国防省附属「星園・癒しの館」
 
第5章 荒ぶる来訪者 4
 
 夜の闇が濃くなった体育館の裏。かつて人目につかないように茉莉と会いたい時、待ち合わせたその場所に、那須
信彦は立っていた。今はまだ、この「館」の中で人目につくわけにはいかない。
 しばらくして、待っていた相手がやって来た。会ってうれしい相手ではないのだが、自由と引き換えに彼に与えられた
「任務」なのだから仕方ない。
「よう…」
 元担任の前川であった。信彦は無言で軽く会釈する。星園高校の頃から、生徒の管理と出世にしか興味を持とうとし
ないこの教師を、信彦は軽蔑し、嫌っていた。
「これを、滝川さんに渡してくれ…」
 前川は前置きもなくそう言うと、1冊のファイルを差し出した。信彦は手にしたファイルをパラパラとめくってみる。その
中身が何かわかった途端、彼は食い入るように見つめ、読み耽った。そこには、星園高校が「癒しの館」になってから
の全てが、明瞭かつ簡潔に書き記されていた。
「厨房の作業員じゃなくて、教師として雇って欲しいんだ。」
 前川はいきなりそう言った。信彦はうんざりしたような表情を浮かべて、彼の顔をみつめる。自分のことしか考えな
い、こんな大人たちが為政者を野放しにして、若い世代に苛酷な時代をプレゼントしてくれたのだ。有事法制も、「国防
の義務」を定めた憲法も、彼らの無関心のおかげで、やすやすと決められ、実際に血を流す自分たちには意見を言う
チャンスもなかった。「憲法改正の国民投票」ですら20歳以上の「大人」にしか、投票が認められなかった。そんなこと
を思って、シニカルな気分になった信彦などお構いなしに、前川が言葉を続ける。
「この慰安施設は、高校をそのまま再現していて、教師役もちゃんといる。俺は本物の教師だったんだ。滝川さんに口
を聞いてもらいたいんだよ。これは、そのための手土産だ…。」
「滝川さんは、このファイルのことを知ってるのか?」
 前川の言葉を遮って、信彦が尋ねる。その口調は敬語ですらない。
「いや、まだ知らない。しかし、知れば、驚くぞ。残念だな、俺が直接連絡を取ることができればいいのに…。」
 前川をはじめ、この施設には、防衛隊情報部の滝川が協力者として抱えている者が紛れ込んでいる。滝川はそうした
者との直接の接触を避け、信彦を連絡役に使っているのだ。
「那須、頼んだぞ。」
「ああ…。」
 信彦はどこか上の空で返事をする。その視線はまだファイルの文章を追っていた。この施設のことを社会に向かって
告発するために書かれた文書。書いた人物にも心当たりがある。前川とは対照的に、信彦が唯一尊敬していた教師の
顔が浮かぶ。信彦の心は激しくかき乱された。
「しかし、お前はうまいことやったよなぁ…、同級生がみんなフサインに送られているのに、情報部の将校とつながりを
持って、一人だけ免れるなんて…」
 その言葉を聞いて、信彦の頬にサッと朱が射し、キッとした表情で前川を睨んだ。しかし、前川は一向にひるんだ様
子はなく、ニヤニヤ笑っている。純粋で正義感の強かった少年が、自分の水準にまで落ちて来たことを喜んでいるの
だ。
「用件が終わったのなら、もう行くぞっ!」
 語気を荒げてそう言うと、信彦は前川を残して、暗闇の中に消えて行った。

「さあ、起きなさい。交替よ。」
 体を揺すられて、由香の意識が戻った。見ると、二十歳代後半ぐらいの、知らない女が彼女をのぞき込んでいた。目
元のパッチリした華やかな顔立ちの美人で、ヘアスタイルは由香に似たショートカットだが、由香に比べてぐっと大人っ
ぽく、水商売の女が持つコケティッシュな艶っぽさを、香水の匂いとともにあたりにふりまいている。由香が持っている、
凛々しさと可憐さがバランスを保った少女特有の魅力は既に卒業してしまっているようだった。
「ホントは、もうちょっと早く来る予定だったんだけどね。あちこちで防衛隊の有事検問にひっかかっちゃったんだ。カイ
ゲンレーだもんね。いつから、この国はこんなに窮屈になっちゃったのかしらね。」
 そう言いながら、女がバスローブを投げてよこした。
「さあ、これを着て。あなた、これから、別の所に行かなきゃならないらしいよ。ホントは、私たちがくれば、休めるはずだ
ったのにね。」
「あ…、あなたは…」
「そうね…、あなたの影武者をお金で引き受けたデリヘル嬢…、名前は『由香』でいいでしょ…」
「影武者?」
 そう言えば、女はどことなく由香に似ていなくもない。
「アルメイアのスケベな男たちの相手は、手持ちの駒のあなたたちではなく、私たちに任せようって考えた人がいるって
わけよ。まっ、アウトソーシングってところね。私、フーゾクの前は派遣社員だったから、その時と同じね。正社員になり
たくても、就職口がなかったのよね。」
「は、はぁ…」
 なんとなく事情はわかってきたものの、今一つピンとこない様子で、由香は、もう一人の『由香』を見つめた。この人が
自分の代わりに何十人もの男とセックスするのだろうか。
「影武者は何人もいるから、休み休みやれるんで、心配しないでいいわよ。」
 勘の良い女性らしく、由香の心を読んだかのように、サバサバした口調を作って『由香』が言う。
「さあ、熱いシャワーを浴びてから行くといいわ。それぐらいの時間はあるはずよ。女の子はどんな時でもきれいにして
いないと、がんばれないものよ。」
 そう言う女の表情は優しく、由香は風俗嬢を、風俗の仕事をしているというだけで軽蔑していたのを反省した。彼女た
ちも、いろいろと事情があって、こういう仕事に就いたのだろう。
「ありがとう…、ございます…。」
 由香は『由香』に頭を下げると、簡易ベッドから降りて立ち上がった。まだ、股間に異物が入っているような感じがし、
痺れがあるものの、なんとか普通に立って歩けそうだ。
「…がんばってね…」
 あれこれ言おうとしても、言葉を見つけることができなかった『由香』は、ただそう言って、由香の華奢な肩をギュッと
抱いた。

 慰安ブースの前には長蛇の列ができ、一向に列が短くなる気配がない。兵士の数に比べて慰安嬢の数が少なすぎる
のだ。最初はいろいろとエロチックな演出でごまかしてきたものの、欲望をぶつける女体を求めている男たちは、次第
に我慢ができなくなってきた。
"おい、いつまで待たせる気だ!共同作戦計画で、有事の時には、空港も、港も、道路もアルメイア軍に優先的に使わ
せることになってるんだ。ここの施設も同じだろ!"
 不満げに怒鳴るアルメイア兵のところに、ふいに下着姿の女が近づいて来た。女はいきなり兵士の肩に手を回してキ
スをし、舌を絡めてくる。男もくねくねと舌を動かし、積極的にディープキスに応じた。
"こんにちは、私、ルイって言うの…。よろしく。"
 挨拶がわりにキスをした女は、意外と流暢な英語を話した。高級なネコを思わせるなかなかの美人で、キレの長の眼
に人を惹きつける魅力があった。アルメイア兵の表情が一気に緩んだ。
"俺はジェイムズ、ジムって呼んでくれ。"
 ニヤリと笑いながら、ジムはルイのブラジャーを捲り上げると、乳房を揉み、乳首を吸っていく。
 ジムの隣では別の兵士が女を全裸にしていく。見ると、体育館には次々に女が入って来て、兵士たちを誘っている。
明らかにティーンではない娘がほとんどだが、兵士たちにはどうでもいいことだった。誘われるままに男は女を抱き、体
育館の中はいつしか乱交パーティになった。
 ジムの目の前で戦友の黒人兵が仰向けに寝た。その上に髪の長い女が馬乗りになり、肉竿を掴んで自分の淫裂に
押し込んでいく。
 乳房をこってりと揉みにじった後、ジムも負けずにルイを四つん這いにし、パンティをずり下ろした。秘苑も菊蕾も無防
備に晒される。
"日本の憲法が変わって、防衛隊はアルメイア軍と一体で世界に出て行く時代になったんだ。俺も日本の女と一体にな
るぞっ!"
 などと、冗談とも何ともわけのわからないことを言いながら、ジムは、ヌルヌルになっているルイのその部分に自らを
あてがい、一気に貫いた。
"あっ!…、あぁぁぁっ!…"
 ルイは四つん這いの身体を仰け反らせて絶叫した。
"ああん、きついわ…。でも、感じるわ…!"
 日本人にはない極太のペニスを挿入され、ルイがよがり声をあげた。
"どうだ、いいか。いいって言ったら、もっと根元まで、入れてやるぞ"
 ジムはルイを焦らして、肉棒の先端を出し入れしている。
"ああ、いい…、いいわぁ…"
 ルイの顔が艶かしく歪んだ。とたんに、ジムの肉棒が、ルイの子宮まで達するほどの深さで突き入れられた。窒息す
るようなひっ迫感の中で、ルイは全身をわななかせていった。圧倒的な力の前に、演技ではなく、本当に性感に火をつ
けられてしまったのだ。
「あ、あっ…、ああぁ!」
 ジムの腰がピストン運動を始めた。ルイは本気で感じ、淫裂から蜜を垂らしている。ジムも爆発寸前になっていく。2
人は一緒に昇り詰めていった。
"出る、出るっ!"
「あぁっ!…いっ、…、イクっ…イクぅっ!」
 身体を支えていた両腕がかくっと落ちて、ルイは絶頂に達した。ジムは己が放出した迸りが、彼女を満たしていくのを
感じた。

 亜弓と茉莉は食堂を出て、職員室や館長室がある管理棟に向かっていた。そこにある貴賓室に呼ばれていたからで
ある。
「さあ、急ぎましょう。早く行きたいわけじゃないけど、遅れればそれだけ、やっかいなことが増えそうだわ。」
 中庭を横切る時、亜弓はそう言って、後からやってくる茉莉を振り返った。すると、ふいに大柄な男の影がさした。一
瞬、担任の平沼かと思ったが、彼は食堂に残ったはずだ。
「あらっ、誰かしら?」
 亜弓がそう言ったと同時に、いきなり屈強な数人のアルメイア兵が彼女たちを取り囲んだ。少女たちと比べると大人と
子供ほども違う巨体に囲まれると、いきなり周りに壁がそびえ立ったようだ。
"よう、お嬢さんたち、俺達と遊ぼうじゃないか。"
 正面にいる男がそう言いながら、鋭い目をしてじりじりと2人に近づいてくる。それは「狩」の獲物を見つけたジョージ・
ウッド隊長であった。思わず後ずさりした亜弓の両肩を、後ろに回り込んでいた兵士ががっちり掴んだ。ひときわ大柄
なスキンヘッドの狂犬リチャード・シモンズである。その横では、副隊長のマイズナー軍曹とドナルド・ゲーリーが茉莉の
腕を掴んでいる。
「きゃっ!!」
 逃がれようとする亜弓の体を、ウッドが力いっぱい抱き寄せた。
"離してください!私たちは、アルメイア軍関係者の指示で、VIPルームに向かう途中ですっ!"
 相手が理解できるように、努めて冷静に、英語で説明しようとする亜弓だったが、相手は全く意に介する様子はなく、
亜弓の両肩を押さえつけるようにして、地面に押し倒した。
"やめて!いやっ、離して!"
 亜弓は激しく抵抗した。これは、完全にイレギュラーな事態のようだ。その思いが、癒しの館のルールに屈服させられ
ていた亜弓の心に、理不尽なことを許せない本来の気性をよみがえらせた。亜弓はのしかかってきた男の腹を思いっ
きり蹴った。
"このアマっ!何しやがる!"
「きゃぁぁっ!」
 思いがけない抵抗にあった男は、逆上し、亜弓の頬を思いっきりひっぱたいた。
「うぅぅ…」
 軽い脳震盪を起こしたようになり、亜弓が呻き声をあげた。
"いいか。おとなしくしてれば、殴ったりはしないですむんだ。"
 ウッドはそう言いながら、亜弓の制服のボタンを外す。白いのブラジャーが露出した。スカートをめくり、白いパンティを
脱がすと、ウッドはスカートの中に顔を入れ、深呼吸をする。
"へへっ、いい匂いがするぜ。"
 ウッドはスカートに顔を突っ込んだまま、白い太ももをなでまわした。その間に、シモンズがブラジャーを荒々しくむしり
取り、露わになった乳房を鷲掴みにして、荒々しく揉みしだく。
「やめてっ!いやぁぁっ!」
 もはや英語を話す余裕すらなく、亜弓は悲鳴をあげた。これは、名実ともにレイプそのものなのだ。
 その横では、マイズナーが茉莉の穿いていたパンティを引きずりおろした。茉莉は身体をくの字に折り曲げ、露出した
下半身を男の視線から隠そうとする。とたんにゲーリーが彼女の両脚を掴んで、おもいきり開かせる。
 マイズナーは茉莉の陰部を指でまさぐった。たたみこまれた肉襞が抉り出され、花芯を嬲られる。
「い、痛いっ!」
 敏感な部分を乱暴に弄られて、茉莉が悲鳴をあげた。マイズナーは笑い声をあげながら、可憐な花びらを摘み取って
しまうかのように彼女の股間を掴むと、太い指を膣内に挿入して荒々しくかき回す。
「いやあぁ…、痛いっ…、やめて…、やめて下さいっ!」
 茉莉が泣き叫び、身をよじって、愛撫というよりは拷問と呼ぶのがふさわしい男の攻撃からなんとか逃れようとする。
 "おいしそうなオ××コだ。"
 ウッドは、亜弓の秘部を覗き込んで、興奮した口調で言った。
「やあっ、いやぁ!」
 男の荒い息が恥丘にかかると、亜弓は鳥肌をたてていやがった。これまでにも様々な淫らな行為をさせられてきた
が、それでも、暴力的に押さえつけられて凌辱されることには、本能的に激しい恐怖と屈辱を感じる。
 ウッドは亜弓の股間に顔を埋めると、ゆっくりと花弁に舌を這わせた。赤い舌が少女の秘部をまさぐり、亀裂にそって
チロチロ動く。
「あっ…、あっ…、あぁっ!はぁんっ!」
 亜弓は頭を仰け反らせて身悶えし、喘ぎ声をあげた。刺激に対する反応は、こんな場面でも痺れるような快感となっ
て、彼女を襲う。ウッドはチュパチュパと音を響かせ、溢れ出る愛液を吸い上げた。
「あぁ…、ん、あぁ…」
 亜弓は泣くような喘ぎをもらした。閉じた瞼が羞恥と発情で真っ赤に紅潮している。男は小さな突起を舌で包み込んで
転がし、膣に舌を挿入していた。
"いい声を出しやがる。本当はやりたいんだろう。"
"わはははは…"
 ゲーリーがおどけた声で言うと、男たちは亜弓と茉莉の羞恥心を煽るかのように、下卑た笑い声をあげた。屈辱の中
で少女たちは、男たちに体の隅々まで弄ばれ、悲鳴を上げ、泣き悶える。
"隊長、早くやっちまってくださいよ。俺、もう我慢できねえ。"
 しばらくして、シモンズが目をギラつかせながら言った。
"うるさいなぁ。よし、それなら一緒にやっちまおうぜ。"
"へへ、それじゃあ、俺は口でさせてもらおう。"
 そう言うと、シモンズは人一倍大きい肉柱をそそり立たせ、亜弓の顔を跨いでひざまづくと、ゆっくりと腰を下ろした。
恐怖に見開く亜弓の目の前で、巨大な肉の球根が、その毛の生えた裏側を見せてそそり立っていた。下から見るそれ
は、実際の倍以上もの大きさに見えた。
 シモンズは亜弓の鼻を摘まむ、息ができなくなって開いた彼女の口に、自慢のモンスター・コックを押し込んだ。
「う…、うぐぅっ…」
 喉まで肉棒を突っ込まれる度に、亜弓はえづきそうになって呻き声を漏らす。
"おら、やっちまうぜ…"
 そう言いながらズボンを降ろしたウッドは、勃起した肉棒を、彼の唾液でベトベトになった亜弓の性器に押し当てた。
亜弓は、なんとか抵抗しようとしたが、どうにも身体が動かなかった。
 今にも亜弓の体を貫こうとしたウッドは、ふいに後ろから肩を叩かれて振り返った。そこには、一人の日本人が立って
いた。やせ形で穏和そうな表情の男だ。
"なんだ、お前は?"
"あなたたちは、そこで何をしているんですかな?"
 その視線に気圧されて、ウッド隊の面々が一瞬、怯む。それは、穏和そうな表情とはまるで逆の、氷のような冷酷さを
秘めた視線であった。
"何をしようと勝手だろう"
"われわれはアルメイア軍の兵士だぞ。お前などに、とやかく言う権利はない。"
 一瞬怯んでしまったことを繕うかのように、ウッド隊の荒くれどもは、男を取り囲み、袋叩きにしそうな勢いを見せる。
一方、男の方は落ち着いた様子で、兵士たちを見ていた。
 その隙に、2人の少女は兵士の手を逃れ、どうなるのかと成り行きを見ていた。茉莉は、どこかでその男の顔を見た
ことがあると思った。一方、亜弓は男のことをはっきり覚えていた。
"それは違いますな。"
 そう言うと、男はポケットから、手帳のような物を取り出した。そこには、アルメイア政府のシンボルであるコンドルの
紋章が描かれている。
"私は、アルメイア軍憲兵隊の指揮下にあって、軍紀に関する調査を任務としている者です。"
 とたんにウッド隊の面々の顔色が変わった。
"これは、調査官殿、お役目ごくろう様。"
 ウッドがしどろもどろになりながら言った。男は、凄みのある眼差しで彼を睨むと、静かな口調でこう言った。
"慰安のサービスについては、施設側から説明があったはずですぞ。ここで、むやみやたらと、女に乱暴をはたらくこと
は許されていないはず。それに、この少女たちは、これから貴賓室でさる高官のお相手をする者たちです。こんなとこ
ろで味見をされては、皆様方の勤務評定に響くのではないですかな。"
 さすがのウッド隊の面々も、憲兵隊や男が仄めかした軍の高官を敵に回すのは損だと判断した。
 やりとりを見ているうちに、茉莉は、男が館の近くに引っ越して来て、時折あいさつをかわす相手だと気が付いた。ど
うやら、普通のサラリーマンではなかったらしい。
 一方、亜弓は、不審な顔で思考をめぐらせた。尊敬する父を転向させた男、ある意味で狂犬のようなアルメイア兵よ
りも憎い相手…。
(情報部の将校が、なぜ、私たちを助けるのかしら。)
「ありがとうございます。」
 茉莉は、心から男に感謝したが、亜弓の方は硬い表情のままだった。
「やあ、いつもお会いするお嬢さんと…、そちらのしっかりしたお嬢さんとは、初対面ですな。」
 そう言いながら、じっと亜弓を見つめる男の意図は明白だった。自分の身分を明かさないよう求めているのだ。
「さあ、行きなさい。急ぐように言われているでしょう。」
 男はにっこり笑って、2人を促した。
 少女たちが走り去ると、校舎の陰から、一人の少年が姿を現した。那須信彦である。
「あんなものでよかったかね?」
 楽しげな笑みを浮かべて、男が尋ねる。
「ありがとうございます。滝川さん。」
「礼には及ばんさ。しかし、ここで、あの馬鹿者どもから娘たちを救っても、それが彼女たちにとって良いことかどうかわ
からないぞ。あの娘たちが向かう所は、『クレイジー・アンディ』の所なのだから…」
 滝川はそう言うと、意味ありげに信彦を見つめた。
 


 
 「国防省附属「星園・癒しの館」目次へ
 
 「Novels」へ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ 
動画 アダルト動画 ライブチャット