サッカー部マネージャー物語

19

 選手の一人と一緒に、バスタオルを身体に巻いただけの格好で、麻美が部室に入って来た。その姿はこれまで以上
に艶っぽかったが、どことなく、すさんだような、投げやりな印象を与える。少なくともチーフマネージャーをしていた頃
の、颯爽とした印象は影をひそめていた。
「よーし、麻美、次は俺だぞ。」
 そう言って、黒坂が立ち上がり、麻美の腕を掴んだ。その声が心なしか上擦っている。
 入学した時、黒坂と麻美は同じクラスだった。入学式で初めて彼女を見た時の胸のときめきを、今でも黒坂は覚えて
いる。
 モデルなみのルックスとプロポーションに加えて、入学試験の成績はトップだったという。しかも、一流大学の教授を
父に持ち、祖父は大企業の社長という麻美は、入学当時から女王様のようだった。黒坂にとっては、「憧れ」の存在で
あり、高嶺の花でもあった。
 サッカー部にマネージャーとして連れて来られてからも、麻美は、一年生の時でさえ別格扱いされ、二年生の時には
先代のキャプテンから恋人のように扱われていた。三年生になってからの麻美は、チーフマネージャーとして、自分で
相手と時間を選べる立場になったが、どちらかと言えばあまりスレていない下級生を相手にしていた。そのために、こ
れまで黒坂が麻美を抱くことができたのは一、二度しかなく、今でも黒坂にとって、彼女は「憧れ」なのである。
「黒坂さん、8時までには終わってよ。」
 部室の真ん中で、京子とお喋りをしながら、マネージャーたちのスケジュール調整をしていた聡子が言った。
「え? それじゃあ、あと一時間しかないじゃないかよ。」
 黒坂は不満そうに口を尖らせたが、聡子はまったく意に介した様子もなく、黒坂にというよりは、麻美に向かって言っ
た。
「麻美さんは『アルバイト』があるのよ。今日は少なくても三人はスケベオヤジの相手をして、お金を稼いで来てもらわな
きゃいけないんだから。」
 聡子は、連日ほとんど休む間もなく選手たちの相手をするように麻美のスケジュールを組んでいる。そのうえ、夏の合
宿まで二ヶ月を切っている今、香川に命令された300万円を稼ぐためには、毎日のように街に出て、複数の男に身体
を売らなければならなかった。
 もちろん、麻美ほどの美少女なら、そこまでしなくても、もっとワリの良いアルバイトの口はいくらでもあった。しかし、
麻美を辱めることを目的とする聡子は、街に立って売春すること、一回は3万円とすることを決めてしまい。それ以外の
方法で稼ぐことを許さなかったのである。もちろん、三年生には認められている3日の免除日も、売春はその対象外に
なっていた。
「チェッ、しかたないなあ…」
 黒坂はそう言いながらも、素直に従うことにした。なんといっても、聡子がチーフになってから、麻美を抱ける機会が圧
倒的に増えたのだ。
 黒坂は、聡子や京子、それに部室に残っている部員たちみんなが見ている前で麻美のバスタオルを外した。思ったと
おり、バスタオルの下は何もつけていなかった。

 麻美は、繁華街の風俗営業店が並ぶ街角に立っていた。
 身体にピッタリ吸い付くような白い半袖のサマーセーターが、モデル並みのプローションはもちろん、ノーブラの胸の
突起まで浮かび上がらせている。レザーのタイトなミニスカートは腰から尻にかけてのラインを強調し、男の視線を奪
う。しかも、スカートの長さは股下5センチ程度しかない。すらりとした長い脚が太腿まであますところなく露わになり、動
く度に下着がチラリチラリと覗くのだった。
「おじさん、私とセックスしましょ。3万円でいいわ。」
 麻美は、決められたセリフでサラリーマン風の男を誘った。特段媚びることなく、淡々と、むしろ、そっけなく誘うのだ
が、それが、とびっきりの美貌とあいまって独特の魅力を生み出している。
「えっ、3万円かい?」
 男が聞き返した。早くも欲望でギラギラした視線を麻美の身体に這わせている。「ええ、そうよ。2時間で3万円ポッキ
リよ。」
 最初の一週間は屈辱で顔がこわばったセリフも、だんだん何も感じなくなってきていた。ちょうど、「サッカー部のマネ
ージャー」であることを受け入れた時のように。
「ホントかい?」
 男は今にも財布を取り出そうとした。
 …が、しかし、急に思い直したように、麻美に手を振って見せた。
「やめとくよ、君みたいな可愛い子とホンバンをやれるわけないだろ? 店に着いたら、他の子と交替か? それとも強
面のお兄さんの登場か? どうせそんなとこだろう。」
 そう言うと、未練を振り切るように、男は急いでその場を立ち去ろうとする。 麻美は慌てて後を追った。街に出て二時
間は経つのに、今晩はまだ一人も「お客」をみつけていない。この屈辱的な「アルバイト」をできるだけ早くやめるために
も、少しでも早く「お客」をみつけなければならない。
「ちょっと待って!そんなことないわ。ホントに私があなたとセックスするわよ。ねえ、ちょっと!」

 聡子たちは、麻美が立っている通りに面した喫茶店でお茶を飲みながら、彼女の服にしかけた盗聴器でそのやりとり
を聞いていた。たまに、こうして監視に来ているのだった。
「ふふふ、嫌だ。麻美ったら、売春婦そのものね。」
 そう言って、聡子が優越感にあふれた顔を京子に向けた。
 ガラス越しに、サラリーマン風の男が麻美に、向こうへ行けとばかりに、邪険に手を振っているのが見えた。
 麻美の顔がこわばる。サッカー部のマネージャーになってからでさえ、他のマネージャーと違って女王のように扱われ
てきたのだ。どんな性戯も割り切って受け入れるようになった今でも、汚いものでも見るような扱いを受ける屈辱だけ
は、どうしても耐えられなかった。
 麻美が唇を噛んだその時、彼女の肩に大きな手が乗せられた。
「おい、ねえちゃん、ほんまに三万円でええんか?」
 麻美が振り返ると、派手な柄シャツに白いスーツを着た、見るからにヤクザ風の男が立っていた。
「やばいよ、ヤーさんだよ。聡子、どうする。」
 京子が慌てて聡子の顔を見る。
「いいじゃない、お金さえ払ってくれるんなら。ううん、お金なんて払ってくれなくても…」
 聡子がのみこんだ言葉が「麻美を貶めてくれるなら。」であることを京子は理解した。
 京子は最近、聡子が恐ろしくなってきた。しかし、彼女がチーフになってから、京子のスケジュールにも手心を加えて
もらえるようになっている。のべつまくなしに男の欲望の処理をしなくてもよくなったし、とりわけ、白井や三芳といった狂
った男たちの相手をしないで済むようになったのだ。京子は、何があっても、この立場は手放すわけにはいかないと思
うのだった。



 
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