テニス少女・果てなき闘い 第2章

「おやおや、こっちにおいでになったのか…」
 審判台の松川の顔に、一瞬、困惑の色が浮かんだ。歓声をあげる観客たち中で、人の波をかき分けるように
して、白髪の頭が必死に前に進もうとしている。時折、周囲の客たちに睨まれ、迷惑そうな顔で押しのけら
れ、前進、後退を繰り返しながら、それでもじりじりと進んでいた。
「職員室にお呼びしたのに、人材発掘のつもりでコートに来られたか…、いつまでもご熱心なことだ」
 嘲笑を浮かべた松川は、線審を務めていた原田晴亜を招き寄せた。
「ちょっと、頼みたいことがあってな…」
 そう言うと、松川が晴亜の耳に何事かを囁く。頷く晴亜の顔に、邪悪な笑みが浮かんだ。

 テニスコートに拍手と歓声が響く。
 美奈は興奮に沸く客席に手を振ると、セクシー・ポーズをとり、こぼれ出た白い乳房を自らの手でプルンプ
ルンと揺らして見せた。もう一方の手は、アンダースコートの股間から覗く割れ目を指で押し広げ、ピンク色
の肉びらを晒している。
「…なんということだ…」
 日比谷はうわごとのように、何度もその言葉を繰り返していた。
 白昼、それも大勢の観衆が詰め掛けたテニスコートで自ら素肌を晒し、秘部まで露わにする少女…。それ
は、紛れもなく有岡美奈なのだ。
 しかも、その汗ばみ、上気した顔には、淫らな行為を無理やりさせられている嫌悪感はなく、媚を売るよう
な笑みまで浮かべている。
「…なんということだ…」
 正義感が強く、曲がったことが嫌いな性格の美奈だったが、かつては性的なものに対しても、少女らしい潔
癖さを見せていた。以前、テニスクラブの練習で、軽口で猥談をしかけた男性が彼女にきびしく睨みつけら
れ、撃退されたこともあった。そんな美奈に、何が起こったというのだろう。
 「知りたい」という思いに押し出されるように、日比谷は人ごみを掻き分けて一歩、また一歩と前に進んで
いた。
 一方、松川の指示を受けた原田晴亜は、卑猥なデモンストレーションを終えて、コートに戻ろうとする美奈
のところに近づいて行った。
「有岡さん、今日の試合は特別ルールよ」
「はい…?」
 晴亜を見返す美奈の顔に、怪訝な表情が浮かぶ。その顔がふいに、18歳の少女らしい顔になった。あどけ
なさの残る表情がたまらなく可愛い。しかし、それが晴亜の疳に触った。
(ナマイキな子!)
 晴亜の表情が尖る。遥かにランク下ではあったが、大学卒業まで女子のテニスプレーヤーとして活動してい
た彼女は、美奈のことを一方的にライバル視していた。そして、美奈の才能や努力に目を向けることなく、ル
ックスと恵まれた環境だけを見て、いつも嫉妬していたのだ。もちろん、美奈の方は彼女の存在すら意識して
おらず、それがさらに晴亜の筋違いの怒りの炎に油を注ぐことになった。
 そして、今、2人の立場は大きく変わった。
「ポイントを取る度に、お客様にフェラのご奉仕をするのよ」
「えっ…」
 美奈は思わず絶句した。
 館での恥辱の日々が始まってすでに3か月以上が経ち、数え切れないくらいさせられてきたことだが、美奈
は未だにフェラチオに強い嫌悪感を感じていた。
 自分の方から積極的に身体を使って、好きでもない男に性的快感を与えるのが、そもそも、プライドの高い
美奈には屈辱でしかない。しかも、ペニスに顔を近づけ、口にするわけだから、生々しい臭いや味が嫌でも伝
わってくる。さらには、男が陰茎から出した体液を口に注がれ、飲み込むことを求められる。男にとっては征
服欲を満たし、女の子にとっては服従を誓う行為そのものだ。
「いい?1ポイントごとによ…」
 美奈の心を読んだように、残忍な笑みを浮かべて、晴亜が念を押す。
 テニスの試合ではポイントを4つ取ると1ゲーム、ゲームを6つ取って1セットなので、1セットマッチで
も試合中に最低で24人の男をフェラ抜きすることになる。デュース、タイブレークなどがあれば、その数
は、さらに増えていくのだ。
「さあ、1ポイント目よ!」
 晴亜が美奈の背中をグイと押した。美奈の身体が観客と向き合う。二人の会話を聞いていた観客たちがシー
ンと静まり返った。
「何してるの?お客様にお願いするのよ」
 晴亜に指示された美奈は、大きく一度深呼吸した後、覚悟を決めたように言った。
「オ×ン×ンをしゃぶらせてください…」
 さすがに観客たちに躊躇いが走る。多くの客が美奈から視線を外して、もじもじ、そわそわしている。
「お…、オ×ン×ンを…」
 卑猥なお願いを口にしながら、その場に流れる空気が、いっそう美奈を惨めな気分にさせた。固い表情で顔
を真っ赤にし、唇を噛み締める美奈の姿を、晴亜はゾクゾクするような思いで見つめている。
「早くしないとポイントが認められないわよ」
 ニヤニヤ笑いながら、晴亜が意地悪くそう言った。
「お願いします、どなたか…、私にオ×ン×ンをしゃぶらせてください…」
 顔から火が噴き出しそうな屈辱に耐えながら、美奈は最前列の客の一人ひとりに頭を下げて回る。本当はし
てもらいたいと思っている客も多かったが、ここで前に出るのは勇気がいる様子で、みんながチラチラと周り
の客の反応を見ている。
「よし、じゃあ、俺が…」
 そう言って美奈の前に立ったのは、頭をスポーツ刈りにした、三十台半ばの背の高い、体格のがっしりした
男だ。美奈は、その顔に見覚えがあった。横木司令部所属の士官で、館の常連客の一人である。
「ありがとうございます…」
 そう言うと、美奈は男の前に跪いた。ズボンのチャックに手をかけ、半ば勃起しかけた肉棒を取り出す。
「失礼します」
 そう言うと、美奈は腺液を滲ませた亀頭にキスをし、舌の腹を棹の裏側に押し当てるようにして舐め上げて
いく。
 周りの男たちが目を凝らし、息を詰めて、その様子を見ていた。その表情には、一様に羨望と後悔の色が浮
かんでいる。もうちょっと勇気を出せば、自分がこのサービスを受けていたかもしれないのだ。
 美奈は時折、男に上目遣いの視線を投げかけながら、先端から王冠部、笠の裏へと舌を這わせていく。ビン
ビンに屹立した肉棒が彼女の唾液でヌラヌラになっていく。
「うう…、こりゃあ気持ちいい…」
 美奈が怒張を口にいっぱいに頬張った。頬の裏の粘膜で肉棒を擦られ、男が歓喜の声を漏らす。
「どんな顔しておしゃぶりしてるか、見せてちょうだい…」
 晴亜が、美奈の顔にかかっていた黒髪を掻き上げた。頬をすぼめ、男の怒張を咥え込んでいる美奈の顔が、
観客たちの目に晒される。男の腰の動きに合わせ、肉棒が美奈の口の奥深くに吸い込まれていく。
「すげえフェラテクだ」
「あんなに喉の奥まで呑みこんでるぞ」
「男のチ×ポをしゃぶり慣れてるんだな…」
 卑猥な言葉を投げかけられ、大勢の観客が見つめている前で、美奈はフェラチオを続けた。唇で丁寧に肉棹
をしごき、舌で裏の縫い目を擦り、たっぷり含ませた唾液を絡ませる。どんな場面でも愛情を込めて奉仕する
ことが慰安嬢の鉄則であり、美奈は自らを抑制し、精一杯それに従っているのだ。
「ふうぅ…」
 美奈にしゃぶられた男が、気持ち良さそうな吐息を漏らす。ポニーテールが揺れるたびに、その腰が小刻み
に震えている。そろそろ射精が近いようだ。
 男の変化に気づいた美奈は、亀頭を中心に唇をより強く絡め、出し入れのピッチを早める。
(…なんということだ…)
 美奈がフェラチオをしている間、日比谷はとても直視することができず、目を逸らしていた。
「そうだ、松川君!」
 日比谷は審判台に座る松川に視線を投げた。不祥事を起こして、テニス連盟の処分を受け、指導者としての
地位を失った男だが、こんな破廉恥なことを止めさせるとすれば、この場には彼しかいないだろう。
 しかし、松川の表情を見て、日比谷は愕然とした。松川はニヤニヤ笑いながら、男性器を舐め、しゃぶる美
奈の姿を楽しそうに眺めているのだ。
(そう言えば、松川君の処分理由は、セクハラだったか…)
 そう思うと、すべてが繋がったような気がした。テニスを侮辱したような、この卑猥な見世物は彼の仕業な
のではないか。
「うっ…」
 美奈の顔に股間を押しつけながら、男は呻き声とともに、精液を吐き出した。
 しかし、美奈はすぐに肉棒を離したりしない。唇でしごきながら口に受け、尿道に残った精液を最後の一滴
まで吸い出した後、やっと口を離した。そして、男を見上げながら口腔に溜まった男の体液を、喉を鳴らし飲
み下す。これも、ここに来てから教え込まれた、相手の男の征服欲を充たすための行為なのだ。
「ありがとうございました」
 そう言うと、美奈はそのまま手で陰茎を捧げ、先端にキスをした。肉棒がピクンと跳ね上がり、男の顔に満
ち足りた表情が浮かぶ。

 VIP専用駐車場に止まった黒塗りのセダンから降りてきたのは、全日本テニス連盟理事長の赤坂良徳だっ
た。
 松川の庇護者として、彼の復権に力を尽くした赤坂は、自らも賄賂とスキャンダルに塗れた人生を歩んでき
た。その彼が理事長に昇り詰めることができたのは、保守党の有力政治家と結びついてきたからである。特
に、秩序維持と軍事優先の同じ国家観を持ち、肝胆合い照らす仲の須崎が総理になったことで、赤坂は今、
「わが世の春」を謳歌していた。
「いらっしゃいませ…」
 ストレートの黒髪を風になびかせた女生徒が彼を出迎えた。眼鏡をかけた端正な顔立ちが、知的な美しさを
見せる美少女だ。赤坂が来館した時には、敬意を表する意味で、生徒会長に迎えに行かせているのだと、松川
が言っていた。そう言われると赤坂も悪い気はしない。
「テニス部の練習が終わるまで、あと1時間ほどを要しますので、それまでの間、理事長にはごゆっくりおく
つろぎいただくようにと、松川が申しておりました…」
 このまま一流ホテルの接客に出しても申し分ない礼儀作法でそう言うと、少女は赤坂を案内して歩き始め
た。
 1時間あれば、ちょっとした慰安を受ける時間はあるだろう。バーで酒を楽しみながら、お気に入りの少女
の身体を弄るのもいいし、風呂で全身を舐め洗いさせるのもいい、そう考えながら歩く赤坂は、少し股間が窮
屈になるのを感じていた。

 美奈が打ち込んだボールが、鋭いラインを描いて千春のコートを襲った。千春のラケットが空を切り、観客
の拍手と歓声が上がる。これが最後のポイントだ。
 美奈が客席に向かってくる。試合はまだ終わらない。ポイントを確定させ、ゲームセットの認定を受けるた
めの口唇奉仕が待っている。
「応援、ありがとうございます!」
「おーっ!」
 美奈が丁寧にお辞儀をすると、観客たちが大きな歓声をあげた。同時に、最前列に陣取る男たちが一斉にズ
ボンのチャックを下げ、慌ててペニスをひっぱり出す。試合が進むにつれて、最初の躊躇いなど消え去り、観
客たちは、今や美奈と千春がポイントを上げるたび、先を争って彼女たちのフェラチオを求めるようになって
いた。接戦となったため、すでに美奈だけで30人、二人合わせて50人近くフェラで抜いている。
 美奈が顔をしかめた。口の中がネバネバし、精液の臭いが常に鼻について、じっとしていると気分が悪くな
る。しかし、それもいよいよ最後だ。
 男たちの方は、これがラストチャンスとばかりに、跪いた美奈の周りに数本のペニスが一斉に突き出され
る。そこに晴亜が割り込んだ。
「今日は特別サービスよ。フェラだけじゃなくて、オ××コも使って、できるだけ多くのお客様と勝利の喜び
を分かち合いなさい」
「は…い…」
 思わず険しい表情になりかけた美奈だったが、慌てて俯いて誤魔化し、ともかくも素直に返事をして立ち上
がった。しかし、晴亜は、その一瞬の表情の変化を見逃してはいなかった。このあたり、女の観察力は鋭い。
(ふふふ…、ホントは嫌でしょうね。テニス界のプリンセスが神聖なコートで、見ず知らずの男に、よってた
かって公衆便所扱いされるのだものね…)
 美奈の心情を想像するだけで、ゾクゾクするような高揚感を味わいながら、晴亜は、期待に股間を膨らませ
て待っている観客の一人を、美奈の背後に誘った。
「さあ、どうぞ。有岡のオ××コも、あなたのオ×ン×ンを待ってますよ」
 そう言う晴亜の手が、上体を倒して待つ美奈のアンダースコートを膝までずりおろす。片足を抜かせたアン
スコが足首に滑り落ちた。剥き出しになったお尻にひんやりした風の流れを感じて、思わず美奈が腰を引く。
「ほら…」
 晴亜の手で剥き出しになったお尻の割れ目が広げられた。愛液に濡れ、ピンク色の襞肉をテカテカに光らせ
た秘孔が男の目の前に露わになる。
「入れて欲しそう…、オ××コがグチョグチョになってるでしょ?」
 晴亜が指で愛液を掬い取る。
「見て、指先が糸を引いてるわ!」
 コート中に響き渡る声で、晴亜が指摘する。恥ずかしさのあまり震わせた美奈の腰が、誘うように見える。
男は我慢できず、反り返った怒張で美奈の花弁を割っていった。
「あ…、あぁん…」
 いきなり男が侵入してくるのを感じて、美奈が小さく喘ぐ。男は美奈の腰を両手で支え、怒張を奥深くに繰
り出す。男の肉棒が、温かく濡れた膣壁を押し広げながら進んでいく。
 晴亜がスコートをさっと捲くった。つるつるにされた陰部に赤黒い肉棒が出入りしている様子が、観客に丸
見えになる。
「みなさんも、よくご覧ください」
 周りにいた男たちが、一斉に覗きこんだ。相手の男が結合部に手を忍ばせ、秘肉を嬲りながら、腰をローリ
ングさせる。
「あん、ああん…、ああん…」
 美奈は仰け反って喉を伸ばし、虚ろな瞳を宙にさまよわせる。
「俺は、口で頼むよ」
 別の男が晴亜にそう言う声が聞こえた。それぞれの要望を聞きながら、殺到する客をさばいているのだ。
 晴亜の指が美奈の顎にかかる。
「うぐっ…ううぅ…」
 顔を上げさせられた途端、目の前に立った男の腰が突き出され、限界まで勃起した肉棒が喉の奥まで押し込
まれた。
「両手と口を使えば、オ××コとあわせて、一度に4人の相手ができるでしょ」
 さらに、無情な晴亜の声が響く。美奈の鼻先に、勃起しきった怒張がさらに2本差し出された。どちらも、
これ以上ないほど膨れ上がり、天を向いている。
「………」
 美奈は口と秘孔に観客の怒張をくわえ込みながら、さらに両手でも肉棒をしごき始めた。白魚のような指が
左右の怒張に絡み、肉棒がビクンッ、ビクンッと跳ね上がる。
 その間にも下半身で繋がった男は美奈のテニスウエアの裾を捲くり、釣鐘型になった双乳を鷲掴みにしてい
た。尖りだした乳頭を指で捻ると、くぐもった呻き声とともに美奈の膣が男の怒張をキュッキュッと締めつけ
る。
「おおっ…、美奈ちゃん、すごい締め付けだよ…」
 男は歓喜の声を上げながら、激しく腰を繰り出した。
「うっ、もう我慢できない…、出るっ…」
 呻き声を漏らして、フェラチオを受けていた男が口内で射精した。美奈は男の陰茎をしゃぶり、口に受け、
飲み下したあとも股間から口を離さず熱心に吸い続ける。
「すげえや、あそこまでやるのか…」
「生れつきの淫乱かも知れねえなぁ」
 客たちは、口々に驚愕の声を上げた。中には自分の怒張を取り出し、しごき始める者もいる。
「すごいよ、すごいよ…、おお、おおお…」
 美奈をバックから犯している男は、無我夢中で腰を振っている。そろそろ限界が近づいているらしい。
「んんあぁつ、あん…、ああっ…」
 美奈が喘ぎ声をあげ、腰をくねらせながら、男の怒張を自分の身体の奥に引き込もうとする動きを見せた。
館での生活は、彼女の身体を確実に変えてしまっていた。心や気持ちとは関係なく、身体はセックスに反応
し、男と一緒に昇り詰めていく。
「いいっ、あはぁ…、だめぇ…変になっちゃう…」
 美奈が切なげな声を漏らした。男の肉棒がせわしなく、柔らかなピンクのクレバスの入り口を乱暴に出入り
している。クチュッ、クチュツという男根が出たり入ったりする音と、美奈のヒップと男の下腹がぶつかるペ
チャペチャという音が混じりあう。
 その時、人ごみを掻き分け、少しずつ前に進んでいた日比谷が、美奈の前にたどり着いた。
「おいっ、君っ、有岡君っ!」
 大声で呼びかける声に、美奈が顔を上げた。
「ひ…、日比谷先生…」
 汗で髪が頬に張りついた顔を揺すりながら、性的刺激に半ば蕩けていた美奈の表情が素に戻り、驚きに目が
見開かれる。
「有岡君、これは一体…」
 日比谷の問いかけに、美奈が思わず顔をそむける。背後で呻き声が漏れ、男が自分の体内で射精をするのを
感じた。
「どうしたんだ、君は…」
 なおも尋ねる日比谷の前で、美奈は弱々しく首を横に振る。何か言おうとしても、言葉が出てこない。
 その時、日比谷は、後ろから肩を叩かれた。
「日比谷先生ですね」
 見ると、制服を着た可愛らしい女生徒だ。
「えっ…、ああ、そうです…」
 なんとか冷静さを繕う様子で、日比谷が答える。
「松川コーチがお待ちです、こちらへどうぞ」
 見ると、既に審判台のところには松川の姿はなかった。
「いや…、少し待って…」
 日比谷が、なおも美奈に話しかけようとした途端、女生徒に腕をグイッと引っ張られた。
「どうぞこちらへ…、お願いです、私が叱られますから…」
 切羽詰った表情でそう言われてしまっては、日比谷もあきらめて女生徒についていくしかなかった。
「ああん…」
 悩ましい声が聞こえる。視線をやると、美奈は既に次の男に犯されていた。前からは、勃起した陰茎を手に
した男が近づいていく。
(有岡くん…、有岡くん!)
 日比谷は後ろ髪を引かれる思いで、コートを後にした。

「お待たせいたしました」
 赤坂が待つバーに、スーツに着替えた松川がやって来た。
「おおっ、遅かったな…」
 そう言いながらも、ソファにふんぞり返った赤坂が、上機嫌の顔を松川に向ける。テーブルの上には、最上
級のブランデーがあり、両脇に慰安嬢が侍っている。チラッと目をやると、顔を真っ赤にした右側の少女は下
半身裸になり、赤坂の手が股間で蠢いている。左の娘はと見れば、今は水割りを作っているものの、ブラウス
のボタンが外れ、制服の胸が皺になっており、さっきまで激しく揉まれた痕跡を見せていた。
 テニス部は今まで練習していたため、彼女たちはそれぞれ、バレー部と陸上部の部員だ。赤坂は必ず体育科
の女子を指名してくる。
 赤坂をバーまで案内してきたはずの森脇亜弓の姿はなかった。赤坂ごときは、彼女に相手をさせる程の大物
ではないと、館長の諸藤は考えているのだろう。それは、松川も同意見だったが、彼にとってはのるかそるか
の大勝負であり、赤坂がキーマンの一人であることにかわりはない。
「次の理事選挙についてですが…」
 松川が話を切り出した。
 憲法が改正されて以来、スポーツ界の指導組織も大幅に改編され、すべての組織が国家の方針を支持し、賛
助する団体となっていった。その中で、テニス関係の団体として改編整理されたのが、全日本テニス連盟であ
る。
 連盟は全国で50人の理事からなる理事会が運営しているが、新たな理事を選ぶ場合は、理事全員による選
挙を行うこととなっていた。団体の権限が強くなった分、内部運営に民主的な手続きを残すことでバランスを
取ろうとした結果だろう。
「そろそろ通知書が届く頃だろう、常任理事会としては、君を理事に推薦したよ。君のことは、行く行くは、
私の後継者にと考えている」
 にこやかな笑みを浮かべて、赤坂が答えた。
「ありがとうございます」
 慇懃にそう応じながら、松川は腹の中で赤坂を睨みつけた。
 赤坂は、下半身裸になった少女を膝の上に抱き上げた。もう一人の少女に作らせた水割りを口に含ませる
と、肩を抱き寄せて唇を奪う。
「む…むぅ…」
 赤坂の手が少女の身体をギュッと抱きしめた。濃厚なディープ・キスを楽しみながら、口移しで水割りを味
わっているのだ。
(この狸オヤジめ…)
 選挙にはいくつかのハードルがある。その第一が常任理事会の推薦を得て、立候補することだ。松川の過去
の経歴から異論を唱える者もいないわけではなかったが、そこは、赤坂さえその気になれば、理事長の権限で
押し切ることは難しくない。
 しかし、松川が望んでいるのは、50人いるヒラ理事に名を連ねることではなかった。今回の選挙では、前
任者死亡のために空席となった常任理事1名をあわせて選出することになっている。そして、慣例により常任
理事会が推薦する理事候補の中から、常任理事候補が指名される。松川はその指名を求めているのだが、赤坂
はなかなか、その言質を与えないのだ。
「ところで、常任の件ですが?」
「うん…まあ、もちろん、がんばっているよ…」
 膝の上に少女を抱いたまま答える赤坂の、歯切れが途端に悪くなった。
 心の中で舌打ちをしながら、松川が言葉を続けた。
「もし…、日比谷先生が理事推薦を辞退されたら、いかがですか?」
 すると、赤坂の表情がパッと変わった。
(やはり、そこか…)
 あまりにわかりやすい反応に、松川は多少白けた気分になった。
「それなら、話は変わってくるが…、しかし、日比谷君が辞退することはないだろう…」
 赤坂は半ば自問自答し、半ばぼやくように呟いた。
「奴の『テニス界の刷新』というスローガンは、結構、支持者がいるからなぁ…、何しろ、日本人は中身がな
くても、『改革』とか『刷新』と言うと、とびつく傾向があるんだから始末が悪い…」
 どうやら、ここでも赤坂と松川の利害は一致しているようだ。清廉潔白な日比谷に理事になられると困るの
は、赤坂も同じなのだ。松川がほくそ笑み、自信たっぷりに赤坂に言った。
「大丈夫、日比谷先生はきっと辞退されます。私が保証します」
 そう、すでに「玉」は確保してあるのだ。
「そうか、じゃあ、事務方の連中に言いつけて、君の選対を作らんといかんなぁ…」
 そう言いながら、赤坂の掌は、彼の太腿を跨いだ少女のお尻を撫で回している。
「地方票もあるし、最後にある理事全員の信任投票まで対策を立てておかんと、君の当選は、実はけっこう厳
しいんだ…」
 思わず本音を漏らした赤坂に、松川が苦笑いする。
(俺も札付きになったもんだ…)
 やはり、過去にセクハラで処分されたのが効いているのだろう。
 しかし、松川に勝算はあった。
 今回の理事選挙については、諸藤館長の協力をとりつけてある。何と言っても、彼にとって最強の闘いの武
器は、この「星園癒しの館」であった。




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