくようにして胸と胸を擦りつけていく。大尉は満足
そうな表情を浮かべる。さっき、優等生タイプが好きだと言っていた男が、うらやましそうな顔でその様子を見ていた。
「それじゃあ、股間洗いしますねぇ」
 そう言うと、エリカが大尉の腕を持って水平に上げる。
「亜弓ちゃん、腕を跨いで、オ××コを擦りつけるのよ。」
 亜弓は一瞬ためらった後、あきらめたような表情で目を閉じ、男の腕を股間に挟むと、ゆっくりと擦っていく。ボディソ
ープでヌルヌルした肌と秘部の粘膜が擦れ合う感触を、少女は淫らで気味悪いものとして、男はこのうえない快楽とし
て感じた。
「どうですか。」
「いいよ、女子高生のオ××コの感触。」
 エリカの問いに、大尉はにやけた顔でそう答えた。亜弓は恥辱に耐えながら、上腕から肩、脇腹、太股、脚へと秘部
を押し付て、男の体をくまなく洗っていく。
「ほら、もっと腰を使って、お尻を振って!」
 エリカに命令され、亜弓は恥ずかしげにヒップをプリプリとゆすって見せる。そうして何度も性器を男の肌に擦りつけて
いると、いやがうえにも性感が刺激され、鼻にかかった吐息が漏れてしまう。
「あらぁ、亜弓ちゃん、上手よぉ、すぐにでもお店でソープ嬢やれるわよぉ。真面目そうな顔して、アルバイトしてたんじゃ
ない?」
 エリカがからかうようにそう言って、ケラケラと笑い声をあげた。好奇心に満ちた目で亜弓を見ていた男たちの数人が
つられて、笑った。亜弓は屈辱に目頭が熱くなるのを感じた。
「さあ、他の人たちも、ペアの男の人を相手にやってみなさい。」
 洗い場に並んで、女生徒たちはペアの男性を相手に恥ずかしいサービスを始めた。エリカは彼女たち一人一人の様
子を見ながら、個別に指導していく。
「男の人の指先を咥えて、舌で舐めてあげなさい。」
 エリカに言われ、茉莉はペアになった男の指を口に含むと、ぎごちなく舌を絡ませる。
「おチンチンを舐めてるつもりで、一本ずつ丁寧にしゃぶるのよ。」
「は、はい…」
 茉莉が頬を染めながら、自分の指を舐め洗いする様子を、椅子に座った男は満足げに眺める。彼が防衛隊に入隊し
たのは、例のCMがきっかけだった。憧れの、一度会ってみたいと思っていた美少女が、あろうことか全裸で自分の指
をしゃぶっている、それは夢だとしか思えない光景だった。
「その指先を、指で揉みながら自分のうなじ、オッパイ、アソコに持っていって、触らせてあげなさい。」
 茉莉はエリカの命じるままに、おずおずと男の指を自分の体にあてがっていく。待ってましたとばかりに男の指は、い
やらしい動きで少女の滑らかな肌を這い回った。
 琴美とペアになった男は、泡だらけになって太腿に跨っている彼女の豊かな双乳を、夢中で揉みしだいていた。
「あなたは、その大きなオッパイでサービスしなきゃね。」
 エリカはそう言うと、男の開いた太股の間に琴美を跪かせる。
「オッパイにおチンチンをはさんで、パイズリしなさい。」
 それを聞いた相手の男は、興奮した様子で琴美の前に大きく勃起した男根を突き出す。あまりに勢い良く突き出した
ために、鈴口から体液が滲んだ肉棒が、ためらう琴美の唇に押しつけられる形になった。
「いい?時々手を伸ばして、おチンチンに触るのを忘れないでね。反りが出てきたら放して、下に向いたらまた触わる。
焦らすのよ。」
 女生徒たち全体にそう声をかけて、エリカは側にいた由香を指導する。
「それじゃあ、指を壷洗いしましょう。壷試しとか指ツボとも言うわね。男の人の指をオ××コに入れて洗うのよ。」
 由香は恥辱に顔を歪めながら、男の指を一本一本、順々に自分の性器の中に入れていく。
 CMで初めて見た時から、男はいつも由香はのことを空想してオナニーしていた。それが今、空想ではなく、現実にそ
の少女の秘密の場所に指を挿入している。男は夢中になって一本ごとに由香の中を掻き回した。
「あ、ああぁ…」
「ほらほら、何をよがってるの、あなた。指を洗ってあげてるのよ。」
 由香はエリカに命令されて、自らの手で男の指を出し入れする。男は二本、三本と膣に埋めていく指を増やしていく。
その度に由香は喘いで双臀をゆする。
「みんなよく聞いて。椅子の座るところが凹んでるでしょ。そこに手を入れて、股の間やお尻の穴もよく洗うのよ。後で自
分がそこを舐めるんだからね。キレイにしとかないと、汚れたおチンチンや肛門を舐めなきゃいけなくなるわよ。」
 エリカが意地悪な口調で言い、楽しそうに微笑む。ソープの女王とまで呼ばれた彼女だったが、心の中には、短大を
卒業し、就職先を見つけることができなくて、仕方なく風俗の仕事を選んでしまったことへの後悔が常にあった。そうし
た思いから、清楚で初々しい少女たちが目の前で墜ちていくことに、ゾクゾクするような喜びを感じているのだ。
 最初のボディ洗いが終わると、シャワーを浴びて湯船につかる。そして上がってきた生徒たちに、エリカが言った。
「さあ、マットプレイに入るわよぉ!」
 エリカが慣れた手つきでローションをマットに広げる。女生徒たちも、彼女に倣って、洗い場にずらりと並んだマットに
ローションを塗っていく。
「まずはうつ伏せよぉ」
 男たちがマットにうつ伏せになると、少女たちはエリカに指導されながら、男の体に温かいローションをたらしていく。
「まずは背中にオッパイを擦りつけながら、背中の辺りを舐めなさい。」
 女生徒たちは男の肌に乳房を擦りつけ、舌を這わせながら、エリカの指示に従って徐々に下半身におりていく。そし
て、うつ伏せにされた男の股間に手をやり、しごいていく。
「おチンチンはデリケートだから、優しくシコシコするのよ。そうそう…。そして、今度は男の人のお尻をひらいて、肛門を
丁寧に舐めてあげるのよ。」
 マットの上で恥態を繰り広げる女生徒を順々に回って、エリカは様々なサービスを伝授していった。
「じゃあ体を起こして、男の人を仰向けにして、キスしてあげなさい。」
 隊員たちが一斉に仰向けになると、女生徒は男に抱きつくようにして、肌と肌、唇と唇を重ねあわせる。
「唇だけじゃなくて、いろんなところにキスなさい。」
 エリカが茉莉の頭を押さえてリードする。少女はその動きにあわせて、仰向けになった男の乳首を舐め、ローションで
ヌルヌルになった乳房を擦りつけながら、男の胸から腹へと舌を這わせていく。
「さあ、フェラチオするのよ。」
 浴室の中にエコーの効いたエリカの声が響いた。女生徒たちは柔らかな手で大きく膨らんだ肉棒をしごくと、愛らしい
口にくわえていく。
「さあ、ある程度大きくなったら、シックスナインの体勢になって、アソコを触ってもらいながらフェラしなさい。」
 女生徒たちは恥ずかしさを堪えて、隊員の顔の上で秘所を晒す。獣の様に互いの性器な舐め合い、やがてあちこち
で男女の喘ぎ声が聞こえるようになると、エリカは最後の指示をした。
「私たちソープ嬢だから、ここで素股でするんだけど、あなたたち慰安嬢は、当然、本番をするのよ。男の人の体に跨っ
て、自分からおチンチンを中に入れなさい。」
 もはや抵抗することなどあきらめてしまったかのように、少女たちは男の体を跨ぎ、自ら腰を落として肉棒を挿入して
いく。
「ただし、あなたの相手は私がするわ。」
 エリカが、亜弓をどかせながらそう言った。男は一瞬、不服そうな表情を浮かべたが、一旦、エリカが絶妙のテクニッ
クで男の性欲を処理し始めると、すっかりその快楽に没頭してしまった。

 校長室に帰ってきた諸藤に電話が架かってきた。須崎の秘書、岸上伸朗からである。
「これはどうも。選挙勝利、おめでとうございます。」
 諸藤は無愛想な彼にできるかぎりの愛想を捻りだして言った。先日あった選挙では、当初、不利だと言われていた自
政党が、低投票率のもと、連立を組んでいる安心党の力を借りて圧勝を納めていた。さほど気の利いた話題ではない
が、それが諸藤に思いつける精一杯の社交辞令なのである。
「まあ、そもそも見えていた勝負だからな。」
 岸上はそう言いながらも、まんざらではない様子だ。
「さすが岸上先生。自信家でいらっしゃる。」
「なに、わが国民は選挙権の使い方を理解していないからな。そもそも『誰がなっても同じだ』とか『興味がない』とか言
って、投票に行かない者も山ほどいるのだ。そうなれば、安心党の組織票で楽に勝てる。票の出方など、事前に予想
可能なのだよ。…というのは、実はオヤジの受け売りなんだがね。」
 須崎と岸上はそう年齢が離れているわけではない。それに、スポーツマンで若々しい印象の須崎を「オヤジ」と呼ぶの
は少しイメージが合わないのだが、岸上は秘書として、須崎のことをそう呼んでいる。
「しかし、有事法制が発動しているのに、選挙を実施するとは意外でした。有事を理由に実施延期をされるのかと思っ
ておりました。」
「勝てるとわかっていれば、むしろ、きちんと実施した方が、ガス抜きになっていいじゃないか。それに、選挙に勝てば、
どんな政策でも国民の支持というお墨付きが与えられるんだ。なかなか使い勝手のよい制度さ。」
 そう言って、岸上は愉快そうに笑う。何が可笑しいのかわからないながら、諸藤も追従して軽く笑ってみせた。しかし、
次の瞬間、電話も向こうで声のトーンが少し陰った。
「ところで君、アルメイア軍の慰安に難色を示しているそうじゃないか。伊東君がぼやいていたぞ。」
 やはりそれか、と諸藤は苦虫を噛み潰したような顔をする。電話なので、相手に見える心配はない。
「星園は防衛隊のために作られた施設ですので。」
  しかし、不機嫌な声は隠しようがなかった。どちらかと言えば国粋主義に近い思想の持ち主である諸藤にとって、ア
ルメイア兵に「癒し」の館の慰安嬢を玩具にされるのを想像すると、不愉快な思いを抑えられない。
(あいつら、無茶苦茶をしやがるからな…)
  諸藤の脳裏には、先ごろ明らかになったフサイン共和国での捕虜収容所の件が浮かんだ。電気ショックで拷問をし
たり、裸にして性的虐待を加えたり、軍用犬をけしかけたり、あげくのはては虐殺している。女子高校生の強制売春施
設を作った諸藤だったが、彼には彼の美学がある。殺伐たる虐待と虐殺だけが渦巻く施設というのは、性に合わない。
「何を言っているのかね。そもそも防衛隊はアルメイアのための軍隊だ。しかも、有事法制が発動され、アルメイア軍支
援法によって、日本の施設や物資はアルメイア軍による使用が何よりも優先される。君も十分知っているだろうが。」
「それは、承知しておりますが…」
  そう言いながら、諸藤は苦々しい思いを抱いていた。彼は平和主義者ではなく、むしろ軍国主義者である。しかし、そ
の彼の目から見ても、今の「有事法制」の内実はアルメイアに奉仕するための法制度であると映る。
「まあ、前向きに検討してくれたまえ。」
「はあ…」
  諸藤の返事は煮え切らない。そこで岸上は、わざとらしく口調を変えて、思い出したように言葉を継いだ。
「そうそう、オヤジの伝言があったのを忘れていた。君が言っていた、新たな慰安嬢の供給だがね。全国の公立高校か
ら容姿のすぐれた女生徒に奉仕活動として、参加させる仕組みを作らせることで、文部省と調整に入ったよ。まあ、上
手く行くかどうかは、これからの『調整』如何だがね。」
 それが、見返りというわけだ。須崎はどうやら自分を交渉相手として認めているらしい。自分が須崎の不興を買うこと
を期待して動いたらしい伊東の思惑が外れたのも小気味がよかった。
「わかりました。」
 諸藤は納得した声で、そう答えた。女生徒たちが施設に慣れてしまい、初々しさを失えば入れ替えることもできる、そ
の代償であれば、粗暴なアルメイア兵を受け入れることはやむを得まい。

 


 
 「国防省附属「星園・癒しの館」目次へ
 
 「Novels」へ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ 
動画 アダルト動画 ライブチャット