国防省附属「星園・癒しの館」・外伝
 
囚われのテニス少女 第2章
 
「違う…、違うわ、何かの間違いよっ!」
 そう叫んで美奈は飛び起きた。一瞬、全てが夢だったのかと安堵の息をついたが、違和感のある部屋のガラス壁
が、彼女の身に起きたことが現実であることを冷酷に示していた。今、彼女が見ていた悪夢、全国女子高校テニス大
会決勝戦での出来事は、彼女の身に現実に起こったことそのままを、夢の中で反復していたに過ぎない。
 目を開けたまま放心したような状態でベッドに仰向けになっていた美奈は、ハッとした表情になって、ガラスの壁に脅
えたような視線を向ける。幸いなことに、今は誰も部屋を覗き込んでいる者はいなかった。
 少し落ち着いて部屋の中を見回すと、昨日は半ばパニック状態で気がつかなかったが、そこは彼女の家の部屋より
少し大きめの部屋で、ガラス壁の向かい側に作りつけのクローゼットとドアがあった。立ち上がってドアを開けると、そこ
は脱衣所らしく、洗濯機も置いてある。左右にあるのはそれぞれ浴室とトイレのドアだ。
「シャワー…、浴びよう…」
 美奈はそう呟いて、来ていた部屋着を脱いだ。決勝戦で身柄を拘束されてから3日目になるが、その間お風呂に入っ
ていない。そのうえ、悪い夢を見たせいで汗をぐっしょりかいていて、気持ち悪かった。
 蛇口を捻り、熱めのシャワーを浴び始めた時、どこかでエレベーターが動くような機械音がした。
(何の音かしら…?)
 美奈が首を傾げた瞬間、いきなり前と右横の壁がスッと落ちるように下がり、部屋にあったようなガラスの壁が現れ
た。しかも、そこには10人以上の男が鈴なりになっており、目の前に現れた全裸の美少女を見て、手を叩いて喜んで
いる。
「キャアーッ!」
 美奈は大声で悲鳴をあげ、胸と股間を両手で庇いながら、脱衣所に逃げ込んだ。しかし、その壁も今やガラスに変わ
り、こちらを見つめる男と視線が合った。
 慌ててバスタオルを掴んで体に巻き、部屋に逃げ帰って制服を身につけた。その間も、部屋のガラスに男達がへばり
ついて、いやらしい視線をぶつけてくる。
 美奈は泣き叫びたくなるのをグッと我慢して部屋を飛び出し、ロビーに向かった。体がガクガク震え、廊下にたむろし
ている男達を怒鳴りつける勇気も湧いてこなかった。このまま部屋にいたら、本当におかしくなりそうだ。
 無我夢中でロビーまで下りて行くと、昨日言われていた集合時間まで、まだ1時間近くあるのに、すでに一緒に連れて
こられたクラブの仲間が半数ぐらい集まっている。みんな不安そうな表情を浮かべていたが、彼女たちの姿を見て、美
奈は少しだけホッとした。
 落ち着かない気持ちのまま、ロビーでしばらく待っていると、集合時間の少し前に「施設」からの迎えがやって来た。意
外なことに、それは女子高生らしい制服を着た、美奈たちと同じ年頃の少女だった。
「こんにちは、生徒会長の森脇亜弓です。」
 眼鏡の似合う少女は、見るからにしっかり者で頭も良さそうだったが、優等生にありがちな嫌みなところが全くなく、
清々しかった。日本人形のようなたおやかな美貌にどこかあどけなさが残った顔立ちや、ときおり見せる子供っぽい仕
草が、同性の目から見ても、抱きしめたくなるぐらい可愛い。テニス部員たちのみんなが、人目で彼女に好印象を持っ
た。
「それと…、ラケットは出して、ここに集めてね。」
 テニス部員たちの様子をあれこれと気遣い、いくつか簡単な説明をした後、亜弓は足下にあったプラスティックの籠を
指さしてそう言った。
「ごめんね…」
 理由もわからないままラケットを差し出す少女たちに、亜弓はなぜか、とてもすまなそうに謝った。美奈はその様子を
不思議に思い、小首をかしげて彼女を見た。

 スポーツバックにユニフォームやタオル、テニスシューズなどを入れて、車通りの多い二車線道路を歩いていく。他の
部員たちと一緒にそうして歩いていると、他の学校に対抗試合に行くような、そんな錯覚に陥る。
 横断歩道を渡るため、信号待ちで立ち止まった。すると、美奈たちの周りに数人の男たちが集まってきた。男たち
は、彼女たちのことを舐めるように見つめている。ふいに男の一人が美奈の前でしゃがみ込み、スカートの中にデジタ
ルカメラを向けた。
「な、何するのっ!」
 美奈はスカートを両手で押さえ、怒りに震える声を男に投げつけた。しかし男は全く悪びれる様子がない。
「おいおい、隠したら見えないじゃないか。」
 男はニヤニヤ笑いながらも、不満そうな声を出して、美奈の顔を見た。
 パシッ!
 美奈が男の頬に平手打ちをくらわせた。
「おい、何をするんだ!」
 男が怒鳴り、周りにいた他の男たちも次々に非難の声を上げ始めた。
「規則違反だぞ!」
「館に通報して、厳しく処罰してもらわないといけないな!」
 痴漢行為をされたのは自分の方なのに、男たちは、さも美奈が悪いかのように、一方的に彼女のことを責めてくる。
美奈は何を言ったらいいのかわからず、口をパクパクさせていた。
「ちょっと待ってください。」
 居丈高に言う男たちと、何が何だかわからない様子で呆然とする美奈たちの間に、亜弓が割って入った。
「彼女たちは、昨日ついたばかりの転入生です。まだ心の準備もできていないし、規則のことも知りません。どうか、許
してください。」
「ダメダメ、新入りだからと言って甘やかしちゃあいけないな。」
「最初が肝心だからな。」
「そうおっしゃらずに、お願いします。」
 意地悪そうな表情を浮かべる男たちに向かって、亜弓がなおもペコペコと頭を下げる。男たちはお互いに視線で合図
をし合い、やがて、美奈のスカートの中を覗こうとした男が言った。
「じゃあ、君に代わりになったもらおうか。スカートを捲くって見せてくれよ。」
「わ…、わかりました…」
 亜弓はため息とともにそう言うと、通行人の視線を気にしながら両手でスカートの端を持って捲り上げ、白いパンティ
を丸出しにして道路に立った。
「それじゃあ面白くないなぁ…」
 一人の男が言うと、別の男が亜弓に向かって言った。
「そうだ。パンティを膝までずり下ろして、スカートを捲れよ。」
 亜弓はさすがに戸惑う様子を見せたが、やがて、あきらめたように目をつぶると、手を腰に回して前屈みになる。そし
て、再びスカートを捲り上げた。
 パンティが膝のあたりで丸まり、下腹部の茂みもプリンとしたお尻も露わになった。その格好のまま、亜弓は歩道に立
っている。その前を何台もの車が通り過ぎ、通行人たちが好奇の目を向けていく。亜弓に命令した男たちは、彼女の周
りにしゃがみ込んで、むき出しになった股間や尻を見つめ、屈辱的な姿を手にしたデジカメで撮影している。
「へへっ、じっくり楽しませてもらったぜ。」
 信号が何度目かの青になった時、男は卑猥な笑い声をあげながら、立ち去った。亜弓もパンティを上げると、何事も
なかったかのようにスタスタと歩き出す。あっけにとられて見ていた美奈が、憤慨した様子で亜弓に尋ねる。
「ねえ、どうしてあんな奴の命令に従うのよ。恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいわよ。もちろん…」
 亜弓は少し震える声でそう答えた。平気だったわけでない証拠に、頬が赤くなり、目尻にはうっすらと涙が浮かんでい
る。
「あのね、私たちはいろいろと変わった規則を守らなきゃいけないの。通学路では、男の人がスカートの中や胸元を覗く
のを許さないといけないの。写真を撮っても構わないことになっているわ。それに対して、恥ずかしくっても、抵抗しちゃ
ダメなの。嫌がるそぶりを見せてもダメ。あくまで自然に振る舞わなきゃいけないの。」
「どうして…、どうしてそんなこと…」
 なおも食い下がろうとする美奈の視線を逸らしながら、亜弓が言った。
「さあ、着いたわ。ここよ。」
 彼女の指さしたのは小さな城跡に建てられた建物だった。石垣のまわりに巡らされた堀に橋がかかっている。美奈の
質問を遮ろうとするかのように、亜弓は早足で橋を渡っていく。テニス部員たちは、慌てて彼女の後を追った。
 橋を渡りきった所に、建物の入り口を示す門があった。それは、学校の正門のように見えるが、そこに掛かっている
金属製のプレートには「国防省付属慰安施設 星園癒しの館」とあった。
 正門をくぐると、城跡に立っている建物らしく、石垣に沿って右に回り込むゆるやかな坂道が続く。やがて左手に見え
たのは、どう見ても学校の校舎であった。
「なんか、ほんまに学校みたいやねえ。」
「学校だったの…、少し前まで…」
 千春の言葉に対して、そう言った亜弓の表情はとても哀しそうだった。
「更生施設だって聞いたけど…」
 美奈がそう言うと、亜弓はちょっと首を捻った。
「コーセー施設?…防衛隊の福利厚生施設って言う意味かしら…、悪い冗談か、それとも、女の子を補充しやすくする
ために、また法律を書き換えたのかもしれないわ…」
 校舎に入ると、靴箱が並ぶロビーで上靴に履き替えた。よく手入れされた中庭が見えて、「ロ」の字型の校舎であるこ
とがわかる。制服を着た女生徒が数人のグループになって廊下を行き来しており、亜弓は「学校だった」と過去形で言
ったが、一見したところ、やはり普通の学校のように見える。
「どう見ても、学校よね。」
 美奈の後ろを歩いていた部員が言った。しかし、美奈はさっきからなんとなく違和感を感じている。何か微妙にズレた
ところがあって、心にひっかかるのだ。
「えっ…、あ、あれ…」
 部員の一人が声をとまどったような声をあげる。彼女の視線の先を追った美奈の目が丸くなった。
 中庭のベンチで1組のカップルが抱き合っている。亜弓と同じ制服を着ているのは女子高生らしい、ティーンの女の
子に間違いなかったが、男の方は学生服を着てはいるものの、どう見ても二十歳を過ぎた大人だ。
 2人を見ていて美奈は、頬がカーッと熱くなるのがわかった。濃厚なキスをしている女子高生の制服の胸がはだけ、
その中に男の手が差し入れられてうごめいている。男のもう一方の手は女生徒のスカートの中に潜り込んでいる。
 そこに2、3人の女生徒が通りかかった。彼女たちはカップルにちょっと視線を投げただけで、何もなかったかのよう
に無表情のまま通り過ぎる。美奈はさっきから感じている違和感の正体に思い当たった。女生徒たちは一様に哀しげ
な表情を浮かべており、「箸が転んでも可笑しい」と昔から言われる年頃の娘が集まっているのに、楽しそうにお喋りし
たり、笑ったりする声が全く聞こえないのだ。
 ついに中庭の男は、女生徒を地面に押し倒し、彼女の両脚を押し開いて、体の中に押し入った。
「あ…、あぁ、ああぁ…」
 男の腰の動きに合わせて、女生徒が悩ましげな喘ぎ声を漏らす。亜弓に促されて、美奈たちは足早にその場を立ち
去った。
 校舎を半周して外に出ると、グラウンドに出た。都会の学校にしては広いグラウンドで、数十人の生徒が遠くで体育の
授業をやっている様子が見えた。左端には、テニスコートが2面とってある。
「結構、立派なコートがあるんやね。」
 横で千春が呟いた。美奈が見ると、さすが、テニス部員らしく、全員の目がそちらに向いている。
「こっちに来て…」
 亜弓はコートと逆の方向に美奈たちを引率した。ごく普通の体育館と、真新しいドーム屋根の建物が見える。亜弓に
尋ねると、ドームの中は温水プールとクアハウスになっていると言う。
 ふと見ると、体育館の横に大型犬を入れるような檻が置かれていた。何か動物でも飼っているのかと目を凝らして見
ると、1メートル2、30センチ程の高さのスチールの檻の中に、なんと全裸の少女が2人入れられていた。
 美奈が駆け寄ると、うずくまった少女たちは恥ずかしそうに目を逸らした。その首には犬がするような首輪が填められ
ている。
「こ、これは…、この人達、何…」
 美奈は亜弓を振り返る。
「…校則を、…守らなかったの…」
「だからって、こんなの酷いんじゃない!」
 美奈は思わず声を荒げて、亜弓を問い詰めたが、彼女は悲しげに首を振るだけだった。やはり、ここは普通の学校
とは全く異なった所のようだ。
 体育館の裏は更衣室になっている。妙に椅子やベンチが多い、不思議な更衣室を通り抜けると、地下に下りる入り
口があった。亜弓が鉄製のドアを開けると、中から女の悲鳴が聞こえてきた。悲鳴だけでなく、苦しそうなうめき声もす
る。美奈はゾッとして、鳥肌が立つのを感じた。
 ギョッとして立ち竦む少女たちに向かって頷くと、亜弓はドアの中に入っていく。美奈たちも、こわごわ、彼女について
行った。
 階段を降りきると、そこはコンクリートを打ちっぱなしにした部屋になっていた。一人の少女が全裸で、両手首を縛ら
れた状態で天井から吊されており、その前にプロレスラーのように体格の良い男が竹刀を持って立っていた。その横で
は、全裸になり後ろ手に縛られた少女が三角木馬に跨って、苦痛に顔を歪めている。
「先生、連れてきました…」
「おお、来たか。」
 そう言うと、男は凄みのある表情で美奈たちを見渡した。
「俺は、お前達が入学した体育科の担任をする平沼だ。詳しい説明は後でするが、まず最初にお前達に見せておくも
のがある。」
 平沼と名乗った男はニヤリと笑いながら、手にした竹刀の先で、宙ぶらりんになった少女の乳房のあたりを突いた。
少女の手首は、両手を合わせた革の手錠のようなものをはめられ、そこに天井から太い鎖がつながっていて、床から
およそ50センチ程の高さに吊られている。竹刀でつつかれて体が揺すられた反動で、顔が持ち上がり、垂れていた髪
がサラサラと後ろに流れた。
「あっ、中西さんっ!」
 美奈が思わず叫び、ぐったりしていた少女がこちらを向いた。途端に、その目にも驚愕の色が浮かぶ。中学時代から
各種のテニス大会で競い合ってきた二人は、お互いを見間違えることなどなかった。まぎれもなく、少女は大泉高校テ
ニス部の中西朋美だ。
「ここは、校則違反をした生徒に反省させるための反省室だ。こいつは昨日、校則に違反した。教師の指導に従わなか
ったんだ。お前達、よく見ておけよ。校則に違反したらどうなるか。」
 そう言うと平沼は竹刀を大きく振りかぶり、朋美の胸を、腹を、尻を思い切り打ち据えていく。
「キャアッ!痛いっ!イヤッ、ヤメテーッ!」
 朋美が吊された全身を揺さぶって泣き叫ぶ。白く柔らかな肌にみるみるうちに幾筋ものミミズ腫れができていった。駆
け寄って止めようとする美奈の腕を亜弓が引っ張る。怒りの表情を向けると、亜弓はすがるように目を潤ませてかぶり
を振った。
(なんて酷い…、私たち、とんでもない所に連れて来られたんだわ…)
 あまりのことに言葉を失った美奈は、体から血の気が引いていくのを感じた。

 



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