国防省附属「星園・癒しの館」第2部
 
第5章 明日へ…  3

「今日から3年生の授業は、従軍に備えた特別カリキュラムとなる」
 担任の安達がそう言った。場所は星園中央公園、ここは昔、星園高校とともに城の敷地の一部をなしていた公園だ。
「この時間は、フィールドワークを行う」
 安達が女生徒たちを見渡した。
「戦場では、いつ、どこで慰安を行うことになるかわからない。宿営地やキャンプばかりでなく、灌木の茂み、瓦礫の蔭、
塹壕の中であっても、隊員たちの望みに応じて、または、彼らの士気を維持するために自ら、お前たちは身体を差し出
して、彼らの性欲の処理をする必要がある」
 女生徒たちは、お互いの顔を見合わせた。自分たちを待ちかまえる悲惨な運命に、その表情は一様に暗い。
「公園の中には10カ所のチェックポイントが作ってある。これから2時間で、その中から最低3カ所を廻り、付近にいる
男を誘ってセックスしてくるんだ。いいな!」
「…はい!」
 それ以外は認められていない返事をすると同時に、フィールドワークが始まった。
「あっ…」
 最初のチェックポイントを見つけて、女生徒たちは絶句した。公園を東西に横切る遊歩道、多くの人が行き交うポプラ
並木の道の真ん中に、チェックポイントの印である桜の紋章が立っていた。
 紋章の下には、その場での指示を書いたプラカードが掛かっている。
 目印に書いてある指示に従い、女生徒たちは一列に並んで街頭募金でもするかのように、通行人に向かって声をか
け始めた。
「私を…、私を抱いてください!」
「お願いです、セックスさせてくださぁい!」
「よろしくお願いしまーす!」
 通行人たちは最初、驚いた表情を見せていたが、彼女たちが星園の慰安嬢だと気がつくと、ニヤニヤ笑いながら、卑
猥な視線を向けて通っていくようになった。それは、女の子にとってこれ以上ない屈辱だった。
「ちょっと、インパクト不足ね。宮本さん、こう言ってみてよ」
 浜本明日菜が、隣の髪をツインテールにした女生徒の耳元で囁く。宮本比奈という、少し目尻の下がった可愛い顔立
ちのこの少女は、大人しく、ちょっとイジメられやすいタイプの娘で、星園高校時代から何かと明日菜の「パシリ」に使わ
れている。
「えっ…、そんな…」
 比奈の目が大きく見開かれ、イヤイヤするように首を振る。しかし、たちまち明日菜に睨みつけられ、おどおどした視
線を向けると、深呼吸をして目を閉じた。
「わ…、私の、お…オ××コに、オチ×チ×を入れてください!」
 比奈の高い澄んだ声は震えていたが、意外によく通った。可憐な女子高生が口にする卑猥な言葉に、思わず男たち
が足を止める。明日菜がすかさず、目についた男に近づき、甘く囁いた。
 明日菜は近くのベンチに腰掛け、見つけた男と濃厚なキスを交わし始めた。なかなかハンサムな青年を捕まえている
ところは、さすがである。
「わ…、私の、お…オ××コに…」
 そう言って、比奈が客寄せをする間に、他の女子は次々に相手をみつけていく。
「よし、俺のチ×ポを入れてやるよ」
 そう言いながら、父親ほどの年齢の中年男が比奈に近づいてきた。見るからに脂ぎった、比奈の苦手なタイプだった
が、そんなことを言える立場ではない。
「お願いします…」
 そう言うと、比奈はベンチの背もたれに手をついた。寒空のもと、男がスカートを捲り、パンティを引き下ろした。
「もっと、脚を開いて、オ××コがよく見えるように」
 太股をペチペチと軽く叩かれて、比奈が脚を開いた。遊歩道に向けてお尻を突き出しているので、通行人にも丸見え
になっているはずだ。
 男は掲げられたお尻を両手で掴み、左右に割った。大勢の視線を感じて、比奈の顔が真っ赤になる。
「あんっ…」
 比奈の割れ目に男の指が侵入し、敏感な粘膜に触れる。すぐに肉襞が濡れてきた。男はズボンのチャックを開けて、
小便でもするかのように陰茎を取り出した。そして、前戯もなく比奈の割れ目に押し当てる。
「いくぞ…」
 そう言うと、男は比奈の腰を両手で支え、ゆっくり腰を送っていった。男の怒張が少しづつ秘孔を満たしていく。
「あ、ああっ…」
「うおお…、気持ちいいぞ…」
 男は嬉しそうに腰を振り始めた。男の腰が比奈のお尻を叩く音が周囲に響く。
「あ…アン、アハン」
 男の腰の振りに合わせ、比奈も自ら腰を振っていた。腰をくねらせながら、男の怒張を身体の奥に引き込もうとする。
「上手に腰を使うじゃないか…、さすが星園の慰安嬢だ…」
 やがて、肉棒がピクピクと痙攣し、比奈は男が射精しているのを感じた。コンドームを着けているのがせめてもの救い
だった。
 チェックポイントに置かれている番号のついたゴムに男の精液を溜めて、持って帰ることで、きちんとチェックポイント
を回ったか、男とセックスしたかがわかる仕組みになっているのだ。

「どうしてだ!昨日まで、ちゃんと登録されてたぞ!」
 電話口に向かって、坂巻が怒鳴る。
「申し訳ございませんが、お客様の番号は、本日付けで抹消になっております」
 相手の口調は、にべもない。
 昨夜の「お仕置き」の後、由香を抱き、濃厚なセックスを楽しんだ坂巻は、翌日、次の予約を入れようとして、オペレー
ターに拒まれたのだ。
 「フサインの英雄」と賞された彼は、除隊にあたって、いつでも無料で慰安を申し込める「金バッチ」を授与されてい
た。登録番号を告げるだけで、ほぼ無条件で館に入り浸ることができたのだ。ところが、その資格が抹消されていると
言う。
「ど…、どうして抹消されたのか、理由を…、理由を言ってもらおう」
「申し上げるわけにはまいりません」
 激高する坂巻の耳に、慇懃無礼な声が響く。
「ふざけるな、お…、俺は、フサインの英雄だぞ!」
 そう怒鳴るなり、坂巻は手にした携帯電話を地面に叩きつけた。

 樫村美里が見つけたチェックポイントは雑木林の中にあった。ここに男を誘い込んで、林の中でセックスすることが求
められているのだ。
「あの…」
 美里は、近くを通った男性に声をかけた。
 第1ポイントのように人通りの多い所で、大声でセックスを呼びかけるのも恥ずかしかったが、こうして行きずりの男に
個別に声をかけ、こっそり誘うのも、また別の恥ずかしさがあった。
「お願いがあるんですけど…」
「うん?何?」
 相手がいかにも淑やかな美少女とあって、たいていの男は機嫌良く返事をしてくれる。
「わ…私と、セックスしてくださいませんか?」
 それこそ清水の舞台から飛び降りるような覚悟で、美里が恥ずかしい「お願い」を口にする。
 これまで何人かに声をかけたが、「何言ってんの?いきなり…」と困惑した様子で断られたり、あからさまに引かれた
り、「バカなことを言うな!」と怒鳴られたりした。むしろ、通常の神経からすると、そちらの方が当たり前の反応なのだ。
「すみませんでした…、ごめんなさい…」
 その都度、そう謝ってその場を逃げ去るのだが、顔から火が出るほど恥ずかしく、惨めな思いがする。
「ここで、私とセックスしてください…」
 清楚な女子高生にいきなりそう言われて、30歳台半ばと見える背の高い男は、怪訝そうな表情を浮かべた。それを
見た美里は、必死で説明を始めた。
「実は私、星園癒しの館で、慰安のボランティアをしているんですけど…、今、授業で…、ここで、誰か男性を誘って、セ
ックスしないといけないんです…」
 しばらく、呆気にとられていた男の表情が、やがて淫らに緩んだ。
「ふーん、なるほど、そういうことなら、仕方ないなぁ、セックスしてあげるよ」
「ありがとうございます…」
 丁寧にお礼を言うと、美里は制服を脱いで、芝生に敷いた。その上に男が寝ころぶ。慰安嬢のセックスは自らの体を
道具に、男に快楽を与えるためのものだ。それにふさわしい騎乗位が、基本の体位となっている。
「ああ…」
 情感たっぷりの声とともに、美里が少しずつ腰を沈めていく。暖かい粘膜が男のペニスを包み込んだ。
「ああっ、感じちゃうっ…」
 鼻にかかった声で告げながら、美里が体をゆっくり上下動させて、陰茎を擦る。



 美里が少しずつピッチをあげてゆく。腰の動きに合わせて、美里の股間から卑猥な音がたつ。硬い勃起と濡れた柔
肉が擦れあって、たまらない快感を男にもたらす。
「あんっ、あんっ、あんっ…」
 美里が上体を倒して、両手を前についた。花びらがまるで唇のように肉茎をくわえ、スライドされる。
「ううっ…、これはイイ…」
 そう言いながら、男はたまらず、下から腰を突き上げた。美里の腰は男の動きに合わせて、艶かしくうねり、喘ぎ声が
ビブラートする。
「あ…ああっ、い…イキそうです…」
 美里が上半身を仰け反らせた。そうして粘膜を収縮させ、これでもかとばかりに男根を締めつける。サラサラの黒髪
が揺れ、豊かな乳房が弾む。
「ああっ、いいっ!」
「ううっ!」
 お互いに腰を振り合い、上下から性器をぶつけ合う。美里が喘ぐのと男が果てるのは、ほぼ同時だった。

 編入試験の受験者名簿にザッと目を通した石堂は、諸藤に尋ねた。
「現在、慰安嬢は総勢で何名ですか?」
「200名です」
 諸藤に代わって南原が答えた。実務的なことはすべて、能吏と言って良い彼が統括している。
「すると、この名簿に登載されているのは、全校生徒の3分の1にも満たないのですね?」
「運動部に所属していない生徒もいますからな」
 石堂に密かな対抗意識を抱いているらしく、南原が素っ気なく答えた。
「それでは少し寂しいですね。せっかくの機会です。選考を兼ねた競技会として、華々しくやりましょう」
 石堂の方も南原にではなく、直接、諸藤に話しかける。
「まず、全校生徒を対象に体力検査を実施したいと思います。それをクリアした子と、推薦を受けた受験資格者が第二
次選考に挑むようにしましょう。その後に、マラソン大会か何かのイベントを入れてもいいかもしれません…」
 受験者以外にも運動に秀でた子が埋もれているかもしれない、あるいは中学までは活躍していたけど、高校では進
学に専念していて部活に入ってなかった子などはリストから洩れている可能性もあると、石堂はそう指摘した。
「まだまだシゴキ甲斐のある原石が眠ってますよ、おそらく」
 石堂の進言に諸藤が頷いた。体育科設立をアピールして、館の宣伝と予算拡大を狙う目論みもある。そのためにも、
一大イベントとして企画することは、効果的だと思われた。
「よろしい。もともと体育科は君に任せるつもりだ。編入試験の進め方も、君に一任しよう」
 諸藤の一言で方向性が決まった。

 吉永紗季は、児童公園でチェックポイントを見つけた。指示の内容を読んで周りを見渡す。
「遊具の一つを使って、セックスすること」
 ブランコ、シーソー、滑り台、鉄棒にジャングルジム、ここでは、卑猥なアイデアも試されているらしい。
 相手は比較的スムーズに見つかった。美少女揃いと近隣の学校にも噂が広がった2年生が入学するまでは、密かに
ミス星園に擬せられていたのは、紗季だった。今は大人びた色気も出てきて、人気の慰安嬢の一人になっている。
「エッチする前に、オ××コを見せてよ」
 男の要望で、紗季はジャングルジムを使うことにした。パンティを脱ぐと、片足をジャングルジムに掛けた。
 男はその場にしゃがみ込み、紗季の陰部を弄り始めた。割れ目を開き、指を挿入し、顔を寄せて匂いを嗅いでみたり
する。
「おい、あれ」
「なんだ、あれ!」
 ふいに甲高い声が聞こえた。紗季が顔をあげると、小学校高学年ぐらいの少年が数人、じっとこっちを見ている。
 特別区になっても、横木から住民のすべてが転居させられたわけではないし、隊員や関係者の中には家族連れで住
んでいる者もいる。児童公園で遊ぶ子供がいてもおかしくはないのだ。
「ちょ…、ちょっと待ってください、子供が見てる!」
 慌ててジャングルジムから脚を下ろそうとする紗季を、男の手が押しとどめた。
「いいじゃないか、少し早いが、性教育のいい機会だ」
 そう言うと、男は少年たちに手招きした。
「おい、坊主たち、こっちへ来い」
 少年たちは、お互いに顔を見合わせたり、膝でつつき合いながら、もじもじしていた。芽生え始めた性に対する好奇
心と、「イケナイ」ことだという罪悪感がせめぎあっている様子だ。
「一緒に、お姉ちゃんオ××コ、見ようぜ!」
「ちょっと、待ってください、ダメです、そんな…」
 紗季が狼狽えるのを後目に、男がさらに誘うと、とうとう一人の少年が足を踏み出し、それをきっかけに、全員が集ま
って来た。
「女の子にオチ×チ×がないのは知ってるな?」
「かわりに、小さなお尻がついてるんだ」
 男の質問に、一人の少年が答えた。
「オ××コって言うんだぞ。大人になったら、こうして毛が生えてくるんだ」
 紗季の股間をじっと見つめながら、別の少年が答える。恥丘は大きく盛り上がり、濃い目の恥毛が周りを縁取ってい
た。
「じゃあ、その小さなお尻の中には、何がある?」
 男の質問に、少年たちが首を傾げる。
「何があるか、開いて見てみろよ」
 好奇心が人一倍強いのだろう、最初に足を踏み出した少年が真っ先に手を伸ばした。小さな指が股間に触れ、紗季
の割れ目を開く。ピンクの小陰唇が見え、膣前庭も露わになる。
「なんかすげえや!」
 少年たちが興奮した声を漏らす。
「………」
 男と少年たちの会話を聞きながら、紗季は予想外の展開に、口を挟むこともできず、羞恥に身を震わせる以外には
何もできなかった。
「もっと開かないと、何があるか見えないぞ」
 男に言われて少年が、思い切り指を入れる。
「あれ、穴がある」
「これは、何の穴か知ってるか?」
「おしっこの穴?」
「違うな」
 男が言うと、少年たちが頭を振った。
「なんだ、知らないのか。遅れてるぞ」
 そう言うと、男はニヤリと笑って、ズボンのチャックを下ろした。
「穴の使い方教えてやるよ。ついでに、オチ×チ×の本当の使い方もな。オチ×チ×ってのはな、小便をするためにつ
いてるもんじゃないんだ…」

 滝川は館の中にある執務室で、レポートに目を通していた。
(将来、この国は大きな負債を背負い込まされそうだな…)
 レポートは国家財政の分析をしている部門からの報告である。有事を宣言して以来、国防予算は天井知らずの勢い
で増加している。いつものように「社会保障制度を維持するため」と言って消費税を上げておけば、当座はなんとかなる
だろうが、それでも、いずれは破綻するだろう。
 過去、多くの国が武力紛争や戦争に関わることで、巨額の財政赤字を抱え込んだ。少なくとも近代以降、それは勝敗
とは関係なかった。小国に武力侵攻したことが遠因となって、十数年後に国家体制が破綻した大国もある。アルメイア
も何度もそんな経験をしては、その都度、同盟国である我が国に、様々な形で負担の一部を肩代わりするよう求めてき
た。
 財政だけではない。戦争は人心を荒廃させる。とりわけ、心身ともに傷を受けた帰還兵の経済的困窮、治療、彼らが
起こす犯罪は、大きな社会問題になって、ボディブローのように効いてくる。
 政治家にどう助言をするか、しないか、滝川がそんなことを考えている時、ドアをノックする音が聞こえた。
 入ってきたのは、那須信彦だった。
「進捗状況を…」
 レポートから目を離さず、それだけを言った滝川に、信彦は目を伏せて答えた。
「鋭意調査していますが、まだ、誰が岩田らの協力者だったかは、わかっていません…、ですが…」
「信彦、信彦…」
 滝川はレポートを机に意置き、さらに弁解を続けようとする信彦の言葉を遮ると、彼に視線を向けた。
「私の目や耳は、君には節穴に見えるかね?」
 いっそ優しいと言ってよい声が、信彦の背筋に氷を当てたような寒さを感じさせた。
「だが…、これは君の任務だ…」
 その一言で、信彦は、滝川が自分にもスパイをつけていることを確信した。滝川を相手に隠し事をしても、やはり無駄
だった。
「ただ…、岩田の協力者の候補は2人まで絞りました。…いずれも、…2年生です」
 苦しげに言う信彦に、滝川が満足そうな笑みを浮かべて尋ねる。
「それで、その2人の名前は?」
「し…、柴崎由香と、…安藤、茉莉…」
 信彦は絞り出すような声でそう答えた。

「えーっ、嘘でしょ!」
 近藤晶子は思わず声をあげた。桜の紋章が池の真ん中に立っているのだ。その意味するところは明らかだった。
 安達は野外訓練だと言っていた。このチェックポイントでは、冷たい濁った水の中で、水中セックスすることが求めら
れているのだ。寒いうえに、緑色した汚れた水が膣内に入ってきそうで、晶子は顔をしかめた。
 その過酷な設定に戸惑いを覚えつつ、晶子はこのチェックポイントをパスするのは自分しかいないだろうとも考えてい
た。
 晶子は星園高校水泳部のエースと言われ、体育科設立があと1年遅ければ、間違いなく選抜されていた女生徒だっ
た。小さい頃からのトレーニングのおかげで引き締まった体は、スタイル重視で相手を選ぶ訪問客の人気を集めてい
た。
 他の子のために、自分がこのチェックポイントをつぶしておこうと思った晶子だったが、問題は、時ならぬ寒中水泳に
つきあう男がいるかどうかである。
 しばらくして、晶子はうってつけの相手を見つけた。海上防衛隊士官の制服を着た、体格の良い青年が通りかかった
のだ。
「…、訓練だと思ってお願いします…」
 横木基地配属の将校には、癒し館の存在を知っている者も多く、話は早かった。
「しかし、俺一人が訓練するというのも何だな…」
 そう言うと、男は携帯電話を取り出した。
「部下たちにも訓練させてやっていいか?」
「…はい…」
 晶子が答える。しばらくすると、ガヤガヤとした声が聞こえて、十数人の青年たちが集まって来た。
「なんだ、こんなに集まったのか!」
 士官が驚いたように言い、すまなそうな表情で晶子の顔を見た。
「いいですよ、私、みなさんとさせていただきます」
 心の中で泣きながら、ニッコリ笑う術を、この数ヶ月ですっかり身につけた晶子だった。
 白く繊細な指先が、ためらいがちにボタンを外していく。徐々にブラウスの前がはだけてきて、内側でブラジャーが悩
ましくチラつく。
 男たちの呼吸が荒くなる。隊員たちに囲まれて、晶子が服を脱ぎ始めたのだ。
 ブラウスとスカートを脱ぐと、士官がそれを受け取ってきれいに畳んだ。ぐるりと取り囲んだ男たちの視線を注がれ、
下着姿の晶子が恥ずかしそうに立っていた。
 このまま水の中に入ることも考えたが、そうすると、濡れた下着を着けるか、下着をつけずに学校に帰るかしなけれ
ばならない。ここは覚悟を決めて全裸になるしかなかった。
 ブラジャーを外し、パンティを脱ぐ。胸と股間を隠していたものの、美しいプロポーションに、隊員たちの視線が釘付け
になった。
 藻が浮かび、緑色した池の水に、冷たさと気持ち悪さを我慢しながら、晶子がゆっくりと入っていく。池はそれほど深く
なく、ちょうど晶子の肩が浸かるあたりまでであった。
「さあ、みなさんも…」
 晶子に呼ばれて、男たちは一斉に裸になった。そして、晶子を追って冷たい水の中に入る。
「おーっ!」
「冷たえっ!」
 思わずそんな声があがり、晶子が震える声で男たちに言った。
「さあ、こっちへ来てください」
「そうだ、早く、暖め合おうぜ!」
「人肌が一番だ!」
 口々にそう言いながら、男たちは待ちきれない様子で、晶子に抱きついていく。前にいた男が右の乳房にむしゃぶり
つくと、もう一人が左の乳房を揉みしだいた。
「ああん…」
 晶子が甘い喘ぎ声を漏らす。興奮した男たちは、もはや水の冷たさも気にならない様子で、彼女の体のいたるところ
を愛撫し始めた。双臀を鷲掴みにする手、お腹や背中、太腿を撫でさする手、水中に潜って足を撫でている男もいる。
「あんっ…」
 何本かの手が股間をまさぐってきた。花弁に触れ、肉層にまで指を突っ込む。思わず漏らした喘ぎ声が、男たちの
欲望をさらに刺激した。
「うっ!」
 晶子が呻いた。入り口を探してお尻のあたりを突ついていた亀頭が、ヌプリと中に入ってきた。

 その夜、信彦の指示で慰安がキャンセルになったミキは、由香の部屋を訪問することになった。
 昨夜、由香はストーカーまがいの変質的な客から、針を使ったSMプレイを強要されたと言う。慰安嬢の体は「国有財
産」なので、SMと言っても、館側の定めたルールに従う必要があるのだが、客は無許可で、プレイに使用する目的で
はない裁縫の針を使ったらしい。
 次に予約を入れていた客とトラブルになり、それで館の管理当局に通報が入ったのだ。
 幸い、由香の体に傷跡が残ることはないらしいが、今日は特別に慰安が免除され、寮の部屋で休んでいるという。信
彦は、これを絶好の情報収集の機会だと考えたのだ。
 目的はともかく、ミキにとっても、由香の部屋を訪問するのはうれしかった。
 真澄から、亜弓たちが慰安嬢を一つにまとめようとしていることを聞いたミキは、1期生に対して抱いていた反感をす
っかり改めていた。
 むしろ最近は、ミキ自身が追加募集された少女たちに働きかけ、彼女たちと1期生の溝を埋めようとしている。
 そして、親友の真澄を別にして、ミキが最も心を許し、尊敬しているのが、陸上部の先輩にあたる由香だった。ミキも
由香も、来週から始まる体育科への編入試験の推薦候補になっている。
「よく来てくれたわ、さあ、あがって」
 突然のミキの訪問を、由香も心から喜んだ。
 二人は、お茶とお菓子を準備し、普通の女子高生のように他愛のないおしゃべりを楽しんだ。
「ミキは、誰か、好きな人がいるの?」
 会話の流れで、由香がそう質問した。ミキの脳裏に信彦の顔が浮かんで、消えた。
「え、あ…よくわかりません」
 ミキが言葉を濁したのを見て、由香も黙り込んでしまった。性奴隷と言う以外にない毎日を送っている慰安嬢にとっ
て、恋愛やボーイフレンドの話は最も切なく、悲しい話題だ。話題にしたくないという女生徒も少なくない。
「これ、見ていいですか?」
 重くなった空気を変えようとして、ミキが手を伸ばしたのは、本棚にあったアルバムだ。
「いいわよ…、ちょっと恥ずかしいけど」
 表紙をめくると、入学式の写真だった。桜の木の下で、今よりも少しだけあどけない由香と琴美が、「横木市立星園高
等学校」と書かれた正門に並んで写っている。
 もともと由香の部屋にあったものが、ここに運ばれているため、アルバムは比較的最近の写真が中心で、圧倒的に
学校行事のものが多い。
 茉莉、亜弓…、1期生の女子が次々に出てくる。由香はいつも彼女たちの中心にいる。
 男子たちも写っている。豊川と大谷の姿を見つけて、由香とミキが同時に眉を顰めた。
 由香の胸がキュッと締まった。屈託ない笑顔の富田が写っている。心の動きを気づかれなかったかと、由香はミキの
表情を盗み見た。
 すると、ミキは一枚の写真を食い入るように見つめていた。
「ああ、それは、去年の春休みに仲の良いグループでスケートに行った時の写真よ」
 由香、琴美、茉莉、そして富田を含む4人の男子が写っている。
「こ…、この人?」
 ミキが指さしたのは、はにかんだ笑みを浮かべて茉莉の肩に手を置いている那須信彦だった。



 
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