公園の泡姫
 
第3章
 
 午後最初の講義は、社会福祉学だった。昼食を終えた明日香が教室に入るなり、優美と目が合った。
「あら、何か臭うわね…」
 優美が鼻をクンクン鳴らし、わざと明日香に聞こえるような声で言った。
「公園のホームレスの臭いよね、これ…」
 お嬢様育ちの優美は何かと明日香をライバル視し、常々、美人で成績も良い彼女を妬んでいた。その気持ちが、ここ
に来て捌け口を見つけ出したらしい。
「ホント、どこから臭うのかしら…」
 なにかと優美に追随する夏希もニヤニヤ笑いながら、わざとらしく辺りをキョロキョロと見回してみせる。
 大人しい麻里子は、露骨に口には出さないものの、明日香が横を通ると、「ヒッ…」と声をあげて、思わず視線を逸ら
した。明日香の顔にみるみるカーッと血がのぼった。
 彼女たちは、犬飼の指示で明日香が行っているボランティア活動を目撃したのだ。それは、ソープ嬢のように自らの
身体を使って公園にいるホームレスたちの身体を洗い、その性欲を満たす活動だった。
 優美が何か言い、夏希がクスクス笑う声が聞こえる。彼女たちの視線が針の筵のようで、授業が始まるまでのわず
かな時間が、明日香には永遠のように長く感じられた。
 講義開始のベルから5分程遅れて、犬飼が教室に入ってきた。
「今日は、立花さんたちのグループに課題の調査結果を報告してもらいます」
 犬飼に指されて、優美、夏希、麻里子が教壇に立った。
「私たちは、公園にいるホームレスの実態と、その支援活動について調査しました」
 優美が説明し、夏希がパソコンを操作する。助手役の麻里子がセッティングしたスクリーンに、表やグラフが表示さ
れ、ありきたりの説明が20分程続いた。女学生の多くが欠伸をかみ殺しながら説明を聞いている。中には、居眠りした
り、内職をする者もいた。
「…では、最後に、私たちが公園で撮影した映像をご覧いただきます」
 ニヤッと笑った優美の合図で、夏樹がマウスをクリックした。大学の近くにある、見慣れた公園が映し出される。
「えっ、何、あれ!」
 一人の女生徒が驚きの声をあげた。ホームレスのテントに囲まれた公園の水飲み場で、裸の女が映っているのだ。
(…えっ、まさか…)
 明日香は、心臓をギュッと鷲掴みにされたように感じた。
「あ…あの人、何してるの!」
 教室が騒然となった。ホームレスたちに囲まれながら、全裸の女は、地面に横たわる男に抱きつき、淫らな動きで身
体を擦りつけている。
「キャーッ!」
「いやだ!」
 女学生たちが騒ぐ声を聞きながら、明日香は祈るような気持ちで身体を固くしていた。背中に冷や汗が流れるような
気がする。
(気づかないで…、私だってこと…)
 しかし、それもむなしい願いだった。
「えっ、あれ…、藤原さんじゃない!」
 誰かが声をあげ、教室にいる全員の視線が明日香に注がれた。
 映像は徐々にアップになり、男の怒張を口に咥えこむ明日香の顔が映し出された。もはや見間違うことはない。
 いたたまれなくなって教室を出ようとした明日香に、犬飼の厳しい声が響く。
「藤原さん、ここで退出したら、単位はあげないわよ!」
 その声に、明日香は力なく、椅子に腰掛けた。
 スクリーンの中では明日香が仰向けになった男の下半身に跨り、ゆっくり腰を落としていく。男根が女陰に埋まってい
く様子が、つぶさに撮影されており、女学生たちが悲鳴をあげた。
「ええっ、入れちゃったの?」
 誰かが素っ頓狂な声をあげ、明日香が思わず耳を塞ぐ。
「ああっ、ああん…」
 動画の明日香が喘ぎ声をあげながら、ゆっくり下肢を動かし始めた。
「あらら、藤原さん、結構、気持ちよさそうね…」
 スクリーンと明日香を見比べながら、優美が嘲笑するように言った。最初はゆっくりだった明日香の動きが、徐々にピ
ッチをあげ、振り子を振るように激しく動き始める。
(ああっ、もうイヤ…)
 俯いた明日香の顔が真っ赤になり、涙の滴が机に落ちた。
 スクリーンの明日香はしなやかな髪を跳ね上げると、上体を倒して男の肩に手をついた。大胆にヒップを突き出し、そ
れを前後に揺するだけでなく、しゃぶりあげるように上下させ始める。
「あんっ、あんっ、あんッ…」
 女学生みんなが声を失う中で、明日香の声だけが、教室のスピーカーから響く。
「こんなことして、ボランティアになるのかしら」
「セックスが好きでやってるだけじゃないの」
 そう言い合う優美と夏希をピシャリと叱りつけたのは、意外にも犬飼だった。
「それは違うわよ!」
 犬飼はそう言うと、レーザーペンでスクリーンを示した。
「見てごらんなさい、ここにいる人たち、結構、きちんとした身なりをしているでしょう」
 犬飼が示した男たちは確かに、そうだと言われなければ、ホームレスだとは思えない様子をしていた。
「でも、この人たちは、2月程前にはボロボロの服を着て、何をする気力も持てず、公園でゴロゴロ寝転がっていた。そ
れが、こんな風に気力を取り戻し、中にはこの後、ホームレスの生活を抜け出した人もいる。それにね、公園に残って
いる人たちも一種のコミュニティを作り、ここでは、喧嘩や諍いも起きなくなった。どうしてだと思う?」
 女学生たちは、神妙な顔で犬飼の話を聞いていた。
「この人たちは、藤原さんと肌を合わせ、セックスすることで、生きる張りや、男としての自信を取り戻したの」
 みんなの視線が明日香に注がれる。さっきと打って変わって、その目に軽蔑と好奇の色はなかった。
「それに、私が指示した藤原さんの活動は一週間に1度だけど、それ以外の日も、公園に出かけて行って、ホームレス
の人たちとの人間関係を作っていったのね。これは、高く評価できます。ウィキペディアを丸写ししたようなレポートと
は、大違いね」
 そう言うと、犬飼は優美たちに厳しい視線を投げつけた。

 明日香の公園でのボランティアも、いよいよ最終日となった。今日は、犬飼も同行している。
「あなたのボランティア精神、どこまで鍛えられたか見せてもらうわ」
 そう言うと、犬飼はブルーテントが並ぶ中を通り抜け、テント村の奥へ奥へと入っていく。行き着いた先には、ブルーシ
ートと段ボールで作られた、半ば崩れかけたテントが立っていた。
「こんにちは…」
 明日香はテントの入り口に立って、薄暗い中に向かって声をかけた。
 やせた背中を丸めた男の姿が見えた。そこにいたのは、小柄な老人だった。声をかけた明日香の方を振り返るでも
なく、何か独り言をブツブツと呟いている。
「失礼します…」
 中に足を踏み入れだけで、動物園のような、強烈な臭いが明日香を襲った。老人が濁った目でこちらを振り向いた。
伸び放題の髪は油で固めたようになり、ところどころ変色した白い髭が首筋にかかっている。ボロボロの服は、垢と埃
でテカテカと黒光りしていた。

「今日は、明日香ちゃんに身体を洗ってもらおうと楽しみにしてたんだがな…」
 この公園に移って来た松吉が、水飲み場のベンチに腰掛けてそう言った。以前はボロボロだった彼の服装が、かなり
小ぎれいなものになっている。食事を少し我慢して、缶拾いで得た金で、服を手に入れたのだと言う。
「どうやら、今日は『隅の老人』の所に行ったらしいよ」
 情報通の久志が眉をひそめて言うと、ホームレス仲間が一斉に声をあげた。
「えーっ、あの認知症の爺さんか!」
「ヒエーッ!」
 それは、認知症で徘徊したあげく、自分の名前も家の場所も忘れてしまい、この公園に住み着いた老人だった。テン
ト村の一番奥の、もとは別のホームレスがいたテントに寝泊まりするようになって、誰かが「隅の老人」と呼び始めた。
公園に来てから、認知症の症状が急激に進んだらしく、最近では、自分で食事をすることも、一人で排泄することすらま
まならず、時折、他のホームレスたちが手を貸してやることで、なんとか生きている。
「明日香ちゃん、『隅の老人』の所に行って、何をするのかな…」
「そりゃあ、体を洗ってやるんだろう」
 ホームレスたちの脳裏に、生き腐れたような老人に、なめらかな肌を重ね合わせる明日香の姿が浮かんだ。
「それは、ちょっと可哀想じゃないか…」
 かつての自分のことなど棚に上げて、松吉がつぶやいた。
「ちょっと、見に行ってみないか」
「そうだな…」
「よし、行こう!」
 集まった十数人のホームレスたちは、口々にそう言って、腰を上げた。

 元の色がわからなくなり、触っただけでボロボロに崩れそうな老人の服を脱がせると、明日香は下の世話までしたうえ
で、抱きかかえるようにして老人を椅子に座らせた。犬飼が用意した、いわゆる「スケベ椅子」である。
 老人は自分が何をされているのか、まったくわかっていない様子で、ボーッと遠くを見つめたまま、されるがままになっ
ていた。
 盥に溜めたお湯にタオルを漬けようとした時、犬飼が厳しい口調で言った。
「ダメよ、今日は下洗いなし」
「えっ!」
 明日香の表情が固くなった。いつから体を洗っていないのだろう。思わず見つめた老人の身体は、垢がびっしりこび
りついて、もとの肌の色がわからなくなっている。衛生状態が悪いせいか、皮膚が爛れたり、膿が滲んでいるところさえ
あった。
「そう、最初から、あなたの身体で洗ってさしあげなさい」
 妥協を許さない犬飼の前に、もはや覚悟を決めるしかなかった。
 明日香は着ているものを全て脱ぎ、シートに正座して、洗面期の中で石鹸を泡立てた。
「それじゃあ、泡を塗っていきますね。失礼します…」
 相変わらず無反応の老人に、やさしく声をかけながら、明日香は両手で、肋骨の浮き出た胸に丁寧に泡を塗ってい
く。
「左手から…」
 自らも石鹸を胸につけると、老人の皺だらけの手を取って、胸の膨らみに押し当てた。枯れ枝のような手が無意識の
まま乳房を包むと、誘うようにして胸を撫でさせ、自ら膨らみを擦りつける。
 老人の焦点が定まらない眼差しは、じっと明日香に向けられている。
「私のオッパイ、どうですか?」
 そう言うと、明日香は中腰になり、双乳で腕を擦っていく。白い石鹸の泡は、すぐに真っ黒な汁になって、明日香の体
を汚す。明日香は石鹸を股間に塗って老人の腕を挟み、内腿と陰部で擦るようにして洗っていった。
 両腕につづいて、柔らかな胸を押しつけるようにして、肉のそげた老人の背中を洗い、胸と腹を洗った。
「ああ…」
 老人が掠れた声を出した。相変わらず意識は霧の彼方にあるようだが、その顔には気持ちよさそうな表情が浮かん
でいる。
 やっと、石鹸が黒くならなくなったのを見て、明日香は老人の前に正座した。手順ではこの後、即尺でペニスを口に含
む。
 老人の陰茎は特に反応を見せていなかった。性的興奮を覚えるためには、それを知覚することが必要なのだろう。
「オチ×チ×、お口できれいにしますね」
 そう言って、顔を近づけたものの、明日香は思わず怯んだ。長期間、入浴もせず、排泄物を垂れ流していたらしい老
人の肉塊から、アンモニア臭が漂っている。
 不潔感が先立ち、顔を近づけただけで、強烈な臭いに嘔吐感すら湧いてくるのだ。
「さあ、何してるの?いつもみたいに舐めなさい」
 躊躇する明日香を犬飼が叱咤する。明日香は目を閉じて、美しいピンク色の舌を差し出した。
 つらそうに眉根を寄せ、唾液にキラキラ光る舌先で、おずおずと二度三度、肉の胴体を舐める。
「そんなふうに、嫌々やってるようじゃ、全然ダメね」
 犬飼が冷たく言い放った。
「大丈夫か、明日香ちゃん!」
 テントの入り口から、松吉の声がした。見ると、ホームレスたちが心配そうにこちらを見ていた。
「無理しなくていいよ」
「嫌なら、やめちゃえばいいんだぜ…」
 その言葉で、かえって明日香の決意が固まった。自らの心身を投げ出して、彼らとのつながりを作って来たことは、辛
さもあったが、貴重な経験だった。それを、ここまできて、投げ出すわけにはいかないと思った。この老人にサービスが
できないのなら、彼らにしてきたことも嘘になる気がした。
「お爺さん、気持ちよくなってくださいね…」
 そう言うと、明日香は老人の陰茎に指を絡め、優しく撫でた。
「うぅ…」
 老人が声を漏らした。無反応だった男根が徐々に堅くなってくる。
 明日香は、二本の指で棹を甘くしごきながら、雁首の付け根から縫い目にかけてを、さも愛しそうに舌で突いたり、擦
りあげたり、しゃぶったりする。意識はぼんやりしていても、身体はきちんと反応するらしく、老人は気持ちよさそうな唸
り声をあげた。
 明日香は次第におぞましさを忘れ、情熱的な愛撫を注ぎ始めている。丹念に唾液を吐きかけ吐きかけ、肉棒全体を
ヌラヌラと舐め回すと、今度はゆっくり口腔に含んでいく。
 その様子に、テントの入り口から覗いていた松吉たちが、ゴクリと唾を飲んだ。
 明日香は地面に敷いた段ボールに老人を仰向けにすると、その上に多い被さり、枯れた老人の肌に瑞々しい肌を重
ね、柔らかな体を絡ませた。
 ヌルヌルした石鹸の感触とともに、抱きつくようにして体を滑らせたあと、シックスナインの姿勢をとった。
 柔らかな身体を老人の身体に押し当て、腰を抱き抱えるようにして肉棒に懸命に奉仕する明日香は、枯れて冷えきっ
た老人の腰の奥から暖かい快感を徐々に引き出していくようだった。
「んっ…」
 明日香は突然、局部を枯れ枝で突かれるような感触を覚えた。

 陰茎を包み込む、柔らかな濡れた感触に、男の意識が徐々に覚醒していく。
 目の前にあるそれは、若い娘の性器だった。本能に誘われるように、男は指を伸ばした。大陰唇の柔らかな弾力が
指先に伝わる。
 指先で陰毛を梳き上げ、陰唇の両の膨らみに指をかけ、左右に開いて見た。艶々したピンク色の粘膜が露わになっ
た。
(舐めたいっ…)
 本能の命じるままに、男は娘の腰を抱き抱えるようにして、濡れた女性器に舌を押し込んだ。
「ああっ!」
 男の腰のあたりで、若い娘の切なげな声があがった。忘れていた官能が記憶の底から呼び起こされる。
 ピンクの肉襞を舐めながら、溢れ出す女の体液を舌先で掬い取る。唇全体を密着させて舐めているので、鼻先が土
手の陰毛に触れる。娘の陰毛は薄く、膨らみの頂に縦長に生えていた。土手の麓はうぶ毛だけでつるりとしている。
 膣の中に指の付け根まで挿入してみる。娘の身体がビクっと震えた。男はそのまま、膣粘膜の感触に遊ぶ。入り口の
膣筋がギュッと締まった。
 男はクリトリスを剥き出しにし、舌先でピンクの小粒を転がし始めた。指は濡れた粘膜をかき乱す。
「うふん、うふん…」
 娘が鼻にかかった甘い吐息を漏らし始めた。
 とうとう我慢できなくなり、男はムックリと身体を起こした。

「えっ…、おじいさん…」
 いきなり起きあがった老人に、明日香が驚いた表情を浮かべた。
「…ここに横になりなさい」
 少し掠れてはいたが、明瞭な口調で老人が言った。声の響きには威厳さえ感じられる。
 老人は明日香の身体を抱き抱えるようにして仰向けにすると、両膝を掴んで、大きく開かせた。
「ああっ…」
 恥ずかしそうに声をあげる明日香に、老人の興奮が高まった。老人は閉じかけた脚を、膝を掴んで押しひろげると、
膣口に怒張を押し当てる。
「ちょっと、ちょっと…、待ってください…」
 生身のまま挿入しようとしていることに気づいた明日香が、必死でもがいたが、痩せた身体からは想像できないくらい
強い力で老人に押さえ込まれる。
 老人が腰をクイッと前に出すと、十分に濡れた秘孔はヌルっと亀頭を受け入れた。老人は満足そうに、肉棒を埋めて
いった。
「はぅゥゥ…」
「ううっ、たまらんな、これは…」
 肉棹が根元まで収まると、老人は明日香の体を抱いて、中の感触を楽しんだ。狭隘な肉路が波打つように蠕動し、と
ば口が根元を押さえ込んでくる。幾重もの肉襞が、勃起にからみついてくる。
(この娘のオ××コ、なかなかの逸品じゃな…)
 目の光を取り戻した老人は、明日香の乳首を指で転がし、やや小振りな乳房が変形するくらい握り潰していた。
「うう、はうぅ…」
 明日香の唇がほつれ、喘ぎ声が漏れ始めた。
 老人は明日香の唇を奪い、舌先で口腔を愛撫した。若いエキスを吸い取ろうとするかのように、老人は唾液を流し込
み、かわりに明日香の唾液を吸い取る。
「それ、いくぞっ…」
 そう言うと、老人はゆっくりと腰をグラインドさせ始めた。それは、ずっと忘れていた感覚だった。肉棒に粘膜がからみ
つき、若い娘の肌から立ちのぼる甘やかな匂いが、カッカと情欲を煽った。
「ここか…な」
 老人は豊富な経験を思い起こしながら、明日香の性感帯を探っていく。挿入を浅くしたり深くしたりと、ゆっくりと明日
香の官能を刺激していく。
「ああ、いっ、いい…、ああああ…」
 老人にえぐられるにつれ、明日香の喘ぎはどんどん高まり、やがて悩ましいよがり泣きに変わった。ほっそりした腰
が、独特のうねりを見せている。
(何なの?この感じ…、変になっちゃう…)
 明日香は、これまでに感じたことのない性感に身を震わせた。それは、ボーイフレンドとの初々しい初体験でも、犬飼
に命じられてホームレスと抱き合う中でも感じなかったものだった。百戦錬磨の男のテクニックで、彼女は、初めて性の
悦びを体感しようとしているのだ。
(そうだ、この感覚だ。忘れていたのは…)
 若い娘の肉体を堪能しながら、老人は心の中で理解した。若い頃はプレイボーイで慣らしたこともあったが、政略結
婚で厳格な妻を娶り、社会的な地位が高まるもとで、置き去りにしてきたものの存在を…。
「あっあうっ、うう…」
 腰をクネクネと揺すりながら、喘ぎ乱れる明日香。かなりの潤滑液が溢れ出しているようで、老人の腰が動く度にクチ
ュクチュという淫らな音がブルーシートのテントに篭る。
「ううむ、色っぽい…」
 男の動きに合わせ腰を振る明日香の姿を見て、松吉が呻いた。ホームレスたちは、なんだかんだと言いながら、ちゃ
っかり二人の交合を見物しているのだ。久志などは、その様子を見ながら、自分の怒張を取り出して、手でしごいてい
る。
「…ああ、ああん…ああ…」
 老人は一気にボルテージを高め、明日香の恥丘に腰をぶつける。下半身を抉られるリズムに合わせ、明日香のよが
り声がほとばしる。
「うーむ、むむッ…」
 ズーンと腰を打ち込んだ老人の喉から、重い唸りが発せられた。
「あぁッ!あぁッ!ああぁぁ…」
 明日香の太腿がピーンと突っ張り、老人の身体を抱き寄せた。
「いくぞっ!」
 老人は明日香の身体をきつく抱きしめ、肉棒の動きを止めた。体液が勢いよく飛び出し、膣奥深くそそぎ込まれる。
「ああ、だ、だめえ…。いい、いい、イク…」
 明日香の身体がガクガクッと震えた。
「ほあぁっ…」
 老人は大きくため息をつくと、疲労感を漂わせながら、地面に敷いた段ボールに座り込んだ。エネルギーをすべて放
出して、弱々しく萎んだ肉棒を隠そうともしない。
「儂は、どうしてこんなところにおるのだ?」
 老人がポツリと呟いた。久しぶりに頭の中の霧が晴れたように感じる。
 ふと思い出して、老人は傍らの明日香に視線を向ける。濃厚な性感に翻弄された名残りで、明日香は、ぐったりと仰
向けになっていた。
「お嬢さん、携帯電話を持っておるか?」
「はい…」
 明日香は半身を起こして、バッグの中からケータイを取り出し、老人に手渡した。
 目の光を取り戻し、すっかり見違えるようになった老人は、押しなれた数字を押した。それは、長年彼に仕えてきた秘
書室の電話番号だった。

「驚いたな」
 こざっぱりした身なりになった松吉が言った。彼は近々、社会福祉法人が運営する施設に入居することが決まった。
「あの汚い、認知症のジイさんが、行方不明になっていた薬師産業グループの会長だったなんて」
 認知症で家に戻れず、テント村の住人となっていた「隅の老人」は財界の立志伝中の人物であり、世界的な企業グル
ープの総帥であったのだ。
「薬師産業は、再就職支援センターに多額の寄付金を出すことにしたらしいよ」
 そう言う久志は、若いだけあってチャンスも多く、すでに就職先が決まっていた。
「それと、天平女子大にもな」
「しかし、明日香ちゃんのボランティアも終わっちまったんだな…」
「もう一度、身体を洗って欲しいよな」
「あの…」
 おずおずと声をかけられて松吉たちが振り返ると、そこには、金盥を抱えた優美、夏希、麻里子の3人が立ってい
た。
「おう、あんたたちも、俺たちの身体を洗ってくれんのか?」
「明日香ちゃんほど別嬪じゃないが、まあ、我慢しておいてやるよ」
 ホームレスたちがニヤリと笑って、3人を取り囲んだ。



 
 「公園の泡姫」目次へ
 
 「短編集」へ
 
 「ぷろとこーる・ラボ」トップぺージへ
動画 アダルト動画 ライブチャット